2007年12月26日

オスカー・ピーターソン『プリーズ・リクエスト』

We Get Requests.jpg Oscar Peterson Trio - We Get Requests

訃報です。
カナダが生んだ世界的なスター、オスカー・ピーターソンが去る2007年12月23日、カナダ・トロント郊外のミシソーガの自宅で亡くなりました。死因は腎不全。82歳でした。

オスカー・ピーターソン(Oscar Emmanuel Peterson)は、1925年8月25日、カナダのモントリオールで生まれました。5歳からはじめたというピアノのアイドルは、アート・テイタム。超絶技巧でならしたテイタムに習い、ピーターソンはやがて彼と並び称されるほどのテクニックを身につけていきます。
全米デビューは24歳のとき。1949年、ノーマン・グランツ主催のカーネギーホール・コンサートで名声を獲得。以後、JATP ツアーの常連となり、ヴァーヴ・レーべルに膨大な数の録音を残します。

ピーターソンといえば、88の鍵盤をフルに使ったダイナミックな演奏で知られています。ついたあだ名が「鍵盤の皇帝("Maharajah of the keyboard" by Duke Ellington )」。力強いタッチでグイグイ引っ張る彼のピアノは、まさにゴージャスの一言。圧倒的なドライヴ感に身を委ねれば、気持ちいいことこのうえありません。

プリーズ・リクエスト』は、ピーターソンが黄金期を築いたヴァーヴ時代の最後の1枚です。
ライヴでは、客のリクエストを受けつけたというピーターソン。2度にわたってソングブック・シリーズを吹きこんだ彼のことですから、レパートリーの広さで右に出る者はいません。だからこそ「リクエストOK」なのですが、そんなリクエストのなかから選び抜かれた珠玉のメロディーを、ときに豪華に、ときに愛らしく、ときにパワフルに料理するピーターソンの腕前は、もはや人間国宝級!

ジョビンの名曲〈コルコヴァード〉〈イパネマの娘〉も演ってます。小技をやらせても抜群にうまいピーターソン。鼻歌のように軽やかに歌う彼のピアノに、心がウキウキしてきます。
レイ・ブラウンの弓弾きが印象的な〈ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー〉。クラシックの小品を思わせる出だしがなんとも粋です。
アルバムの最後に収められた〈グッバイ J.D.〉は、ノーマン・グランツが去ったあとのヴァーヴで、ピーターソンのアルバムをプロデュースしてきたジム・デイヴィスに捧げた曲。オリジナル曲はあまりやらないピーターソンですが、お別れの言葉だけは自分で言いたかったんですね。でも、辛気くささが微塵も感じられない曲調なのが、ちょっと笑えます。

 

Oscar Peterson "We Get Requests"
(Verve V/V6 8606)

Oscar Peterson (piano)
Ray Brown (bass)
Ed Thigpen (drums)

Produced by Jim Davis
Recorded by Val Valentin, Bob Simpson
Recorded in NYC; October 19 (#1, 5, 7), 20 (#2-4, 6, 8, 9), ?? (#10), 1964

[Tracks] Oscar Peterson Trio - We Get Requests
01. Corcovado [Quiet Nights And Quiet Stars] Antonio Carlos Jobim (music) / Antonio Carlos Jobim (Portugal lyrics), Gene Lees (English lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Quiet Nights of Quiet Stars (Corcovado)
02. The Days Of Wine And Roses Henry Mancini (music) / Johnny Mercer (lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Days of Wine and Roses
03. My One And Only Love Guy Wood (music) / Robert Mellin (lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - My One And Only Love
04. People Jule Styne (music) / Bob Merrill (lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - People
05. Have You Met Miss Jones Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Have You Met Miss Jones?
06. You Look Good To Me Clement A. Wells Jr., Seymour Lefco (music) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - You Look Good to Me
07. The Girl From Ipanema Antonio Carlos Jobim (music) / Vinicius de Moraes (Portugal lyrics), Norman Gimbel (English lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Girl From Ipanema
08. D & E John Lewis (music) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - D & E
09. Time And Again Stuff Smith (music) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Time and Again
10. Goodbye J.D. Oscar Peterson (music) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Goodbye J.D.

