2007年12月26日

オスカー・ピーターソン『プリーズ・リクエスト』

We Get Requests.jpg Oscar Peterson Trio - We Get Requests

訃報です。
カナダが生んだ世界的なスター、オスカー・ピーターソンが去る2007年12月23日、カナダ・トロント郊外のミシソーガの自宅で亡くなりました。死因は腎不全。82歳でした。

オスカー・ピーターソン(Oscar Emmanuel Peterson)は、1925年8月25日、カナダのモントリオールで生まれました。5歳からはじめたというピアノのアイドルは、アート・テイタム。超絶技巧でならしたテイタムに習い、ピーターソンはやがて彼と並び称されるほどのテクニックを身につけていきます。
全米デビューは24歳のとき。1949年、ノーマン・グランツ主催のカーネギーホール・コンサートで名声を獲得。以後、JATP ツアーの常連となり、ヴァーヴ・レーべルに膨大な数の録音を残します。

ピーターソンといえば、88の鍵盤をフルに使ったダイナミックな演奏で知られています。ついたあだ名が「鍵盤の皇帝("Maharajah of the keyboard" by Duke Ellington )」。力強いタッチでグイグイ引っ張る彼のピアノは、まさにゴージャスの一言。圧倒的なドライヴ感に身を委ねれば、気持ちいいことこのうえありません。

プリーズ・リクエスト』は、ピーターソンが黄金期を築いたヴァーヴ時代の最後の1枚です。
ライヴでは、客のリクエストを受けつけたというピーターソン。2度にわたってソングブック・シリーズを吹きこんだ彼のことですから、レパートリーの広さで右に出る者はいません。だからこそ「リクエストOK」なのですが、そんなリクエストのなかから選び抜かれた珠玉のメロディーを、ときに豪華に、ときに愛らしく、ときにパワフルに料理するピーターソンの腕前は、もはや人間国宝級!

ジョビンの名曲〈コルコヴァード〉〈イパネマの娘〉も演ってます。小技をやらせても抜群にうまいピーターソン。鼻歌のように軽やかに歌う彼のピアノに、心がウキウキしてきます。
レイ・ブラウンの弓弾きが印象的な〈ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー〉。クラシックの小品を思わせる出だしがなんとも粋です。
アルバムの最後に収められた〈グッバイ J.D.〉は、ノーマン・グランツが去ったあとのヴァーヴで、ピーターソンのアルバムをプロデュースしてきたジム・デイヴィスに捧げた曲。オリジナル曲はあまりやらないピーターソンですが、お別れの言葉だけは自分で言いたかったんですね。でも、辛気くささが微塵も感じられない曲調なのが、ちょっと笑えます。

 

Oscar Peterson "We Get Requests"
(Verve V/V6 8606)

Oscar Peterson (piano)
Ray Brown (bass)
Ed Thigpen (drums)

Produced by Jim Davis
Recorded by Val Valentin, Bob Simpson
Recorded in NYC; October 19 (#1, 5, 7), 20 (#2-4, 6, 8, 9), ?? (#10), 1964

[Tracks] Oscar Peterson Trio - We Get Requests
01. Corcovado [Quiet Nights And Quiet Stars] Antonio Carlos Jobim (music) / Antonio Carlos Jobim (Portugal lyrics), Gene Lees (English lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Quiet Nights of Quiet Stars (Corcovado)
02. The Days Of Wine And Roses Henry Mancini (music) / Johnny Mercer (lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Days of Wine and Roses
03. My One And Only Love Guy Wood (music) / Robert Mellin (lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - My One And Only Love
04. People Jule Styne (music) / Bob Merrill (lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - People
05. Have You Met Miss Jones Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Have You Met Miss Jones?
06. You Look Good To Me Clement A. Wells Jr., Seymour Lefco (music) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - You Look Good to Me
07. The Girl From Ipanema Antonio Carlos Jobim (music) / Vinicius de Moraes (Portugal lyrics), Norman Gimbel (English lyrics) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Girl From Ipanema
08. D & E John Lewis (music) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - D & E
09. Time And Again Stuff Smith (music) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Time and Again
10. Goodbye J.D. Oscar Peterson (music) Oscar Peterson Trio - We Get Requests - Goodbye J.D.

[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peterson (Official Site)
Oscar Peterson: A Jazz Sensation (@ Library and Archives Canada)
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Jazz Giant : The Oscar Peterson Discography
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Ray Brown]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen (Official Site)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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2007年06月15日

エラ・フィッツジェラルド『エラ・イン・ベルリン』

macktheknifeellainberlin.jpg Ella Fitzgerald - The Complete Ella In Berlin: Mack the Knife

アート・ペッパー(1982年)、ウェス・モンゴメリー(1968年)ときて、ようやく6月15日の命日特集も打ち止めかと思いきや、もうひとり、とんでもない大物がこの日に亡くなっています。「ファースト・レディ・オブ・ソング」こと、エラ・フィッツジェラルド。1917年4月25日、ヴァージニア州ニューポートニューズ生まれ。1996年6月15日、カリフォルニア州ビヴァリーヒルズで亡くなりました。享年79歳。

晩年は糖尿病のため視力を失い、両足の切断も余儀なくされたという悲しい話が伝わっていますが、元気だったときのエラはほんとにすごかった。グラミー賞に輝くこと、なんと13回。大編成のオーケストラにも負けない存在感がありながら小技もうまく、急速調のスキャットをやらせても、しっとりとしたバラードを歌わせてもサマになる、スケールの大きなシンガーでした。そして、見かけに似合わず、どこかかわいらしさを感じさせる歌声。機械のような正確な音程を誇る技巧派である一方、歌に情感を込めること実に巧みで、二度とこんな歌手は出ないでしょう、きっと。非の打ち所がないとはこのことです。

不世出の歌姫エラのライヴ・パフォーマンスの頂点を記録した『エラ・イン・ベルリン』。1960年、西ドイツ(当時)のベルリンを訪れたエラを、ドイッチュラントホールに集まった1万2000人の大観衆が迎えます。あたたかい拍手に包まれて、うれしそうに「サンキュー」をくり返すエラ。客席の熱気に押される形でコンサートは徐々にヒートアップしていきます。

ひとつめのピークが、クルト・ワイルの〈マック・ザ・ナイフ〉で訪れます。ベルリンにちなんで、ドイツ出身の作曲家の曲をとりあげたわけですが、これが大受け。調子に乗ったエラは、歌詞を変えて「ボビー・ダーリン」「ルイ・アームストロング」などと叫び、得意のルイの物真似まで披露します(3分18秒あたり)。エラの当たり曲となった〈マック・ザ・ナイフ〉ですが、実はこのときはじめて歌ったんだそうで、よっぽどこのコンサートが忘れられなかったんでしょう。

続いて、エラの十八番〈ハウ・ハイ・ザ・ムーン〉。このエキサイティングなスキャットを聴けば、エラがなぜ「ファースト・レディ」なのか、わかります。圧倒的なドライヴ感、正確無比のテクニック、途中で〈煙が目にしみる〉などを挿入してみせるセンス、どれをとっても天下一品です。

バックをつとめるのは、切れ者ポール・スミス率いるカルテット。ジム・ホールがギターで加わっています。彼らの巧みな伴奏も聴きものです。ホントにすばらしい!

 

Ella Fitzgerald "Mack The Knife: Ella In Berlin"
(Verve MGV 4041 / MGVS 6163)

Ella Fitzgerald (vocal)
Paul Smith (piano)
Jim Hall (guitar)
Wilfred Middlebrooks (bass)
Gus Johnson (drums)

Recorded live at Deutschland Halle, Berlin, West Germany; February 13, 1960

[Tracks] Ella Fitzgerald - The Complete Ella In Berlin: Mack the Knife
01. Gone With The Wind Allie Wrubel (music) / Herbert Magidson (lyrics)
02. Misty Erroll Garner (music) / Johnny Burke (lyrics)
03. The Lady Is A Tramp Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)
04. The Man I Love George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
05. Summertime George Gershwin (music) / DuBose Heyward (lyrics)
06. Too Darn Hot Cole Porter (music and lyrics)
07. Lorelei George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
08. Mack The Knife Kurt Weill (music) / Bertolt Brecht (German lyrics), Marc Blitzstein (English lyrics)
09. How High The Moon Morgan Lewis (music) / Nancy Hamilton (lyrics)

[Links: Ella Fitzgerald]
Ella Fitzgerald (Official Website)
Ella Fitzgerald Fan Page
[Links: Jim Hall]
Jim Hall (Official Website)
Jim Hall Maniacs (by 益満妙:エキマンタエ)
ジム・ホール:アルバム蒐集 (by kawagu)

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2007年04月30日

オスカー・ピーターソン『プット・オン・ア・ハッピー・フェイス』

peterson_putonahappyface.jpg

昨日、家族でミュージカルアニーを観てきました。ミュージカル初体験の娘2人には、どう映ったのかな? 2人ともダンスと歌が何より好きだから、きっと何かを感じてくれたんじゃないかと、すぐに元を取ろうとするのは、よこしまな親心です(笑)。

それはさておき、私の頭のなかでは、昨日から主題歌〈トゥモロー〉がグルグル回っています。ひょっとして、私がいちばん感動してたりして(笑)。で、自分の iTunes を探してみたんですが、ないですねえ。ジャズ向きの曲じゃないってことでしょうか。

アニーのソングライター・チームは、作曲チャールズ・ストラウス、作詞マーティン・チャーニン(ストラウスのサイトで、英語版〈トゥモロウ〉が聴けます)。しかたがないので、同じストラウスが手がけたミュージカル『バイ・バイ・バーディー(Bye Bye Birdie, 1960)』より、〈プット・オン・ア・ハッピー・フェイス〉をとりあげます(作詞はリー・アダムス)。

その名も『プット・オン・ア・ハッピー・フェイス』というオスカー・ピーターソンのアルバムがあります。シカゴのロンドン・ハウスでのライヴ作品です。「ピーターソン+ロンドン・ハウス」でピンときた人は、当たりです。あの有名な『ザ・トリオ』と同じ場所、同じメンバーでのパフォーマンスなんですね(ただし録音年は別)。

