2006年04月18日

ジョン・ルイス『グランド・エンカウンター』

grandencounter.jpg

ピアニスト、ジョン・ルイスの個性を知るなら、トリオやソロなど、少人数編成の作品がいいのですが、ポツポツと途切れがちに単音を重ねていく彼の奏法は、あまり小編成だと、間が保たないというか、けっこうつらいものがあります(笑)。

後年、ルイスは『エヴォリューション』というソロ・ピアノ作品を吹きこんでいますが、彼が一聴してわかるスタイリストであることは認めるにしても、それと聞いて楽しいどうかはまた別な話で、う〜ん、なんというか、どうしようもなく手持ちぶさたを感じてしまうんですね。

そこらへんはルイス本人も気づいていたようで、彼はピアノ・トリオ作品をほとんど残していません。ピアニストが自己名義の作品にギターを入れることはまれですが(同じコード楽器だから「かぶる」。要は自分が目立たない!)、音の間隙を埋めるために、ギターを必要としたルイスの気持ちはわからないでもありません。

グランド・エンカウンター』と題されたこの作品。副題には、「2度東、3度西」とあります(1956年2月10日録音)。

東海岸から MJQ のルイスとパーシー・ヒースの2人が、西海岸のパシフィック・ジャズ(アルバムリストはこちら)勢からテナーのビル・パーキンス、ギターのジム・ホール、ドラムのチコ・ハミルトンの3人が参加して、「大いなる邂逅」をはたしたという意味なのですが、この出会いは「大成功」をおさめます。

MJQ はイースト・コーストの黒人コンボとはいっても、アレンジ重視のクラシカルな表現に秀でたグループですから、もともとウェスト・コースト派の白人との親和性が高いわけです。しかも、ドラマーが、同じく室内楽風の演奏を得意としていたチコ・ハミルトンですから、これで悪かろうはずがありません。

でも、このアルバムの真の主役はビル・パーキンスなんですね。〈ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー〉の出だし、ルイスの訥々としたピアノに続けて入ってくるかすれ気味のテナーの色っぽさといったら。フッという息づかいまで聞こえてきそうな質感と、丸みをおびたやわらかい音色に、もうクラクラです。アルトのポール・デスモンドにテナーを吹かせたらこんな音になるんじゃないかと思ってみたりして(笑)。

〈イージー・リヴィング〉もしびれますねえ。とりたてて派手な演出があるわけでもなく、なんてことはない演奏なのですが、実にいいんです。完全にパーキンスの独壇場です。クラクラのメロメロです。私もこんなふうに口説かれたいです(笑)。



John Lewis "Grand Encounter"
(Pacific Jazz PJ 1217)

Bill Perkins (tenor sax)
John Lewis (piano)
Jim Hall (guitar)
Percy Heath (bass)
Chico Hamilton (drums)

Produced by Richard Bock
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded in LA; February 10, 1956

[Tracks]
01. Love Me Or Leave Me (music: Walter Donaldson / words: Gus Kahn)
02. I Can't Get Started (music: Vernon Duke / words: Ira Gershwin)
03. Easy Living (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
04. 2 Degrees East, 3 Degrees West (music: John Lewis)
05. Skylark (music: Hoagy Carmichael / words: Johnny Mercer)
06. Almost Like Being In Love (music: Frederick Loewe / words: Alan Jay Lerner)

[Links: John Lewis]
Jazclass: about John Lewis (by Michael Furstner)
[Links: Jim Hall]
Jim Hall (Official Website)
Jim Hall Maniacs (by 益満妙:エキマンタエ)
ジム・ホール アルバム蒐集 (by kawagu)
[Links: Chico Hamilton]
Chico Hamilton (Official Website)

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2005年11月01日

チェット・ベイカー『チェット・ベイカー・シングス』

chetbakersings2.jpg Chet Baker - Chet Baker Sings

チェット・ベイカー・シングス』。チェット・ベイカーの歌は耳にまとわりつきます。声量はないし、耳目をそばだてるような技巧があるわけでもない。ひっそりとささやくように歌うだけなのですが、それが妙に心にひっかかる。じんわりと効いてくるんですね。

たとえば、チェットの十八番〈マイ・ファニー・ヴァレンタイン〉。彼はミュージシャン人生を通じてこの曲を歌い続けましたが、男だか女だかよくわからない声でささやかれると、もうダメです。心がザワザワと粟立ってきます。私は男好きではありませんが、これはキテます。こんな声で言い寄られたら、断れないかもしれません(笑)。ホントに耳元で歌っているんじゃないかと錯覚するくらいのこの親密な雰囲気は、いったいどこからくるのでしょうか。

ミュートをつけないチェットのペットは、彼の歌声と驚くほどマッチしています。注意して聞かないと、入れ替わったのに気づかないくらいです。かすれた音色で、やさしく、色っぽく迫ります。

ところで、ジャケットが2種類あるのは、どうしてでしょう? ディスコグラフィーによると、『チェット・ベイカー・シングス』は2回発売されていて(World Pacific PJ 1222 と World Pacific WP 1826。パシフィック・ジャズは一時期ワールド・パシフィックと名乗っていた。アルバム・リストはこちら)、それぞれ微妙に収録曲が違うようなので、もしかしたら、それぞれの元ジャケットなのかもしれません(情報求む)

後日談:
上で(情報求む)と書いたところ、and i am dumb のクマキチさんが詳細なコメントを寄せてくれました。気になる方は下をクリックして、コメントを読んでください。クマキチさん、本当にありがとうございます!

