2007年12月06日

ローランド・カーク『カーク・イン・コペンハーゲン』

kirkincopenhagen.jpg Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live

ローランド・カークの音楽には聴く者の心をわしづかみにして離さない強烈な地場があって、1曲聴くと次から次へと彼のアルバムを聴かずにはいられなくなります。何が飛び出すかわからない、何でもありのおもちゃ箱。
一度ラサーンの魅力にとり憑かれると、たいへんです。過激な言葉で聴衆を惑わすアジテーター、手がつけられない暴れん坊、その場にいる人を退屈させないエンタテナー、身体中に楽器をぶらさげた異様な見てくれ、超絶技巧をこれでもかと見せつけるテクニシャン、ブラック・ミュージックの歴史を体現した生き字引、全部いっしょくたにしたのがラサーンです。
ラサーニアンはそのすべてを受け止め、彼の肉声に共鳴し、そして不覚にも涙します(笑)。病みつきなんてナマやさしい表現ではたりません。それなしでは生きていられなくなるのが、ラサーンの音楽です。

カーク・イン・コペンハーゲン』は、デンマークの首都コペンハーゲンの有名なクラブ・モンマルトルにおける実況録音盤です。しゃべりも含めてラサーンを堪能するなら、ライヴにまさるものはない。それが実感できるアルバムです。
しかも、共演のピアノはスペインの至宝テテ・モントリューという、うれしいおまけつき。ふたりとも目が見えませんが、そんなことは微塵も感じさせない芸達者ぶりを見せつけます。

1963年の秋から冬にかけて、ラサーンはヨーロッパ各地をツアーでめぐります。ロンドンのロニー・スコッツでの1か月ロングラン公演にはじまり、デンマーク、スウェーデン、フランス、イタリア、ドイツ、オランダ、ベルギーへと続く旅。行く先々でラサーンは熱狂的に受け入れられ、クラブの入場記録を塗り替えるなど、連日大入り満員の大盛況だったといいます。
そのウワサを聞きつけたクインシー・ジョーンズ(当時マーキュリー・レコードのプロデューサーをしていました)が、急遽ライブ・レコーディングを企画し、実現したのがこのアルバムです。

1曲目〈ナロウ・ボレロ〉は、ラサーンがラヴェルの〈ボレロ〉にインスパイアされて書いた曲。ラサーンの3管同時吹奏の妙技が楽しめます。

2曲目〈ミンガス=グリフ・ソング〉はもちろん、かつてのボス、チャールズ・ミンガスと「グリフ」ことジョニー・グリフィンに捧げられた曲です。途中、ラサーンの十八番、息継ぎなしのロングソロが炸裂します。循環奏法といって、口から息を吐くと同時に鼻から吸う(本人は「耳から」吸っていると言い張っていました)のですが、どうやるのかは門外漢の私には想像もつきません。

続く〈ザ・モンキー・シング〉では雰囲気がぐっと変わって、こってりモードの濃厚なブルースが楽しめます。しゃべりながらフルートを吹く(息が漏れるのではなく、実際に言葉を発している)のもラサーンのトレードマークのひとつです。シカゴ・ブルースの重鎮サニー・ボーイ(ハーモニカ)が飛び入りで参加しています。

6曲目〈キングとスコット通りの角にて〉とあるのは、ロンドンで出会ったばかりのロニー・スコットとピート・キングのことです。

もともとは1枚のLPですが、日本ではかつて、LP未収録曲をあわせてライブの演奏順におさめた完全版CDが2枚に分けて発売されました(2枚組じゃなくて2枚別売り!)。今では入手が困難かもしれませんが、いちおうリンクを貼っておきます。

  

Roland Kirk "Kirk In Copenhagen"
(Mercury MG 20894 / SR 60894)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, flute, siren)
Tete Montoliu (piano)
Niels Henning Orsted Pedersen or Don Moore (bass)
J.C. Moses (drums)
Sonny Boy Williamson II [as Big Skol] (harmonica) #3

Produced by Quincy Jones
Recorded by Birger Svan Mertonome
Recorded live at the Club Monmartre, Copenhagen; October, 1963

[Tracks] Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live
01. Narrow Bolero Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - Narrow Bolero
02. Mingus - Grif Song Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - Mingus-Griff Song
03. The Monkey Thing Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - The Monkey Thing
04. Mood Indigo Duke Ellington, Barney Bigard, Irving Mills (music and lyrics) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - Mood Indigo
05. Cabin In The Sky Vernon Duke (music) / John Latouche (lyrics) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - Cabin In The Sky
06. On The Corner Of KIng And Scott Streets Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - Kirk in Copenhagen - Live - On The Corner Of King And Scott Streets

[Links: Roland Kirk]
Periodicals > 林建紀 (『ローランド・カーク伝』訳者のラサーン研究@read NKYM!)
Nagata's Jazz Page (by 永田昌俊)
the Rahsaan Roland Kirk website
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Tete Montoliu]
Tete Montoliu (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
Tete Montoliu Discography (by Agustin Perez)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Niels Henning Orsted Pedersen]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Don Moore]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: J.C. Moses]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Sonny Boy Williamson]
Sonny Boy's Lonesome Cabin
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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2007年12月05日

ローランド・カーク『ウィ・フリー・キングス』

wefreekings.jpg Roland Kirk Quartet - We Free Kings

ケニー・ドーハムがこの世を去ってから5年後の1977年12月5日の正午、ラサーンことローランド・カークは遠征先のインディアナ州ブルーミントンで倒れ、そのまま帰らぬ人となりました(享年41歳)。今日は、彼の没後30周年の記念日です。

さかのぼること2年前、脳卒中に襲われたラサーンは、その影響で右半身が麻痺して片手がまったく使えない状態に陥ります。しかし、そんなことでへこたれるラサーンではありません。リハビリを重ね、楽器をカスタマイズして、片手だけで〈ジャイアント・ステップス〉を吹きこなすまでに回復したのです。
ラサーンのトレードマークだった3管同時吹奏はこのとき、彼に光をもたらしました。3つの楽器を同時に操るために、ラサーンはもともと、ほとんどの楽器を片手だけで演奏できるようになっていました。
さらに、目が見えないハンディをハンディととらえず、障害者に見られることを極度に嫌ったラサーンにとって、半身麻痺はぜがひでも乗り越えなければならない対象でした。これまで以上に困難な状況が彼の闘争本能に火をつけ、不屈の闘志でそれを乗り越える。

復活したラサーンを、人々は尊敬と畏怖の念をもって迎えます。もはや彼は生ける伝説。奇跡を目の当たりにした人たちは、そのスピリチュアルな体験を一生の宝物として記憶のなかに刻み込みます。

亡くなる前夜、ラサーンはインディアナ大学の学生たちを前に、最後の公演を行っています。演奏の合間、彼はいつものように聴衆に語りかけ、そのなかでこんなことをいったそうです(ジョン・クルース著『ローランド・カーク伝』より。訳は林建紀さん)。

「12時に誰かが逝かなければならないが、取って代わるために他の誰かが生まれてくる」
「私たちの中には12時に逝かなければならない者もいれば、生き続けなければならない者もいる」

どちらも聞き書きなので正確な文言はわかりませんが、その言葉どおり、ラサーンが翌日の12時に亡くなったことを思うとき、彼のもつ異様なパワーが理屈をこえた世界を一瞬だけ垣間見させてくれたのではないか、そんなことを思います。

今日の推薦盤『ウィ・フリー・キングス』は、ラサーンがまだ若かりし頃の作品で、彼の名を一躍有名にした傑作です。
知らない人のために念のために言っておくと、リズムセクション以外の楽器はすべてラサーンが「ひとりで」「同時に」吹いています。メンバーに記載漏れがあるわけではなく、多重録音で後から音をかぶせたわけでもありません。ひとつの演奏でいろいろな楽器が登場しますが、それもすべて一人でこなしています。音が重なって聴こえるのは、同時に吹いているからです。
彼の異様さ、おかしさ、そして天才ぶりを言葉で伝えるのはむずかしい。ぜひ自分の耳で確かめてください。

ちなみに、表題曲〈We Free Kings〉はクリスマス・キャロル〈We Three Kings of Orient Are(邦題:われらはきたりぬ)〉のもじりです。原曲のMIDI音源と聴き比べてみるもの一興かと。

 

Roland Kirk "We Free Kings"
(Mercury MG 20679 / SR 60679)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, flute, siren)
Hank Jones (piano) #1, 2, 6, 7, 8
Richard Wyands (piano) #3, 4, 5, 9
Wendell Marshall (bass) #1, 2, 6, 7, 8
Art Davis (bass) #3, 4, 5, 9
Charlie Persip (drums)

Produced by Jack Tracy
Recorded by Tommy Nola
Recorded at Nola Penthouse Studios, NYC; August 16 (#3, 4, 5, 9), 17 (#1, 2, 6, 7, 8), 1961

[Tracks] Roland Kirk Quartet - We Free Kings
01. Three For The Festival Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - Three for the Festival
02. Moon Song Arthur Johnston (music) / Sam Coslow (lyrics) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - Moon Song
03. A Sack Full Of Soul Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - A Sack Full of Soul
04. The Haunted Melody Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - The Haunted Melody
05. Blues For Alice Charlie Parker (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - Blues for Alice
06. We Free Kings Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - We Free Kings
07. You Did It, You Did It Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - You Did It, You Did It
08. Some Kind Of Love Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - Some Kind of Love
09. My Delight Roland Kirk (music) Roland Kirk Quartet - We Free Kings - My Delight