1961年と62年のシカゴ、ロンドン・ハウスでのライヴは、
『ザ・トリオ』(Verve V/V6 8420)
『ザ・サウンド・オブ・ザ・トリオ』(Verve V/V6 8480)
『プット・オン・ア・ハッピー・フェイス』(Verve V/V6 8660)
『サムシング・ウォーム』(Verve V/V6 8681)
の4枚に分散収録されています。

現在は、この4枚に収められたマスターテイクだけを集めた『Complete Master Takes at the London House』や、その他の未収録曲もあわせたCD5枚組の『London House Sessions』などの箱ものが出ています。私がもっているのは、かつて日本で発売された『ライヴ・アット・ザ・ロンドン・ハウス』というCDで、『サムシング〜』と『プット〜』の2枚がカップリングされています。

さて、ピーターソンの奏でる〈プット〜〉はどうか。「(嫌なことがあっても)ハッピーな顔して」という原曲どおりの、ご機嫌な演奏です。手数は多いけれど、安心して聴けるピアノ・トリオ。古き良きアメリカのにおいがしてきます。

そういえば、アニーの舞台も大恐慌時代のニューヨーク。辛くても希望をもって生きよう、明日はきっとよくなるよ、という単純明快なメッセージが、今の私にはかえって新鮮に響きました。

  

Oscar Peterson "Put On A Happy Face"
(Verve V/V6 8660)

Oscar Peterson (piano)
Ray Brown (bass)
Ed Thigpen (drums)

Produced by Jim Davis
Reocrded by Val Valentin
Recorded live at the London House, Chicago; September 27, 1962

[Tracks]
01. Put On A Happy Face Charles Strouse (music) / Lee Adams (lyrics)
02. Old Folks Willard Robinson (music) / Dedette Lee Hill (lyrics)
03. Woody'n You Dizzy Gillespie (music)
04. Yesterdays Jerome Kern (music) / Otto Harbach (lyrics)
05. Diablo Oscar Peterson (music)
06. Soon George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
07. The Lonesome One Oscar Peterson (music)

[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peteson (Official Website)
Oscar Peterson: A Jazz Sensation (@ Library and Archives Canada)
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen Online

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2007年03月01日

『ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー・トリオ』

kelly_smokinatthehalfnote.jpg Wes Montgomery & Wynton Kelly Trio - Smokin' At the Half Note

ウェスが専属契約を結んでいたリヴァーサイド・レーベルは、創業者にして経営者のビル・グロウアーが1963年12月にこの世を去ると経営が悪化、翌64年7月には倒産してしまいます。

コアなジャズ・ファンにしてみると、古き良きジャズ界の良心ともいうべきオリン・キープニュースがプロデュースした、ウェスの純ジャズ作品をもっと聴きたかったというのが本音ですが、時代は容赦なく移り変わり、ジャズはポピュラー音楽としての地位を失っていきます。

そんな時代にあって、ヒット作を量産し、商業的な成功を収めたプロデューサー、クリード・テイラーの基本方針をまとめると、こんな感じになるでしょうか。

1、曲は短くコンパクトに(ラジオでかかるように)
2、アドリブは極力排除(リスナーを限定するから)
3、キャッチーでわかりやすい当時の「ポップス」をセレクト

これって、そのまんま、当時吹き荒れたフリー・ジャズ旋風のアンチテーゼになっています。60年代のトレーンあたりを思い浮かべてもらうといいのですが、

1、演奏はどんどん長くなる
2、際限なく続く、抽象的で難解なアドリブ
3、オリジナルどころか「曲」という概念そのものが希薄になる

というわけで、見事なまでに「正反対」なんですね。フリー・ジャズの功罪についてはここでは触れませんが、ジャズの大衆化を目論んだクリード・テイラーにとって、ウェスの「オクターヴ奏法」は、非常に魅力的な素材でした。ヴァーヴ時代のウェスの作品は、したがって、希代のインプロヴァイザーであるウェスが、諸刃の刃となる高度なアドリブを徐々に封印し、A&M 時代に完成するイージー・リスニング路線へと移行していく過程ととらえることができます。

とはいえ、なかにはいくつか例外があって、『ハーフ・ノートのウェス・モンゴメリーとウィントン・ケリー・トリオ』は、クリード・テイラー憎しのコアなジャズ・ファンも思わず「よくぞ残してくれました」と拍手を贈りたくなる1枚です。ウェスのリーダー作と思われがちですが、マイルス・バンドのリズム・セクションがそのまま独立したウィントン・ケリーのトリオに、ウェスが客演した形で、LP のA面はハーフノートでのライヴ、B面はスタジオ録音です。

かつてのボス、マイルスの〈ノー・ブルース〉からライヴ会場はいきなり沸点に達します。後半も、ライヴの熱気をそのままスタジオに持ち込んだかのようで、続けて聴いても、まったく違和感はありません。ウェスの必殺ワザ「三段変則」を心ゆくまで堪能してください。ウィントン・ケリーも、この特集の最後を飾るにふさわしい大熱演。ウェスだけでなくケリーの代表作としても、おすすめです。

 

Wynton Kelly, Wes Montgomery "Smokin' At The Half Note"
(Verve V/V6 8633)

Wynton Kelly (piano)
Wes Montgomery (guitar)
Paul Chambers (bass)
Jimmy Cobb (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded live at the Half Note, NYC; June 24, 1965 (#1, 2)
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; September 22, 1965 (#3-5)

[Tracks] Wes Montgomery & Wynton Kelly Trio - Smokin' At the Half Note
01. No Blues Miles Davis (music)
02. If You Could See Me Now Tadd Dameron (music) / Carl Sigman (lyrics)
03. Unit 7 Sam Jones (music)
04. Four On Six Wes Montgomery (music)
05. What's New Bob Haggart (music) / Johnny Burke (lyrics)

[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atsushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wes Montgomery]
Wes Montgomery Fan Club
Wes Montgomery Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Wes Montgomery Discography (by Ed Fila)
[Links: Jimmy Cobb]
Jazz Legend Jimmy Cobb (Official Website)

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2006年12月15日

ビル・エヴァンス&ジェレミー・スタイグ『ホワッツ・ニュー』

evans_whatsnew.jpg Bill Evans - What's New

ヴァーヴ時代でいちばん好きなエヴァンス盤をあげろといわれたら、私は迷わず『ホワッツ・ニュー』をあげます。これ以上ないほど激しく燃えたエヴァンス。その熱の発火点は、間違いなくジェレミー・スタイグにあります。

漏れる息まで音楽と化すフルート奏者、ジェレミー・スタイグ。1942年9月23日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。1962年に交通事故に遭い、顔面の左側が麻痺、聴覚にも障害が出て、以後、特殊なマウスピースを使わざるをえなかったといいます。そのせいか、彼の吹くフルートは異端の匂いがプンプンします。これほど肉声を感じさせるフルート吹きは、ほかにラサーン・ローランド・カークくらいしか思い浮かびません。

1968年末、ニューヨークのヴィレッジに住んでいたスタイグは、ヴィレッジ・ヴァンガードやトップ・オブ・ザ・ゲイトに出演中のエヴァンス・トリオのステージによく飛び入りで参加しました。当時、ベースのエディ・ゴメスはスタイグ・バンドのメンバーでもあり、エヴァンスも、スタイグのデビュー以来、彼をウォッチしてきたといい(2人の出会いは、1964年のフロリダにまでさかのぼります)、彼らの共演するべく運命づけられていたようです。

それにしても、どうですか、〈ストレート・ノー・チェイサー〉の激しさといったら。都合4日間にわたったレコーディングは、けっして順調とはいえなかったようですが、このスリリングな展開からはそんなことは微塵も感じられません。モンクの楽曲だからということもないでしょうが、エヴァンスもここぞとばかり鍵盤を叩きつけます。熱にうなされたようにフルートを吹きまくるスタイグ。いやはや、カッコよすぎです!

アルバムのタイトルとなった〈ホワッツ・ニュー〉。バラードだからといって、おとなしいだけでは終わらせないスタイグのかすれた音色にしびれます。エヴァンスもトリオのときとは明らかに違う力強いタッチで応えます。複雑にからみあうフルート、ピアノ、ベースにドラム。見事です。

そして、お約束の〈枯葉〉。かなりアップテンポで演奏されるこの〈枯葉〉には、落ち葉のようなしおらしさはまったく感じられません。途中、テクニシャン、ゴメスの独壇場を経て登場するエヴァンス。いやあ、この日のエヴァンスはホントにきてます。ぜひ大音量で聴いてください。そして、体全体で感じてください。切れ味、力感、フレーズ、どれをとってもサイコーです。近所ともめたくない人(笑)は、ヘッドフォンでもじゅうぶん楽します。

かつてのボス、マイルスのオリジナル〈ソー・ホワット〉。非常に手の込んだアレンジですが、熱気を失っていないのはさすがです。生まれるべくして生まれた傑作なのでしょう!

