2005年07月07日

スタン・ゲッツ『ピュア・ゲッツ』

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スタン・ゲッツのコンコード・レーベル第2弾。ドラマーは前作と同じヴィクター・ルイス(曲によってビリー・ハート)、ピアノはジム・マクニーリー、ベースはマーク・ジョンソンという、当時のレギュラー・バンドによる録音です。『ピュア・ゲッツ』というタイトルからもわかるように、ゲッツはますます「純なるもの」へと回帰していきます。

ボサノヴァの大ヒットによってチヤホヤされた60年代。しかし、その後は一度ミリオンセラーを放った者の宿命がつきまといます。いい作品をつくっても売れない。そりゃそうです。ジャズ本来のマーケットはそんなに大きくないのですから。でも、レコード会社はそうは思わない。だから、せっせとコマーシャル路線のアルバムをつくるよう要求します。

そうして、ゲッツのふだんの音楽活動と、商品としてのアルバムに乖離が生じます。レギュラー・バンドでは、ゲイリー・バートン、チック・コリア、スタンリー・カウエル、ミロスラフ・ヴィトウスら、生きのいい若手を次々と迎え、ゲッツ自身もフレッシュな音楽を展開していたのに、それがなかなか商品として流通しない。大金と名声を手にしたにもかかわらず、自分のやりたいことができないもどかしさ。ゲッツはしだいに心の闇を抱えるようになります。

80年代になって、当時はまだマイナー・レーベルにすぎなかったコンコードと契約を交わしたのは、ゲッツ流の「ストレート・アヘッド回帰宣言」です。自分はまっとうなジャズで生きていくしかないという悟り。そして、ほんとうの自分らしさを取り戻した喜び。1991年に亡くなるまでの10年間、ゲッツは最後の、そして力強い炎を燃やし続けます。

1曲目の〈オン・ジ・アップ・アンド・アップ〉。あまりの若々しさに、出だしから圧倒されっぱなしです。ゲッツ、おそるべし。

マイルスゆかりの2曲、〈シッピン・アット・ベルズ〉(Bell's というのはハーレムにあったバーの名前。sip は「お酒などをチビチビ飲む」こと。パーカー時代のマイルスの作品です。ソニー・クラークの人気盤『クール・ストラッティン』にも収録)と、バド・パウエル作曲の〈テンパス・フュージット〉(『マイルス・デイヴィス Vol. 1』のバージョンが有名です)。ゲッツらしからぬ選曲ですが、これがまたいいんです。

何度か共演したエヴァンスの〈ヴェリー・アーリー〉も演っています。

 

Stan Getz "Pure Getz"
(Concord Jazz CJ 188)

Stan Getz (tenor sax)
Jim McNeely (piano)
Marc Johnson (bass)
Victor Lewis (drums) #1, 2, 4, 7
Billy Hart (drums) #3, 5, 6)

Produced by Carl E. Jefferson
Recorded by Phil Edwards, Ed Trabanco
Recorded at Coast Recorders Studios, SF; Jan 29, 1982 (#1, 2, 4, 7)
Recorded at Soundmixers, NYC; Feb 5, 1982 (#3, 5, 6)

[Tracks]
01. On The Up And Up (music: Jim McNeely)
02. Blood Count (music: Billy Strayhorn)
03. Very Early (music: Bill Evans)
04. Sippin' At Bell's (music: Miles Davis)
05. I Wish I Knew (music: Harry Warren / words: Mack Gordon)
06. Come Rain Or Come Shine (music: Harold Arlen / words: Johnny Mercer)
07. Tempus Fugit (music: Bud Powell)

[Links: Stan Getz]
Stan Getz Discography (by Riccardo Di Filippo, Luigi Maulucci & Nicola Rascio)
Stan Getz Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jim McNeely]
Jim McNeely's home page
[Links: Marc Johnson]
Marc Johnson (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)
[Links: Billy Hart]
Billy Hart Homepage (by Jeremy Jones)

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2005年07月06日

スタン・ゲッツ『ザ・ドルフィン』

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1970年代に吹き荒れたフュージョン旋風。王様ゲッツといえども、その影響と無縁ではいられませんでした。メジャー・レーベル CBS に残したいくつかのコマーシャルなアルバムに、その時代のゲッツの苦悩が刻まれています。しかし、80年代の幕開けとともにジャズは復活します。ゲッツもまた、活動の拠点をそれまでのニューヨークから西海岸に移し、新たにコンコードと専属契約を結ぶことで、メインストリーム・ジャズに帰ってきます。

ゲッツがイルカとたわむれる写真がまぶしい『ザ・ドルフィン』は、もう一度王道で勝負するぞ、という彼の意気込みが感じられる傑作です(コンコード第1弾)。あるべきところにあるべき人がおさまる感じ。思わず「お帰りなさい」と声をかけたくなるような、「しっくり感」がこの作品にはあります。ゲッツはやっぱりこうじゃなくちゃ。

そうした心境の変化には、旧友ルー・レヴィとの再会もいい影響をおよぼしたことでしょう。ゲッツとレヴィは、古くはウディ・ハーマンのセカンド・ハード時代からのつきあいで(1947年〜。クール時代の幕開けを告げた有名な〈アーリー・オータム〉が吹き込まれたのはこの時代です)、『ウェスト・コースト・ジャズ』、『アウォード・ウィナー』、『ザ・スティーマー』、『ゲッツ・ミーツ・マリガン』などなど、共演作も数多く残されています。変人ゲッツが珍しく素直に接した相手レヴィ。このアルバムに聞かれる解放感には、そんな2人の間柄も関係しているのかもしれません。

冒頭の〈ドルフィン〉。ボサノヴァ調のこの曲を、ゲッツは軽やかに料理してくれます。そうそう、そうなんです。この軽みこそ「ジャズ・ボッサ」にふさわしい。この1曲を聞いただけで、このアルバムの成功がわかろうというものです。

そして、ジョニー・マンデル作の2曲目〈ア・タイム・フォー・ラヴ〉。私はケイコ・リーの 3rd アルバム『ビューティフル・ラヴ』に収められた同曲が大好きで、この甘いメロディーを聞いただけでメロメロになってしまうのですが、ゲッツの演奏もすばらしい。スイートでいながらも甘いだけではない、大人の男を感じさせる名演です。このバラード解釈は、ゲッツ最後の名盤『ピープル・タイム』にも通じるものがあります。

 

Stan Getz "The Dolphin"
(Concord Jazz CJ 158)

Stan Getz (tenor sax)
Lou Levy (piano)
Monty Budwig (bass)
Victor Lewis (drums)

Produced by Carl E. Jefferson
Recorded by Phil Edwards
Recorded live at Keystone Korner, SF; May 10, 1981

[Tracks]
01. The Dolphin (music: Luiz Eca)
02. A Time For Love (music: Johnny Mandel / words: Paul Francis Webster)
03. Joy Spring (music: Clifford Brown)
04. My Old Flame (music: Arthur Johnston / words: Sam Coslow)
05. The Night Has A Thousand Eyes (music: Jerry Brainin / words: Buddy Bernier)
06. Close Enough For Love (music: Johnny Mandel / words: Paul Williams)

[Links: Stan Getz]
Stan Getz Discography (by Riccardo Di Filippo, Luigi Maulucci & Nicola Rascio)
Stan Getz Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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