
セロニアス・モンクはとっつきにくいといわれます。彼の和声は調子っぱずれに聞こえます。ミスタッチ? それとも、たんなるヘタくそ? 幼子がはじめてピアノに触れたときのようなもどかしさが、モンクのピアノにはあります。
でも、このまどろっこしさは一度ハマると抜け出せません。モンクの音選びはたしかに妙ですが、フリージャズを通過してきた耳には、きわめて「ふつう」に聞こえるのも事実です。
モンクのユニークな個性を正当に評価したのは、スティーヴ・レイシーやセシル・テイラーといったフリージャズ系の連中が多かったわけですが、リズムの制約からフリーになったものをフリージャズと呼ぶなら、モンク自身は、フリージャズに接近したことは一度もありません。あくまでオーソドックスなリズムの上に、独特の和声感覚で音を置いていく。
そう、まさに音を「置く」んです。メロディーラインを流暢に「弾く」のではなく、一つ一つ切り離された音たちを飛び石のように置いていく感覚。モンクのピアノ奏法はパーカッシヴ(打楽器的)と称されますが、同系列のデューク・エリントンやセシル・テイラーが文字どおり鍵盤を「叩きつける」のと比べると、モンクのそれは、もっとやさしい。「置く」というほうが当たっている気がします。
モンクのユニークさを知るには、彼のソロを聞くに限ります。いっさいの装飾を排したソロ・ピアノだからこそ、モンクの個性が際立つわけです。そして、その個性は意外と「わかりやすい」。モンクには、モンクなりの流儀がある。その流儀は、一部の人とは相容れないものかもしれませんが、いったんモンクのワールドに入ってしまえば、とても自然で、耳障りな感じを覚えることはありません。
モンクは、別に奇をてらってその音を選んだわけじゃない。モンクの頭のなかでは、その音が必然なのです。彼のソロ・ピアノを聞いていると、そのことがよくわかる。そして、難解に思われていた彼の音楽が、実は親しみにあふれた音楽であることに気づくのです。
フランスのヴォーグに残された『ソロ・オン・ヴォーグ
"Thelonious Monk"
(Vogue 500 104)
Thelonious Monk (piano)
Produced by Henri Renaud
Recorded in Paris; June 7, 1954
[Tracks]
01. 'Round About Midnight (music: Thelonious Monk)
02. Evidence (music: Thelonious Monk)
03. Smoke Gets in Your Eyes (music: Thelonious Monk)
04. Well, You Needn't (music: Thelonious Monk)
05. Reflections (music: Thelonious Monk)
06. Wee See (music: Thelonious Monk)
07. Eronel (music: Thelonious Monk)
08. Off Minor (music: Thelonious Monk)
09. Hackensack (music: Thelonious Monk)
[Links: Thelonious Monk]
THE MONK ZONE: The Official Thelonious Sphere Monk Website
The Thelonious Monk Website
Thelonious Monk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
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