このアルバムで、切れ味鋭いスティックさばきを聴かせているのは、新加入のドラマー、マーティ・モレルです。エヴァンス・トリオはここにきてようやくメンバーを固定、ゴメス、モレルとのトリオは1974年まで続きます。

 

Bill Evans, Jeremy Steig "What's New"
(Verve V6 8777)

Jeremy Steig (flute)
Bill Evans (piano)
Eddie Gomez (bass)
Marty Morrell (drums)

Produced by Helen Keane
Recorded by Ray Hall
Recorded at Webster Hall, NYC; January 30, February 3, 5, March 11, 1969

[Tracks] Bill Evans - What's New
01. Straight, No Chaser Thelonious Monk (music)
02. Lover Man Roger Ramirez, Jimmy Sherman (music) / Jimmy Davis (lyrics)
03. What's New Bob Haggart (music) / Johnny Burke (lyrics)
04. Autumn Leaves Joseph Kosma (music) / Jacques Prevert (French lyrics), Johnny Mercer (English lyrics)
05. Time Out For Chris Bill Evans (music)
06. Spartacus Love Theme Alex North (music)
07. So What Miles Davis (music)

[Links: Jeremy Steig]
Jeremy Steig (the Official Site of Steig Music Company)
[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Eddie Gomez]
Eddie Gomez (建設中?の official website)
Eddie Gomez (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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ビル・エヴァンス『アローン』

evans_alone.jpg Bill Evans - Alone

オーヴァー・ダビングなしの純粋なソロ作品、その名も『アローン』。エヴァンスに立て続けにグラミー賞をもたらしたこのアルバムは(1970 Best Jazz Performance - Small Group Or Soloist With Small Group)、純粋にピアニスト、エヴァンスを聴く喜びを与えてくれます。

目に見える形での「自己との対話」はありませんが、エヴァンスがソロ・ピアノを弾くときは、きっと心の中で「自己との対話」を続けていたに違いありません。それをエヴァンスは、「音楽との一体感」と表現しています。以下、エヴァンス自身の言葉で語ってもらいましょう(引用はオリジナル・ライナーより。訳は拙訳です)。

私の人生でもっとも喜びに満ちた瞬間は、たぶん、ピアノを自在に操り、その音楽的な表現力を最大限に引き出したときだと思う。振り返ってみると、たった独りで音楽と向き合った数えきれないほどの時間が、私の人生を導く指針となってきたようだ。独りきりで演奏していると、私は音楽と一体になった気がした。音楽の技術的、あるいは分析的な面が自然と正しい方向へと向かい、音楽を心から理解するには、ただひたすら耳を傾ければいいんだということを私に思い出させてくれた。おそらく私だけなのだろうが、私はプロの演奏家であるにもかかわらず、聴衆のいないところで演奏するのを好んだ。それは間違いない。私が聴衆とコミュニケーションをとりたいか、とりたくないかといった問題ではなく、むしろ個人の自意識の問題だろう。訓練と集中力を通じてそうした自意識に打ち勝たなければならない。だが、人が本当にたった独りで自分の楽器と音楽とともにあることを知るのは、私にとってはいつも魅力的で熱が入る状況だった。私はそれによってベストな演奏レベルを知るのだ。だから、私がソロ・ピアノ録音で提示しようととくに望んだのは、このユニークなフィーリングなのである。

ピアノと一体化し、音楽と一体化し、無の境地に入っていくエヴァンス。考えるのではなく、ただ感じるだけ。音楽に耳をすませば、自然と結果はついてくる。これを出されたら、ただひたすら参りましたと降参するしかない極私的愛聴曲〈ア・タイム・フォー・ラヴ〉。ジョー・ザヴィヌル作のエヴァンス愛演曲〈ミッドナイト・ムード〉。そして、14分半にもおよぶ静謐な〈ネヴァー・レット・ミー・ゴー〉。ホント、ため息が出ます。

 

Bill Evans "Alone"
(Verve V6 8792)

Bill Evans (piano)

Produced by Helen Keane
Recorded by Ray Hall
Recorded at Webster Hall, NYC; September 10, 1968

[Tracks] Bill Evans - Alone
01. Here's That Rainy Day Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
02. A Time For Love Johnny Mandel (music) / Paul Francis Webster (lyrics)
03. Midnight Mood Joe Zawinul (music)
04. On A Clear Day (You Can See Forever) Burton Lane (music) / Alan Jay Lerner (lyrics)
05. Never Let Me Go Jay Livingston (music) / Raymond B. Evans (lyrics)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』

evans_atthemontreuxjazzfestival.jpg Bill Evans, Eddie Gomez & Jack DeJohnette - At the Montreux Jazz Festival

1968年の夏、エヴァンス・トリオはスイスの保養地モントルーへ向かい、第2回モントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出演します。この年の目玉は本場アメリカからのゲスト、エヴァンス・トリオ。カーリン・クロッグ、ヤン・ガルバレク、ジョン・サーマンといったヨーロッパ勢はもちろん、ニーナ・シモン(!)も参加したといいます。

モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』は、このときのパフォーマンスを収めた作品です。ドラマーのジャック・デジョネットが参加した唯一の公式盤として、あるいはレマン湖に浮かぶ古城、シヨン城が印象的なジャケットから(別名『お城のエヴァンス』といわれています)、ヴァーヴ時代のエヴァンス作品のなかでもとくに親しまれているようです。

と、これを書いていて今ふと思ったのですが、私、もしかしたらこのシオン城、観たことがあるかもしれません。学生時代、レマン湖にいったことがあって(といっても、わずか1日半の滞在でしたが)、そのなかで、どこかの古城を見学した記憶がかすかにあるのです。当時はまだジャズにのめり込んでおらず、当然このアルバムのことも知らなかったわけですが、あ〜、だんだん本当のことのような気がしてきました。ク〜ッ、もったいない!!!

それはさておき、ジャック・デジョネットです。1968年といえば、デジョネットが『フォレスト・フラワー』で一世を風靡したチャールズ・ロイド・カルテットからマイルスのグループへ、活動の場を移したその年です。ロイド・カルテットには後の盟友キース・ジャレットもいたわけですが、この時期にデジョネットがエヴァンスと共演した事実は実に興味深い。しかも、彼は1回限りのゲストではなく、レギュラーとしてエヴァンス・トリオに参加したといいます。

モントルー後、彼らはロンドンのロニー・スコッツに4週間出演、そこに、実に間の悪いことに、マイルスがぶらりとやってきます。そして、デジョネットとたまたま演奏していたベーシスト、デイヴ・ホランドを気に入り、自分のグループへかっさらっていったのです。

一瞬で終わってしまったデジョネット入りのエヴァンス・トリオですが、このアルバムでのパフォーマンスがよかっただけに、実に悔やまれます。エヴァンス作品のなかでも際立ってソリッドな印象を与えるこの盤の影の主役は、やはりデジョネットでした。

エルヴィン・ジョーンズ参加のトミー・フラナガン盤『オーヴァーシーズ』や『エクリプソ』、トニー・ウイリアムス参加のグレイト・ジャズ・トリオ盤『アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(ピアノはハンク・ジョーンズ)など、ドラマーが変わるだけで別人のようになるピアニストですが、エヴァンスも例外ではありません。だからこそ、エヴァンスにはベーシストだけでなく、もっとドラマーにこだわってほしかったと思うのは、私だけではないはずです。

エヴァンス・トリオのパフォーマンスは野外フェスではなく、カジノ・ドゥ・モントルー(現在はカジノ・バリエール・モントルー)を会場として行われました。ふだんはもちろんカジノですが、フェスティヴァルの期間中は現在でもコンサート会場となるようです。このアルバムによって、エヴァンスは2回目のグラミー賞を獲得します(1986 Best Instrumental Jazz Performance - Small Group Or Soloist With Small Group)。エヴァンスのマネージャー、ヘレン・キーンがプロデュースをしたなかでは、はじめてのグラミー賞作品となりました(以後、7回の受賞を数える)。

 

"Bill Evans At The Montreux Jazz Festival"
(Verve V6 8762)

Bill Evans (piano)
Eddie Gomez (bass) except #5
Jack DeJohnette (drums) except #5

Produced by Helen Keane
Recorded by Pierre Grandjean, Jean-Claude Martin
Recorded live at Casino de Montreux, Switzerland; June 15, 1968

[Tracks] Bill Evans, Eddie Gomez & Jack DeJohnette - At the Montreux Jazz Festival
01. One For Helen Bill Evans (music)
02. A Sleepin' Bee Harold Arlen (music) / Truman Capote (lyrics)
03. Mother Of Earl Earl Zindars (music)
04. Nardis Miles Davis (music)
05. I Loves You, Porgy George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
06. The Touch Of Your Lips Ray Noble (music and lyrics)
07. Embraceable You George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
08. Someday My Prince Will Come Frank Churchill (music) / Larry Morey (lyrics)
09. Walking Up Bill Evans (music)
10. Quiet Now Denny Zeitlin (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Eddie Gomez]
Eddie Gomez (建設中?の official website)
Eddie Gomez (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)
[Links: Jack DeJohnette]
Jack DeJohnette's Official Website
Jack DeJohnette Home Page (by Piotr Marek, Jr.)
Jack DeJohnette (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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2006年12月12日

アニタ・オディ『アニタ・シングス・ザ・モスト』

anita_singsthemost.jpg アニタ・オデイ - アニタ・シングズ・ザ・モスト

1957年1月31日録音の『アニタ・シングス・ザ・モスト』。もともと『ス・ワンダフル』というタイトルでリリースされる予定でしたが(Verve MGV 2086)、どういうわけか、タイトルが変更され、カタログ番号もつけ直されて発売されました(Verve MGV 8259)。

ヴァーヴといえばオスカー・ピーターソンというわけで、ノーマン・グランツがありとあらゆるセッションに起用したピーターソンのドラムレス・トリオ(ピアノ、ギター、ベース)にドラマーを加えたカルテットがアニタの伴奏にあたります。

ささやくような嗄れた声で迫る冒頭のメドレーは、アップテンポの〈ス・ワンダフル〉の間に、同じガーシュウィン兄弟の〈ゼイ・キャント・テイク・アウェイ・フロム・ミー〉をグッとテンポを落としてはさむという粋なアレンジ。

どんなにアップテンポな曲でも難なく弾きこなすピーターソンをゲストに迎えたからには、アニタも黙っていません。8曲目〈ゼム・ゼア・アイズ〉。これ以上ないほどのスピードで押しまくるピーターソンに一歩も引けを取らないアニタの軽やかなテクニックが光ります。ハーブ・エリスのソロもきてますねえ。

アニタのバラードにうっとりしたいなら、2曲目〈テンダリー〉。抑え気味のピーターソンのピアノが、しっとりとした情感をたたえて、いいですねえ。絢爛豪華に弾くだけじゃない、ピーターソンのうまさが出ています。最高のバックバンドを得て、アニタも気持ちよさそうです。

 

Anita O'Day "Anita Sings The Most"
(Verve MGV 8259)

Anita O'Day (vocal)
Oscar Peterson (piano)
Herb Ellis (guitar)
Ray Brown (bass)
Milt Holland or John Poole (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in LA; January 31, 1957

