2006年05月01日

セロニアス・モンク『ソロ・オン・ヴォーグ』

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セロニアス・モンクはとっつきにくいといわれます。彼の和声は調子っぱずれに聞こえます。ミスタッチ? それとも、たんなるヘタくそ? 幼子がはじめてピアノに触れたときのようなもどかしさが、モンクのピアノにはあります。

でも、このまどろっこしさは一度ハマると抜け出せません。モンクの音選びはたしかに妙ですが、フリージャズを通過してきた耳には、きわめて「ふつう」に聞こえるのも事実です。

モンクのユニークな個性を正当に評価したのは、スティーヴ・レイシーやセシル・テイラーといったフリージャズ系の連中が多かったわけですが、リズムの制約からフリーになったものをフリージャズと呼ぶなら、モンク自身は、フリージャズに接近したことは一度もありません。あくまでオーソドックスなリズムの上に、独特の和声感覚で音を置いていく。

そう、まさに音を「置く」んです。メロディーラインを流暢に「弾く」のではなく、一つ一つ切り離された音たちを飛び石のように置いていく感覚。モンクのピアノ奏法はパーカッシヴ(打楽器的)と称されますが、同系列のデューク・エリントンやセシル・テイラーが文字どおり鍵盤を「叩きつける」のと比べると、モンクのそれは、もっとやさしい。「置く」というほうが当たっている気がします。

モンクのユニークさを知るには、彼のソロを聞くに限ります。いっさいの装飾を排したソロ・ピアノだからこそ、モンクの個性が際立つわけです。そして、その個性は意外と「わかりやすい」。モンクには、モンクなりの流儀がある。その流儀は、一部の人とは相容れないものかもしれませんが、いったんモンクのワールドに入ってしまえば、とても自然で、耳障りな感じを覚えることはありません。

モンクは、別に奇をてらってその音を選んだわけじゃない。モンクの頭のなかでは、その音が必然なのです。彼のソロ・ピアノを聞いていると、そのことがよくわかる。そして、難解に思われていた彼の音楽が、実は親しみにあふれた音楽であることに気づくのです。

フランスのヴォーグに残された『ソロ・オン・ヴォーグ』は、1954年6月7日に録音されたモンク初のソロ・アルバムです。ここには、普段着のモンクがいます。緊張で研ぎすまされたモンクもいいですが、リラックスしたモンクもまた、楽しいものです。モンクはつねに帽子を手放さなかったといいますが、ベースボール・キャップをかぶったバップの高僧(モンクには「修道士、僧侶」という意味がある)のおかしみを楽しんでください。きっとモンクが好きになります。

 

"Thelonious Monk"
(Vogue 500 104)

Thelonious Monk (piano)

Produced by Henri Renaud
Recorded in Paris; June 7, 1954

[Tracks]
01. 'Round About Midnight (music: Thelonious Monk)
02. Evidence (music: Thelonious Monk)
03. Smoke Gets in Your Eyes (music: Thelonious Monk)
04. Well, You Needn't (music: Thelonious Monk)
05. Reflections (music: Thelonious Monk)
06. Wee See (music: Thelonious Monk)
07. Eronel (music: Thelonious Monk)
08. Off Minor (music: Thelonious Monk)
09. Hackensack (music: Thelonious Monk)

[Links: Thelonious Monk]
THE MONK ZONE: The Official Thelonious Sphere Monk Website
The Thelonious Monk Website
Thelonious Monk Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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posted by ユキヒロ at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | Vogue | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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