2007年12月06日

ローランド・カーク『カーク・イン・コペンハーゲン』

kirkincopenhagen.jpg Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live

ローランド・カークの音楽には聴く者の心をわしづかみにして離さない強烈な地場があって、1曲聴くと次から次へと彼のアルバムを聴かずにはいられなくなります。何が飛び出すかわからない、何でもありのおもちゃ箱。
一度ラサーンの魅力にとり憑かれると、たいへんです。過激な言葉で聴衆を惑わすアジテーター、手がつけられない暴れん坊、その場にいる人を退屈させないエンタテナー、身体中に楽器をぶらさげた異様な見てくれ、超絶技巧をこれでもかと見せつけるテクニシャン、ブラック・ミュージックの歴史を体現した生き字引、全部いっしょくたにしたのがラサーンです。
ラサーニアンはそのすべてを受け止め、彼の肉声に共鳴し、そして不覚にも涙します(笑)。病みつきなんてナマやさしい表現ではたりません。それなしでは生きていられなくなるのが、ラサーンの音楽です。

カーク・イン・コペンハーゲン』は、デンマークの首都コペンハーゲンの有名なクラブ・モンマルトルにおける実況録音盤です。しゃべりも含めてラサーンを堪能するなら、ライヴにまさるものはない。それが実感できるアルバムです。
しかも、共演のピアノはスペインの至宝テテ・モントリューという、うれしいおまけつき。ふたりとも目が見えませんが、そんなことは微塵も感じさせない芸達者ぶりを見せつけます。

1963年の秋から冬にかけて、ラサーンはヨーロッパ各地をツアーでめぐります。ロンドンのロニー・スコッツでの1か月ロングラン公演にはじまり、デンマーク、スウェーデン、フランス、イタリア、ドイツ、オランダ、ベルギーへと続く旅。行く先々でラサーンは熱狂的に受け入れられ、クラブの入場記録を塗り替えるなど、連日大入り満員の大盛況だったといいます。
そのウワサを聞きつけたクインシー・ジョーンズ(当時マーキュリー・レコードのプロデューサーをしていました)が、急遽ライブ・レコーディングを企画し、実現したのがこのアルバムです。

1曲目〈ナロウ・ボレロ〉は、ラサーンがラヴェルの〈ボレロ〉にインスパイアされて書いた曲。ラサーンの3管同時吹奏の妙技が楽しめます。

2曲目〈ミンガス=グリフ・ソング〉はもちろん、かつてのボス、チャールズ・ミンガスと「グリフ」ことジョニー・グリフィンに捧げられた曲です。途中、ラサーンの十八番、息継ぎなしのロングソロが炸裂します。循環奏法といって、口から息を吐くと同時に鼻から吸う(本人は「耳から」吸っていると言い張っていました)のですが、どうやるのかは門外漢の私には想像もつきません。

続く〈ザ・モンキー・シング〉では雰囲気がぐっと変わって、こってりモードの濃厚なブルースが楽しめます。しゃべりながらフルートを吹く(息が漏れるのではなく、実際に言葉を発している)のもラサーンのトレードマークのひとつです。シカゴ・ブルースの重鎮サニー・ボーイ(ハーモニカ)が飛び入りで参加しています。

6曲目〈キングとスコット通りの角にて〉とあるのは、ロンドンで出会ったばかりのロニー・スコットとピート・キングのことです。

もともとは1枚のLPですが、日本ではかつて、LP未収録曲をあわせてライブの演奏順におさめた完全版CDが2枚に分けて発売されました(2枚組じゃなくて2枚別売り!)。今では入手が困難かもしれませんが、いちおうリンクを貼っておきます。

  

Roland Kirk "Kirk In Copenhagen"
(Mercury MG 20894 / SR 60894)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, flute, siren)
Tete Montoliu (piano)
Niels Henning Orsted Pedersen or Don Moore (bass)
J.C. Moses (drums)
Sonny Boy Williamson II [as Big Skol] (harmonica) #3

Produced by Quincy Jones
Recorded by Birger Svan Mertonome
Recorded live at the Club Monmartre, Copenhagen; October, 1963

[Tracks] Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live
01. Narrow Bolero Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - Narrow Bolero
02. Mingus - Grif Song Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - Mingus-Griff Song
03. The Monkey Thing Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - The Monkey Thing
04. Mood Indigo Duke Ellington, Barney Bigard, Irving Mills (music and lyrics) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - Mood Indigo
05. Cabin In The Sky Vernon Duke (music) / John Latouche (lyrics) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - Cabin In The Sky
06. On The Corner Of KIng And Scott Streets Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - On The Corner Of King And Scott Streets