[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peterson (Official Site)
Oscar Peterson: A Jazz Sensation (@ Library and Archives Canada)
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Jazz Giant : The Oscar Peterson Discography
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Ray Brown]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen (Official Site)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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2007年12月12日

秋吉敏子『ザ・トシコ・トリオ』

The Toshiko Trio.jpg

今日はわれらが日本人の誇り、秋吉(穐吉)敏子さんの78歳の誕生日です。
秋吉さんは、1929年12月12日、中国東北部(当時満州)の遼陽で生まれました。終戦後、引き揚げ船で帰国した彼女は、別府の進駐軍向け「つるみダンスホール」で職を得て、見様見真似でジャズピアニストとしての生活をスタートさせます。
彼女がジャズに開眼したのは、テディ・ウィルソンが奏でる〈スウィート・ロレイン〉のレコードを聴いてから。以下は、自伝『ジャズと生きる』(岩波新書)からの引用です。

このレコードを聞いた瞬間から私の人生は変わった、といってもよいと思う。テディ・ウィルソンがアメリカでも最高のジャズ・ピアニストだということは、当時の私には知る由もなかったが、その端麗なピアノの音、そしてスケールをプレイするその流れは、一つ一つの音が同じサイズの真珠を並べたようで、こんなきれいな音楽がジャズなのか、と息のつまる思いがした。

17歳で福岡へ、18歳で東京へと活躍の場を移した彼女に転機が訪れたのは1953年。JATPツアーで来日していたオスカー・ピーターソンにその才能を見出され、彼の推薦で急遽レコーディングすることになったのです。
録音は当時、有楽町にあったラジオ東京(TBS)で行われました。オスカーのリズム・セクション(ギターのハーブ・エリス、ベースのレイ・ブラウン)にドラマーの J.C. ハードを加えて収録された『アメイジング・トシコ・アキヨシ』(原題は『トシコズ・ピアノ』)は、ノーマン・グランツのノーグラン・レコード(のちのヴァーヴ)から発売されました。

日本人の無名のミュージシャンが全米デビューを果たしたわけです。それだけでも驚きですが、彼女はその後、ボストンのバークリー音楽院への切符も手にします(日本人生徒第1号)。渡米自体が珍しかった当時、奨学金を得てアメリカで学ぶなんて夢のまた夢だったはずですが、彼女は強い意志でそれを実現します。まさにシンデレラ・ストーリー。

推薦盤『ザ・トシコ・トリオ』は、彼女がバークリー時代に残した2枚のストーリーヴィル盤のうちの1枚で、ニューポート・ジャズ・フェスティバルのプロモーター、ジョージ・ウィーンが制作しています(彼女のマネジメントも担当していたそうです)。
いくら日本人が物珍しかった時代とはいえ(彼女はちょっとした有名人で、番地も何もない「トシコ・アキヨシ、ボストン、マサチューセッツ州、USA」という日本からきた手紙が無事に配達されたとこともあったというエピソードが、先の自伝で紹介されています)、ノーマン・グランツにジョージ・ウィーンという大物2人を味方につけた彼女の実力を知るにはもってこいのアルバムです。

李香蘭の〈蘇州の夜〉を取り上げたことで知られていますが(この曲のみソロ演奏)、むしろ聴きものは、彼女の情趣あふれるオリジナルとパウエル・ライクなピアノ奏法にあります。
ポール・チェンバースにエド・シグペンという当代一流のプレーヤーをバックに、堂々たる弾きっぷりを聴かせる彼女に拍手! ハツラツとした演奏のなかに時折見せる繊細な響きは、日本人ならでは。イントロのうまさは特筆ものです。

 

Toshiko Akiyoshi "The Toshiko Trio"
(Storyville STLP 912)

Toshiko Akiyoshi (piano)
Paul Chambers (bass)
Ed Thigpen (drums)

Produced by George Wein
Recorded in NYC; summer 1956

[Tracks]
01. Between Me And Myself Toshiko Akiyoshi (music)
02. It Could Happen To You Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
03. 郷愁 (Nostalgia) Toshiko Akiyoshi (music)
04. Homework Toshiko Akiyoshi (music)
05. Manhattan Address Toshiko Akiyoshi (music)
06. Sunday Afternoon Toshiko Akiyoshi (music)
07. Blues For Toshiko Toshiko Akiyoshi (music)
08. 蘇州の夜 仁木他喜雄 (music) / 西條八十 (lyrics)
09. Softly, As In A Morning Sunrise Sigmund Romberg (music) / Oscar Hammerstein II (lyrics)

