2007年06月19日

『ラウンド・ミッドナイト』

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1983年の〈ロックイット〉の爆発的ヒット以来、グラミー賞の常連となったハービー・ハンコックですが、1986年には、アメリカ・エンタテインメント業界のもうひとつの栄冠を手にします。音楽監督をつとめ、みずからもキャストとして出演した映画『ラウンド・ミッドナイト』(原題 'Round Midnight。サントラ盤はこちら)でオスカーを獲得したのです(Best Music, Original Score)。流行りものをかぎとる独特の嗅覚から、つねに陽の当たる場所を歩み続けるハービーの「らしさ」は、こんなところからも感じられます。

考えてみれば、ハービーと映画音楽の関係は深いわけです。早くも1966年にミケランジェロ・アントニオーニ監督の『欲望』(原題 Blow-Up。サントラ盤はこちら)の音楽を担当し、73年には『ブラック・ミッション/反逆のエージェント』(原題 The Spook Who Sat by the Door。日本劇場未公開。ヴィデオあり)、74年にはチャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』(原題 Death Wish。サントラ盤はこちら)と続きます。83年『ジョ・ジョ・ダンサー』(原題 Jo Jo Dancer, Your Life Is Calling。劇場未公開。ヴィデオあり)、84年『ソルジャー・ストーリー』(原題 A Soldier's Story)ときて、86年に『ラウンド〜』でオスカー受賞。88年はB級アクション映画『アクション・ジャクソン/大都会最前線』(原題 Action Jackson。ヴィデオあり)、デニス・ホッパー監督の『カラーズ/天使の消えた街』(原題 Colors。サントラ盤はこちら)の2本立て、89年はエディー・マーフィー監督主演の『ハーレム・ナイト』(原題 Harlem Night)、91年の『Livin' Large!』(劇場未公開? ヴィデオあり。サントラ盤はこちら)と続きます。

というわけで、映画『ラウンド・ミッドナイト』です。デクスター・ゴードン扮する飄々とした主人公デイル・ターナーの印象が強烈ですが(デックスはアカデミー賞主演男優部門にノミネートされた)、チョイ役で登場するミュージシャンの顔ぶれもすごいです。セリフのあったハービーやボビー・ハッチャーソンは言うに及ばず、フレディ、ウェイン、ロン、トニーの V.S.O.P. の面々に、ジョン・マクラフリン、シダー・ウォルトン、マッズ・ヴィンディング、ビリー・ヒギンズといった人たちが、演奏シーンを盛り上げます。こりゃ聴かずにはいられまい! 

上のリストを見る限り、ハービーのかかわる映画は必ずしも良作ばかりではなさそうですが、これは例外。50年代のパリを舞台に、故郷アメリカを遠く離れ、酒とドラッグで落ちぶれた大物サックス奏者を、貧乏デザイナーが献身的に支える感動的な物語。2人の絆は徐々に深まっていきますが、死を前にしてデイルがとった行動とは、、、必見です。



"'Round Midnight" (1986)

Produced by Irwin Winkler
Directed by Bertrand Tavernier
Screenplay by David Rayfiel, Bertrand Tavernier
Music by Herbie Hancock

Cast:
Dexter Gordon (as Dale Turner)
Francois Cluzet (as Francis Borler)
Herbie Hancock (as Eddie Wayne)
Bobby Hutcherson (as Ace)

Freddie Hubbard (trumpet)
Palle Mikkelborg (trumpet)
Wayne Shorter (tenor and soprano sax)
Cedar Walton (piano)
John McLaughlin (guitar)
Pierre Michelot (bass)
Ron Carter (bass)
Mads Vinding (bass)
Tony Williams (drums)
Billy Higgins (drum)

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2006年12月12日

『真夏の夜のジャズ』

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うかつにも昨晩はじめて知ったのですが、訃報です。去る11月23日、ハスキー・ヴォイスと器楽唱法で鳴らしたジャズ・シンガー、アニタ・オディがロサンジェルスの病院で亡くなりました。享年87歳。

本名、Anita Belle Colton O'Day。1919年10月19日、イリノイ州シカゴ生まれ。40年代前半はジーン・クルーパ楽団、スタン・ケントン楽団などで脚光を浴びますが、すぐにドラッグにはまり、数年を棒にふります。そんな彼女が復活したのは、ヴァーヴ(当初はクレフ)のプロデューサー、ノーマン・グランツと出会ってからで、彼女の代表作は50年代半ばのヴァーヴ録音に集中しています。

