2006年03月17日

ブッカー・リトル『アウト・フロント』

outfront.jpg Booker Little - Out Front

ブッカー・リトルとエリック・ドルフィーの初共演は、ニュー・ジャズ盤『ファー・クライ』ですが(1960年12月21日録音)、当時、マックス・ローチやチャールズ・ミンガスら「物言う黒人たち」に作品発表の場を提供していたキャンディド・レーベルには、彼らの共演盤が何枚か残されています。

ボストン生まれの評論家ナット・ヘントフは、白人でありながら、黒人の公民権運動に好意的で、ブラック・ミュージックとしてのジャズに深い理解を示した希有な存在でしたが、その彼が主宰したインディーズ・レーベルがキャンディドでした(アルバムリストはこちら)。

リトルの数少ないリーダー作の1つ、『アウト・フロント』も、ナット・ヘントフの手によって歴史に刻まれました(1961年3月17日、4月4日録音)。

ここには、ドルフィーとローチという、リトルのあまりに短い音楽人生に決定的な影響を与えた2人がそろっていて、それだけでも私なんかは感涙ものですが、23歳の誕生日を迎えたばかりの若者とは思えない絶望的なまでの「暗さ」と「哀しさ」に、わが耳を疑います。

私の拙い言葉ではとても伝えきれないと思うので、このアルバムについては、ナット・ヘントフ自身の言葉を借りましょう。その昔「一番好きなアルバムは?」と聞かれて、彼はこう答えたそうです。

沢山のレコードを列挙しました。たとえば、Mingus とか Cecil Taylor のものとかね。だけど一枚だけと言われたので、Booker Little を挙げましたね。若くして亡くなりましたが、Clifford Brown に次ぐ才能の持ち主でした。叙情詩的なソロの展開、独創性、奏法の精度、新鮮さ、そういったことを全て兼ね備えていた天才でした。私は、「OUT FRONT」というアルバムの中にそれらの彼の魅力をすべて収録しました。やはり、あのアルバムが私の BEST ということになりますね。

(Paul Morris によるインタビューより引用。訳は大西正則さん。出典はこちら

 

Booker Little "Out Front"
(Candid CJM 8027 / CJS 9027)

Booker Little (trumpet)
Julian Priester (trombone)
Eric Dolphy (alto sax, bass clarinet, flute)
Don Friedman (piano)
Art Davis (bass)
Max Roach (drums)

Produced by Nat Hentoff
Recorded by Bob d'Orleans
Recorded at Nola Penthouse Sound Studios, NYC; March 17, April 4, 1961

[Tracks] Booker Little - Out Front
01. We Speak (music: Booker Little)
02. Strength And Sanity (music: Booker Little)
03. Quiet, Please (music: Booker Little)
04. Moods In Free Time (music: Booker Little)
05. Man Of Words (music: Booker Little)
06. Hazy Hues (music: Booker Little)
07. A New Day (music: Booker Little)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Eric Dolphy]
Outward Bound! (by Alan Saul)
Making Eric Dolphy's Complete Discography (by Naohiko Hino)
Eric Dolphy Collection (by ANTAIOS)
Eric Dolphy Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Don Friedman]
Don Friedman, Jazz Pianist (Official Site?)
Don Friedman Discography (by Jonathan Kutler)
[Links: Art Davis]
Dr. Art Davis, Bassist (Official Site)

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2006年03月16日

マックス・ローチ『ウィ・インシスト!』

weinsist.jpg Abbey Lincoln & Max Roach - We Insist!: Freedom Now Suite - EP

1960年は「アフリカの年」として知られています。残された最後の植民地アフリカ大陸では独立運動が激化し、コンゴ,ザイール,ナイジェリア、カメルーンなど、17か国の黒人国家がー挙に誕生したのがこの年です。アメリカに住む黒人たちが、自らのルーツであるアフリカの同胞たちの活躍に鼓舞され、失われた誇りを取り戻す契機となったことは想像に難くありません。

