
訃報です。ジャッキー・マクリーンが亡くなりました。1931年5月17日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。2006年3月31日、コネティカット州ハートフォードの自宅で死去。享年73歳。
月並みといえば、あまりに月並みなセレクションですが、泣きのマクリーンの葬送曲は、『レフト・アローン
不世出の歌手ビリー・ホリディの死後、彼女の最晩年を伴奏者としてすごしたマル・ウォルドロンが哀悼の意を込めて録音した、というのが定説になっていますが、どうやらこれは、でっちあげの美談のようです。
ビリーが亡くなったのは、1959年7月17日。このアルバムの録音日は、1959年2月24日ですから(発売元の東芝 EMI のサイトにもわざわざ録音日が明記されているので、おそらく間違いないでしょう)、実に5か月も前に収録されていたわけです。今回この記事を書くまで、私もまったく知りませんでした。
マル作曲、ビリー作詞の〈レフト・アローン〉は、ビリーの死とは関係なく録音されたまま放置されていた。そこに、ビリーの死というニュースが飛び込んできた。そこで、急遽マルのインタビューを追加収録(#6)して、ビリーの追悼盤としてリリースされた。事実はおそらく、こんな感じだったのでしょう。
かなり興ざめな話です。でも、逆にいうと、ビリーの死という悲しみなしに、マクリーンはあれだけむせび泣き、マルはあれだけ重く沈んだ演奏をしたわけです。これって、よく考えると、すごくないですか?
このアルバム、本当はマルのピアノ・トリオ作として取り上げようと思っていたんです。〈レフト・アローン〉ばかりが注目されますが、実はそれ以外の4曲にこそ、黒い情念マルの本質がある。〈キャット・ウォーク〉のどうしようもない暗さ。〈ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ〉の絶望的な深み。〈マイナー・パルセーション〉の執拗なモールス信号。異常に力強い低音がボディブローのようにじわじわ効いてくる。聞き終えた後、こんなに気持ちが沈む作品もそうはありません。
でもね、やっぱりマクリーンのむせび泣きに参ってしまうんです。アルトが泣いています。涙がとめどなくあふれています。ジャッキーさん、ごめんよ。生きている間にあなたの特集やっておけばよかった。ご冥福を祈ります。
Mal Waldron "Left Alone"
(Bethlehem BCP 6045)
Jackie McLean (alto sax) #1
Mal Waldron (piano)
Julian Euell (bass)
Al Dreares (drums)
Recorded in NYC; February 24, 1959
[Tracks]
01. Left Alone (music: Mal Waldron / words: Billie Holiday)
02. Cat Walk (music: Mal Waldron)
03. You Don't Know What Love Is (music: Gene DePaul / words: Don Raye)
04. Minor Pulsation (music: Mal Waldron)
05. Airegin (music: Sonny Rollins)
06. The Way He Remembers Billie Holiday
[Links: Jackie McLean]
BLUESNIK (by masaki nakano)
ジャズの酒蔵
Jackie McLean Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Mal Waldron]
Mal Waldron Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Mal Waldron Recordings (@ Miles Ahead)
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