[Tracks] アニタ・オデイ - アニタ・シングズ・ザ・モスト
01. 'S Wonderful 〜 They Can't Take That Away From Me George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
02. Tenderly Walter Gross (music) / Jack Lawrence (lyrics)
03. Old Devil Moon Burton Lane (music) / Edgar Y. Harburg (lyrics)
04. Love Me Or Leave Me Walter Donaldson (music) / Gus Kahn (lyrics)
05. We'll Be Together Again Carl Fischer (music) / Frankie Laine (lyrics)
06. Stella By Starlight Victor Young (music) / Ned Washington (lyrics)
07. Taking A Chance On Love Vernon Duke (music) / John Latouche, Ted Fetter (lyrics)
08. Them There Eyes Maceo Pinkard (music) / William Tracey, Doris Tauber (lyrics)
09. I've Got The World On A String Harold Arlen (music) / Ted Koehler (lyrics)
10. You Turned The Tables On Me Louis Alter (music) / Sidney Mitchell (lyrics)
11. Bewitched, Bothered And Bewildered Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)

[Links: Anita O'Day]
Anita O'Day (Official Website)
[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peterson (Official Website)
Oscar Peterson: A Jazz Sensation (@ Library and Archives Canada)
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Jazz Giant: The Oscar Peterson Discography

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『ピック・ユアセルフ・アップ・ウィズ・アニタ・オディ』

anita_pickyourselfup.jpg Anita O'Day - Pick Yourself Up

ジス・イズ・アニタ』から1年後の1956年12月、ほとんど同じようなメンバーを集めて、『ピック・ユアセルフ・アップ・ウィズ・アニタ・オディ』が収録されました。

4曲は、『ジス・イズ〜』と同じカルテットに、トランペットのハリー・エディソンとヴァイブのラリー・バンカー(エヴァンス・トリオに参加したドラマーです!)を加えた演奏。残りの曲は、これまた『ジス・イズ〜』と同じアレンジャー、バディ・ブレグマン率いるオーケストラとの共演です。タイトルどおり、アニタを聴いて「元気になろう」というわけで、男まさりの姉御肌、アニタの生きのいい面と、しっとりと歌い上げる妖婉さが1枚で楽しめる盤となっています。

ラリー・バンカーのヴァイブが耳に心地よい1曲目〈ドント・ビー・ザット・ウェイ〉。微笑みながら歌うアニタの顔が浮かぶようです。こちらも自然とウキウキした気分になってきます。続く〈レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス〉は、ほのかなラテン・フレイバーにゾクゾクします。言葉を口のなかで軽やかに転がすアニタが聴きたければ、表題曲〈ピック・ユアセルフ・アップ〉をどうぞ。10曲目〈アイ・ウォント・ダンス〉のいかにもいかにもポール・スミス、というピアノに思わずニヤリ。

オーケストラでは、『真夏の夜のジャズ』でノックアウトされた〈スウィート・ジョージア・ブラウン〉も入ってますねえ。ドラムの音だけをバックに歌う出だしといい、段階的にテンポを上げていく構成といい、基本的なアレンジはいっしょなようですが、こちらは相手がオーケストラとあって、おおらかに、ゆったりと歌い上げるアニタです。

声量のない彼女はフルメンバーのビッグバンドが相手だと力負けする気がしますが、そう聴こえないのは、バックの音が適度に抑えられているのと、聴かせどころをおさえたブレグマンの編曲のおかげでしょう。



Anita O'Day "Pick Yourself Up"
(Verve MGV 2043)

Anita O'Day (vocal)

#1, 2, 5, 10
Harry "Sweets" Edison (trumpet)
Larry Bunker (vibraphone)
Paul Smith (piano)
Berney Kessel (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Alvin Stoller (drums)

#3, 4, 6-9, 11, 12
Buddy Bregman (arranger, conductor)
Conte Candoli, Pete Candoli, Conrad Gozzo, Ray Linn (trumpet)
Milt Bernhardt, George Roberts, Frank Rosolino, Lloyd Ulyate (trombone)
Herb Geller, Bud Shank (alto sax)
Georgie Auld, Bob Cooper (tenor sax)
Jimmy Giuffre (baritone sax)
Paul Smith (piano)
Al Hendrickson (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Alvin Stoller (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in LA; December 18 (#1, 2, 5, 10), 19 (#6, 9, 11), 20 (#3, 4, 7, 8, 12), 1956

[Tracks] Anita O'Day - Pick Yourself Up
01. Don't Be That Way Edgar Sampson, Benny Goodman (music) / Mitchell Parish (lyrics)
02. Let's Face The Music And Dance Irving Berlin (music and lyrics)
03. I Never Had A Chance Irving Berlin (music and lyrics)
04. Stompin' At The Savoy Edgar Sampson, Chick Webb, Benny Goodman (music) / Andy Razaf (lyrics)
05. Pick Yourself Up Jerome Kern (music) / Dorothy Fields (lyrics)
06. Stars Fell On Alabama Frank Perkins (music) / Mitchell Parish (lyrics)
07. Sweet Georgia Brown Ben Bernie, Meceo Pinkard, Kenneth Casey (music and lyrics)
08. I Won't Dance Jerome Kern (music) / Dorothy Fields, Oscar Hammerstein II, Otto Harbach, Jimmy McHugh (lyrics)
09. Man With A Horn Eddie DeLange, Bonnie Lake, Truman Jenny (music and lyrics)
10. I Used To Be Color Blind Irving Berlin (music and lyrics)
11. There's A Lull In My Life Harry Revel (music) / Mack Gordon (lyrics)
12. Let's Begin Jerome Kern (music) / Otto Harbach (lyrics)

[Links: Anita O'Day]
Anita O'Day (Official Website)
[Links: Harry Edison]
Harry "Sweets" Edison: Biography, Selected Discography, Transcriptions (Jeff Helgesen)
[Links: Buddy Bregman]
Buddy Bregman (Official Website)

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アニタ・オディ『ジス・イズ・アニタ』

anita_anita.jpg Anita O'Day - Anita

アニタ・オディ追悼の意味を込めて、50年代のヴァーヴ録音から代表作をいくつか。55年録音の『ジス・イズ・アニタ』(原題は "Anita")は、作編曲家バディ・ブレグマンの小粋なアレンジに乗って、アニタがその魅力を全開させる傑作です。

ポール・スミス (p)(有名なデザイナーとは無関係です)、バーニー・ケッセル (g)、ジョー・モンドラゴン (b)、アルヴィン・ストーラー (ds) のカルテットをベースに、曲ごとにトロンボーン・セクションやストリングスが加わる構成で、ブレグマンのアレンジも光ります。

声量はないけれど、耳元でささやくようにハスキー・ヴォイスをしぼりだすアニタの魅力を味わいたいなら、3曲目〈バークレイ・スクエアのナイチンゲール〉から。う〜ん、これこれ。このしっとりとした味わいは、アニタならでは。たまりません。ストリングス入りのヴォーカルというと、あくびが出る作品が多いなか、この〈ナイチンゲール〉は、やさしいハープの音色もあわさって、素直に心の奥底まで届きます。

ポール・スミスとバーニー・ケッセルの名人芸を聴くなら、6曲目〈ファイン・アンド・ダンディ〉。スローな出だしから一転、アップテンポに切り替わる瞬間がしびれます。

トロンボーン・セクションが入った曲なら、モダンな響きに驚く8曲目〈ノー・ムーン・アット・オール〉。アニタの堂々とした歌いっぷりに惚れ直します。

そして、個人的に大好きな曲〈ビューティフル・ラヴ〉。ポール・スミス、きてますね。ジャケットからお洒落なイメージが先行してますが、実はスゴ腕ピアニストという彼の面目躍如です。



Anita O'Day "Anita"
(Verve MGV 2000)

Anita O'Day (vocal)
Buddy Bregman (arranger, conductor)

Paul Smith (piano)
Barney Kessel (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Alvin Stoller (drums)

Milt Bernhart (trombone) #1, 2, 8, 10
Lloyd Elliot (trombone) #1, 2, 8, 10
Joe Howard (trombone) #1, 2, 8, 10
Si Zentner (trombone) #1, 2, 8, 10
Corky Hale (harp) #3, 5, 9, 11
with strings #3, 5, 9, 11

Produced by Norman Granz
Recorded in LA; December 6 (#4, 6, 7, 12), 7 (#3, 5, 9, 11), 8 (#1, 2, 8, 10), 1955

[Tracks] Anita O'Day - Anita
01. You're The Top Cole Porter (music and lyrics)
02. Honeysuckle Rose Thomas "Fats" Waller (music) / Andy Razaf (lyrics)
03. A Nightingale Sang In Berkeley Square Manning Sherwin (music) / Eric Maschwitz (lyrics)
04. Who Cares George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
05. I Can't Get Started Vernon Duke (music) / Ira Gershwin (lyrics)
06. Fine And Dandy Kay Swift (music) / Paul James (lyrics)
07. As Long As I Live Harold Arlen (music) / Ted Koehler (lyrics)
08. No Moon At All David Mann (music) / Redd Evans (lyrics)
09. Time After Time Jule Styne (music) / Sammy Cahn (lyrics)
10. I'll See You In My Dreams Isham Jones (music) / Gus Kahn (lyrics)
11. I Fall In Love Too Easily Jule Styne (music) / Sammy Cahn (lyrics)
12. Beautiful Love Victor Young, Wayne King, Egbert Van Alstyne, Heven Gillespie (music and lyrics)

[Links: Anita O'Day]
Anita O'Day (Official Website)
[Links: Buddy Bregman]
Buddy Bregman (Official Website)
[Links: Corky Hale]
The Official Website of Corky Hale

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2006年12月05日

ビル・エヴァンス『ア・シンプル・マター・オブ・コンヴィクション』

evans_asimplematter.jpg 

ビル・エヴァンスのヴァーヴ移籍第一弾は、西海岸の大物ドラマー、シェリー・マンとの共演盤『エムパシー』(1962年8月録音)でしたが、これは、失敗を運命づけられたような作品でした。