[Links: Roland Kirk]
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The Official Website of Hank Jones
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[Links: Art Davis]
Dr. Art Davis, Bassist (Official Website)
Art Davis Discography (by Michael Fitzgerald)
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[Links: Charlie Persip]
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2007年06月26日

クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ『ブラウン&ローチ・インコーポレイテッド』

brownandroachinc.jpg 

2007年6月26日は、クリフォード・ブラウンとリッチー・パウエルの51回目の命日です。1956年のこの日、2人を乗せた車はペンシルヴァニア・ターンパイクで雨天走行中、スリップ事故を起こして土手に激突、25歳と24歳の若き命が失われました。2人とも将来を嘱望されたミュージシャンでした。

1954年8月収録の『ブラウン&ローチ・インコーポレイテッド』は、ブラウン=ローチ・クインテットのエマーシー・レーベル第1弾としてリリースされました。知名度では同日録音を含む『クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ』や人気盤『スタディ・イン・ブラウン』に及びませんが、なかなかどうして「ブラウン&ローチ株式会社」も捨てたもんじゃありません。わずか2年後、不幸な事故で空中分解を余儀なくされたグループですが、子の時点では、幸先のよいスタートを切ったといえるでしょう。

1曲目〈スウィート・クリフォード〉は〈スウィート・ジョージア・ブラウン〉のコード進行に基づいたクリフォードのオリジナル。アップテンポなリズムに乗って、軽快に歌うクリフォードがすばらしい。途中マックスの切れ味鋭いドラム・ソロが入っておおいに盛り上がります。

2曲目はハロルド・ランドの抜けたカルテット、4曲目はトリオ、6曲目はクリフォードの抜けたカルテットによる演奏です。なかでも、ワンホーン・カルテットでクリフォードのペットを堪能できる〈ゴースト・オブ・ア・チャンス・ウィズ・ユー〉のすばらしさといったら! ダブル・タイムになるソロ・パートもいいけれど、ゆったりと奏でられるテーマ演奏の美しさはたとえようもありません。とくに演奏のしめくくりにクリフォードが歌い上げる高音のむせび泣きに思わず涙。感動です。

忘れちゃいけない、リッチー・パウエルのピアノを聴くなら、トリオによる〈アイル・ストリング・アロング・ウィズ・ユー〉を。狂気の天才バド・パウエルの弟という肩書きだけで片づけられてしまう人ですが、聴くものを置き去りにして疾走するバドとは、まったく違うタイプのピアニストです。よくいえば安定、悪くいえば平凡。スリリングな展開はほとんどありませんが、独りでひそかに味わいたい名曲〈タイム〉を残してくれました(『アット・ベイズン・ストリート』に収録)。

最後に収録された〈アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー〉の、4分の3拍子と4分の4拍子をいったりきたりするアレンジは、サド・ジョーンズのものだとか。ワルツタイムによる転調は、ブラウン=ローチ・クインテットの十八番となった手法です。

 

Clifford Brown, Max Roach "Brown And Roach Incorporated"
(EmArcy MG 36008)

Clifford Brown (trumpet) omit #4, 6
Harold Land (tenor sax) omit #2, 4
Richie Powell (piano)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Produced by Bob Shad
Recorded at Capitol Studios, LA; August 2 (#6), 3 (#1, 2), 5 (#3, 4, 7), 6 (#5), 1954

[Tracks] 
01. Sweet Clifford Clifford Brown (music)
02. (I Don't Stand) A Ghost Of A Chance With You Victor Young (music) / Bing Crosby, Ned Washington (lyrics)
03. Stompin' At The Savoy Edgar Sampson, Chick Webb, Benny Goodman (music) / Andy Razaf (lyrics)
04. I'll String Along With You Harry Warren (music) / Al Dubin (lyrics)
05. Mildama Max Roach (music)
06. Darn That Dream Jimmy Van Heusen (music) / Eddie DeLange (lyrics)
07. I Get A Kick Out Of You Cole Porter (music and lyrics)

[Links: Clifford Brown]
Blownie! (by Greg Morey)
Clifford Brown Discopgraphy (by ANTAIOS)
Clifford Brown Discography Project (@ Jazz Discography Project)
I Remember Clifford: The Clifford Brown Discography
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Harold Land]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Richie Powell]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: George Morrow]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic

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2007年01月22日

『キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・シカゴ』

cannonball_inchicago.jpg Cannonball Adderley & John Coltrane - The Cannonball Adderley Quintet in Chicago

話をマイルス・バンドに戻しましょう。ビル・エヴァンスがセクステットを去ったのは1958年11月。後任には、一時レッド・ガーランドが復帰しますが、翌59年の1月には、ウィントン・ケリーがバンドのレギュラー・ピアニストの座を射止めます。

この『キャノンボール・アダレイ・クインテット・イン・シカゴ』は、ウィントン加入直後のマイルス・バンドがシカゴへ遠征した際、親分抜きで行われたリラックス・セッションです(1959年2月3日録音)。

リーダー抜きのマイルス・バンドは絶好調。それもそのはず、彼らはこの1か月後、ジャズ史上の最高傑作『カインド・オブ・ブルー』をものにするという上げ潮状態にあったわけで、さらに、フロントの2人はすぐに独立、テナーの革新者コルトレーンは、一大転機となった『ジャイアント・ステップス』を59年5月に録音、キャノンボールは弟ナット・アダレイとともにバンドを立ち上げ、
キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ』(59年10月録音)を皮切りに、人気ファンキー・コンボとして名を馳せていきます。

冒頭の〈ライムハウス・ブルース〉からクインテットは全開です。「ジャズって、こむずかしい音楽でしょ」という人は、ぜひこの曲を聴いてください。これくらいわかりやすい演奏は、実はそう多くはありません。ジャズの楽しさ、ノリ、格好よさがホントに手に取るようにわかる。こりゃ、たまりません(笑)。

そして、続くキャノンボールの〈アラバマに日は落ちて〉で、私の心はトロトロに溶けていきます。ワン・ホーン・カルテットで奏でられるバラードの粋。言葉はいりません。ただ、耳を傾けてください。ため息が漏れます。絶品です。

トレーンを聴くなら、彼のオリジナル〈グランド・セントラル〉。他の曲とは明らかに異質な風合いを感じさせるこの曲は、トレーンがすでに別の次元に向けて歩みだしていたことを思い出させてくれます。

そして、トレーンがワン・ホーンで聴かせる〈ユー・アー・ア・ウィーヴァー・オブ・ドリームス〉。トレーンもうまくなったねえ、と素直に感じさせる演奏です。

 

"Cannonball Adderley Quintet In Chicago"
(Mercury MG 20449 / SR 60134)

Cannonball Adderley (alto sax) except #5
John Coltrane (tenor sax) except #2
Wynton Kelly (piano)
Paul Chambers (bass)
Jimmy Cobb (drums)

Recorded at Universal Recording Studio B, Chicago; February 3, 1959

[Tracks] Cannonball Adderley & John Coltrane - The Cannonball Adderley Quintet in Chicago
01. Limehouse Blues Philip Braham (music) / Douglas Furber (lyrics)
02. Stars Fell On Alabama Frank Perkins (music) / Mitchell Parish (lyrics)
03. Wabash Julian "Cannonball" Adderley (music)
04. Grand Central John Coltrane (music)
05. (You're) A Weaver Of Dreams Victor Young (music) / Jack Elliot (lyrics)
06. The Sleeper John Coltrane (music)

[Links: Cannonball Adderley]
The Cannonball Adderley Rendez-Vous (by Gilles Miton)
Cannonball Adderley Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: John Coltrane]
John Coltrane (Official Website)
John Coltrane (@ Dave Wild's WildPlace)
John Coltrane Discography (by ANTAIOS)
John Coltrane Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atsushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jimmy Cobb]
Jimmy Cobb

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2006年03月15日

マックス・ローチ『ザ・メニー・サイズ・オブ・マックス』

themanysidesofmax.jpg

ブッカー・リトルの初録音作品となった『オン・ザ・シカゴ・シーン』の後、マックス・ローチのグループは、ピアノ抜きの変則クインテット(3管+ベース+ドラム)へと変貌し、1958年の第5回ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルで、その全貌がはじめて明らかにされます。

ここでピンと来た人は相当「通」だと思うのですが(笑)、1958年のニューポート・ジャズ祭といえば、映画『真夏の夜のジャズ』が撮影された舞台で、そこにはチコ・ハミルトン・クインテット時代のエリック・ドルフィーの勇姿が収録されていたのでした(ついでに、ローチもダイナ・ワシントンのバックで映画に出ていますが、あろうことか、ローチ自身のグループはカットされてしまいました)。後に運命的な出会いを果たすドルフィーとリトルの歴史がはじめて交差した瞬間だったかもしれず、どちらも大好きな私には、興味が尽きないところです。

