2007年03月05日

『ジ・アライヴァル・オブ・ヴィクター・フェルドマン』

feldman_thearrival.jpg

マイルスに楽曲を持ち逃げされた(笑)ヴィクター・フェルドマン。
本名、Victor Stanley Feldman。
1934年4月7日、ロンドン北郊エッジウェア生まれのイギリス人。
1987年5月12日、カリフォルニア州ロサンジェルスで死去。

ジャズ界にはいわゆる「早熟の天才」がゴロゴロいますが、彼の怪童ぶりは、なかでも1、2を争うのではないでしょうか。プロとしてのキャリアを歩みはじめたのは弱冠7歳! 10歳のときにはグレン・ミラーのバンドのドラマーに抜擢されます。

初リーダー作を吹きこんだのは14歳のとき。このときはまだドラマーに専念していますが、その後数年でヴァイブとピアノの腕も磨いたフェルドマンは、50年代半ばからウディ・ハーマン・ハードに参加。57年にアメリカに移住して、カリフォルニアを拠点に主にスタジオ・ミュージシャンとして多忙な日々を送ります。

ジ・アライヴァル・オブ・ビクター・フェルドマン』は、アメリカ西海岸に「漂着(笑)」したフェルドマンが コンテンポラリー・レーベルに残したアルバムで、ウェスト・コースト時代のスコット・ラファロの参加がうれしい。というか、ラファロ聴きたさに買い求める人が多いのでは?

ラファロというと、エヴァンスとのインタープレイがあまりにも有名ですが、クリアなのにぶっとい低音をブイブイいわせる4ビートのラファロもまた、すばらしい。ほとんどカヴァーされることはない、マイルスの〈サーペンツ・ティース(ヘビの毒牙)〉(『コレクターズ・アイテムズ』に収録)から、私の耳はラファロのウォーキング・ベースに釘付けです。

フェルドマンのヴァイブは、残響があまりなくキレで勝負するタイプ。ドラマー出身なだけあって、リズミカルに手がよく動きます。〈フラミンゴ〉などのゆったりとしたスタンダードも演っていますが、ミルト・ジャクソンの「後を引く」音色に慣れていると、少し物足りなさを感じるかもしれません。

ヴァイブなら、ガレスピーの〈ビバップ〉のほうがおもしろい。ややキワモノ的な感じもしますが、このスピードは尋常じゃありません。というか、無理でしょ、ふつう。どうやっているのかわかりませんが、演奏を聴くかぎり、完全な千手観音状態です(笑)。しかし、このスピードで前のめりになるラファロっていったい、、、

フェルドマンのピアノを楽しむなら、ショパンの〈ワルツ〉をアレンジした典雅な2曲目か(ただし、途中でヴァイブに持ちかえます)、3曲目のオリジナル〈チェイシング・シャドウズ〉。意外にハード・ボイルドな面をのぞかせます。

 

"The Arrival Of Victor Feldman"
(Contemporary C 3549 / S 7549)

Victor Feldman (vibraharp, piano)
Scott LaFaro (bass)
Stan Levey (drums)

Produced by Lester Koenig
Recorded by Roy DuNann, Howard Hozler
Recorded at Contemporary's studio, LA; January 21, 22, 1958

[Tracks]
01. Serpent's Tooth Miles Davis (music)
02. Waltz Frederic Chopin (music)
03. Chasing Shadows Victor Feldman (music)
04. Flamingo Ted Grouya (music) / Edmund Anderson (lyrics)
05. S'posin' Paul Denniker (music) / Andy Razaf (lyrics)
06. Be-Bop Dizzy Gillespie (music)
07. There Is No Greater Love Isham Jones (music) / Marty Symes (lyrics)
08. Too Blue Victor Feldman (music)
09. Minor Lament Victor Feldman (music)
10. Satin Doll Duke Ellington, Billy Strayhorn (music) / Johnny Mercer (lyrics)

[Links: Victor Feldman]
Victor Feldman Discography (@ British Modern Jazz)
[Links: Scott LaFaro]
Scott LaFaro: Beacon for Jazz Bassists (by Charles A. Ralston)
Scott LaFaro Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Stan Levey]
Stan Levey "The Original Original" DVD

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2006年10月20日

『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』

pepper_meetsryhthmsection.jpg Art Pepper - Art Pepper Meets the Rhythm Section

重量級のテナーのあとは、軽やかなアルトといきましょう。『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』は、西海岸のスター、アート・ペッパーがマイルスのリズム・セクションを迎えて同じく西海岸のコンテンポラリー・レーベルに残した1枚です。

この記事を書くために、50年代のペッパーを久しぶりに聴きましたが、やっぱりいいですね。小鳥のさえずりのような軽やかな味わいは、この時期のペッパーしかもちえない代物です。男らしいロリンズのテナーを聴いたあとでは、なおさらです。とくに、フッと息をぬく瞬間のふわりとした感じ。この羽毛のようなやわらかさは、男が吹いていることを忘れるくらい、うっとりします。すばらしい!

どれも息をのむほど素敵な演奏ですが、〈ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ〉は、やっぱりはずせません。ニューヨークのため息(笑)ヘレン・メリル盤と並ぶ、名演です。シングルトーンで聴かせるガーランド以下、リズム・セクションも絶好調。日頃、マイルスの下で抑圧(?)されていた彼らが、かの地ではスターのような待遇を受けた、その喜びが演奏にあふれているかのようです。

そして、ペッパーのアルトを楽しむなら、彼のオリジナル、自伝のタイトルにもなった〈ストレート・ライフ〉。スピードをものともせず、どこまでも軽やかに飛翔するペッパー。この人、やっぱり天才だわ!!!

