

今から43年前の今日、エリック・ドルフィーが旅先のベルリンで亡くなりました。本名、Eric Allan Dolphy。1928年6月20日、カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。1964年6月29日、当時西ドイツのベルリンで客死。享年36歳。
チャールズ・ミンガス率いるジャズ・ワークショップが欧州ツアーに出発したのが1964年4月。18日間にわたる強行軍(こちらの記事を参照)を終え、ミンガス一行は帰国、ドルフィーはひとりパリに残ります。5月は主に、サンジャルマン・デ・プレの Chat Qui Peche(シャキペシュ。魚を釣る猫という意味で、セーヌ川沿いのパリでいちばん狭い通りの名前に由来)というクラブで演奏していたようです(ドルフィー研究家としても知られるマシュマロ・レコードの上不三雄さんが思い出のジャズクラブ/ジャズ喫茶その1:Jazz Club “Le Chat Qui Peche”という記事を書いています)。
5月29日にオランダに移動。6月2日にヒルベルサムでラジオ番組用にスタジオ・ライヴを録音、この音源が有名な『ラスト・デイト
『ラスト・デイト』のあまりの孤高ぶり、しかもアルバムの最後に本人の謎めいたセリフが挿入されるという遺言効果もあって、あたかもドルフィーの死は必然だったかのような錯覚に陥りますが、実際はまったく予期せぬ急死だったようで、ドルフィーは死の1週間前に新しいアルト・サックスを購入していて(パリのセルマー社にシリアル番号が残っているとは上不さんの言です。「ジャズ批評115 エリック・ドルフィー」に収録)、ベルリンの後はコペンハーゲンのカフェ・モンマルトルに出演する予定も入っていたそうです。
有名な「When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again.(音楽を聴き、終った後、それは空中に消えてしまい、二度と捕まえることはできない)」というセリフにしても、その場で録音されたものではなく、4月に行われたインタビューからの抜粋で、ドルフィーの死とはもともと無関係の発言でした(それでも、そこに何らかの意味を見出してしまうのがファン心理ってものですが)。
ドルフィーはアルト、フルート、バスクラの3つの楽器でそれぞれ独自の世界を描き出しましたが、この『ラスト・デイト』には3つの楽器による演奏が2曲ずつ収められています。バスクラの破壊力に脳天をぶち割られる〈エピストロフィー〉、どういうコンテキストの中で音を紡いでいくのか、依って立つ根拠が見えないがゆえに、得体の知れない不安感に襲われる〈ザ・マドリグ・スピークス、ザ・パンサー・ウォークス〉(別名〈マンドレイク〉)。どれもすばらしい演奏ですが、極めつきはやはり、フルートで奏でられる〈ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ〉。こわもてのアヴァンギャルドだけがドルフィーではありません。ハッとするようなやさしさ。その昔、自宅の庭で小鳥たちとの会話を楽しむようにフルートを練習したというドルフィーならではの、小鳥のさえずりです。
ジャケットが2種類あるのは、オランダ・フィリップス系のフォンタナの原盤(右の輸入盤)と米マーキュリー系ライムライト盤(左の邦盤)があるからです。
Eric Dolphy "Last Date"
(Fontana 681 008 ZL)
(Limelight LM 82013 / LS 86013)
Eric Dolphy (alto sax) #3, 6 (flute) #2, 5 (bass clarinet) #1, 4
Misja Mengelberg (piano)
Jacques Schols (bass)
Han Bennink (drums)
Recorded at VARA studio, Hilversum, Amsterdam, Holland; June 2, 1964
[Tracks]

01. Epistrophy Thelonious Monk (music)
02. South Street Exit Eric Dolphy (music)
03. The Madrig Speaks, The Panther Walks (aka. Mandrake) Eric Dolphy (music)
04. Hypochristmutreefuzz Misha Mengelberg (music)
05. You Don't Know What Love Is Gene DePaul, Don Raye (music and lyrics)
06. Miss Ann Eric Dolphy (music)
[Links: Eric Dolphy]
Eric Dolphy (by Alan Saul)
Site Dolphy (by TAKAGI Masaru)
Making Eric Dolphy's Complete Discography (by Naohiko Hino)
Eric Dolphy Discography (by ANTAIOS)
Eric Dolphy Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Misja Mengelberg]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Jacques Schols]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Han Bennink]
Han Bennink (Official Website)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
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