それはさておき、このときのメンバーは、トランペットのブッカー・リトルに、テナーのジョージ・コールマン、チューバのレイ・ドレイパー、ベースのアート・デイヴィス、リーダー兼ドラマーがマックス・ローチでした。以後、この5人が固定メンバーとなって、エマーシーやリヴァーサイド、タイムといったレーベルにアルバムを残していきます(ついでにいうと、ニューポートでのライヴの模様は、『マックス・ローチ・プラス・フォー・アット・ニューポート』というアルバムに残されているのですが(EmArcy MG 36140)、これ、ひょっとしたら未 CD 化作品じゃないでしょうか。もしそうだったら、ユニヴァーサルさん、ぜひ CD 化を検討してください。絶対買います!!!)。

が、しか〜し! 個人的にはどうもこの「チューバ」というのが気に食わない(笑)。やはりこの楽器はビッグバンドのベースラインを吹くのがお似合いであって、コンボでソロを吹いちゃ〜いけません。ピアノレスの先進性はわからんでもないですが、あのモコモコした愚鈍な響きが聞こえてきただけで、せっかくのリトルの流暢なペットも台無しだあ〜! なんで、どうしてレイ・ドレイパーなのよ〜!!!(あっ、でも『ニューポート』は買いますよ。約束します)

というわけで、今日紹介する『ザ・メニー・サイズ・オブ・マックス』は、この時期では唯一の、レイ・ドレイパー抜きの作品です(1959年1月22日録音)。代わりを務めるのは、トロンボーンのジュリアン・プリースター。とりたてて印象に残る人ではないけれど、あのチューバの間抜けなサウンドに比べれば百倍もマシです。

それは別として、ピアノレスという特殊な要素はあるにせよ、このグループが「3管」時代を先取りしていたのは事実です。ブレイキーのメッセンジャーズが3管になるのが1961年、それより前、アート・ファーマー&ベニー・ゴルソンのジャズテットも3管でしたが、結成は1960年でした。こちらは1958年の7月6日には、ニューポートの舞台に立っていたわけですから、マックス・ローチには、やはり先見の明があったんでしょう。彼の目が曇ってしまうのは(音楽的にですよ、あくまで)、全米が「政治の季節」を迎えた1960年代になってからです。

3曲目にまたしてもビル・リー(スパイク・リーのお父さん)の曲が登場していますが、さらに笑えることに、1曲目の作曲者、コンスエラ・リー・モアヘッドも、スパイク・リーの叔母さんというから恐れ入りました。シカゴの AACM のリチャード・エイブラムスなんて怖い人の曲もやっています(2曲目)。



Max Roach "The Many Sides Of Max"
(EmArcy MG 20911 / SR 60911)

Booker Little (trumpet)
Julian Priester (trombone)
George Coleman (tenor sax)
Art Davis (bass)
Max Roach (drums)

Recorded at Fine Recording, NYC; January 22, 1959

[Tracks]
01. Prelude (music: Consuela Lee Morehead)
02. Lepa (music: Richard Abrahms)
03. Connie's Bounce (music: Bill Lee)
04. A Little Sweet (music: Max Roach)
05. Tympanalli (music: Max Roach)
06. Bemsha Swing (music: Thelonious Monk)
07. There's No You (Hal Hopper, George Durgom / words: Tom Adair)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Art Davis]
Dr. Art Davis, Bassist
Art Davis Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年03月14日

マックス・ローチ+4『オン・ザ・シカゴ・シーン』

onthechicagoscene.jpg

1958年の前半(4月か5月)、ブラウニーの死後からその穴を埋めてきたトランペットのケニー・ドーハムがマックス・ローチのもとを離れ、ローチはいよいよグループの刷新に取り組みます。

ブラウン=ローチ時代から、彼らのアルバムをリリースしてきたエマーシー(マーキュリーの傍系レーベル)の本拠地はシカゴ。そこには、メンフィスから流れてきたイキのいい若手トランペット奏者ブッカー・リトルにテナー奏者ジョージ・コールマンがいました(コールマンだけは、前作『プレイズ・チャーリー・パーカー』から参加)。

「灰色の音色をもつ男」ブッカー・リトルは、55年くらいからシカゴ音楽院でクラシックを学んでいて、同郷のアルト奏者フランク・ストロージャーらと親交を深めていました。驚くべきことに、ルームメイトはあのソニー・ロリンズだったそうです。そんな縁で、ドーハムの後釜を探していたローチにリトルを紹介したのは、ロリンズだったといいます。

こうして誕生した新生マックス・ローチ+4は、さっそくレコーディングにのぞみます。『オン・ザ・シカゴ・シーン』は記念すべき彼らの第1作で、われらがリトルの初吹き込み作品でもあります(1958年6月3日録音)。

若き日のリトルを聞きたければ、まずは〈マイ・オールド・フレーム〉から。前途洋々とした若者だけに見られる溌剌とした響きです。かすかに感じられる陰影が後年を思わせますが、そこはそれ、まだ20歳の若者ですから、暗さよりも明るさが勝っています。私なんか、そこに愛着を感じてしまうのですが。

3曲目〈スポーティ〉は、アトランタ生まれでシカゴ在住のベーシスト、ビル・リーの作品です。といっても、ピンときませんね。映画監督スパイク・リーのお父さんといわれてはじめて、「へえ」となる。息子の映画の音楽も担当しているようです。



Max Roach "On The Chicago Scene"
(EmArcy MG 36132)

Booker Little (trumpet)
George Coleman (tenor sax)
Eddie Baker (piano)
Bob Cranshaw (bass)
Max Roach (drums)

Recorded at Universal Recording Studios, Chicago, IL; June 3, 1958

[Tracks]
01. Shirley (music: George Coleman)
02. My Old Frame (music: Arthur Johnston / words: Sam Coslow)
03. Sporty (music: Bill Lee)
04. Stella By Starlight (music: Victor Young / words: Ned Washington)
05. Stompin' At The Savoy (music: Edgar Sampson, Chick Webb, Benny Goodman / words: Andy Razaf)
06. Memo: To Maurice (music: Eddie Baker)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年03月13日

マックス・ローチ『ジャズ・イン 3/4 タイム』

jazzin34time.jpg

クリフォード・ブラウン亡き後のマックス・ローチ・クインテットは、よくも悪くもローチのリーダーシップが目立つようになります。ローチのオリジナル曲がふえたのも、彼のドラムソロが頻繁に聞かれるようになったのも、類い稀なる2人の均衡が崩れて、相方を失った居心地の悪さを象徴している気がします。

ドラマーであったマックス・ローチの視線の先には、つねに「リズムの革新」がありました。ジャズでワルツというと、今でこそ珍しくも何ともありませんが、4ビートが主流だった当時は、ワルツ・タイムでスイングできるなど、誰も考えていませんでした。でも、ローチには確信があったのでしょう。早くも1954年録音『ブラウン=ローチ・インコーポレイテッド』の〈アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー〉でテーマ部分に4分の3拍子を取り入れた演奏を披露しています。

4分の3拍子と4分の4拍子を行ったり来たりするこの手法は、以後、ブラウン=ローチ・クインテットの売りのひとつとなります。すぐれたタイム感覚でリズムをキープするローチと、どんな転調も軽々と吹きこなすブラウニーの組み合わせは、「リズムの革新」にはもってこいの存在でした。彼らの冒険は、『アット・ベイズン・ストリート』の〈慕情 (Love Is A Many Splendored Thing)〉や、ロリンズ名義『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』の〈ヴァルス・ホット〉へと続いていきます(Valse はフランス語で Waltz の意味です)。

この『ジャズ・イン 3/4 タイム』は、ブラウニーとともにリズムの探求を続けてきたローチが満を持して発表した、全編ワルツで通した意欲的な作品です。変調子ジャズの代名詞、デイヴ・ブルーベックの
タイム・アウト』が録音されたのが1959年ですから、ローチの先進性がわかろうというものです。それくらい、新しかった。

ロリンズの〈ヴァルス・ホット〉の再演が目を引きます。初演より若干早めにテンポが設定されているのは、このリズムをすでに自分のものとしたという自信の表れでしょうか。単なる物珍しさを超えて、ワルツでもちゃんとスイングできることを証明してみせます。

最後の〈美しき乙女〉だけが、前作『マックス・ローチ・プラス・フォー』と同日録音で、旧メンバーのレイ・ブライアントが参加しています。

ちなみに、この録音当時、エマーシー(マーキュリー)はステレオ録音をはじめたばかりで、MG 36108 には6曲全部がモノラルで、SR 80002 には#1と6を除く各曲のステレオ・バージョンが収録されていたのだそうです。

 

Max Roach "Jazz In 3/4 Time"
(EmArcy MG 36108 / SR 80002)

Kenny Dorham (trumpet)
Sonny Rollins (tenor sax)
Bill Wallace (piano) #1-5
Ray Bryant (piano) #6
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Recorded in NYC; September 19 (#6), 1956
Recorded at Capitol Studios, Los Angeles, CA; March 18 (#1, 3), 20 (#2, 4), 21 (#5), 1957

[Tracks]
01. Blues Waltz (music: Max Roach)
02. Valse Hot (music: Sonny Rollins)
03. I'll Take Romance (music: Ben Oakland / words: Oscar Hammerstein II)
04. Little Folks (music: Max Roach)
05. Lover (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
06. The Most Beautiful Girl In The World (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)