プロデューサーのクリード・テイラーがねらったのは、マンの大ヒット作『マイ・フェア・レディ』の二匹目のドジョウで、もともとこのアルバムは、新作ブロードウェイ・ミュージカル『ミスター・プレジデント』(作曲はアーヴィング・バーリン)をジャズ化したものになるはずでした。ところが、どういうわけか、公演そのものが突然中止になり、当初の企画は頓挫します。エヴァンスが急いで用意したアレンジは、無用の長物となったのでした(このアルバムにバーリン作の無名曲が入っているのはその名残)。

それから4年後、エヴァンスとマン、そしてクリード・テイラーはリベンジに挑みます。その名も『ア・シンプル・マター・オブ・コンヴィクション』と題されたこのアルバムは、エヴァンスとマンに企画は不要、お互いの力を「単に信じればいいだけのこと」だと改めて教えてくれます。

このアルバムは、エヴァンス最長のパートナーとなるベーシスト、エディ・ゴメスの初参加作品としても知られています。1944年10月4日、プエルトリコの首都サンファンで生まれたゴメスは大のスコット・ラファロ・ファンで、自分の長男にスコッティという名前をつけたほど。彼はそうなるべくして、エヴァンスの懐に飛び込んだのでした。ここには、まだテクニックにまかせて跳ね馬のように飛び跳ねる、いささか興奮したゴメスの姿が残されています。

それにしても惜しいのは、冒頭の表題曲の扱いです。シンバルとベースだけではじまるアレンジといい、複雑で格調高い曲調といい、名盤の予感がプンプンしてくるのですが、どういうわけか、エヴァンスのソロが盛り上がってきたときにフェイドアウトして終わってしまうのです。これって、どういう演出なのでしょうか? それとも、このあと演奏が破綻した? 実にもったいない。最後まで聴かせてくれ〜!!!

それともうひとつ。クリード・テイラー時代のヴァーヴ録音はジャズ界きっての名エンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダー (RVG) が行っているのですが、これがよくない。RVG は、骨太のジャズを録らせれば右に出るものはいませんが、エヴァンスはもともと繊細で変幻自在のタッチにその特徴があります。だから、エヴァンスには不向きなのです。『ビル・エヴァンス:ジャズ・ピアニストの肖像』の著者で、自身もピアニストであるピーター・ペッティンガーは、RVG のことを次のようにこきおろしています(訳は相川京子さん)。

ヴァン・ゲルダーのピアノの音は、奇妙なことに、乾いて堅苦しく、生気、暖かみ、みずみずしさを排除しているかのようで、漠然とした残響だけが残った。タッチの面では、彼の手にかかるとどんなピアニストもクローンのようにまったく同じに聴こえた。

「エヴァンスはヴァン・ゲルダーの特殊な音になぜ耐えることができたのだろう?」
とは強烈な皮肉ですが、エヴァンスの心のひだに触れるようなやわらかいタッチを愛するものとしては、同意せざるをえないのでは?



Bill Evans "A Simple Matter Of Conviction"
(Verve V/V6 8675)

Bill Evans (piano)
Eddie Gomez (bass)
Shelly Manne (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; October 11, 1966

[Tracks] 
01. A Simple Matter Of Conviction Bill Evans (music)
02. Stella By Starlight Victor Young (music) / Ned Washington (lyrics)
03. Unless It's You Bill Evans (music)
04. Laura David Raksin (music) / Johnny Mercer (lyrics)
05. My Melancholy Baby Ernie Burnett (music) / George A. Norton (lyrics)
06. I'm Getting Sentimental Over You George Bassman (music) / Ned Washington (lyrics)
07. Star Eyes Gene DePaul, Don Raye (music and lyrics)
08. Only Child Bill Evans (music)
09. These Things Called Changes Bill Evans (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Eddie Gomez]
Eddie Gomez (建設中?の official website)
Eddie Gomez (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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ビル・エヴァンス&ジム・ホール『インターモデュレーション』

evans_intermodulation.jpg 

ビル・エヴァンスとジム・ホールの共演といえば、真っ先にユナイテッド・アーティスツ盤『アンダーカレント』があがりますが、4年後、彼らはヴァーヴでふたたび相見えます。

インターモデュレーション』というタイトルからは、2人が単なる「インタープレイ=相互に (inter) 演奏する (play)」を超えて、「インターモデュレーション=相互に (inter) 転調する (modulation)」へと踏み出そうとする意思が感じられますが、なに、ちっともむずかしいことはありません。2人のリラックスしたプレイに身をまかせれば、極上の気分を味わえること間違いなし!

キラー・チューン〈マイ・ファニー・ヴァレンタイン〉がない分、『アンダーカレント』に比べて損をしている感じがしますが、ここには、先に『タウン・ホール』で取り上げたばかりの美曲〈ターン・アウト・ザ・スターズ〉があります。そして、エヴァンスが珍しく軽やかに舞うクラウス・オガーマンの〈ジャズ・サンバ〉があります。

ジム・ホールと共演するのは大好きだった。彼の何が素晴らしいかといえば、彼はひとりでリズム・セクション全体のようなんだ。〈ジャズ・サンバ〉という曲があるが、あの曲はリズム・セクションを入れてもああいう仕上がりにはならなかったはずだ。あのように陽気で動きのある感じを出すのは難しいんだ。

とは、エヴァンスのジム・ホール評ですが(引用は『ビル・エヴァンス:ジャズ・ピアニストの肖像』より。訳は相川京子さん)そういいたくなるエヴァンスの気持ち、よくわかります。ジム・ホールはホントにうまい。実に得がたいギタリストです。

 

Bill Evans, Jim Hall "Intermodulation"
(Verve V/V6 8655)

Bill Evans (piano)
Jim Hall (guitar)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; April 7 (#3, 6), May 10 (#1, 2, 4, 5), 1966

[Tracks] 
01. I've Got You Under My Skin Cole Porter (music and lyrics)
02. My Man's Gone Now George Gershwin (music) / DuBose Heyward (lyrics)
03. Turn Out The Stars Bill Evans (music) / Gene Lees (lyrics)
04. Angel Face Joe Zawinul (music)
05. Jazz Samba Claus Ogerman (music)
06. All Across The City Jim Hall (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jim Hall]
Jim Hall: The Official Website
Jim Hall Maniacs (by 益満妙:エキマンタエ)
ジム・ホール:アルバム蒐集 (by kawagu)

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『ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』

evans_attownhall.jpg Bill Evans - Bill Evans At Town Hall

1966年2月21日、エヴァンスは人生初のコンサート・ホールでのライヴの舞台に立ちます(@ニューヨークのタウン・ホール)。本来なら、晴れ舞台となるはずのこの日、エヴァンスは悲しみに打ちひしがれていました。わずか数日前に、父親ハリー・エヴァンスが亡くなったからです(エヴァンスの生涯に影響を与え続けた兄のハリー Jr. とは同姓同名)。

ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』はそのときの模様を収録したアルバムで、ジャケットに『Volume One』と打ってあるのは、ヴァーヴ側に『Volume Two』を出す気があったことを伺わせますが、今のところ出ていません。

この日は、エヴァンスのソロ、トリオによる演奏に加えて、アル・コーンのアレンジによるオーケストラとの共演も行われたそうですが(まさに、エヴァンスにとっては一世一代の晴れ舞台だったのです)、上記のような事情でエヴァンスは情緒不安定、
オーケストラとの事前調整もほとんどできず、準備不足は明らかということで、残りの演奏はお蔵入りしました。

ところが、曲によって出来、不出来がはっきりしていたにせよ(それは、しかたのないことでしょう!)、この日のエヴァンスが見せた一瞬のきらめきは、好調時のエヴァンスを思い起こさせます。とくに最初の4曲のトリオの演奏の完成度が非常に高い。悲しみを紛らわすために夢中で鍵盤を叩いたのかもしれませんが、〈アイ・シュッド・ケア〉の跳ねるような高揚感は、ちょっとほかでは得がたいものがあります。〈フー・キャン・アイ・ターン・トゥ〉の悟りの境地のようなやわらかな出だしも、理屈抜きでいいと思います。

とはいえ、注目はやはり14分近くにおよぶソロ演奏による鎮魂歌、〈ソロ、イン・メモリーズ・オブ・ヒズ・ファーザー〉でしょう(「マイ・ファーザー」じゃなく「ヒズ・ファーザー」なのはなぜでしょう?)。これは4部構成の組曲風で、〈プロローグ〉を除いて、すでにある曲を組み合わせたものです。〈ストーリー・ライン〉とあるのはリヴァーサイド時代の恩師オリン・キープニュースに捧げられた〈リ:パーソン・アイ・ニュー〉、〈ターン・アウト・ザ・スターズ〉は友人ジーン・リースと共作した名曲。そして、『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』でレコードのA面、B面の最後を飾った〈エピローグ〉と続きます。

重苦しい展開を予想しがちですが、悲嘆に暮れるというよりも、そこはかとなく感じられるのは、75年の人生を終えた父親へのいたわりの情です。亡き父を静かに送り出すエヴァンス。天国の父親の耳に、エヴァンスの声は届いたのでしょうか。

なお、ベースのチャック・イスラエルはこれを最後にトリオを去り、ドラムのアーノルド・ワイズに至っては、このアルバムがエヴァンス・トリオでの唯一の公式録音となっています。

 

"Bill Evans At Town Hall, Volume One"
(Verve V/V6 8683)

Bill Evans (piano)
Chuck Israels (bass)
Arnold Wise (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Reocrded live at Town Hall, NYC; February 21, 1966

[Tracks] Bill Evans - Bill Evans At Town Hall
01. I Should Care Axel Stordahl, Paul Weston (music) / Sammy Cahn (lyrics)
02. Spring Is Here Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)
03. Who Can I Turn To Anthony Newley, Leslie Bricusse (music and lyrics)
04. Make Someone Happy Jule Styne (music) / Betty Comden, Adolph Green (lyrics)
05. Solo-In Memory of His Father, Harry L. Evans 1891-1966:
 a. Prologue Bill Evans (music)
 b. Improvisation on Two Themes
   i) Story Line Bill Evans (music)
  ii) Turn Out the Stars Bill Evans (music) / Gene Lees (lyrics)
 c. Epilogue Bill Evans (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Chuck Israels]
Chuck Israels (official website)

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2006年11月29日

ビル・エヴァンス『自己との対話』

evans_conversations.jpg Bill Evans - Conversations With Myself (Verve Master Edition)