[Links: Roland Kirk]
Periodicals > 林建紀 (『ローランド・カーク伝』訳者のラサーン研究@read NKYM!)
Nagata's Jazz Page (by 永田昌俊)
the Rahsaan Roland Kirk website
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Tete Montoliu]
Tete Montoliu (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
Tete Montoliu Discography (by Agustin Perez)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Niels Henning Orsted Pedersen]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Don Moore]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: J.C. Moses]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Sonny Boy Williamson]
Sonny Boy's Lonesome Cabin
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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2007年12月05日

ローランド・カーク『ウィ・フリー・キングス』

wefreekings.jpg Roland Kirk Quartet - We Free Kings

ケニー・ドーハムがこの世を去ってから5年後の1977年12月5日の正午、ラサーンことローランド・カークは遠征先のインディアナ州ブルーミントンで倒れ、そのまま帰らぬ人となりました(享年41歳)。今日は、彼の没後30周年の記念日です。

さかのぼること2年前、脳卒中に襲われたラサーンは、その影響で右半身が麻痺して片手がまったく使えない状態に陥ります。しかし、そんなことでへこたれるラサーンではありません。リハビリを重ね、楽器をカスタマイズして、片手だけで〈ジャイアント・ステップス〉を吹きこなすまでに回復したのです。
ラサーンのトレードマークだった3管同時吹奏はこのとき、彼に光をもたらしました。3つの楽器を同時に操るために、ラサーンはもともと、ほとんどの楽器を片手だけで演奏できるようになっていました。
さらに、目が見えないハンディをハンディととらえず、障害者に見られることを極度に嫌ったラサーンにとって、半身麻痺はぜがひでも乗り越えなければならない対象でした。これまで以上に困難な状況が彼の闘争本能に火をつけ、不屈の闘志でそれを乗り越える。

復活したラサーンを、人々は尊敬と畏怖の念をもって迎えます。もはや彼は生ける伝説。奇跡を目の当たりにした人たちは、そのスピリチュアルな体験を一生の宝物として記憶のなかに刻み込みます。

亡くなる前夜、ラサーンはインディアナ大学の学生たちを前に、最後の公演を行っています。演奏の合間、彼はいつものように聴衆に語りかけ、そのなかでこんなことをいったそうです(ジョン・クルース著『ローランド・カーク伝』より。訳は林建紀さん)。

「12時に誰かが逝かなければならないが、取って代わるために他の誰かが生まれてくる」
「私たちの中には12時に逝かなければならない者もいれば、生き続けなければならない者もいる」

どちらも聞き書きなので正確な文言はわかりませんが、その言葉どおり、ラサーンが翌日の12時に亡くなったことを思うとき、彼のもつ異様なパワーが理屈をこえた世界を一瞬だけ垣間見させてくれたのではないか、そんなことを思います。

今日の推薦盤『ウィ・フリー・キングス』は、ラサーンがまだ若かりし頃の作品で、彼の名を一躍有名にした傑作です。
知らない人のために念のために言っておくと、リズムセクション以外の楽器はすべてラサーンが「ひとりで」「同時に」吹いています。メンバーに記載漏れがあるわけではなく、多重録音で後から音をかぶせたわけでもありません。ひとつの演奏でいろいろな楽器が登場しますが、それもすべて一人でこなしています。音が重なって聴こえるのは、同時に吹いているからです。
彼の異様さ、おかしさ、そして天才ぶりを言葉で伝えるのはむずかしい。ぜひ自分の耳で確かめてください。

ちなみに、表題曲〈We Free Kings〉はクリスマス・キャロル〈We Three Kings of Orient Are(邦題:われらはきたりぬ)〉のもじりです。原曲のMIDI音源と聴き比べてみるもの一興かと。

 

Roland Kirk "We Free Kings"
(Mercury MG 20679 / SR 60679)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, flute, siren)
Hank Jones (piano) #1, 2, 6, 7, 8
Richard Wyands (piano) #3, 4, 5, 9
Wendell Marshall (bass) #1, 2, 6, 7, 8
Art Davis (bass) #3, 4, 5, 9
Charlie Persip (drums)

Produced by Jack Tracy
Recorded by Tommy Nola
Recorded at Nola Penthouse Studios, NYC; August 16 (#3, 4, 5, 9), 17 (#1, 2, 6, 7, 8), 1961

[Tracks] Roland Kirk Quartet - We Free Kings
01. Three For The Festival Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - Three for the Festival
02. Moon Song Arthur Johnston (music) / Sam Coslow (lyrics) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - Moon Song
03. A Sack Full Of Soul Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - A Sack Full of Soul
04. The Haunted Melody Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - The Haunted Melody
05. Blues For Alice Charlie Parker (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - Blues for Alice
06. We Free Kings Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - We Free Kings
07. You Did It, You Did It Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - You Did It, You Did It
08. Some Kind Of Love Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - Some Kind of Love
09. My Delight Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - My Delight