[Links: Kenny Dorham]
Una Mas: Kenny Dorham Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Kenny Dorham Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Sonny Rollins]
Sonny Rollins: The Official Website
The Sonny Rollins Page
The Complete Sonny Rollins
Sonny Rollins Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ray Bryant]
Ray Bryant Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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『マックス・ローチ・プラス・フォー』

maxroach+4.jpg

クリフォード・ブラウンとリッチー・パウエル夫妻が雨が降りしきる真夜中のペンシルヴァニア・ターンパイクを走行中、ガードレールに激突し、即死した1956年6月26日。この日は、ブラウニーの奥さんラルーの誕生日であるとともに、彼らの2回目の結婚記念日でもありました。彼らの愛の結晶クリフォード・ジュニアはまだ生後半年。次の演奏地シカゴで落ち合う予定だった盟友マックス・ローチは、旅先でエージェントから彼らの死を伝え聞き、ホテルの部屋に閉じこもってコニャックを2本空けたそうです。

この『マックス・ローチ・プラス・フォー』は、ローチが残されたメンバーとともに再起をかけて挑んだ作品です。道半ばにして逝ってしまった2人の代わりに起用されたのは、自らのグループ、ジャズ・プロフェッツを投げうって、傷心の友人のもとに馳せ参じたトランペットのケニー・ドーハム、クリフォードの第二の故郷フィリー出身のピアニスト、レイ・ブライアントでした。

この作品、メンバーの死という悲しい出来事を乗り越えようという意気込みからか、思いのほかアグレッシヴな出来映えになっています。ジョージ・ラッセルの〈エズ・セティック〉という、幾何学文様のような複雑な曲にトライしたかと思えば、スピードの限界に挑戦したかのような〈ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス〉で、聞くものの度肝を抜きます。

晩年(といっても20代ですが)のブラウニーは、ローチとともに「これでもか」というくらい急速調にチャレンジしていたそうですが、それを思わせるようなローチのドラミングがキテます。さすがのドーハムも、レイ・ブライアントも、ついていくのがやっと、という感じがしますが、意外や意外、この演奏を引き締まったものにしているのは、迫力のテナー・サウンドが耳をそばだてるロリンズです。ロリンズというと、ミディアム・テンポのときにもっとも「らしさ」が響き渡るテナー奏者だと思うのですが、ここでの彼は、スピードをものともせずに豪快に吹きまくっています。

それもそのはず、この時期のロリンズは悪いわけがありません。生涯の名作に数えられる『サキソフォン・コロッサス』を録音したのは、クリフォードの死の直前、6月22日のことです(当時のボス、マックス・ローチも参加しています)。この『プラス・フォー』は、クリフォードの死によるブランクはあったとはいえ、ロリンズにとっても『サキコロ』の次の作品に当たるのですから、その出来たるや、推して知るべき、ですね。エネルギッシュで豪快なテナーに酔いしれます。

5曲目〈身も心も〉。ロリンズのテナーではじまりますが、この音色にはしびれます。以前、『サキコロ』のよさがわからなかったと書いたことがありますが、このエマーシー盤のロリンズの音なら、昔から私も大好きです(その後、アナログ盤の『サキコロ』を聞いたことによって、私の長年の疑問は氷解したのでした。なんだ、ロリンズはやっぱ男じゃないか。当たり前なんだけど。そこらへんの事情は、こちらに書いてあります)。



"Max Roach + 4"
(EmArcy MG 36098)

Kenny Dorham (trumpet)
Sonny Rollins (tenor sax)
Ray Bryant (piano)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Recorded in NYC; September 17 (#3-5), 19 (#1, 2, 6), 1956

[Tracks]
01. Ezz-Thetic (music: George Russell)
02. Dr. Free-Zee (music: Max Roach)
03. Just One Of Those Things (music+words: Cole Porter)
04. Mr. X (music: Max Roach)
05. Body And Soul (music: Johnny Green / words: Edward Heyman, Robert Sauer, Frank Eyton)
06. Woody 'n You (music: Dizzy Gillespie)

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クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ『アット・ベイズン・ストリート』

atbasinstreet.jpg Clifford Brown/Max Roach Quintet - At Basin Street

ブラウン=ローチ・クインテットは、当時としては珍しく、ユニットとして売り出していました。メンバーの切り売りはせず、全員を雇ってくれることを条件に、ツアーを組む。ギャランティの問題もあって、客を呼べるスターだけを呼んで、あとは地元のリズム・セクションと組ませて、ジャム・セッションを行うというのが当たり前だった時代に、ユニットで勝負するというのは経営的にも大変だったようですが、グループ表現を何よりも重視していた彼らのこと、そこだけは譲れない一線として、双頭リーダーのブラウン&ローチは各地のクラブのオーナーと直談判して渡り合ったといいます。

当然、メンバー同士の仲もよく、家族のような一体感で結ばれていました。とくに酒やドラッグとは無縁の生活を送っていたクリーンなブラウニーの影響は絶大で、彼と出会ったことでドラッグから足を洗ったミュージシャンも数多くいたそうです。

一瞬の「ひらめき」が勝負のジャズの世界では、パーカーのように吹きたければ、ハイになるのが当たり前だと当時は考えられていました。ところが、ブラウニーはドラッグにはまったく手を出さず、いかなるときも練習を欠かさず、あくなき探究心をもって音楽と真摯に向き合っていた。そして、その技量にますます磨きをかけていったのです。

ブラウニーは自分の宣伝に長けた人ではありませんでしたが、彼の生き方そのものが、ジャズ・ミュージシャンの新たな方向性を示していました。そして、彼の人柄にひかれた多くのミュージシャンが、彼のたどった「まっすぐな道」を自然と歩むようになっていったのです。

現存する最後のテナー・タイタン、ソニー・ロリンズも、ブラウニーとの出会いによって人生が変わった一人です。前任のテナー奏者ハロルド・ランドが祖母の死をきっかけに、妻や子供と過ごす時間を求めて LA に帰ってしまったので、かわりに当時シカゴに住んでいたロリンズがグループに加わったのが、1955年11月頭(10月末?)のことでした。

すでにマイルスとの共演などによって大物との評価が定まっていたロリンズのもとには、ありとあらゆるグループから誘いが来ていたといいます。でも、ロリンズはそれをすべて断って、ブラウン=ローチ・クインテットに馳せ参じた。そこにこそ、彼が求める新しい音楽と新しい生活があったからです。重度のジャンキーだったロリンズは、ブラウニーと出会ったことで、真っ当に生きようと決めたのです。

クリフォードは私の人生に深い影響を与えた。彼は、正しい、クリーンな生活を送っていてもなお、同時に立派なジャズ・ミュージシャンでいられることを教えてくれた。

これは、ニック・カタラーノによるブラウニーの伝記『クリフォード・ブラウン:天才トランペッターの生涯』で紹介されているロリンズの言葉です。短い言葉ですが、ブラウニーの存在がいかに得がたいものだったか、伺い知ることができます。彼を「聖人」に祭り上げるのは私の趣味ではありませんが、自分からは何も働きかけなくても、自然と敬愛を集めてしまうクリフォード・ブラウンという人間に、私も心がひかれます。

ちなみに、この伝記、ずいぶん前に買ったままになっていたのを、つい最近、やっと読んでみたのですが、実に気持ちのいい本です。簡潔でいながら、端々から著者のブラウニーに対する尊敬の念が感じられて、読んでいるこっちも、自然と笑みがこぼれます。驚いたのは、従来ブラウニー死の直前の録音とされていた『ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド』の後半3曲の録音日が訂正されていて、実は1年ほど前のセッションだったということが明らかになっています。くわしくは、こちらの「追記」をご覧ください。

この時期、彼らほど新しい音楽にチャレンジし、なおかつ、成果をあげたグループはありませんでした。その成果は、ロリンズ参加後のブラウン=ローチ・クインテット唯一の公式盤『アット・ベイズン・ストリート』で聞くことができます(同じメンバーで、ロリンズ名義の『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』というアルバムが、プレスティッジに残されています)。

ベイズン・ストリートは、ニューヨークに実在したクラブで、その名も〈ベイズン・ストリート・ブルース〉というスペンサー・ウィリアムズの曲も残されていますが(マイルスの『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』や、エリントン&ホッジスの『バック・トゥ・バック』、ジミー・スミスの『ザ・キャット』などで聞けます)、紛らわしいことに、これは「@ベイズン・ストリート」とは名ばかりのスタジオ録音作です(ただ、ブラウン=ローチ・クインテットはこの前後、ベイズン・ストリートに何度か出演していたのは事実で、毎回大盛況だったという記述が、前述の伝記に出ています)。

セッションは1956年の年明け、2回にわたって行われます。前年の暮れ(12月28日)、愛妻ラルーとの間にはじめて子供をもうけたブラウニーは、喜び勇んで録音に参加したことでしょう。フィラデルフィア出身の後輩、ベニー・ゴルソンの〈ステップ・ライトリー〉という曲が、〈ジュニアズ・アライヴァル〉とクレジットされたのには、そんな背景が隠されていました。

リッチー・パウエルの3曲は、いずれもこの「弟」が、「兄」バド・パウエルとは別の能力を開花しつつあったことを教えてくれます。なかでも〈パウエルズ・プランセス〉は、先の伝記では、モード手法を取り入れた作品と紹介されていますが、真相はいかに? それが本当なら、ジャズ史がひっくり返るかも(笑)。だって、この録音が行われたのは、1956年ですからね! 音楽理論はちっともわからないので、本当のところをどなたか教えてくれませんか?