エヴァンスはそれまでも何度かソロ・ピアノによるレコーディングをしてきましたが、いずれも出来は芳しくなく、未発表に終わっていました(トリオ・アルバムに収録されたものは除く)。リヴァーサイドとの契約はまだ残っていましたが、新天地ヴァーヴでは、すでに62年の夏にはフライング気味に『エムパシー』を収録(西海岸のドラマー、シェリー・マンとの共同名義。トリオ作品)、次に取り組んだのが、自身初となる全編ソロ作品『自己との対話』でした(1963年2月と5月の録音)。

ソロ・ピアノといっても、CD から聴こえてくるのは、明らかに複数のピアノの音です。手数が多いとかそういうことではなく、左、右、そして真ん中に3台のピアノが配置してある。エヴァンスが一人三役をこなして多重録音したからです。

まず、基本のトラックを録音する。次に、そのトラックを聴きながら2トラック目を録音する。さらに、最初の2つのトラックを聴きながら3トラック目を録音する。文字どおり『自己との対話』によって、この作品は完成しました。

ロックやポップスならいざ知らず、瞬間芸術のジャズの世界でマルチ・トラックを使うのはどうなの? 一発録りこそジャズ・レコーディングの王道じゃないの? という疑問もわきますが、オーヴァー・ダビングという手法自体は(少なくとも現在は)珍しくもなんともありません。問題なのはむしろ、多重録音がエヴァンスの音楽性を表現するうえで最適な手法なのかだと思うのですが、結果として、この作品は、エヴァンスにはじめてのグラミー賞をもたらし(1963 Best Instrumental Jazz Performance - Soloist Or Small Group)、当時アメリカでもっとも売れたエヴァンス盤となったそうです。

ただ、個人的には、この作品はさほど聴くことはありません。試みとしてはおもしろいのですが、耳のやり場に困るというか、意識があちこちに拡散して、どうにも落ち着かない。それこそ、エヴァンスが「自己との対話」に没頭するあまり、他者を疎外しているというか、こちらに向かって語りかけてこない気がします。

とはいえ、エヴァンスの多重録音路線はこれで終わらず、67年の『続・自己との対話』、78年の『ニュー・カンヴァセイションズ』と続いていくわけで、ファンなら通過せざるをえない関門ともいえます(笑)。

このアルバムでは、珍しくモンクのオリジナルを2曲、エヴァンスお気に入りの〈スパルタカス愛のテーマ〉(スタンリー・キューブリック監督の映画『スパルタカス』より)を取り上げていることが目を引きますが、実は、とても気になる曲が入っています。

唯一のエヴァンス自作曲〈N.Y.C.'s No Lark〉は、この録音のわずか3週間前、1963年1月13日に亡くなったピアニスト、ソニー・クラーク(Sonny Clark)を追悼した曲で、彼の名前のアナグラムになっています(もちろん NYC もかかっています)。

でも、なんでエヴァンスがソニー・クラークなんでしょう? 2人に接点はあったのでしょうか? 『季刊ジャズ批評110 ソニー・クラーク』には、高木宏真さんの「ソニー・クラークとビル・エヴァンス 接点はどこにあるのか?」というそのものずばりのエッセイが載っていますが、真相はわからずじまい。残念!

 

Bill Evans "Conversations With Myself"
(Verve V/V6 8526)

Bill Evans (piano)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Ray Hall
Recorded in NYC; February 6 (#7), 9 (#1, 2, 5, 6, 8), May 20 (#3, 4), 1963

[Tracks] Bill Evans - Conversations With Myself (Verve Master Edition)
01. 'Round Midnight Thelonious Monk, Cootie Williams (music) / Bernie Hanighen (lyrics)
02. How About You Burton Lane (music) / Ralph Freed (lyrics)
03. Spartacus Love Theme Alex North (music)
04. Blue Monk Thelonious Monk (music)
05. Stella By Starlight Victor Young (music) / Ned Washington (lyrics)
06. Hey, There Richard Adler, Jerry Ross (music and lyrics)
07. N.Y.C.'s No Lark Bill Evans (music)
08. Just You, Just Me Jesse Greer (music) / Raymond Klages (lyrics)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年11月09日

エラ・フィッツジェラルド,ルイ・アームストロング『エラ&ルイ』

ellaandlouis.jpg Ella Fitzgerald & Louis Armstrong - Ella and Louis

数あるサッチモの歌もののなかでも、もっともジャズを感じさせるのが、ファースト・レディ、エラ・フィッツジェラルドとの共演盤、『エラ&ルイ』です(1956年録音)。

断言しちゃいましょう。これは、20世紀が遺してくれた最高の贈り物です。「ヴォーカルはこれから」という人は、ぜひ最初のコレクションの1枚にこのアルバムを加えてください。

エラとルイという、ジャズ・ヴォーカル界の至宝が芸のかぎりをつくして、余裕たっぷりに歌います。2人のかけあいも見事。一流を極めた者だけがもつことを許される、このゆとり。力の抜け加減が、なんとも絶妙なんです。う〜ん、やっぱり2人とも、抜群にウマいぞ!

どれも聞き逃せない名演名唱ですが、1曲選べといわれたら、私は〈チーク・トゥ・チーク〉が好きですね。エラとルイはけっして美男美女というわけではないけれど、ジャケット写真の2人が頬を寄せ合って踊る姿はあんまり想像したくないけれど(笑)、そんなことは問題じゃないんです。この歌からは、心を許しあった2人が互いをいたわり、尊重し、心の底から友愛を感じていることが伝わってきます。あたたかい魂の交歓です。何度聞いても、いいねえ。

エラは、持ち前の豊かな声量で大観衆を前にしたときにもっとも強みを発揮するヴォーカリストですが、個人的には、こういうこじんまりしたフォーマットで歌うリラックスしたエラに魅力を感じます。彼女はささやくように歌ってもじゅうぶんうまい。むしろ、あのでっぷりとした体型を忘れてしまうような可憐さ、かわいらしさを味わうことができます。これ、ホントの話です。

 

Ella Fitzgerald, Louis Armstrong "Ella And Louis"
(Verve 4003)

Ella Fitzgerald (vocal)
Louis Armstrong (vocal , trumpet)
Oscar Peterson (piano)
Herb Ellis (guitar)
Ray Brown (bass)
Buddy Rich (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in LA; August 16, 1956

[Tracks] Ella Fitzgerald & Louis Armstrong - Ella and Louis
01. Can't We Be Friends (music: Kay Swift / words: Paul James)
02. Isn't It A Lovely Day (music+words: Irving Berlin)
03. Moonlight In Vermont (music: Karl Suessdorf / words: John Blackburn)
04. They Can't Take That Away From Me (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
05. Under A Blanket Of Blue (music: Jay Livingston / words: Marty Symes, Al Neiburg)
06. Tenderly (music: Walter Gross / words: Jack Lawrence)
07. A Foggy Day (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
08. Stars Fell On Alabama (music: Frank Perkins / words: Mitchell Parish)
09. Cheek To Cheek (music+words: Irving Berlin)
10. The Nearness Of You (music: Hoagy Carmichael / words: Ned Washington)
11. April In Paris (music: Vernon Duke / words: Edgar Y. Harburg)

[Links: Ella Fitzgerald]
Ella Fitzgerald Official Website
Ella Fitzgerald, 1917-1996
[Links: Louis Armstrong]
Satchmo.net: The Official Site of the Louis Armstrong House & Archives
Louis Armstrong: Oh, You Dog!
Louis Armstrong (@ The Red Hot Jazz Archive: A Histroy Of Jazz Before 1930)
[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peterson: Official Website of the Great Jazz Pianist
Oscar Peterson: A Jazz Sensation (@ Library and Archives Canada
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Jazz Giant The Oscar Peterson Discography
[Links: Buddy Rich]
The Official Website of Buddy Rich
The Unofficial Buddy Rich Website

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2005年11月05日

ディジー・ガレスピー『ガレスピアーナ』

gillespiana.jpg

ガレスピーのビッグバンドものを、もう1つ。1960年録音の『ガレスピアーナ』は、今や、押しも押されぬ TV・映画音楽の巨匠となったラロ・シフリンが作編曲、ピアノを担当した作品です。

ラロ・シフリン。本名は、Boris Claudio Schifrin。1932年6月21日、アルゼンチンのブエノス・アイレス生まれ。

TV シリーズの『スパイ大作戦』(1966〜1973年)をはじめ、映画『ダーティハリー』(1971年)、『燃えよドラゴン』(1973年)、『ミッション:インポッシブル』(1996年)、『M:I-2』(2000年)などですっかりおなじみの、あのエキゾチック・サウンド。聞いているだけでムズムズしてくるような、あのノリは、彼がタンゴの国、アルゼンチン生まれなことと無関係ではないはずです。

ジャズ関連でいうと、ジミー・スミスの『ザ・キャット』が有名ですね。あのド派手なオーケストラを仕切っていたのがシフリンです(録音は1964年だから、あっちのほうが後ですが)。

ただでさえ迫力満点のガレスピー・バンドをラロ・シフリンの手にゆだねると、どうなるか。そりゃ、成功間違いなしです。キレ味するどいアレンジに乗って、ガレスピーが飛翔します。重低音のブラス・セクションも吠えまくります。もう、ちょーカッコイイっす!

