2006年04月04日

マル・ウォルドロン『レフト・アローン』

leftalone.jpg

訃報です。ジャッキー・マクリーンが亡くなりました。1931年5月17日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。2006年3月31日、コネティカット州ハートフォードの自宅で死去。享年73歳。

月並みといえば、あまりに月並みなセレクションですが、泣きのマクリーンの葬送曲は、『レフト・アローン』しか思い浮かびません。

不世出の歌手ビリー・ホリディの死後、彼女の最晩年を伴奏者としてすごしたマル・ウォルドロンが哀悼の意を込めて録音した、というのが定説になっていますが、どうやらこれは、でっちあげの美談のようです。

ビリーが亡くなったのは、1959年7月17日。このアルバムの録音日は、1959年2月24日ですから(発売元の東芝 EMI のサイトにもわざわざ録音日が明記されているので、おそらく間違いないでしょう)、実に5か月も前に収録されていたわけです。今回この記事を書くまで、私もまったく知りませんでした。

マル作曲、ビリー作詞の〈レフト・アローン〉は、ビリーの死とは関係なく録音されたまま放置されていた。そこに、ビリーの死というニュースが飛び込んできた。そこで、急遽マルのインタビューを追加収録(#6)して、ビリーの追悼盤としてリリースされた。事実はおそらく、こんな感じだったのでしょう。

かなり興ざめな話です。でも、逆にいうと、ビリーの死という悲しみなしに、マクリーンはあれだけむせび泣き、マルはあれだけ重く沈んだ演奏をしたわけです。これって、よく考えると、すごくないですか?

このアルバム、本当はマルのピアノ・トリオ作として取り上げようと思っていたんです。〈レフト・アローン〉ばかりが注目されますが、実はそれ以外の4曲にこそ、黒い情念マルの本質がある。〈キャット・ウォーク〉のどうしようもない暗さ。〈ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ〉の絶望的な深み。〈マイナー・パルセーション〉の執拗なモールス信号。異常に力強い低音がボディブローのようにじわじわ効いてくる。聞き終えた後、こんなに気持ちが沈む作品もそうはありません。

でもね、やっぱりマクリーンのむせび泣きに参ってしまうんです。アルトが泣いています。涙がとめどなくあふれています。ジャッキーさん、ごめんよ。生きている間にあなたの特集やっておけばよかった。ご冥福を祈ります。



Mal Waldron "Left Alone"
(Bethlehem BCP 6045)

Jackie McLean (alto sax) #1
Mal Waldron (piano)
Julian Euell (bass)
Al Dreares (drums)

Recorded in NYC; February 24, 1959

[Tracks] 
01. Left Alone (music: Mal Waldron / words: Billie Holiday)
02. Cat Walk (music: Mal Waldron)
03. You Don't Know What Love Is (music: Gene DePaul / words: Don Raye)
04. Minor Pulsation (music: Mal Waldron)
05. Airegin (music: Sonny Rollins)
06. The Way He Remembers Billie Holiday

[Links: Jackie McLean]
BLUESNIK (by masaki nakano)
ジャズの酒蔵
Jackie McLean Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Mal Waldron]
Mal Waldron Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Mal Waldron Recordings (@ Miles Ahead)

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2006年03月18日

『ブッカー・リトル・アンド・フレンズ』

>bookerlittleandfriends.jpg 

ベツレヘム盤『ブッカー・リトル&フレンズ』は、前作『アウト・フロント』のメンバーから、エリック・ドルフィーとマックス・ローチが抜けて、ジョージ・コールマンとピート・ラロカが加わった3管セクステットの作品です(1961年夏頃録音)。

同じ3管でも、ブレイキーなんかと比べると、こうも違うかと驚くはずです。メンバーが小粒だから? こじんまりした印象を受ける? いずれもちょっと違うような気がします。もっと根本的に何かが違う。躍動感というかバイタリティというか、リトルの音楽には生命力が希薄なんです。音楽とともに存在そのものが霧散していくような希薄さ。「永遠の未完成」とはよくいったものです。

ここには、なんと私的テーマ曲〈イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー〉が入っています。この曲、少し早めのテンポで演ってもサマになるのですが、リトルはけっして急ぎません。ゆっくりと音を確かめるように吹いています。まるで残されたわずかな人生を慈しむかのように。

リトルの存在は別格ですが、このアルバムのドン・フリードマンも嫌いじゃありません。というか、けっこう気に入っています。フリードマンというと、『サークル・ワルツ』か、スコット・ラファロのルームメイトだった、ということくらいしか思い浮かびませんが(笑)、前作といい、今作といい、よく聞くと意外と効いているんですよ、彼のピアノが。60年代初頭に花開いたリトルのバックにひと昔前のパウエル派のピアニストを連れてきても、合わないだろうから、やっぱりこういうのは相性の問題なのでしょう。再認識させられました。

 

"Booker Little And Friend"
(Bethlehem BCP 6061)

Booker Little (trumpet)
Julian Priester (trombone) #1, 3, 5, 7
Geroge Coleman (tenor sax) #1, 3, 5, 7
Don Friedman (piano)
Reggie Workman (bass)
Pete La Rocca (drums)