同じリッチーの〈タイム〉もいい曲です。「監獄のなかで、いつになったら外に出られるのだろうと思っている男が過ごす時間」というのがご本人による説明ですが、そんなディテイルは、残念ながらこの曲からは聞きとれません(笑)。でも、ブラウニーとロリンズの物悲しいハーモニーが心に残ります。

 

Clifford Brown, Max Roach "At Basin Street"
(EmArcy MG 36070)

Clifford Brown (trumpet)
Sonny Rollins (tenor sax)
Richie Powell (piano)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Produced by Bob ShadGene Norman
Recorded at Capitol Studios, NYC; January 4 (#4, 5, 8), February 16 (#1-3, 6, 7, 9), 1956

[Tracks] Clifford Brown/Max Roach Quintet - At Basin Street
01. What Is This Thing Called Love (music+words: Cole Porter)
02. Love Is A Many Spledored Thing (music+words: Cole Porter)
03. I'll Remember April (music+words: Gene DePaul, Don Raye, Pat Johnston)
04. Step Lightly (Junior's Arrival) (music: Benny Golson)
05. Powell's Prances (music: Richie Powell)
06. Time (music: Richie Powell)
07. The Scene Is Clean (music: Tadd Dameron)
08. Gertrude's Bounce (music: Richie Powell)
09. Flossie Lou (music: Tadd Dameron)

[Links: Clifford Brown]
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[Links: Sonny Rollins]
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2005年11月17日

クリフォード・ブラウン『スタディ・イン・ブラウン』

studyinbrown.jpg Clifford Brown & Max Roach Quintet - Study In Brown

ブラウン=ローチ・クインテットの作品をもう1つ。『スタディ・イン・ブラウン』は、〈チェロキー〉と〈A列車で行こう〉の名演によって知られる彼らの最高傑作です(よね?)。

オープニングを飾るレイ・ノーブル作の〈チェロキー〉はネイティブ・アメリカンの部族の名前で、副題を〈インディアン・ラヴ・ソング〉といいます。そう思って聞くと、たしかにイントロから西部劇にでも出てきそうないさましいドラムが聞こえてきます。「ちょっとスピード出しすぎじゃない?」というテンポでスタートしますが、われらがブラウニーにとっては屁でもない、軽くいなすどころか、このスピードの中でも完璧に歌っています。「ホントにその場で考えて吹いているの?」と思わずツッコミを入れたくなるほどの出来映えです。さすが天才クリフォード! 続くハロルド・ランドもなかなか頑張ってます(笑)。

ブラウニーのオリジナルは4曲入っていますが、いちばん好きなのは〈ジョージズ・ジレンマ〉。寺島靖国さんが激賞されていますが、ブラウニーのペット・サウンドの丸みやあたたかさを感じるには最高の演奏です。キレがあるのにあたたかい。二律背反の命題を同時にこなしてしまうブラウニーはやっぱりすごい。

7曲目〈ガーキン・フォー・パーキン〉は、小児麻痺のために不自由になった左手を器用に使って演奏した西海岸のピアニスト、カール・パーキンスに捧げられた曲です。マックス・ローチによると、この曲の元ネタはマイルス作の〈シッピン・アット・ベルズ〉ということですが、さて、どうでしょう? 気になる人はチャーリー・パーカーのサヴォイ音源(たとえばこちら)か、ソニー・クラークの人気盤『クール・ストラッティン』あたりで確かめてください。

最後は、ビリー・ストレイホーン作の〈A列車で行こう〉です。この曲は、ゆったりとしたテンポで演ると粘り気が出て、いかにもエリントン楽団のテーマ曲らしくなりますが、急速調で攻めると、意外にも明るくさわやかな印象になります。この曲がお気に入りだったペトちゃんは何度か録音を残していますが、なるほど、ペトちゃんもブラウニーも、太陽のような明るさをもった、ジャズ界には珍しい存在でした。列車が出発して徐々に速度を上げ、汽笛を鳴らして駅に到着する様子を模した演出も心ニクイです。

 

Clifford Brown, Max Roach "Study In Brown"
(EmArcy MG 36037)

Clifford Brown (trumpet)
Harold Land (tenor sax)
Richie Powell (piano)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Recorded at Capitol Studio, NYC, February 23 (#3, 4, 7, 9), 24 (#5, 8), 25 (#1, 2, 6), 1955

[Tracks] Clifford Brown & Max Roach Quintet - Study In Brown
01. Cherokee (Indian Love Song) (music+words: Ray Noble)
02. Jacqui (music: Richie Powell)
03. Swingin' (music: Clifford Brown)
04. Lands End (music: Harold Land)
05. George's Dilemma (Ulcer Department) (music: Clifford Brown)
06. Sandu (music: Clifford Brown)
07. Gerkin For Perkin (music: Clifford Brown)
08. If I Love Again (music: Ben Oakland / words: Jack P. Murray)
09. Take The "A" Train (music: Billy Strayhorn)

[Links: Clifford Brown]
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[Links: Max Roach]
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2005年11月16日

『クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ』

cliffordbrownmaxroach.jpg Clifford Brown/Max Roach Quintet - Clifford Brown & Max Roach (1954-1955)

歌伴を演っても、ウィズ・ストリングスものでも、どんなシチュエーションでどんな曲を吹こうとも、まばゆいばかりの光を現出させることのできたクリフォード・ブラウン。そんなブラウニーの最良の演奏は、ブラウン=ローチ・クインテットで聞くことができます。

太陽のように光り輝く天才トランペッターと正確無比なドラミングで名を馳せた大物ドラマーの組み合わせ。彼らはエマーシーに何枚かのアルバムを残しますが、いずれも甲乙つけがたいハードバップの名盤です。

あとは曲の好みで選ぶしかないのですが、この『クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ』には、〈パリジャン・スロウウェア〉〈ジョードゥ〉といったジャズメン・オリジナルの決定的名演と、ブラウニー作の名曲〈ジョイ・スプリング〉が入っていて、忘れられないアルバムになっています。

アルバムの冒頭を飾るのは、エキゾチックな魅力あふれる〈デライラ〉です。ヴィクター・ヤングの曲ですが、このクインテットによる演奏があまりに印象的なので、ほかの人はあまり取り上げることがありません。

続く〈パリジャン・ソロウウェア〉で、クインテットは全速力でパリの街を駆け抜けます。ピアノのリッチーの兄、バド・パウエルの作品です。ここでのローチは本当にすごい。開いた口がふさがらない、とはこのことです(笑)。

3曲目〈ザ・ブルース・ウォーク〉はブラウニーの作とクレジットされていますが、実はソニー・スティットの作品で、タイトルも〈ルース・ウォーク〉といいます(初出はルースト盤『ペン・オブ・ジョニー・リチャーズ』)。ちなみに、ルー・ドナルドソンの『ブルース・ウォーク』に収められた同名曲はルーのオリジナルで、
デックスが『モンマルトル・コレクション』で取り上げていたのはブラウニー、もといスティットの作品でした。タイトルからすっかりルーの作品と思い込んでいましたが、今回判明したので、前の記事も訂正しておきました。

続いて〈ダーホウド〉、〈ジョイ・スプリング〉と正真正銘のブラウニーのオリジナル(笑)が並んでいます。なかでも〈ジョイ・スプリング〉のすばらしさといったら。そして、ピアニスト、デューク・ジョーダンのキラー・チューン〈ジョードゥ〉が続きます。う〜ん、やっぱりこりゃ、カッコよすぎるぞ。

 

”Clifford Brown And Max Roach"
(EmArcy MG 36036)

Clifford Brown (trumpet)
Harold Land (tenor sax)
Richie Powell (piano)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Recorded at Capitol Studios, LA; August 2 (#1, 2), 3 (#5), 6 (#3, 4), 1954
Recorded at Capitol Studios, NYC, February 24 (#6, 7), 1955

[Tracks] Clifford Brown/Max Roach Quintet - Clifford Brown & Max Roach (1954-1955)
01. Delilah (music: Victor Young, Jay Livingston / words: Raymond Evans)
02. Parisian Thoroughfare (music: Bud Powell)
03. The Blues Walk (aka. Loose Walk) (music: Sonny Stitt)
04. Daahoud (music: Clifford Brown)
05. Joy Spring (music: Clifford Brown)
06. Jordu (music: Duke Jordan)
07. What Am I Here For (music: Duke Ellington)

[Links: Clifford Brown]
I Remember Clifford: The Clifford Brown Discography
Clifford Brown Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年11月14日

『クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス』

cliffordbrownwithstrings.jpg Clifford Brown & Max Roach - Clifford Brown With Strings