[Links: Roland Kirk]
Periodicals > 林建紀 (『ローランド・カーク伝』訳者のラサーン研究@read NKYM!)
Nagata's Jazz Page (by 永田昌俊)
the Rahsaan Roland Kirk website
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Hank Jones]
The Official Website of Hank Jones
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Richard Wyands]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Wendell Marshall]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Art Davis]
Dr. Art Davis, Bassist (Official Website)
Art Davis Discography (by Michael Fitzgerald)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Charlie Persip]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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ケニー・ドーハム『トランペット・トッカータ』

trompetatoccata.jpg Kenny Dorham - Trompeta Toccata

今日はトランペット奏者ケニー・ドーハムの命日です。ケニー・ドーハム(McKinley Howard Dorham)は1924年8月30日、テキサス州フェアフィールド生まれ。1972年12月5日、ニューヨーク州ニューヨークで腎臓病のために亡くなりました。享年48歳。

1940年代半ばから頭角を現したケニーは、ディジー・ガレスピーより9歳年下で、マイルス・デイヴィスより2歳年上、クリフォード・ブラウンとは6歳もの年の差がありました。
この年齢差が、実はケニーの立ち位置のむずかしさを表しているのではないでしょうか。つまり、生粋のビバッパーというには若すぎ、かといって年下のマイルスやブラウニーの影響は受けにくいというか受けたくない。

ケニーが一番輝いていたのは、炎のように燃え盛る『カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ Vol. 1』『<同 Vol. 2』(記事はこちら)や、ガレスピーばりのラテンの情熱を聴かせる『アフロ・キューバン』(記事はこちら)を吹きこんだ1955年(御年31歳)あたりだと思いますが、そこから徐々に路線変更を重ねて、ポクポクという木魚のような語り口が主体になっていきます。

もともとお世辞にも音色が美しいとはいえないケニーのことですから、ブラウニー直系のブリリアントなトランぺッター全盛の時代にあって、力を抜いた渋めの演奏に活路を見出したともいえそうですが、それが「クール」にならずに「枯れた味わい」になってしまうところが、いかにも彼らしい。やっぱりブラウニーにもマイルスにもなれないわけです。

ある意味かわいそうなケニーですが、ジャズの神様は彼を見捨てませんでした。40代を目前にした彼は、13歳年下のテナーマン、ジョー・ヘンダーソンと出会います。ジョーヘンという新たな才能を得て、ケニーはふたたび往時の勢いを取り戻します。
彼らのコラボレーションは、63年録音の『ウナ・マス』を皮切りに、ジョーヘン名義の『ページ・ワン』(ケニーの傑作オリジナル〈ブルー・ボッサ〉が入っています)、『アワ・シング』、『イン・ン・アウト』と続き、今回とりあげた『トランペット・トッカータ』で幕を降ろします。

このアルバムは、正式録音としてはケニーの最後のリーダー作です。この録音の直後、ジョーヘンがホレス・シルヴァーのグループに移籍したことで、彼らの蜜月は終わりを迎えます。ケニーが咲かせた最後の花は、相方を失ったことで散る運命にありました。
表題曲〈トランペット・トッカータ〉の出来がすばらしいだけに、実にもったいない。うちに秘めた炎がときおり顔を出すケニーのソロが絶品です。しかも、曲調は哀愁のラテン(笑)。大好きです。

 

Kenny Dorham "Trompeta Toccata"
(Blue Note BLP 4181 / BST 84181)

Kenny Dorham (trumpet)
Joe Henderson (tenor sax)
Tommy Flanagan (piano)
Richard Davis (bass)
Albert "Tootie" Heath (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; September 14, 1964

[Tracks] Kenny Dorham - Trompeta Toccata
01. Trompeta Toccata Kenny Dorham (music) Kenny Dorham - Trompeta Toccata - Trompeta Toccata
02. Night Watch Kenny Dorham (music) Kenny Dorham - Trompeta Toccata - Night Watch
03. Mamacita Joe Henderson (music) Kenny Dorham - Trompeta Toccata - Mamacita
04. The Fox Kenny Dorham (music) Kenny Dorham - Trompeta Toccata - The Fox

[Links: Kenny Dorham]
Una Mas: Kenny Dorham Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Kenny Dorham Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Joe Henderson]
Joe Henderson Discography (by Jeffrey Lovell)
Joe Henderson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Tommy Flanagan]
Tommy Flanagan Discography (by トミー・フラナガン愛好会)
Tommy Flanagan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Richard Davis]
The Richard Davis Homepage (Official Website)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Albert "Tootie" Heath]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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posted by ユキヒロ at 01:06| Comment(0) | TrackBack(0) | Blue Note | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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