Produced by Teddy Charles
Recorded in NYC; August - September, 1961

[Tracks] 
01. Victory And Sorrow (music: Booker Little)
02. Forward Flight (music: Booker Little)
03. Looking Ahead (music: Booker Little)
04. If I Should Lose You (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
05. Calling Softly (music: Booker Little)
06. Booker's Blues (music: Booker Little)
07. Matilde (music: Booker Little)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Don Friedman]
Don Friedman, Jazz Pianist (Official Site?)
Don Friedman Discography (by Jonathan Kutler)
[Links: Reggie Workman]
Reggie Workman's BassScanz (Official Site)

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2005年09月15日

『モーター・シティ・シーン』

motorcityscene.jpg

アメリカ五大湖の中央に位置し、カナダと国境を接するミシガン州最大の都市デトロイト。フォード、GM、クライスラーのビッグ3が誕生した街としても知られ、自動車産業華やかなりしころは人口180万人を数えたそうですが、70年代以降、日本車の輸出攻勢の影響をモロに受けて人口が激減。市街地から人が消え、ゴーストタウンと化した街の治安は悪化します。現在は人口90万人のうち黒人が8割以上を占め、白人は郊外の衛星都市に住むという二重構造になっているそうです。

デトロイトがまだ元気だったころ、この街でおおぜいの黒人ミュージシャンが育ちました。60年代を席巻したモータウン(Motor Town の略ですね)が生まれたのも、この街でした。ジャズの世界も例外ではなく、50年代半ばにはデトロイト出身のジャズメンが大挙して本場ニューヨークへと進出してきました。

ベツレヘム盤『モーター・シティ・シーン』は、そんなデトロイト出身のジャズメンを集めてつくられました。リーダーはなし。ただし、全体をしきっているのは、ドナルド・バードのようにも聞こえます。バードは当時、ブルーノートとの専属契約を結んでいて、リーダーにはなれなかった。だから、リーダーなしのジャム・セッション的な体裁になったのかもしれません。

メンバーは年長者順に、ピアノのトミー・フラナガン。1930年3月16日、デトロイト生まれ。2001年11月16日、ニューヨークで死去。

バリトンのペッパー・アダムス。1930年10月8日、イリノイ州ハイランド・パーク生まれのデトロイト育ち。1986年9月10日、ニューヨークで死去。

ギターのケニー・バレル。1931年7月31日、デトロイト生まれ。

トランペットのドナルド・バード。1932年12月9日、デトロイト生まれ。

ベースのポール・チェンバース。1935年4月22日、ペンシルヴァニア州ピッツバーグ生まれのデトロイト育ち。1969年1月4日、ニューヨークで死去。同じベースのダグ・ワトキンスはいとこにあたります。

ドラムスのルイ・ヘイズ。1937年5月31日、デトロイト生まれ。

名前を並べただけでもある「音」が聴こえてきそうなメンバーです。バードにしろ、バレルにしろ、トミフラにしろ、ベタベタのブラック・ミュージックというよりは、知的でセンシティヴな音楽を得意としていました。都会的な洗練が自然と身についていた彼らが育ったデトロイトは、やはり当時は大都会だったのでしょうね。

私にとって、このアルバムは〈スターダスト〉を聞くためにあります。バラッドなのに1曲目におかれた理由は、聞けばわかります。ここでのバードは、息をのむほどすばらしい。この曲のみ、バリトンとギターが抜けたワンホーンでの演奏ですが、これこそ制作者の良心というものでしょう。輝かしい音色、情感たっぷり(でも過度ではない)のフレーズ、バードが吹くバラッドは私の心にフィットします。ブルーノートでのスピード感あふれる演奏もいいですが、バードはバラッド。これで決まりです。

ちなみに、『モーター・シティ・シーン』という名のアルバムは、もう1枚存在しています (United Artists UAL 4025/UAS 5025)。同じくデトロイト出身のミュージシャンでつくった作品ですが、こちらにはサド(トランペット)とエルヴィン(ドラムス)のジョーンズ兄弟が参加しています(長兄のハンク(ピアノ)は不参加)。

 

"Motor City Scene"
(Bethlehem BCP 6056)

Donald Byrd (trumpet)
Pepper Adams (baritone sax) except #1
Tommy Flanagan (piano)
Kenny Burrell (guitar) except #1
Paul Chambers (bass)
Louis Hayes (drums)

Recoreded in NYC; 1960

[Tracks] 
01. Stardust (music: Hoagy Carmichael / words: Mitchell Parish)
02. Philson (music: Pepper Adams)
03. Trio (music: Erroll Garner)
04. Libeccio (music: Pepper Adams)
05. Bitty Ditty (music: Thad Jones)

[Links: Donald Byrd]
Donald Byrd Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Tommy Flanagan]
Tommy Flanagan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Kenny Burrell]
KENNY BURRELL collection (by Furuike Akira)
[Links: Louis Hayes]
Louis Hayes (Official Website)

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posted by ユキヒロ at 10:56| Comment(0) | TrackBack(0) | Bethlehem | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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