ウィズ・ストリングスものというと、即興演奏のスリルを楽しみたくてジャズを聞く人からは、「あ〜、やっちゃった」的な苦笑をもって迎え入れられるのが常で、実際「こりゃヒドいな」という作品も少なくありません。

私なんかも、アルバムの冒頭でストリングスの甘いサウンドが聞こえてきたとたん、気持ちが萎えるのですが(笑)、ヴォーカルも含めて、これだけ多くのウィズ・ストリングス作品が残されているのを見ると、やはりプレイヤーや歌手にとっては、ひとつの目標というか、天下をとった気になるのかもしれません。

たしかに、大編成のオーケストラをバックに従えて、たったひとりで朗々と歌うのは気持ちいいはずです。その気持ちはわからないでもありません。でも、それと聞いて楽しい作品になっているかどうかというのは、やっぱり別の話なんですね。

ところが、です。スポットライトを浴びるプレイヤーの力量が、ストリングス特有のだるさを飛び越えてしまうことが稀にある。この『クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス』がまさにそれなんです。

ここでのブラウニーは、息を呑むほどすばらしい! 伸びやかによく歌う彼のトランペットがこれほど鮮やかに聞けるアルバムはほかにありません。

たとえば冒頭の〈イエスタデイズ〉。まず、極甘のストリングスが聞こえてきて、「やっぱり、聞くのやめようかな」と思わせますが、それをガマンしていると、ブラウニーの光り輝くトランペットが鳴り響きます。その瞬間、私の頭からは周囲の雑音(失礼!)が消え去って、ブラウニーがただひとり、目の前にいるかのような錯覚に陥ります。

低音から高音まで一気に駆け上がるブラウニー。この天まで届かんとする伸びやかなトーンは、ちょっと表現しがたいものがあります。「神々しい」という言葉がこれほどピッタリくる演奏を、私はほかに思いつきません。それくらい感動的です。

このアルバムは、ブラウニーのあたたかみのあるトランペットを楽しむ極上のバラード集です。愁いをおびた〈ローラ〉もいいし、夕暮れの物悲しさを思わせる〈メモリーズ・オブ・ユー〉もいいし、〈煙が目にしみる〉も〈ジェニーの肖像〉も〈スターダスト〉もみんな好きです。

とはいえ、やはりストリングスものは甘い。ほめられることの多いニール・ヘフティのアレンジですが、私はそれほど評価していません。演奏者を目立たせるための控えめなアレンジだとは思いますが、それでも装飾過剰に聞こえます。せめてもうちょっとバックのヴォリュームを落としてくれれば、と願っているのは私だけではないはずです。

そんなわけで、ウィズ・ストリングスは立て続けに何枚も聞くものではありません。甘すぎてダレます。こんなものばかり聞いていると、キビしい現実社会に復帰できなくなるかもしれません(笑)。スウィート・クリフォードと親しまれたブラウニーですら、2度、3度とくり返すのはキツい。

ですから、ストリングスものは、ごくたまに、ふと思い出したように取り出して、ひとりひそかに楽しむというのが、精神衛生上いいようです。カクテルでいえば、ラスティ・ネイルやブラック・ルシアン。ほどよい甘味がのどを潤すこれらのお酒を、私はたまに無性に飲みたくなります。

 

"Clifford Brown With Strings"
(EmArcy MG 36005)

Clifford Brown (trumpet)
Richie Powell (piano)
Barry Galbraith (guitar)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)
Neal Hefti (arranger, conductor) with strings

Recorded in New York; January 18 (#1, 3, 10, 11), 19 (#2, 5, 8, 9), 20 (#4, 6, 7, 12), 1955

[Tracks] Clifford Brown & Max Roach - Clifford Brown With Strings
01. Yesterdays (music: Jerome Kern / words: Otto Harbach)
02. Laura (music: David Raskin / words: Johnny Mercer)
03. What's New (music: Bob Haggart / words: Johnny Burke)
04. Blue Moon (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
05. Can't Help Lovin' Dat Man (music: Jerome Kern / words: Oscar Hammerstein II)
06. Embraceable You (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
07. Willow Weep For Me (music+words: Ann Ronell)
08. Memories Of You (music: Eubie Blake / words: Andy Razaf)
09. Smoke Gets In Your Eyes (music: Jerome Kern / words: Otto Harbach)
10: Portrait Of Jenny (music: J. Russel Robinson / words: Gordon Burdge)
11. Where Or When (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
12. Stardust (music: Hoagy Carmichael / words: Mitchell Parish)

[Links: Clifford Brown]
I Remember Clifford: The Clifford Brown Discography
Clifford Brown Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Barry Galbraith]
Barry Galbraith Chord Melodies Memorial Site
Barry Galbraith (@ Classic Jazz Guitar)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Neal Hefti]
Neal Hefti Fan Club (by Kent Lundberg)

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2005年11月11日

『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』

helenmerrill.jpg Helen Merrill & Clifford Brown - Helen Merill

サッチモやガレスピー、チェットは歌もよくするラッパ吹きでしたが、トランペットそのもので歌ってしまった人がいます。ブラウニーこと、クリフォード・ブラウンです。1930年10月30日、デラウェア州ウィルミントン生まれ。1956年6月26日、フィラデルフィアからシカゴへ車で向かう途中、ペンシルヴァニアのターンパイクで同乗のリッチー・パウエル夫妻とともに事故死。

ブラウニーのソロには、歌があります。汲めども尽きないメロディアスなフレーズが次から次へと流れ出るさまは、まさに圧巻のひと言。鋭角的に切り込むようなバップの世界とは明らかに違う、美しいメロディーの洪水が押し寄せます。

そして、分厚い胸板から繰り出されるブリリアントな音色! 一瞬にしてその場を仕切ってしまうほどの圧倒的な輝きをもちながら、同時にあたたかみをも感じさせてしまうブラウニーのサウンドは、ほかの誰にも真似できません。

ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』は、彼女のエマーシー録音第1弾です。ヘレン・メリルは、エマーシーに吹き込むにあたって、ソロイストにクリフォード・ブラウンを加えること、アレンジは全曲クインシー・ジョーンズに依頼すること、という条件を出したそうです(油井正一さんのライナーより)。結果は大成功。ヘレンだけでなく、ブラウニーの「歌」が聞ける大名盤となりました。

実は、ヘレン・メリルはあまり好きな歌手ではありません。もともとオンナ、オンナしている女性は苦手で、たとえば香水の匂いをプンプンさせて、ゴージャスに着飾った大人の女性を前にすると、どうしてもその場から逃げたくなる(笑)。

ヘレンの歌からは濃厚なフェロモンが漂ってきます。肌にまとわりつく感じです。これが、どうにも好きになれない。彼女のアルバムは他にも何枚かもっていますが、そんなわけで、ほとんど聞くことはありません。

唯一の例外が、この『ヘレン・メリル』なんです。ここでのヘレンは、ほのかな色気を感じさせますが、それが過剰にならずに、絶妙なラインを保っています。演奏を引き締めているのはバックのジャズメンですが、その元締めは、アレンジャーのクインシー・ジョーンズです。クインシーならいくらでも手の込んだことができそうなのに、ここでのアレンジは驚くほどあっさりしている。これがいいんです。ベッタリしすぎず、淡くて切ない情感がうまく表現されています。

ジャズファンならずとも、きっとどこかで聞いたことがあるのが、2曲目〈ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ〉。あまりに有名すぎて、推薦するのも気が引けますが、やっぱりこれは名唱です。ブラウニーのソロもすばらしい!

ちなみに、この曲の邦題「帰ってくれれば嬉しいわ」は誤訳として知られています。帰りを家で待つのではなく、相手の家に帰るのがうれしいという解釈が正しいと、ヘレン本人がいっていたそうです。

ほかにも〈ドント・エクスプレイン(言い訳しないで)〉、〈ホワッツ・ニュー〉、〈ス・ワンダフル〉など、その曲を代表する名演名唱が目白押しです。やっぱりこれは、コレクションからはずせませんね。

 

"Helen Merrill"
(EmArcy MG 36006)

Helen Merrill (vocal)
Clifford Brown (trumpet)
Donny Banks (baritone sax, bass clarinet, flute) except #03
Jimmy Jones (piano)
Barry Galbraith (guitar)
Milt Hinton (bass) #1, 2, 6, 7
Oscar Pettiford (bass, cello) #3, 4, 5
Osie Johnson (drums) #1, 2, 6, 7
Bob Donaldson (drums) #3, 4, 5
Quincy Jones (arranger, conductor)

Produced by Bob Shad
Recorded in NYC; December 22 (#1, 2, 6, 7), 24 (#3, 4, 5), 1954

[Tracks] Helen Merrill & Clifford Brown - Helen Merill
01. Don't Explain (music+words: Billie Holiday, Arthur Herzog Jr.)
02. You'd Be So Nice To Come Home To (music+words: Cole Porter)
03. What's New (music: Bob Haggart / words: Johnny Burke)
04. Falling In Love With Love (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
05. Yesterdays (music: Jerome Kern / words: Otto Harbach)
06. Born To Be Blue (music: Mel Torme, Robert Wells)
07. 'S Wonderful (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)

