2007年02月18日

デューク・ジョーダン『フライト・トゥ・デンマーク』

dukejordan_flighttodenmark.jpg デューク・ジョーダン - Flight to Denmark

昨日、品川の IMAX シアターで映画『ディープ・シー』を観てきました。海に棲む生き物たちの生態をまとめただけの作品なのですが、これが実にすばらしい! 3Dで観る珊瑚礁やクラゲの美しさといったら。巨大ヒトデとホタテ貝の壮絶なるデッドヒート(笑)、ウミガメに群がる熱帯魚たち(甲羅についた海藻を食べている)、暗黒の海で暗躍する巨大イカの驚くべき捕食シーンなどなど、まさに「手に取る」ようにくり広げられるリアルな映像は、ナマの水族館でも味わえないようなド迫力。上映時間は40分ほどで大人1300円、子供800円ですが、この値段なら水族館に行くより安いでしょ。イルカ・ショーより楽しめること請け合いです。超オススメ!

久しぶりに感激した映画だったので、「海」をキーワードに手持ちのCDをひっくり返してみたのですが、ありません。本当に見事にないのです。天高く飛翔する「バード」という圧倒的な存在のためか、「空」をイメージさせるアルバムはいくつもあるのですが、「海」「海底」「珊瑚礁」「南国リゾート」をダイレクトに感じさせるアルバムは思いつきませんでした。どなたか、そんなアルバムを知りませんか?(エロール・ガーナーの『コンサート・バイ・ザ・シー』の陽気なノリは、美しく、驚きにみちた海底のイメージにそぐわないので除外しました)

アルバム単位では該当作が思いつかなかったのですが、曲単位なら、ありました。〈ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン〉。ビング・クロスビーとフレッド・アステアが共演したミュージカル映画『ブルー・スカイ』(1946年)のためにアーヴィング・バーリンが書いたラヴ・ソングで、あなたへの想いは「海よりも深く、天よりも高い」と歌い上げます。そういう意味では、「海」とはほとんど関係ないのですが、それはよしとしましょう(笑)。

日本人好みのいぶし銀のピアニスト、デューク・ジョーダン。1922年4月1日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。2006年8月8日、デンマークの首都コペンハーゲンで死去。1973年録音のスティープルチェイス盤『フライト・トゥ・デンマーク』は、シーンから取り残され、60年代のほとんどを棒に振ったジョーダンが(一時引退してタクシー運転手をやっていたなんて話もあります)北欧に渡り、11年ぶりに録音した起死回生の1作で、訥々とした響きがなんともいえない味わいを醸し出しています。

問題の〈ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン〉は、アナログ時代のB面1曲目に登場します。古くは1947年にチャーリー・パーカーがダイヤル・レベールに録音していますが(『ストーリー・オン・ダイアル Vol. 2』などに収録)、このときのピアノがなんと、デューク・ジョーダンその人なのでした。時を経て、年輪を重ねた彼が絞り出す一音、一音がいとおしい。感傷的な気分に浸れます。

オープニング・ナンバーは彼の代表曲〈ノー・プロブレム〉。別名〈危険な関係のブルース〉として知られるこの曲は、1960年の仏映画『危険な関係』(ロジェ・ヴァディム監督)のためにジョーダンが書いたテーマ曲でしたが、ドサクサに紛れて他人名義で登録されてしまい、ほとんど印税を手にできなかったという、いわくつきの曲です。

サントラ盤『危険な関係』にはジョーダン本人も登場しますが、メインはブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズで、どういうわけかこの曲のピアノも、ジョーダンではなくボビー・ティモンズが弾いています。

あれから14年、ジョーダンは因縁のこの曲を、地味ながらもしっかり地に足をつけて弾いていきます。ポクポクと木魚のリズムを刻むエド・シグペンのドラムに乗った淡白なピアノは、さながら墨絵のような枯れた味わいですが、だいじょうぶ、この演奏によって、あなたのピアノと楽曲は私の心にしっかりと刻み込まれました。もう他の人の作品などとはいわせませんから。