ちなみに、アルゼンチンにいたシフリンをニューヨークに呼び寄せたのは、他ならぬガレスピーです。ガレスピーは米国親善使節として何度か海外ツアーを敢行していますが、彼が南米に赴いたとき(1956年)、ブエノス・アイレスでシフリンの曲を聞いて気に入り、去り際にさっそくシフリンに作曲を頼んだといいます。以来、数年を経てできあがったのが、このアルバムというわけです。

 

Dizzy Gillespie "Gillespiana"
(Verve MGV 8394)

Dizzy Gillespie, John Frosk, Ernie Royal, Clark Terry, Joe Wilder (trumpet)
Urbie Green, Frank Rehak, Britt Woodman (trombone)
Paul Faulise (valve trombone)
Gunther Schuller, Julius Watkins (French horn)
James Buffington, Al Richman (French horn) #1-3
William Lister, Morris Scott (French horn) #4, 5
Don Butterfield (tuba)
Leo Wright (alto sax, flute)
Lalo Schifrin (piano, arrangement)
Art Davis (bass)
Chuck Lampkin (drums)
Jack Del Rio (bongo)
Candido Camero (conga)
Willie Rodriguez (timbal)

Produced by Norman Granz
Recorded in NYC; November 14-15 (#1-3), 16 (#4, 5), 1960

[Tracks] 
01. Prelude (music: Lalo Schifrin)
02. Blues (music: Lalo Schifrin)
03. Panamerica (music: Lalo Schifrin)
04. Africana (music: Lalo Schifrin)
05. Toccata (music: Lalo Schifrin)

[Links: Dizzy Gillespie]
Dizzy Gillespie Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Lalo Schifrin]
the official website of Lalo Schifrin

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2005年11月04日

『ディジー・ガレスピー・アット・ニューポート』

atnewport.jpg

ジャズ界きってのエンターテイナー、ディジー・ガレスピー。歌ってよし、しゃべってよし、そしてもちろんペットの腕も超一流、という三拍子そろった真のジャイアンツなのに、どこか低く見られてしまうのは、過剰なサービス精神のせいでしょうか。

ディジー・ガレスピー(本名、John Birks Gillespie)。1917年10月21日、サウス・カロライナ州シェロー生まれ。1993年1月6日、ニュージャージー州イングルウッドで死去。

お祭り男ディジー・ガレスピーを聞くなら、にぎやかで豪快なビッグバンドがいちばん。というわけで、彼が率いた第3次ビッグバンドから『ディジー・ガレスピー・アット・ニューポート』の登場です。

1954年に興行師ジョージ・ウィーンの肝いりではじまった野外フェスの原点、ニューポート・ジャズ・フェスティバル。現在は、冠スポンサーに JVC を迎え、JVC Jazz Festival と名を変えて、世界各国で開催されていますが、発祥の地は、アメリカ北東部のロード・アイランド州ニューポート。映画『真夏の夜のジャズ』に出てくる、あの港町です。

ガレスピーのビッグバンドは、1957年の第4回ニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演します(ちなみに、『真夏の夜のジャズ』はこの翌年、第5回のフェスティバルの模様を収録したドキュメント映画です)。

メンバーがまたすごい。神童リー・モーガンにベニー・ゴルソン、ウィントン・ケリー、アレンジャーとしてクインシー・ジョーンズも関わっています。でも、いちばんすごいのは、燃え盛る炎のようなディジーのトランペットです。この音を前にしたら、どんなトランぺッターも霞んでしまう。

マイルスは、ディジーのあまりのハジケっぷりに恐れをなして、同じ路線をねらっても絶対勝てないと悟り、リリカルなミュート路線へと進んだという説がありますが(笑)、さもありなんと思わせる迫力のサウンドです。やっぱりディジーのペットは天下一品です!

1曲目。自身の名前を冠した〈ディジーズ・ブルース〉。のっけから豪快なビッグバンド・サウンドが炸裂します。このエキサイティングな分厚いサウンドは、ビッグバンドにしか出せません。これが聞きたくて、ついつい手にとってしまうんです。

圧巻なのは、2曲目〈スクール・デイズ〉。ガレスピーの歌も笑えますが、続いて登場するビリー・ミッチェルのソロがこれまたすごい。同じ音を続けざまにヒットして、ホンカーぶりをこれでもかと見せつけます。聴衆の盛り上がりも尋常じゃありません。こういうのは、やったもん勝ちです。こむずかしい理屈なんてほっといて、とにかくみんなで盛り上がる。だって、ノリノリですもん。血がたぎります、マジで。

アマゾンのカスタマーレビューに「ビッグバンド苦手意識を払拭してくれた感謝の1枚」というコメントが載っていますが、まったく同感です。私もこの作品によってはじめてビッグバンドの楽しさがわかりました。

ビッグバンドがわからないと、エリントンもベイシーも楽しめない。チャールズ・ミンガスもカーラ・ブレイも楽しめない。こりゃ、どえらい損失です。「ビッグバンドはちょっと、、、」という人にこそ聞いてほしい、ビッグバンド入門の決定版です!

 

"Dizzy Gillespie At Newport"
(Verve MGV 8242)

Dizzy Gillespie (trumpet, vocal)
Lee Morgan, Ermit Perry, Carl Warwick, Talib Dawud (trumpet)
Melba Liston, Al Grey, Chuck Connors (trombone)
Ernie Henry, Jimmy Powell (alto sax)
Billy Mitchell, Benny Golson (tenor sax)
Pee Wee Moore (baritone sax)
Wynton Kelly (piano) except #7, 8
Mary Lou Williams (piano) #7, 8
Paul West (bass)
Charlie Persip (drums)

Recorded at Freebody Park, Newport, Rhode Island; July 6, 1957

[Tracks] 
01. Dizzy's Blues (music: Dizzy Gillespie) (arr. A.K. Salim)
02. School Days (music: Gus Edwards / words: Will D. Cobb) (arr. Quincy Jones)
03. Doodlin' (music: Horace Silver) (arr. Ernie Wilkins)
04. Manteca (music: Dizzy Gillespie, Chano Pozo) (arr. Dizzy Gillespie)
05. I Remember Clifford (music: Benny Golson) (arr. Benny Golson)
06. Cool Breeze (music: Tadd Dameron, Billy Ekstein) (arr. Tadd Dameron)

[Links: Dizzy Gillespie]
Dizzy Gillespie Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Lee Morgan]
The Lee Morgan Discography (by Masaya MATSUMURA)
Lee Morgan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Benny Golson]
Benny Golson's Official Website
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年11月03日

エド・シグペン『アウト・オブ・ザ・ストーム』

outofthestorm.jpg

ヴァーヴ時代のピーターソン・トリオ(黄金のトリオ)を支えた実力派ドラマー、エド・シグペン。本名、Edmund Leonard Thigpen。1930年12月28日、イリノイ州シカゴ生まれの LA 育ち。

この『アウト・オブ・ザ・ストーム』は、ピーターソンのもとを辞したシグペンの初リーダー作です。

シグペンに、ハービー・ハンコックとロン・カーターとは(録音当時はマイルス・クインテットに参加していた)、これまた異色の組み合わせと思ったら、それもそのはず、クラーク・テリーとケニー・バレルはシグペンのチョイス、ハンコックとカーターはプロデューサーのクリード・テイラーが連れてきたと、邦盤ライナー(大村幸則さん)にあります。

さて、このアルバムには、おいしいところがたくさんあります。ピーターソンのトリオでは影に隠れがちだったシグペンの妙技をとことんまで味わえる。ドラムって、こんなにカラフルな楽器だっけと新たな発見があります。これが1つ。

もう1つは、ケニー・バレル。この人はいつ聞いても安心できる。「いいなあ、ジャズって」と心から感じさせてくれる希有なギタリストです。大好き!

でも、いちばんおいしいのは、クラーク・テリーです。私はこのアルバムの〈アウト・オブ・ザ・ストーム〉を聞いて、彼のすごさを実感しました。吹き荒れる嵐がおさまり、そこに一筋の光が差し込む。テリーの情感たっぷりのラッパが響き渡ります。古さと新しさの奇妙な同居。ビッグバンドのビッグなサウンドの中でもまれてきたテリーならではの自己表現。しびれます、マジで。

5曲目〈エルボウ・アンド・マウス〉。妙なタイトルですが、アフリカのリズムがジワジワと効いてきます。テリーのラッパ、よく鳴っています。迫力です。シグペンもすごい! 何人もパーカッション部隊がいるかのような演奏です。



Ed Thigpen "Out Of The Storm"
(Verve V/V6 8663)

Clark Terry (trumpet)
Herbie Hancock (piano)
Kenny Burrell (guitar)
Ron Carter (bass)
Ed Thigpen (drums)

Produced by Creed Tayler
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; April 18-20, 1966

[Tracks]
01. Cielito Lindo (traditional)
02. Cloud Break (Up Blues) (music: Ed Thigpen)
03. Out Of The Storm (music: Ed Thigpen)
04. Harper (From The Motion Picture "Harper") (music: Johnny Mandel)
05. Elbow And Mouth (music: Kenny Burrell)
06. Heritage (music: Ed Thigpen)
07. Struttin' With Some Barbecue (traditioal)

[Links: Clark Terry]
Clark Terry (Official Website)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Kenny Burrell]
Kenny Burrell Collection (by Furuike Akira)
[Links: Ron Carter]
Ron Carter (Official Website)
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen Online (Official Website)

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2005年07月05日

スタン・ゲッツ『スウィート・レイン』

sweetrain.jpg

一連のボサノヴァ・ブームで大金を手にしたゲッツは、一時休養に入ります。そして、復帰後の彼が起用したのは、当時、無名に近かったチック・コリアでした。チックの名を決定的にしたソリッドステイト盤『ナウ・ヒー・シングス・ナウ・ヒー・ソブス 』は翌68年の録音です。

若き才人チックのシャープなピアノに影響されたのか、ゲッツは『スウィート・レイン』で、切れ味鋭いモーダルなテナー吹きとして、新たな一歩を踏み出します。それにしても、男ゲッツ40歳にしてこのみずみずしさはどうでしょう。実際、この変貌ぶりは驚くべきものです。それは昔のゲッツと聴き比べると、一聴瞭然です。

マイルスは派手なパフォーマンスで時代の最先端を切り開く「進化の人」でしたが、その実、彼のトランペット奏法はほとんど変化しません。50年代のハードバップ時代も、60年代のモード時代も、70年代のエレクトリック時代も、変わったのは周りのサウンドだけで、マイルス自身はいつも変わらぬ音色でトランペットと対峙している。彼はサウンド・イノヴェイターであって、楽器奏者としてのマイルスに変化はないわけです。

それと比べると、ゲッツは音色そのものを変化させながら、時代にあった吹き方をきわめていきます。楽器奏者として進化し続けたわけです。テナーの王様ゲッツここにあり、です。