[Links: Helen Merrill]
HelenMerrill.com (Official Website)
[Links: Clifford Brown]
I Remember Clifford: The Clifford Brown Discography
Clifford Brown Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Milt Hinton]
Milt Hinton.com (Official Website)
[Links: Quincy Jones]
Quincy Jones Music Publishing (Official Website)

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2005年11月02日

『オスカー・ピーターソン・トリオ+1:クラーク・テリー』

oscarpeterson+1.jpg The Oscar Peterson Trio & Clark Terry - Oscar Petereson Trio + 1

トランペット奏者には、どういうわけか歌も得意とする人が多いようで、ジャズ・トランペットの開祖ルイ・アームストロングはいうに及ばず、ディジー・ガレスピーに、チェット・ベイカー、最近ではティル・ブレナーなんてのもいますね。それぞれ独特の味わいがあって好きですが、なかでも変わり種が今日紹介するクラーク・テリーです。1920年12月14日、ミズーリ州セントルイスの生まれです。

ベイシー楽団とエリントン楽団という2大ビッグバンドを渡り歩いた実力の持ち主ですが、偉ぶったところは全然なくて、むしろ親しみやすい下町のおじさんです(笑)。

オスカー・ピーターソン・トリオ+1:クラーク・テリー』 は、テリーのへなちょこヴォーカルが聞ける盤として有名です。歌っているのは、〈マンブルス〉と〈インコーヒレント・ブルース〉の2曲ですが、「インコーヒレント=支離滅裂な、でたらめな」という曲名からもわかるように、言葉にならない、めちゃめちゃなスキャットで歌いまくります。これが、サイコーにおもろい! スタジオの笑い声が聞こえてきそうな雰囲気に、聞いている私の頬も思わず緩みます。

テリーのラッパも、彼の声に負けず劣らず楽しい。シリアスなところは、まったくありません(笑)。ただひたすらハッピー、ハッピー。陽気なおじさんたちのゴキゲンな演奏です。

ピーターソンも、いつもよりもリラックスしているようです。リーダーでグイグイ引っ張るピーターソンの存在感も好きですが、バックにまわったときの彼は、やっぱりいいですね。ノーマン・グランツがピーターソンを使い続けた理由がわかります。

 

"Oscar Peterson Trio + One: Clark Terry"
(Mercury MG 20975 / SR 60975)

Clark Terry (trumpet, flugelhorn, vocal)
Oscar Peterson (piano)
Ray Brown (bass)
Ed Thigpen (drums)

Recorded in NYC; August 17, 1964

[Tracks] The Oscar Peterson Trio & Clark Terry - Oscar Petereson Trio + 1
01. Brotherhood Of Man (music+words: Frank Loesser)
02. Jim (music: Caesar Petrillo, Milton Samuels, Nelson Shawn)
03. Blues For Smedley (music: Oscar Peterson)
04. Roundalay (music: Oscar Peterson)
05. Mumbles (music: Clark Terry)
06. Mack The Knife (music: Kurt Weill / words: Bertolt Brecht, Marc Blitzstein)
07. They Didn't Believe Me (music: Jerome Kern / words: Herbert Reynolds)
08. Squeaky's Blues (music: Oscar Peterson)
09. I Want A Little Girl (music: Murray Mencher, Billy Moll)
10. Incoherent Blues (music: Clark Terry)

[Links: Clark Terry]
Clark Terry (Official Website)
[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peterson: Official Web Site
Oscar Peterson: A Jazz Sensation
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Jazz Giant: The Oscar Peterson Discography
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen Online (Official Website)

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2005年07月29日

ローランド・カーク『リップ・リグ&パニック』

riprigandpanic.jpg Roland Kirk Quartet - Rip Rig and Panic / Now Please Don't You Cry Beautiful Edith

ここしばらく休みなし、睡眠時間なしで仕事に埋没していましたが、昨日10時間ほど爆睡して、ついに復活です! そうそう、ラサーンの話でしたよね(前回投稿したのが、はるか昔のような気がします)。今回は、伝統と革新が何の違和感もなく同居していたラサーンらしさがふんだんに詰まった傑作『リップ・リグ&パニック』の紹介といきましょう。

伝統の継承者としてのラサーンを聴きたければ、まずは1曲目の〈ノー・トニック・プレス〉。プレス(プレジデントの略)といえば、テナーの巨匠レスター・ヤングですね。
テナー1本で勝負かと思いきや、テナーによるソロと2管(3管?)同時吹奏がごく自然に入れかわり立ちかわり現れて、演奏をより深いものにしています。

そして、そのものズバリの〈フロム・ベシェ・バイアス・ファッツ〉。ソプラノのシドニー・ベシェ、テナーのドン・バイアス、ストライド・ピアノのファッツ・ウォーラーに捧げたこの曲で、ラサーンは得意の循環呼吸法を使って(サーキュラー・ブリージング。鼻で息を吸いながら口から息を吐き出す)、息継ぎなしのロングソロを炸裂させます。いやはや、強烈です! ラグタイムからフリーまで、なんでもこなすジャズ・ピアノの生きた歴史、ジャッキー・バイアードも大活躍です。

でも、このアルバムでいちばんの聴きものは、やはりなんといってもタイトル曲です。怪しげなテーマからはじまるこの曲は、途中、グラスの割れる音を境にガラリと様相を変え、一気にヒートアップします。グラスの割れる音? そうです、彼はこの音をどうしても使わなければならなかった。眠れる聴衆を叩き起こすために(くわしくは、下で説明します)。

耳から聞こえる音はなんでも演奏に取り込まずにはいられなかった「音の探求者」ラサーン。でも、それはギミックではありません。これほど効果的に「目を覚ます」方法を、私はほかに思いつきません。実際、眠気(いや、今日は眠くないけどね)が一発で吹っ飛ぶんですよ!

さて、このアルバムのタイトル、意味不明ですね〜。ラサーンはオリジナルな言語で話すクセがあったそうですが、これはなんと解釈したらいいのでしょう?「Rip」は「Rip Van Winkle」のこと。英辞郎によれば、「W. Irving 作『The Sketch Book』の主人公。20年間眠り続けた後で目覚めた」とあります。「Rig」は石油掘削装置やトレーラー、いたずら、八百長といった意味があるようですが、ラサーンによると「死後硬直」。つまり、人びとは生きているように見えて、その心は眠っていたり、硬直したりしている。覚醒してないってことですね。そして、最後の「Panic」がくる。「できると思いもしないことを私がやっているのを聴くと、彼らはパニックに陥るのさ」とは、ライナーノーツにあるラサーンの言葉です(訳は林建紀さんのものを拝借)。

1961年の『ウィー・フリー・キングス』にはじまるラサーン(当時はただの「ローランド・カーク」と名乗っていました)のマーキュリー録音は、このライムライト盤『リップ・リグ&パニック』で終焉を迎えます(ライムライトはエマーシーと並ぶマーキュリーの代表的な傍系レーベル。スーパーバイザーとして、クインシー・ジョーンズが参画していました)。次にラサーンが向かった先は、ブラック・ミュージックの宝庫アトランティック・レーベルですが、その話は次回にとっておきましょう。

マーキュリーといえば、Matsubayashi 'Shaolin' Kohji さんの手になる Mercury Records Collection というものすごいサイトがあります。録音データだけのディスコグラフィーでも、手持ちの CD のコレクションでもなく、アナログ盤(しかも、ほとんどがオリジナル盤だそうです)だけを詳細なコメントとジャケット写真つきで紹介する、という気の遠くなるようなサイトです。本家のマーキュリーはもちろん、傍系のエマーシーやライムライト(ジャズファンにとっては、こっちのほうがおなじみですね)などまで手を伸ばしていて、全部見るだけでも1日仕事(いや、1日じゃ終わりませんね、この量は)はたしていつまで続くのか。ご本人いわく、「生涯を通じた趣味になるでしょう」とのことです。私も陰ながら応援しています。

 

Roland Kirk "Rip, Rig And Panic"
(Limelight LM-82027/LS-86027)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, castanets, siren)
Jaki Byard (piano)
Richard Davis (bass)
Elvin Jones (drums)

Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studios, Englewood Cliffs, NJ; Jan 13, 1965

[Tracks] Roland Kirk Quartet - Rip Rig and Panic / Now Please Don't You Cry Beautiful Edith
01. No Tonic Press (music: Roland Kirk)
02. Once In A While (music: Michael Edwards / words: Bud Green)
03. From Bechet, Byas And Fats (music: Roland Kirk)
04. Mystical Dreams (music: Roland Kirk)
05. Rip, Rig And Panic (music: Roland Kirk)
06. Black Diamonds (music: M. Sealey)
07. Slippery, Hippery, Flippery (music: Roland Kirk)

[Links: Roland Kirk]
Periodicals 林建紀 (@ Read NKYM!)
The Rahsaan Roland Kirk Website
Roland Kirk Discography (by Michael Fitzgerald)
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jaki Byard]
jakibyard,org
[Links: RIchard Davis]
The Richard Davis Page
[Links: Elvin Jones]
Elvin Jones: Official Web Site

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2005年07月13日

ローランド・カーク『ドミノ』

domino.jpg Roland Kirk Quartet - Domino

先日、とある酒席で「で、ユキヒロさんはいったい誰のファンなの?」と訊かれ、思わず「ローランド・カークです!」と答えてしまった私。これには自分で驚きました。そうか、自分はそんなにカークが好きだったのか、と。

