2007年06月15日

ウェス・モンゴメリー『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』

adayinthelife.jpg 

アート・ペッパーの死をさかのぼること14年、今から39年前の1968年の今日、ウェス・モンゴメリーがこの世を去っています。本名、John Leslie Montgomery。1923年3月6日、インディアナ州インディアナポリス生まれ。1968年6月15日、インディアナ州インディアナポリスの自宅で死去。享年45歳。

ウェスはもともと狭心症を患っていて、ニトログリセリンの錠剤を飲んでいたそうですが、亡くなる少し前にひどい頭痛に襲われてからは、これを飲まなくなったといいます。その結果の心臓麻痺。A&M のコマーシャル路線でポップスターの座にのぼりつめたウェスの命を奪ったのは、突然の発作でした。

ヴァーヴ時代の『ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド』(1965年12月録音)にはじまるウェスのコマーシャル路線は、プロデューサー、クリード・テイラーの移籍にともなって A&M に活躍の場を移し、そこで大輪の花を咲かせます。人呼んで「イージー・リスニング・ジャズ」。かろうじて「ジャズ」という言葉が入っていますが、アドリブなし、テーマ・メロディをオクターヴで奏でるだけのこれらの音楽は、もはや「ジャズ」ではありません。でも、それが何だというのが、正しいファンのありかたです(笑)。

1967年6月録音の A&M 移籍第1弾『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』。ウェス最大のヒット作で、ウェスの存命中に25万枚を売り、ビルボードのアルバム・チャートで32週連続トップを飾ったという怪物アルバムです。こういうポップ・アルバムに、ふつうのジャズの感覚を持ち込んではいけません。シリアスに聴こうとするから文句のひとつもいいたくなるわけで、BGM として、こんなに気持ちのよいアルバムも、そうあるもんじゃないでしょう?

商業的な成功を手に入れたウェスを取り巻く状況は、しかし、そう単純なものではなかったようです。ジャズ・ギターの歴史のなかでも屈指のインプロヴァイザーでありながら、アドリブをとらせてもらえない。高度なアドリブを封印したことで、レコードの売り上げが伸び、ジャズ界では絶対得られないほどの収入を手にした。古くからのファンや批評家からは酷評されますが、ファン層は逆に拡大して、桁違いに多くの人がウェスの音楽に耳を傾けるようになります。彼らはウェスにそもそもアドリブを求めない。レコードで聴いたとおりの音楽が「再現」されることを期待するわけです。だから、ライヴであっても、ウェスは思うとおりに演奏できなくなる。じわじわと首を絞められていくようです。

ウェスのイージー・リスニング路線は嫌いではありませんが、一方で、根っからのジャズ・ファンでもある私としては、ウェス本人がこの状況をどう思っていたか、気になります。エイドリアン・イングラム著『ウェス・モンゴメリー』(旧 JICC 出版局(現在は宝島社)刊。訳は小泉清人さん) には、ギタリスト仲間のバーニー・ケッセルのこんな発言が引かれています。

僕は客のよく入ったあるクラブにウェス・モンゴメリーが出演している時、彼と話したのを覚えている。彼は別にふてくされたふうではなく、醒めた様子でこんなことを言っていた。「ほら、この連中を見てごらんよ。みんな僕を聴きにきたんじゃない。僕がヒット・レコードの曲を演奏するのを見にきたんだよ。だって、僕が〈ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド〉の代わりにオリジナル曲やコルトレーンの〈ジャイアント・ステップス〉をやると、みんな退屈して、お喋りを始めるんだ。実際、連中は侮辱された気になるんだ。彼らは〈テキーラ〉を聴けば、あるパートを一緒に口ずさんで、友達に自分が知ってるってことを示せる。だからこそわざわざ六〇マイルも運転して来るってわけさ。もし、僕が去年より今年のほうがうまくなっているとしたら、連中はここにはいないはずだよ。みんな僕がレコードと同じように演奏するのを聴きにきているんだから。

さらに、ケッセルの発言です。

 ウェスは罠に陥ったと思うんだ。それは魅力的な罠でね。有名になれたし、お金も得られた。一連のレコーディングの結果として、家族のために、必要なものだけじゃなく、長いこと手に入れられなかったものまでいろいろと与えることができるようになった。だってそれまでは、金銭的に決して恵まれていなかったんだからね。だからウェスにとって、家族たちが欲しがるものを与えることができるというのは、とても楽しいことだったというわけさ。
 ウェスにとって一般大衆のために演奏することや彼らと会うことは楽しいことだったし、そんな自分の立場を心底喜んでいた。ある意味ではね。しかしその反面、みんながウェスを知るようになると、彼らは特定の条件下でしかウェスを受け入れてくれなくなった。(中略)彼らは〈ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド〉や〈テキーラ〉を演奏する時のウェスしか受け入れなかったんだ。他の曲ではダメだったんだ。(中略)そのことはウェスにとってちょっと悲しいことだったけど、だからといってやめようなどとは思わなかった。だって、いい暮らしができることが何と言っても嬉しかったんだから。


 

Wes Montgomery "A Day In The Life"
(A&M LP 2001 / SP 3001)

Wes Montgomery (guitar)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Grady Tate (drums)
Ray Barretto, Jack Jennings, Joe Wohletz (purcussion)

George Marge, Romeo Penque, Joe Soldo, Stan Webb (bass flute)
Stan Webb, Phil Bodner (woodwinds)
Ray Alonge (French horn)
Julius Brand, Peter Buonconsiglio, Mac Ceppos, Lewis Eley, Harry Glickman, Harry Katzman, Leo Kruczek, Gene Orloff, Tosha Samaroff, Sylvan Shulman, Harry Urbont, Jack Zayde (violin)
Harold Coletta, Emanuel Vardi (viola)
Charles McCracken, Alan Shulman (celli)
Margaret Ross (harp)