ひるがえって自分たちの国を見てみると、1863年の「奴隷解放宣言」から100年近く経った当時でも、白人による黒人差別は厳として残っていました。アメリカの誇る自由と平等は白人の間でだけ成り立つ理想であり、黒人は公共の場でも職場でも不利な立場に取り残されました。経済的にも弱者だった黒人にとって、残された手段はそう多くはなかったはずです。たまりにたまった彼らの不満が爆発するまで、それほど長い年月は必要としませんでした。

1955年のローザ・パークス逮捕事件に端を発する公民権運動は、全米各地の黒人組織を巻き込みながら、大きなうねりとなって社会全体を揺り動かしていきます。ジャズ・ミュージシャンとて例外ではなく、黒人同胞を駆り立てるような扇動的な音楽や政治的な発言が目立ってきたのがこの時代でした。

1960年に収録された『ウィ・インシスト!』は、マックス・ローチが自ら差別と闘う「闘士」であることを高らかに宣言した作品です。俗にプロテスト・ミュージックと呼ばれていますが、ローチにいわせると、これはプロテスト(抗議)ではなく、ステイトメント(宣言)だといいます。抗議というのは、支配者があってはじめて成り立つものだからというのが、その理由だそうです。

と、ここまで長々と書いてきましたが、私はこの『ウィ・インシスト!』の行き方には、どうしても共感することができません。心が動かされないというか、私のハートに直接訴えかけてくるものが感じられないのです。

黒人のおかれた境遇に無関心なわけではありません。この時期、黒人としては何かせずにいられなかった、というのは、私でも想像できます。そして、ミュージシャンなら音楽を通じて自分の立場を表明するのが自然だった、というのもわかります。でも、と思ってしまうのです。でも、やっぱりこれは閉じた音楽、クローズドな世界だな、と。

私はふだん高校生に小論文を教えているから、人一倍そう感じるのかもしれませんが、他人に向かって書かれた文章と、そうでないものは、一目で区別がつくのです。自分の頭の中でこねくりまわした文章というのは、他人に訴えかける力に欠けます。閉じられた空間で自己完結しているだけで、外に向かって開かれていないからです。

そんなわけで、生徒たちには、誰かの顔を思い浮かべて、その人をどうしたら説得できるか、あれこれ想像しながら論文を書きなさい、と指導しています。文章といえどもコミュニケーションの手段ですから、通じなければ意味がありません。通じるためには、特定の誰かを想定して書くのが一番いい。その人を「うん」といわせるためにはどんな手があるか、そういう具体的なところまで落とし込んでやると、文章が見違えるのです。非常にわかりやすい、ていねいな論文が書けるようになります。

以上は余談ですが、『ウィ・インシスト!』は非常に限られた人に向けられた音楽だと思います。少なくとも、2000年代に生きる私のための音楽ではない。感情移入できないものを感じます。みなさんにとってはいかがですか? 私は愁いを帯びたリトルのペットだけに耳を傾けています。

そうそう、このアルバムで耳障りな歌声(?)を聞かせているアビー・リンカーンは、ジミー・スコット(男性ですが)に次いでビリー・ホリデイの声質に近いと個人的には思っていますが、みなさんはどう思いますか?

 

Max Roach "We Insist! : Freedom Now Suite"
(Candid CJM 8002 / CJS 9002)

Booker Little (trumpet)
Julian Priester (trombone)
Walter Benton (tenor sax)
Coleman Hawkins (tenor sax) #2
James Schenck (bass)
Max Roach (drums)
Michael Olatunji (conga)
Raymond Mantilla (percussion)
Thomas Du Vall (percussion)
Abbey Lincoln (vocal)

Recorded at Nola Penthouse Studios, NYC; August 31 (#2, 5), September 6 (#1, 3, 4), 1960

[Tracks] Abbey Lincoln & Max Roach - We Insist!: Freedom Now Suite - EP
01. Tears For Johannesburg (music: Max Roach)
02. Driva' Man (music: Max Roach / words: Oscar Brown Jr.)
03. Triptych: Prayer 〜 Protest 〜 Peace (music: Max Roach)
04. All Africa (music: Max Roach / words: Oscar Brown Jr.)
05. Freedom Day (music: Max Roach / words: Oscar Brown Jr.)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Abbey Lincoln]
Abbey Lincoln (Aminata Moseka) Discography (by Michael Fitzgerald)

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