アニタ・オディというと思い出すのが、映画『真夏の夜のジャズ』。1958年7月、ロードアイランド州ニューポートで開催された第5回ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルの模様をさまざまな角度から切り取ったドキュメンタリー・フィルムです。

セロニアス・モンク、ソニー・スティット、ジョージ・シアリング、ダイナ・ワシントン、ジュリー・マリガン、ルイ・アームストロングなど錚々たるメンツが登場しますが、いちばん印象に残っているのは、貫禄のサッチモでも、伝説のマヘリア・ジャクソンでも、若き日のエリック・ドルフィー(!)でもなく、ノースリーヴの黒のドレスに、白い羽をあしらった黒のハット姿で登場するアニタです。

はじめて彼女を観たとき、私は恋に落ちました(笑)。彼女は当時38歳。今の私よりも年上ですが、そんなことは関係ありません。ステージに立つアニタの一挙手一投足がいとおしい。たまらなく、キュートです。けっして美人ではないのですが、そこがまたいいんです。

アニタは、はっきりいって声量がありません。音程もあやしい。でも、それを補ってあまりある魅惑のハスキー・ヴォイスに、どんな早口でも楽々と歌いこなす抜群のテクニックがあります。途中、彼女の横顔のアップが続く場面がありますが、あれを観ていると、喉の奥のほうから外に向けて徐々に音が広がっていく様子などがよくわかります。声をひとつ出すのでも、いろいろと出し方が変わるわけです。

彼女の当たり曲〈スウィート・ジョージア・ブラウン〉に、早口で歌いまくる〈二人でお茶を〉。彼女の全盛期の姿は、永遠にフィルムに刻み込まれています。



Jazz on a Summer's Day
(1959 USA)

Produced and Directed by Bert Stern
Photographed by Bert Stern, Courtney Hesfela, Raymond Phelan
Edited by Aram Avakian
Creative Music Producer: George Wein
Musical Director: George Avakian

[Song List]
01. Train And The River [Jimmy Giuffre Three]
02. Blue Monk [Thelonious Monk Trio]
03. Blues [Sonny Stitt & Sal Salvador]
04. Sweet Georgia Brown [Anita O'Day]
05. Tea For Two [Anita O'Day]
06. Rondo [George Shearing Quintet]
07. All Of Me [Dinah Washington]
08. As Catch Can [Gerry Mulligan Quartet]
09. I Ain't Mad At You [Big Maybelle Smith]
10. Sweet Little Sixteen [Chuck Berry]
11. Blue Sands [Chico Hamilton Quintet]
12. Lazy River [Louis Armstrong]
13. Tiger Rag [Louis Armstrong]
14. Rockin' Chair [Louis Armstrong & Jack Teagarden]
15. When The Saints Go Marching In [Louis Armstrong]
16. Shout All Over [Mahelia Jackson]
17. Didn't It Rain [Mahelia Jackson]
18. Lord's Prayer [Mahelia Jackson]

[Links: Anita O'Day]
Anita O'Day (Official Website)

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2006年10月18日

iBook G4 でモバイル

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左が通信モジュール W-SIM、右が WS002IN(通称 DD)

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DD を iBook に挿したところ(USB 接続)

Mac ユーザーのみなさん、外出先での通信はどうしてますか? iBook や MacBook には AirMac が標準搭載されていて、自宅での無線 LAN 構築はとてもカンタンで便利ですが(うちでは、USEN の光ファイバーに AirMac Express を接続して、ネットからプリンタまでワイヤレスで接続してます)、唯一の泣き所は、モバイル。通信カードを挿そうにも、そもそもPC カードスロットがついてないし、手持ちのケータイも Mac 対応してなかったりして、外出先でのネット接続には、公衆無線 LAN のアクセスポイントを探すしかありませんでした。

最近は、外に Mac を持ち出す機会もふえ、どうしようかなあと思っていたのですが、USB 接続できるデータ通信カードというものがあることを知り(遅い???)思わず買っちゃいました、ウィルコムの DD/WS002IN

この DD、いってみれば USB 接続のカードスロットみたいなもので、主役は、なかに挿し込む W-SIM という通信モジュールなんですね。この W-SIM は、SIM STYLE の製品ならなんでも挿し込めるので、いったん手に入れれば、話題の W-ZERO3 にも使えるそうです(といっても、私は W-ZERO3 は買わないだろうけど)。