Arranged and Conducted by Don Sebesky

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs; June 6 (#1, 4), 7 (#2, 3, 5, 6, 8, 10), 26 (#7, 9), 1967

[Tracks] 
01. A Day In The Life John Lennon, Paul McCartney (music and lyrics)
02. Watch What Happens Michel Legrand (music) / Norman Gimbel (lyrics)
03. When A Man Loves A Woman Lewis, Wright
04. California Nights Hamlisch, Liebling
05. Angel Wes Montgomery (music)
06. Eleanor Rigby John Lennon, Paul McCartney (music and lyrics)
07. Willow Weep For Me Ann Ronell (music and lyrics)
08. Windy Ruthann Friedman (music)
09. Trust In Me Wever, Schwartz, Ager
10. The Joker Anthony Newley, Leslie Bricusse (music and lyrics)

[Links: Wes Montgomery]
Wes Montgomery Fan Club
Wes Montgomery Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Wes Montgomery Discography (by Ed Fila)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Ron Carter (Official Website)

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2005年02月19日

オーネット・コールマン『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』

dancinginyourhead.jpg

オーネット・コールマンほど、「食わず嫌い」ならぬ「聞かず嫌い」されているアーティストも珍しいのではないでしょうか。1930年3月9日、テキサス州フォートワース生まれ。

オーネットというと、必ず出てくるのが「フリージャズの創始者」という言葉。でも、こんな言葉にダマされてはいけません。少なくとも70年代以降のオーネットの音楽は、味も素っ気もないフリージャズとは無関係だし、聞く人を寄せつけない陰気な硬派路線とも違います。もっとオープンで、一度聞いたら間違いなく病みつきになる、中毒性の高い音楽を演っています。

かくいう私も、つい数年前までオーネットのよさがまったくわかりませんでした。そんな私を開眼させてくれたのは、裏渋谷の名店Lo-d(ローディ)のオーナーTさんです。彼は『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』を取り出して、「とにかく聞いてみな。サイコーだから」とすすめてくれました。

一聴して「なんじゃこりゃ!」。得体の知れないリズムとハーモニーの饗宴。うまく言葉にできないのがもどかしいんですが、はっきりいって、こんなにオモロイ音楽はそうそうあるもんじゃありません。っていうか、オーネット以外、誰がこんな音楽を創ることができるのでしょう!

というわけで、オーネット未体験者はぜひこのアルバムから。間違っても、『ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン Vol. 1』に『同 Vol. 2』、『ジャズ来るべきもの』、『フリー・ジャズ』などから入ってはいけません。雑誌や本では真っ先にこれらのアルバムが紹介されますが、これらはジャズの歴史的見地から見て重要な作品というだけで、けっしてオモロイ音楽ではありません。

 

Ornette Coleman "Dancing In Your Head"
(A&M Horizon SP 722)

Ornette Coleman (alto sax)
Charles Ellerbee (guitar) #1, 2
Bern Nix (guitar) #1, 2
Jamaaladeen Tacuma (bass) #1, 2
Ronald Shannon Jackson (drums) #1, 2
Bob Burford (percussion) #1, 2
Master Musicians of Jajouka (ghaita, stringed instruments, percussion) #3
Robert Palmer (clarinet) #3

Produced by Ornette Coleman
Recorded by Francis Mianney (#1, 2), Steve Goldstein (#3)
Recorded at Barclay Studios, Paris; December 28, 1975 (#1, 2)
Recorded in Jajouka, Morocco; January 1973 (#3)

[Tracks]
01. Theme From A Symphony (Variation One) (music: Ornette Coleman)
02. Theme From A Symphony (Variation Two) (music: Ornette Coleman)
03. Midnight Sunrise (music: Ornette Coleman)

[Links: Ornette Coleman]
Ornette Coleman (Official Website)
Ornette Coleman (@ Masuma's Website)
Ornette Coleman Discography (by Akio Kamiyama)
Ornette Coleman Discograohy Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jamaaladeen Tacuma]
Jamaaladeen Tacuma Discography (@ Free Jazz Research)
[Links: Ronald Shannon]
Ronald Shannon Jackson (Official Website)

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2004年10月25日

スティング『ブリング・オン・ザ・ナイト』

bringonthenight.jpg

ポリスを解散したスティング
自身のバンドを組むに当たって呼び寄せたのが、
ブランフォード・マルサリスやケニー・カークランドを
はじめとする腕っこきのジャズメンだったというのは、
ふだん日陰者(?)のジャズファンにとっては
ちょっとまぶしい出来事でした(笑)。

このライブ盤『ブリング・オン・ザ・ナイト』は、
今やすっかり癒し系アーティストとなってしまった
スティングが最もジャズに接近したときの記録であり、
現代サックス界の大御所ブランフォード・マルサリスが
最も輝いていたころの記録でもあります。

じっくり作り込んだ感のあるソロ・デビュー盤
ブルー・タートルの夢
と比べると、
ライブということもあって、
このアルバムはポジティヴな躍動感に満ちています。
スティングはめちゃカッコイイし、
こんなに気持ちよく吹きまくるブランフォードというのも、
めったに聞けるものではありません。
ノリノリのケニーもサイコーです。
純粋なジャズとはいえませんが、やはりいいものはいい。
おすすめです。

ちなみに、今、出回っている CD のジャケットは
違うものが使われているようですが、
個人的には断然元のほう(ここで表示しているもの)が好きです。
私はこちらの CD を持っているので、
探せば入手できるかもしれません。続きを読む
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