2007年03月05日

『ヴィクター・フェルドマン・オン・ヴァイブス』

feldman_onvibes.jpg Vic Feldman - Vic Feldman On Vibes

ピアノとヴァイブの二刀流というと、エディ・コスタやウェスの弟バディ・モンゴメリーが有名ですが、いずれもヴァイブの決定打と呼べるアルバムは思いつきません。二兎を追う者は一兎も得ずともいいますが、どうしても器用貧乏のイメージが先行して、これ一本にかける凄みが伝わってこない。

でも、よくよく考えてみると、ホーン奏者では、アルトとフルート(ドルフィーやシャンク、グライスなど)、テナーとソプラノ(コルトレーンやショーター、ズートなど)をはじめ、持ち替え組が大勢いるわけで、なかにはラサーン・ローランド・カークのように、複数の楽器をあやつること自体が個性となっている人もいます。

だから、彼らにヴァイブの決定打がないのは、彼ら自身の問題というよりも、ヴァイブという楽器に固有の問題じゃないかと疑っているわけです(その証拠に、コスタには、その強烈なピアノをあますところなく伝える傑作『ハウス・オブ・ブルー・ライツ』があります)。

ヴァイブ(ヴィブラフォン)というのは鉄琴の一種で、鍵盤の下にそれぞれ長さの異なる共鳴管がついています。この共鳴管がふるえる(ヴィブラート)ことで、この楽器特有の余韻が伝わるわけです。共鳴管の上部にはふたの役目をする電動のファンが回っていて、ペダル操作でこのふたを開け閉めすることによって残響を調節します。マレット(ばち)の硬さや大きさによっても、音色が違ってくるそうです。

MJQ のミルト・ジャクソンはソフトで大きめのマレットを使い、共鳴管をよくふるわせることで、あの「丸み」を表現しました。一方、4本マレットのパイオニア、ゲイリー・バートンはほとんどヴィブラートを効かせず、硬質でメタリックな音を出します。この2人に、ジャズ・ヴァイブの生みの親ライオネル・ハンプトンを加えれば、ほとんどこの楽器の歴史はおしまいです。それだけ、個性を発揮しにくい楽器なんじゃないかと思います。

モード盤『ヴィクター・フェルドマン・オン・ヴァイブス』は、表題どおり、フェルドマンがヴァイブに専念したアルバムです。ヴァイブ入りのカルテットを基本に、2曲のみ、トロンボーンのフランク・ロソリーノとブラウン&ローチ・クインテットでおなじみのテナー奏者、ハロルド・ランドが加わります。

しかし、どうなんでしょう、このアルバム。演奏は悪くない。ピアノのカール・パーキンスも嫌いじゃないし、才人フェルドマンですから、下手なわけはない。でも、どこか食い足りないんです。

1曲あたり3分程度という演奏時間の短さも関係しているとは思いますが、全体にあっさりしすぎて印象に残りません。ヘッドフォンで意識を集中して聴いているつもりでも、いつのまにか BGM になってしまう、そんな感じです。

ジャケットのおじさんは氷で冷やしたシャンパンを持っています。さらによく見ると、下のほうに「champagne music for cats who don't drink」の文字が。「飲まない奴らにシャンパン音楽を」くらいの意味でしょうが、「シャンパン音楽」とは恐れ入りました。

その昔、ミシェル・プラティニ(現・欧州サッカー連盟会長)率いる華麗な仏サッカーを称して「シャンパン・サッカー」といいましたが、そうですか、「シャンパン音楽」ですか。そりゃ、彼らにヘヴィなサウンドを求めるほうが間違ってる(笑)。

というわけで、最後まで聴き通すのはいささか骨が折れるのですが、実は、いちばん最後にお楽しみが待っています。シャンパンならぬハード・リキュールのコクが味わえる2管入りの〈イヴニング・イン・パリ〉。これって、もろハードバップじゃないですか。しかも、かなり上質の。

たとえばベニー・ゴルソンあたりが作曲しそうなウェスト・コースト派らしからぬカッコよさです。欲をいえば、もっと沈みこむ感じがほしいところですが、西海岸の陽気でここまでハードに迫れればよしとすべきでしょう。英国紳士(笑)フェルドマン、侮りがたし。

 

"Vic Feldman On Vibes"
(Mode LP 120)

Frank Rosolino (trombone)
Harold Land (tenor sax)
Victor Feldman (vibes)
Carl Perkins (piano)
Leroy Vinnegar (bass)
Stan Levey (drums)

Produced by Red Clyde
Recorded by Bones Howe
Recorded at Radio Recorders, Hollywood, CA; September 1957

[Tracks] Vic Feldman - Vic Feldman On Vibes
01. Fidelius Victor Feldman (music)
02. Just Squeeze Me Duke Ellington (music) / Lee Gaines (lyrics)
03. Sweet And Lovely Gus Arnheim, Harry Tobias, Jules Lemare (music and lyrics)
04. Bass Reflex Victor Feldman (music)
05. Chart Of My Heart Bobby Newman (music)
06. Wilbert's Tune Victor Feldman (music)
07. Evening In Paris Victor Feldman (music)

[Links: Frank Rosolino]
Frank Rosolino (by Eugene E. Grissom)
Frank Rosolino (@ Jazz Masters)
Frank Rosolino Discography (by Rob Mesite)
[Links: Victor Feldman]
Victor Feldman Discography (@ British Modern Jazz)
[Links: Carl Perkins]
The Carl Perkins Discography (by Noal Cohen)
[Links: Stan Levey]
Stan Levey "The Original Original" DVD

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posted by ユキヒロ at 18:08| Comment(2) | TrackBack(0) | Mode | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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