持っている CD の枚数からすれば、キース、マイルス、エヴァンス、ゲッツが四巨頭で、カークは第二グループに属しています。ほかに、ペッパー、キャノンボール、ドルフィー、スティット、ロリンズ、デックス、トレーン、ペトちゃん、モンク、ブラウニーあたりがこのグループになりそうです。

でも、あのストリッチやマンゼロの甲高い叫び、息漏れまくりのフルートのむせび泣きを思い出しただけで、ダメなんです。楽器を通しているはずなのに、これほど肉声を感じる人はいません。

ラサーン・ローランド・カーク。1936年8月7日、オハイオ州コロンバス生まれ。1977年12月5日、インディアナ州ブルーミントンで亡くなりました。

彼は闇の住人です。生まれたときからほとんど見えなかったようですが、幼少時に眼の治療に失敗。残っていたわずかな視力も失いました。視覚をもたない人は、ほかの感覚が鋭敏になるといいます。ラサーンの場合、それは耳でした。あらゆる音を聞き分ける聴力。それをあらゆる楽器で再現する力。そうしたものが彼の驚異の記憶力といっしょになると、そこに「ジャズの生き字引」が誕生します。

そう、ラサーンは博覧強記の人でもありました。ありとあらゆるレコードを記憶していたみたいだ、との証言もあります。頭の中には「ジャズの歴史」が詰まっていて、いつでも引き出しから取り出せる状態にありました。共演者は彼から「ジャズの伝統」を教わり、聴衆は彼の扇情的な MC に耳を奪われました。

歴史上の人物に祭り上げられてしまったジャイアンツも、彼と同時代を生きたイノヴェイターたちも、ラサーンの中で何の違和感もなく同居していました。彼らは演奏の端々に顔を出しますが、出てきたときはみんなラサーンの音になっていました。

ラサーンはよくいわれるような「伝統を破壊する者」ではなく、むしろこの時代では珍しいほど「伝統を知り、それを受け継いだ者」でした。それは彼の音楽を聴けばわかります。ただし、それは過去の模倣ではありません。ラサ−ンは無類の新し物好き、実験好きでもあったのです。

ラサーンというと、どうしても、3本のサックスを首からぶら下げて同時に吹くとか、口でフルートを吹きながら同時に鼻でもフルートを吹くとか、視覚的なイメージが先行してしまいますが、目を閉じ、心を真っ白にして、彼の『ドミノ』に耳を傾けてください。この音楽のどこがギミックなのでしょうか?(「ギミックは「からくり」「奇怪な演奏」のこと。ラサーンは生涯、このギミックという言葉と闘い続けました)

歌なしで、ここまで感情移入できる演奏を私は知りません。フランス生まれのマイナー・ワルツを、ラサーンはすべて「肉声」で語っています。その声は私の心に直接語りかけてきます。そして、意識の奥のほうでうごめく私の情動に火をつけるのです。ああ、ラサーン。アンタってホンマにサイコーやわ!

ラサーニアン(笑)のマスト・アイテム『ローランド・カーク伝』(ジョン・クルース著/林建紀訳)は河出書房新社より絶賛発売中。上記の本の訳者でラサーン研究家、林建紀さんによるラサーン評伝 Periodicals 林建紀 (@ Read NKYM!)、必見です。

追記:〈ドミノ〉の別テイクについて

現在発売されている『ドミノ』の CD には、〈ドミノ〉の別テイクを含むボーナストラックが数曲ついています。1962年4月17日のこのセッションは、翌18日と同じメンバー(ピアノはウィントン・ケリー)で収録されたといわれてきました。ところが、実はピアノはハービー・ハンコックが弾いていたんだそうです。後年発掘されたドルフィーの『イリノイ・コンサート』とともに、才人ハービーの意外な一面を知る思いがします。

 

Roland Kirk "Domino"
(Mercury MG-20748/SR-60748)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, flute, siren)
Wynton Kelly (piano) #7-10
Andrew Hill (piano, celeste) #1-6
Vernon Martin (bass)
Roy Haynes (drums) #7-10
Henry Duncan (drums) #1-6

Recorded at Nola Penthouse Studios, NYC; April 18, 1962 (#7-10)
Recorded at Ter-Mar Recording Studios, Chicago; September 6, 1962 (#1-6)

[Tracks]  Roland Kirk Quartet - Domino
01. Domino (music: Louis Ferrari / words: Jacques Plante)
02. Meeting On Termini's Corner (music: Roland Kirk)
03. Time (music: Richie Powell)
04. Lament (music: J.J. Johnson)
05. A Stritch In Time (music: Roland Kirk)
06. 3-In-1 Without The Oil (music: Roland Kirk)
07. Get Out Of Town (from "Leave It To Me") (music+words: Cole Porter)
08. Rolando (music: Roland Kirk)
09. I Believe In You (music+words: Frank Loesser)
10. E.D. (music: Roland Kirk)

[Links: Roland Kirk]
Periodicals 林建紀 (@ Read NKYM!)
The Rahsaan Roland Kirk Website
Roland Kirk Discography (by Michael Fitzgerald)
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atsushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Andrew Hill]
Andrew Hill's Official Website
Andrew Hill - Discography / Sessionography (by Marcel Safier)

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2005年01月19日

スタン・ゲッツ&ケニー・バロン『ピープル・タイム』

peopletime.jpg Kenny Barron & Stan Getz - People Time - Live

ジャズメンといえども人間ですから、老いれば腕も衰えます。テクニシャンとして鳴らした人は悲惨で、晩年の作品には聴くに耐えないものも正直、あります。でも、テクニックではなく歌心で勝負してきた人が長命を得たとき、そこには枯れた味わいや円熟味が加わって、えも言われぬ境地に達することがあります。スタン・ゲッツなどは、その代表でしょう。

白人テナーの雄スタン・ゲッツ。1927年2月2日、ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれ。1991年6月6日、カリフォルニア州マリブで死去。

「ゲッツは王様」というのは寺島靖国さんのフレーズですが、まさに王様にふさわしい数々のエピソードを残してくれました。そして、生涯のほとんどを白人だけのバンドで過ごした人でもあります(黒人中心のジャズの世界で、それがいかに不自然なことかは、ちょっと考えればわかるはず)。そういうネガティヴな要素はありますが、ゲッツが偉大なインプロヴァイザーだったという事実は消えません。

ピープル・タイム』は癌を告知され、死を覚悟して臨んだコペンハーゲンはカフェ・モンマルトルでの実況録音です(この3か月後に亡くなりました)。ここには、テナー1本で世を渡り歩いてきた、そして、ボサノヴァの大ヒットなどで日の当たる王道をつねに歩いてきた男の達観が感じられます。淡々と、そして朗々と歌い上げる名曲の数々。

選曲がまたニクイんです。チャーリー・ヘイデンの〈ファースト・ソング〉、ベニー・ゴルソンの〈アイ・リメンバー・クリフォード〉、マル・ウォルドロンの〈ソウル・アイズ〉などなど、ジャズファンなら、ある思い入れをもたずには聞けないような、ツボをついた曲が並んでいます。

ちなみに、このアルバムは、今やベテランの域に達したケニー・バロンの一世一代の名演でもあります。白人とばかり組んできたゲッツの最後の、そして最良の伴奏者が黒人のバロンだったというところが、人生の不思議でもあります(バロンのピアノは黒人臭をほとんど感じさせないのも事実ですが)。

 

Stan Getz, Kenny Barron "People Time"
(EmArcy 5101362)

Stan Getz (tenor sax)
Kenny Barron (piano)

Produced by Jean-Philippe Allard
Recorded and Mixed by Johnnie Hjerting
Recoreded live at the Cafe Montmartre, Copenhagen, March 3-6, 1991

[Tracks: Disc 1] Kenny Barron & Stan Getz - People Time - Live
01. East Of The Sun (And West Of The Moon) (music+words: Brooks Bowman)
02. Night And Day (music+words: Cole Porter)
03. I'm Okay (music+words: Eddie Del Barrio)
04. Like Someone In Love (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
05. Stablemates (music: Benny Golson)
06. I Remember Clifford (music: Benny Golson)
07. Gone With The Wind (music: Allie Wrubel / words: Herbert Magidson)
08. First Song (For Ruth) (music: Charlie Haden)

[Tracks: Disc 2] Kenny Barron & Stan Getz - People Time - Live
01. There Is No Greater Love (music: Isham Jones / words: Marty Symes)
02. The Surrey With The Fringe On Top (music: Richard Rodgers / words: Oscar Hammerstein II)
03. People Time (music: Benny Carter)
04. Softly, As In A Morning Sunrise (music: Sigmund Romberg / words: Oscar Hammerstein II)
05. Hush-A-Bye (music: Sammy Fain / words: Jerry Seelen)
06. Soul Eyes (music: Mal Waldron)

[Links: Stan Getz]
Stan Getz Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Stan Getz Discography (by Riccardo Di Filippo Luigi Maulucci & Nicola Rascio)
[Links: Kenny Barron]
Kenny Barron (Official Website)
Kenny Barron Discography (by Michael Fitzgerald)

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