3曲目〈エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー〉。弾き語りの名手マット・デニスの代表曲です。デニスはもともと声量で勝負するタイプではなく、洒落たセンスで聴かせる人でしたが、このジョーダンによる演奏なんかもその典型です。こういう何気ない曲をさりげなく聴かせてくれるピアニストに惹かれるなあ。渋いけれど、いいです、ジョーダン。

そして、ジョーダン自作のとってもかわいらしいワルツ、〈グラッド・アイ・メット・パット〉。全体にどんよりとしたアルバムの中に咲く一輪の可憐な花。大好きです。



Duke Jordan "Flight To Denmark"
(SteepleChase SCS 1011)

Duke Jordan (piano)
Mads Vinding (bass)
Ed Thigpen (drums)

Produced by Nils Winther
Recorded by Ole Hansen
Recorded at Sound Track, Copenhagen; November 25 (#1, 3, 4, 6, 7), December 2 (#2, 5, 8), 1973

[Tracks] デューク・ジョーダン - Flight to Denmark
01. No Problem Duke Jordan (music)
02. Here's That Rainy Day Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
03. Everything Happens To Me Matt Dennis (music) / Tom Adair (lyrics)
04. Glad I Met Pat Duke Jordan (music)
05. How Deep Is The Ocean Irving Berlin (music and lyrics)
06. On Green Dolphin Street Bronislaw Kaper (music) / Ned Washington (lyrics)
07. If I Did - Would You? Duke Jordan (music)
08. Flight To Denmark Duke Jordan (music)

[Links: Duke Jordan]
Duke Jordan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Mads Vinding]
Mads Vinding Home Page (Offisial Webiste)
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen Online (Official Website)

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2006年06月16日

テテ・モントリュー『テテ・ア・テテ』

teteatete_montoliu.jpg Tete Montoliu - T!)te !) Tete

最後はグループH。スペイン対ウクライナ、4−0で予想外の大差がついてスペイン勝利。チュニジア対サウジアラビア、サウジがリードを守りきれず、ロスタイムに同点に追いつかれて、2−2のドロー。惜しい! スペインの4点目、すごかったですね。きっちり決めたフェルナンド・トレスもすごいけれど、自ら持ち込み、最後にヘッドでお膳立てしたプジョルもすごかった。だって彼、センターバックですよ。信じられません。

スペインはカタロニアが生んだ盲目の天才、テテ・モントリュー。1933年3月28日、スペイン・バルセロナ生まれ。1997年8月24日、スペイン・バルセロナで死去。

粒立ちのはっきりしたクリアな音色。抜群のスイング感と繊細でいながら力強いタッチ。どんなスピードでもゆるがぬテクニック。ジャズ・ピアニストに求められる能力のほとんどすべてを身につけたテテの演奏は、聞くものを圧倒します。そして、恍惚の彼方へと誘うのです。

実際、これほどジャズ・ピアノの楽しさを満喫させてくれる人はそうはいません。しかも実力が非常に安定しています。本当に非の打ち所がないのです。こういう完璧な人は、得てして聞いてもつまらなかったりするものですが、テテについては、それすらも当てはまらない。いつ聞いても、何を聞いても、楽しめます。もちろん推薦盤『テテ・ア・テテ』もすばらしい! ホント、類い稀なる存在です。

 

Tete Montoliu "Tete a Tete"
(SteepleChase SCS 1054)

Tete Montoliu (piano)
Niels-Henning Orsted Pedersen (bass) #1, 2, 5
Albert "Tootie" Heath (drums) #1, 2, 5

Produced by Nils Winther
Recorded by Emile Elsen
Recorded at Dureco Studio, Weesp, Netherlands; February 15 (#1, 5), 16 (#2), March 20 (#3, 4), 1976