[Links: Toshiko Akiyoshi]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Paul Chambers]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen (Official Site)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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2007年12月11日

マッコイ・タイナー『フライ・ウィズ・ザ・ウィンド』

flywiththewind.jpg

今日は肉弾派ピアニスト、マッコイ・タイナーの69歳の誕生日です。
マッコイ・タイナー(本名 Alfred McCoy Tyner)は、1938年12月11日、ペンシルヴァニア州フィラデルフィアで生まれました。

マッコイはもう宿命的にジョン・コルトレーンとの絡みで語られてしまうわけですが、この『フライ・ウィズ・ザ・ウィンド』が録音されたのは1976年。トレーン没後10年を経て、マッコイはとうとう後世に名を残す決定的名盤(迷盤?)を吹きこみます。

なにしろ「風とともに舞え」ですからね。ゴージャスなストリングスをバックにした豪華絢爛の一大絵巻(笑)。音数多すぎ、楽器多すぎの圧倒的なボリューム感。聴いているこっちが気恥ずかしくなってしまうくらいのオーバーアクション。腹を抱えて笑わずにはいられないほどのキメキメな曲調とアレンジ。いやー、ホントに満腹です。

でも、これ、実に壮快なんですよ。気分がスカーッと晴れるというか、嫌なことがあった日なんかにこれを聴くと、頭が真っ白になって、どこへでも好きなところに羽ばたいていける(笑)。この気持ちのよさは、他のアルバムからは絶対感じることができません。
ジャズは演るほうも聴くほうも少なからず頭を使う音楽ですが、肉体派マッコイは違います。実に無邪気で、ノーテンキ。むずかしいことはな〜んもありません。そこがなんともたまりません。

ご存じ、中山康樹さんが『ジャズの名盤入門』(講談社現代新書)で「名盤がヘタッていく過程を知る」と述べていて爆笑しましたが、「風化しつつも数年に一度は聴かずにはおれない抗いがたい魅力がある」との言葉に私も一票!
一見ド派手なのに、実はどこを切っても金太郎飴的なマッコイのノリは、続けて聴いたら確実にダレます。でも、たま〜に聴きたくなるんだよね〜(笑)。このゆる〜い感じが、マッコイのマッコイたるゆえんだと思います。

 

McCoy Tyner "Fly With The Wind"
(Milestone M 9067)

Hubert Laws (flute, alto flute)
Paul Renzi (piccolo, flute)
Raymond Duste (oboe)
McCoy Tyner (piano)
Linda Wood (harp)
Ron Carter (bass)
Billy Cobham (ds)
Guilherme Franco (tambourine) #2

with strings:
Stuart Canin, Peter Schafer, Daniel Kobialko, Edmund Weingart, Frank Foster, Myra Bucky, Mark Volkert (violin)
Selwart Clark, Daniel Yale (viola)
Kermit Moore, Sally Kell (cello)

Arranged by McCoy Tyner
Conducted by William Fischer

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jim Stern
Recorded at Fantasy Studios, Berkeley, CA; January 19-21, 1976

[Tracks]
01. Fly With The Wind McCoy Tyner (music)
02. Salvadore de Samba McCoy Tyner (music)
03. Beyond The Sun McCoy Tyner (music)
04. You Stepped Out Of A Dream Nacio Herb Brown (music) / Gus Kahn (lyrics)
05. Rolem McCoy Tyner (music)

[Links: Hubert Laws]
Hubert Laws (Official Website)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: McCoy Tyner]
McCoy Tyner (Official Website)
McCoy Tyner Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Journey of The Soul: The McCoy Tyner Discography
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Ron Carter]
Ron Carter (Official Webiste)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Billy Cobham]
Billy Cobham (Official Website)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Guilherme Franco]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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posted by ユキヒロ at 06:14| Comment(0) | TrackBack(0) | Fantasy (Milestone, Galaxy) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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