 

"Chet Baker Sings"
(Pacific Jazz PJ 1222)

Chet Baker (vocal, trumpet)
Russ Freeman (piano, celeste)
James Bond (bass) #1-6
Carson Smith (bass) #7-14
Peter Littman (drums) #1, 2, 5
Lawrence Marable (drums) #3, 4, 6
Bob Neal (drums) #7-14

Produced by Richard Bock
Recorded at Capitol Studios, LA; February 15, 1954 (#7-14)
Recorded at the Forum Theatre, LA; July 23 (#1, 2, 5), 30 (#3, 4, 6) 1956

[Tracks] Chet Baker - Chet Baker Sings
01. That Old Feeling (music: Sammy Fain / words: Lew Brown)
02. It's Always You (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
03. Like Someone In Love (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
04. My Ideal (music: Richard A. Whiting, Newell Chase / words: Leo Robin)
05. I've Never Been In Love Before (music+words: Frank Loesser)
06. My Buddy (music: Walter Donaldson / words: Gus Kahn)
07. But Not For Me (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
08. Time After Time (music: Jule Styne / words: Sammy Cahn)
09. I Get Along Without You Very Well (music: Hoagy Carmichael / words: Jane Brown Thompson)
10. My Funny Valentine (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
11. There'll Never Be Another You (music: Harry Warren / words: Mack Gordon)
12. The Thrill Is Gone (music: Ray Henderson / words: Lew Brown)
13. I Fall In Love Too Easily (music: Jule Styne / words: Sammy)
14. Look For The Silver Lining (music: Jerome Kern / words: Buddy G. DeSylva)

[Links: Chet Baker]
Chet Baker Lost And Found
Jazz Wereld & Chet Baker (by Rene Leemans)
Chet Baker Tribute
Chet Baker Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年10月30日

『カルテット:ラス・フリーマン&チェット・ベイカー』

quartetchetbaker.jpg

黒人優勢のジャズ・トランペット界において、一人気を吐いた白人トランぺッター、チェット・ベイカー(本名は、Chesney Henry Baker Jr.)。1929年12月23日、オクラホマ州イェール生まれ。1988年5月13日、オランダ・アムステルダムにてホテルの窓から転落死。

チェット・ベイカーといえば、その甘いマスクとヘタウマなヴォーカルで知られていますが、トランペットを操る技術も一流だということを証明したのが、『チェット・ベイカー=ラス・フリーマン・カルテット』です。

チェットの歌声はよく「中性的なヴォーカル」といわれますが、彼の吹くミュート・トランペットの音は、意外なほどマッシヴです(ペットの花の部分にお椀をかぶせるヤツです。音が針のように細く、鋭利になります。マイルスがミュートをつけて独特の世界を築き上げたことは有名です)。私はふだん iPod でジャズを聞いていますが、この『カルテット』は、ほかのアルバムよりボリュームを下げないと脳天にチリチリ響いて、耳が痛くなります。

1曲目〈ラヴ・ネスト〉。愛の巣ですね。でも、この愛の巣はカラッとしていて、開けっぴろげです(笑)。チェットのミュートは非常によく鳴っています。ちょっと鳴りすぎかもしれない。ピアノのラス・フリーマンはちょっとクセのある人で、独特の陰影がありますが、ここでの演奏は小気味いい。ミスター・ウォーキング・ベース、リロイ・ヴィネガーも好調です。

2曲目、ラス・フリーマンのオリジナル〈ファン・タン〉。そうそう、このイントロこそ、ラス・フリーマンらしい。微妙な音使いが、下手をすると耳障りになりそうなギリギリのラインでとどまっている感じ。陽気な西海岸にあるまじき、陰鬱な響きです。

続く〈夏のスケッチ〉も、暗いですねえ。カリフォルニアの夏のまぶしさではなく、灰色の夏の夕暮れ。カラフルな海辺のパラソルとは違って、墨絵のような味わいです。このアルバムは、2曲を除いてラス・フリーマンの曲で固められているので、実質的なリーダーは彼なのでしょう。清く正しいウエスト・コーストのイメージを裏切る重苦しさ。でも、そこにからむチェットのペットがまた格別にいいんです。

ラス・フリーマンの個性を知るには、ストレイホーンの名曲〈ラッシュ・ライフ〉をどうぞ。モンクやマルが原曲を解体していくようなスリルが味わえます。これを楽しめるかどうか。チェット・ベイカーのワン・ホーン作品だからといって、うかつに手を出すと完全に裏切られます。実はかなりハードな作品なんです、この『カルテット』は。

 

"Quatet: Russ Freeman And Chet Baker"
(Pacific Jazz 1232)

Chet Baker (trumpet)
Russ Freeman (piano)
Leroy Vinnegar (bass)
Shelly Manne (drums)

Produced by Richard Bock
Recorded in LA; November 6, 1956

[Tracks]
01. Love Nest (music: Lewis A. Hirsch / words: Otto Harbach)
02. Fan Tan (music: Russ Freeman)
03. Summer Sketch (music: Russ Freeman)
04. An Afternoon At Home (music: Russ Freeman)
05. Say When (music: Russ Freeman)
06. Lush Life (music: Billy Strayhorn)
07. Amblin' (music: Russ Freeman)
08. Hugo Hurwhey (music: Russ Freeman)

[Links: Chet Baker]
Chet Baker Lost And Found
Jazz Wereld & Chet Baker (by Rene Leemans)
Chet Baker Tribute
Chet Baker Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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