[Tracks] Tete Montoliu - T!)te !) Tete
01. What's New Bob Haggart (music) / Johnny Burke (lyrics)
02. We'll Be Together Again Carl Fischer (music) / Frankie Laine (lyrics)
03. Scandia Skies Kenny Dorham (music)
04. Lush Life Billy Strayhorn (music and lyrics)
05. Catalan Suite Tete Montoliu (music)

[Links: Tete Montoliu]
Tete Montoliu Discography (by Agustin Perez)
Tete Montoliu (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)

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2005年05月31日

デクスター・ゴードン『バウンシン・ウィズ・デックス』

bouncinwithdex.jpg Dexter Gordon - Bouncin' With Dex

先週末、行きつけの美容室で1796年産(!)のラム酒なるものをいただきました。200年以上の「時」を経てきたその味わいは、この世のものとは思えないほどまろやかで、年代物のウイスキーやブランデーとはまた違った独特の香りに、私は完全に白旗状態。いやもう、ホント、参りました。至福の酒をありがとう!

長い時間をかけて熟成を待つ。効率優先ですぐに結果が求められる時代になってしまいましたが、人の成長には時間がかかります。その瞬間、その瞬間にはもてる力を全部出し切ったつもりでも、あとから振り返ると「ああ、自分はなんて小さかったんだろう」と思うこともしばしば。だからこそ、年輪を重ねた円熟の味わいに私は惹かれます。私がそういう年齢になってきたということもあるでしょう。10代には10代の、30代には30代の感受性というものがあるんだと思います。

バウンシン・ウィズ・デックス』は、デクスター・ゴードン52歳のときの作品です。デックスは相変わらず「バウンス(タテ揺れ、弾むこと)」して元気ですが、そこはそれ、角がとれて丸みを増した円熟のテナーが耳に心地よい刺激を与えてくれます。

共演するのは、バルセロナ出身の盲目のピアニスト、テテ・モントリューです。1933年3月28日、スペイン・バルセロナ生まれ。1997年8月24日、肺ガンのため死去。

バルセロナといえば、FC バルセロナリアル・マドリードの敵対関係でもわかるように、首都マドリードを中心とするスペイン政府とは仲が悪いので有名です。「私はスペイン人ではない、カタロニア人だ」というのが彼らの誇り。テテもことあるごとに故郷カタロニアを題材にした楽曲を発表しています。

そんなテテに、デックスは〈カタロニアン・ナイツ〉を贈っています。コペンハーゲンのジャズハウス・モンマルトルを根城にしていたデックスのバックを務めたのは、ケニー・ドリューとテテ・モントリューが多かったのですが、はっきりいって私は「テテ派」です。こればっかりは好きだからしょうがない。よく動く指、跳ねるような鍵盤さばき、ノリノリでご機嫌なピアノを聞いて彼を嫌いになる人はいないはず。

ちなみに、この作品は、ヨーロッパ時代のデックスを記録し続けたスティープルチェイス最後の録音です。デックスは翌76年に故郷アメリカに帰国します。

 

Dexter Gordon "Bouncin' With Dex"
(SteepleChase SCS 1060)

Dexter Gordon (tenor sax)
Tete Montoliu (piano)
Niels-Henning Orsted Pedersen (bass)
Billy Higgins (drums)

Produced by Nils Winther
Recorded by Freddy Hansson
Recorded in Copenhagen, Denmark; September 14, 1975

[Tracks] Dexter Gordon - Bouncin' With Dex
01. Billie's Bounce (music: Charlie Parker)
02. Easy Living (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
03. Benji's Bounce (music: Dexter Gordon)
04. Catalonian Nights (music: Dexter Gordon)
05. Four (music: Miles Davis)

[Links: Dexter Gordon]
Long Tall Dexter: デクスター・ゴードン特集 (@ Big-M's Jazz Page)
Dexter Gordon Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Tete Montoliu]
Tete Montoliu (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
Tete Montoliu Discography (@ www.JazzDiscography.com)

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