どういうわけか、WILLCOM STORE では在庫切れになっていたので、私は APPLE STORE で購入しました。まず、WS002IN(外側ね)だけが届くので、同封されている W-SIM の申込書をファックス(郵送)すると、数日中にウィルコムから W-SIM が送られてきます。設定はカンタン、インストーラーの指示どおりにすれば OK です。今お使いのプロバイダが AIR-EDGE に対応してなかったとしても、だいじょうぶです。PRIN というウィルコムのネット接続サービスがあるので、それを選択すれば、即つながります。

通信速度は、そうですね、4Xパケット方式なので、光ファイバーと比べるとかなりストレスは感じますが、外出先でのメールチェック、ブログの更新くらいなら問題ないと思います。

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2005年10月21日

キースのソロ公演@東京芸術劇場

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行ってきました、キース・ジャレットのソロ・コンサート。はじめての生キース体験です。やっぱり一度は見ておかないと、後悔しそうな気がしたので。ペトちゃんを見ないでしまったことが、いまだに心に引っかかってます。

場所は池袋にある東京芸術劇場大ホール。20日の夜19時からの公演です。いっしょに連れていった娘(小1です)もはじめてのコンサートとあって、はじまるまでは「まだか」「まだか」と興奮していましたが、場内が暗くなり、静かな演奏がはじまったとたん、スヤスヤと夢の中へと旅立ちました(笑)。3階席の上のほうで見にくかったのと、適度な空調に心地よい音楽とくれば、それもまたやむなしかと。

演目なんですが、最近のソロ・コンサートの流れにそったショートピースの連なりでした。1つの演奏が次の発端になる「連作小説」というよりも、1つ1つが独立した「短編集」のおもむきですね。

で、かわいそうだったのは娘で、1曲1曲が終わるたびに(かなり短い曲も多かった)、周囲の拍手にビクッと反応して目が覚めるわけです(笑)。

アンコールの1曲目で、あの『メロディー・アット・ナイト・ウィズ・ユー』の冒頭を飾った〈アイ・ラヴ・ユー・ポーギー〉が流れてきたとき、会場がふっと和らぐのがわかりました。拍手も起きました。キースからの粋なプレゼントですね。

ただ、自分も含めてこの曲にもっとも反応してしまった聴衆に、キースのおかれたむずかしい立場を垣間見た気がしました。キース本人としては、やっぱり本編の即興演奏に心血を注いでいる。アンコールというのは、孤独な創造活動を終えた後のオマケにすぎないわけです。もちろん、聴衆に対する感謝の気持ちがそうさせるのでしょうが、本編とは明らかに空気が違います。ピンと張りつめた緊張から解放されたくつろぎ、ひと仕事終えた達成感、無事にやり遂げた安堵感。そういうものが、リラックスした演奏につながるわけです。

でも、そこに聴衆がいちばん惹かれてしまう。わかりやすいからです。聞いていて安心できる。『メロディー・アット・ナイト〜』は癒しの音楽といわれていますが、たしかに、昨日聞いた〈ポーギー〉には心が洗われる思いがしました。やさしさやあたたかさがスーッと心に広がっていく感じ。難解な音楽を聞いた後だからこそ、よけいにそう感じたのかもしれません。

キースの求めているものと、聴衆の求めているもののギャップ。即興演奏家として探求を重ねるほど、ついていける聴衆の数は減り、ほんの余技として演奏したものが、人々の心に焼きついてしまう。う〜ん、これは辛いかも。

あと、今回の生キース初体験で発見したのは、私は短編集より初期のソロ・コンサートのような一大叙事詩を望んでいるということです。1つの演奏が1時間以上にわたるというのは、明らかに今の時代に逆行していますが、次はどんな方向に行くのかをドキドキしながら待っている期待感こそ、キースのソロ長編を聞く醍醐味ではないかと思ったのです。

最近のショートピース集にあまり感動できない理由は、このワクワク感が楽しめないからです。次に行く前に終わってしまう。今回のソロ公演は、前後の脈絡がほとんど感じられなかったため、よけいにそう思いました。ここまで作品として独立しているなら、いっそのこと、出来のよいものだけをピックアップして、それだけで1枚のCDにするのが制作者の良心というものじゃないでしょうか。なんでもコンプリートにCD化すればいいってものじゃないでしょう?
posted by ユキヒロ at 22:54| Comment(7) | TrackBack(2) | おまけ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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