唯一残念なのは、私の持っている OJC の CD では、左右のスピーカーからペッパーとリズム隊が別々に聴こえてくることです(ほかの CD はどうですか?)。東のヴァン・ゲルダーと並び称される西海岸を代表する録音エンジニア、ロイ・デュナンの音はとてもクリアで、ペッパーの軽やかな魅力をあますところなく伝えていると思うのですが、いかんせん、意識が右に行ったり左に行ったりで、落ち着かないこと、このうえない。ステレオ録音導入期の名残なのかもしれませんが、これなら、ペッパーが真ん中にすっくと立つモノラル録音のほうがいいのかもしれません。

 

"Art Pepper Meets The Rhythm Section"
(Contemporary 3532)

Art Pepper (alto sax)
Red Garland (piano)
Paul Chambers (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Produced by Lester Koenig
Recorded by Roy DuNann
Recorded at Contemporary's Studio, LA; January 19, 1957

[Tracks] Art Pepper - Art Pepper Meets the Rhythm Section
01. You'd Be So Nice To Come Home To Cole Porter (music and lyrics)
02. Red Pepper Blues Red Garland (music)
03. Imagination Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
04. Waltz Me Blues Art Pepper, Paul Chambers (music)
05. Straight Life Art Pepper (music)
06. Jazz Me Blues Tom Delaney (music)
07. Tin Tin Deo Chano Pozo (music)
08. Star Eyes Gene DePaul, Don Raye (music and lyrics)
09. Birk's Works Dizzy Gillespie (music)

[Links: Art Pepper]
The Art Of Pepper
Art Pepper Discography Project (@ Jazz Discography Project
[Links: Red Garland]
Red Garland の世界 (by GAKO)
Red Garland Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Philly Joe Jones]
Philly Joe Jones Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年08月21日

フィニアス・ニューボーン Jr.『ア・ワールド・オブ・ピアノ』

aworldofpiano.jpg

アメリカ南部メンフィス育ちのフィニアスは、東海岸のニューヨークに出て認められ、1956年にアトランティックに初リーダー作、『ヒア・イズ・フィニアス』を吹き込みます。その後、メジャーレーベルの RCA から極甘のソフト路線のアルバムを何枚かリリースしてお茶を濁しますが、西海岸のコンテンポラリー・レーベルのオーナー、レスター・ケーニッヒに見初められたのが61年のこと。フィニアスはこのレーベルに迎えられて、はじめてその才能を全面的に開花させます。58年に『ウィ・スリー』を残していますが、あれは例外中の例外です。

レスターは、フィニアスのことがえらく気に入ったようで、彼の移籍第1弾『ア・ワールド・オブ・ピアノ』を録音するために、最高のリズム・セクションを用意します。前半の4曲はマイルス・デイヴィス・クインテットのポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズ、後半の4曲はキャノンボール・アダレイ・クインテットのサム・ジョーンズとルイ・ヘイズとくれば、もうこれ以上の人選は考えられないでしょう。フィニアスは、そんなレスターの期待に見事にこたえます。これまでの鬱憤を晴らすかのような快演につぐ快演。鍵盤のはしからはしまで弾きこなす、ゴージャスで華のあるピアノです。

選曲のよさも特筆ものです。パーカーの〈シェリル〉、ガレスピーの〈マンテカ〉、ストレイホーンの〈ラッシュ・ライフ〉、ブラウニーの〈ダフード〉、ロリンズの〈オレオ〉、ホレス・シルヴァーの〈ジューシー・ルーシー〉などなど、ジャズメン・オリジナルのてんこ盛り。しかも、超有名曲ばかりでないところがまた渋いです。パーカーの〈シェリル〉なんかは、フィニアスのこのアルバムの印象しかありません。同じコンテンポラリー系ピアニストのハンプトン・ホーズやローランド・ハナも演ってますが、彼らの頭にあったのは間違いなくフィニアスの演奏だったはずです。

どれも見事な演奏で甲乙つけがたいのですが、横綱級の有名人にまじってひっそりと配置されたミスター・ウォーキング・ベース、リロイ・ヴィネガーの小品〈フォー・カール〉なども味わいがあっていいですね。これは58年にこの世を去ったピアニスト、カール・パーキンスに捧げられたワルツです。絢爛豪華な大技が魅力のフィニアスですが、小技もきっちり決めてくれます。

 

Phineas Newborn, Jr. "A World Of Piano"
(Contemporary C 3600 / S 7600)

Phineas Newborn, Jr. (piano)
Paul Chambers (bass) #1-4
Sam Jones (bass) #5-8
Philly Joe Jones (drums) #1-4
Louis Hayes (drums) #5-8

Produced by Lester Koenig
Recorded by Howard Holzer, Roy DuNann
Recorded at Contemporary's Studio, LA; October 16, 1961

[Tracks]
01. Cheryl (music: Charlie Parker)
02. Manteca (music: Dizzy Gillespie, Chano Pozo)
03. Lush Life (music: Billy Strayhorn)
04. Daahoud (music: Clifford Brown)
05. Oleo (music: Sonny Rollins)
06. Juicy Lucy (music: Horace Silver)
07. For Carl (music: Leroy Vinnegar)
08. Cabu (music: Roland Alexander)

[Links: Phineas Newborn, Jr.]
Phineas Newborn Jr. Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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posted by ユキヒロ at 02:36| Comment(0) | TrackBack(0) | Contemporary | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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