チックのオリジナル〈リザ〉〈ウィンドウズ〉に聞かれる、もぎたてフルーツのフレッシュな響きも好きですが、個人的にはジョビン作の〈オ・グランジ・アモール(大いなる愛)〉にゲッツの音楽的成熟を感じます。

この曲は、前回紹介したいわくつきの迷盤『ゲッツ/ジルベルト』でも演奏されていました。前作では、必要以上に力の入ったゲッツのテナーが、ジョアン・ジルベルトの軽妙洒脱な味わいをかき消していたのですが、今回はそうした不自然さが感じられません。とてもリラックスしたソフトなサウンドが、「そうそう、これなんだよなあ」とうまいぐあいに腑に落ちます。

ブームが去り、ジョアンも去って、ひとりのテナーマンとしてこの曲に向き合ったとき、ムダな力みが消え、楽曲を完全に自分のものとしたゲッツ。この演奏を前に、「本来のボサノヴァは云々」といった野暮な言葉はいりません。ただ耳を傾けてください。テナー吹きゲッツの一つの到達点を聞くことができます。やっぱり「王様」なんですよ、彼は。

 

Stan Getz "Sweet Rain"
(Verve V/V6-8693)

Stan Getz (tenor sax)
Chick Corea (piano)
Ron Carter (bass)
Grady Tate (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englwood Cliffs, NJ; March 21 (#1-3), 30 (#4-5), 1967

[Tracks]
01. Litha (music: Chick Corea)
02. O Grande Amor (music: Antonio Carlos Jobim / words: Vinicius DeMoraes)
03. Sweet Rain (music: Mike Gibbs)
04. Con Alma (music: Dizzy Gillespie)
05. Windows (music: Chick Corea)

[Links: Stan Getz]
Stan Getz Discography (by Riccardo Di Filippo, Luigi Maulucci & Nicola Rascio)
Stan Getz Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Chick Corea]
Chick Corea Official Website
Chick Corea Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ron Carter]
Ron Carter Official Website

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スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト『ゲッツ/ジルベルト』

getzgilberto.jpg Astrud Gilberto, Jo!)o Gilberto & Stan Getz - Getz / Gilberto

1960年代の前半のこと。ブラジル発の「新しい波」がアメリカのミュージック・シーンを席巻します。ボサノヴァ(Bossa Nova。New Wave とか New Feeling といった意味)と呼ばれたその音楽は、1958年頃、リオのカーニヴァルで有名なリオ・デ・ジャネイロで生まれました。熱狂的なサンバのリズムをクールダウン。都会的な洗練を加えて、繊細という名のスパイスをほどこせば、そこにボサノヴァの風が吹きはじめます。

この『ゲッツ/ジルベルト』は、すでに前年(1962年)にブラジル帰りのギタリスト、チャーリー・バードと組んだ『ジャズ・サンバ』のメガヒットによって、一躍スターダムを駆け上がったスタン・ゲッツが、ボサノヴァの生みの親ジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンを迎え、本格的にボサノヴァに取り組んだアルバムです。ジョアンのそよ風を思わせる軽やかな歌声と繊細なギター、ジョアンの当時の妻アスラッド・ジルベルトのあとをひくヴォーカル、そしてゲッツのソフトなテナー・サウンドがあいまって、独特の世界が生み出されました。

この作品もブームに乗って売れに売れ、ビルボードに96週間チャートインという、とてつもない記録をうち立てます(発売は64年)。この年のグラミー賞では、アルバム『ゲッツ/ジルベルト』が Album Of The Year を、シングルカットされた〈イパネマの娘〉が Record Of The Year を、それぞれ受賞するという快挙も達成しましたとさ。パチパチパチ。

と、ここまでが公式の(?)プロフィール。でも、この作品には悲劇的な逸話が残されています。

このアルバム、ボサノヴァの作品としては、世評でいわれているほど完成度は高くありません。ボサノヴァは本来、とてもデリケートな音楽です。ところが、ここでのゲッツは意外なほどマッシヴ。ジョアンのささやくような歌声と軽やかなギターがボサノヴァ本来の味わいだとすると、ゲッツのテナーがそれをぶち壊しています。むやみに音がデカイのです。

これにはプロデューサーのクリード・テイラーも一枚噛んでいます。ゲッツのパートの音量をあげたのは彼。そして、〈イパネマの娘〉をシングルカットした際、あろうことかジョアンの歌をすべてボツにして、アスラッドだけが歌ったかのように見せかけたのも彼でした。

この録音時点で、アスラッドはほとんど素人同然。そんな彼女のヘタウマな魅力に目をつけたクリード・テイラーの眼力には恐れ入りますが、それにしても、ジョアンの歌を消し去ることはないでしょう!

このアルバムの成功で、ゲッツとクリード・テイラーは豪邸を購入、アスラッドは「ボサノヴァの歌姫」の名をほしいままにし、ジョビンもまた作曲者として莫大な印税を手にしましたが、ジョアンはほんのわずかのギャラを受け取っただけで、失意のまま、アメリカ商業主義の前から姿を消します。ボサノヴァのあの繊細なスタイルを確立したジョアンは、それにふさわしい尊敬と報酬を受けることができず、ついでに奥さんも失ってしまったのです(アスラッドはこの後、ジョアンと離婚して、個人の名前でヴァーヴに何枚ものアルバムを残します)。

 

Stan Getz, Joao Gilberto "Getz/Gilberto"
(Verve V/V6-8545)

Stan Getz (tenor sax)
Joao Gilberto (guitar, vocal)
Antonio Carlos Jobim (piano)
Tommy Williams (bass)
Milton Banana (percussion)
Astrud Gilberto (vocal)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Phil Ramone
Recorded in NYC; March 18, 19, 1963

[Tracks] Astrud Gilberto, Jo!)o Gilberto & Stan Getz - Getz / Gilberto
01. The Girl From Ipanema (music: Antonio Carlos Jobim / words: Vinicius DeMoraes, Norman Gimbel [E])
02. Doralice (music: Danilo Caymmi, Laurindo Almeida)
03. Para Machucar, Meu Coracao (To Hurt My Heart) (music: Ary Barroso)
04. Desafinado (music: Antonio Carlos Jobim / words: Newton Mendonca)
05. Corcovado (aka. Quiet Nights Of Quiet Stars) (music: Antonio Carlos Jobim / words: Gene Lees)
06. So Danco Samba (aka. Jazz Samba) (music: Antonio Carlos Jobim / words: Vinicius DeMoraes)
07. O Grande Amor (music: Antonio Carlos Jobim / words: Vinicius DeMoraes)
08. Vivo Sohando (Dreamer) (music: Antonio Carlos Jobim)

[Links: Stan Getz]
Stan Getz Discography (by Riccardo Di Filippo, Luigi Maulucci & Nicola Rascio)
Stan Getz Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Astrud Gilberto]
Astrud Gilberto Official Website
[Links: Joao Gilberto]
The Joao Gilberto Discography (by Laura Pelner McCarthy)
[Links: Antonio Carlos Jobim]
Clube De Tom
Remembering Antonio Carlos Jobim (by Barbara J. Major)

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2005年06月28日

『スタン・ゲッツ・プレイズ』

stangetzplays.jpg Stan Getz - Stan Getz Plays

スタン・ゲッツは、すこぶる評判の悪い人でした。「アイ・アム・キング(俺が王様)」を地でいく人で、気分が乗らないと一晩中ソロを吹かないとか、事前の取り決めを無視して一人で永遠にソロをとるとか、サイドメンが調子よく演奏していると不機嫌になって悪態をつくとか、〈イパネマの娘〉をリクエストした客に「出ていけ」と怒鳴ったとか、この手の「ゲッツ=ろくでなし」のエピソードには事欠きません。

私は職業柄、作品の価値とそれを生み出す著者の人間性とは別物だと思っているので気になりませんが(ふだんの人柄がそのまま滲み出たような文章を書く方もいらっしゃいますよ、念のため)、そうでない人にとっては、あまり気分のいい話ではないかもしれません。

でも、とあえていいますが、ゲッツにはこの『スタン・ゲッツ・プレイズ』があります。ゲッツはこのジャケットのイメージによって、どれだけ救われたでしょう。天使のような子供(誰の子かな?)がほっぺにキスするこの写真を見て、「ゲッツ=悪い人」と思う人はまずいません。そして、彼の演奏には「悪意」や「作為」などみじんも感じられません。とても純粋で、無垢な子供のような音楽。人柄と作品は別なんです。

とはいえ、ピアノのデューク・ジョーダンは、黒人というだけでゲッツからさかんにイビられて、なかなかソロをとらせてもらえなかったという記事を読みました(ジャズ批評119「スタン・ゲッツ」より)。そういえば、この『プレイズ』でも、ソロをとっているのは全編にわたってほぼゲッツだけです。王様ゲッツの真価が発揮されるのは、やはり彼だけにスポットライトを当てたワンホーン作品なんですね。

ヴァーヴ・レーベル第1弾にあたるこの『プレイズ』は、プレスティッジ、ルースト時代のクール・サウンドから、感情表現を巧みに取り入れたホットな路線へと移り変わる過渡期の作品だといわれています。プレスティッジ、ルースト時代を無駄なぜい肉をそぎ落としたスリムでしなやかなボディーとするなら、ヴァーヴ時代はより躍動的なマッシヴな体型へと変化します。

といっても、ゲッツのことですから、筋肉ムキムキのマッチョな男になるわけではありません。細身で引き締まった肉体美。とくにこの『プレイズ』でのゲッツは、女性的なやわらかさ、ふっくらと丸みをおびた響きと、ミディアム〜アップテンポの曲で現れる男性的なキレのよさが、これ以上ないほど絶妙なバランスで溶けあい、比類ないほど美しいサウンドを聞かせてくれます。

どれも2、3分の短い演奏ですが、その短いソロのなかですべてを表現しつくす潔さがすばらしい。語りすぎないことが相手のイマジネーションを刺激して、かえって印象に残ることってあるんです。〈星影のステラ〉〈ボディ・アンド・ソウル〉〈アラバマに星は落ちて〉〈恋人よ我に帰れ〉などなど、どれをとっても超がつくほどの一級品。おいしいところ満載のメロディーの宝庫。おすすめです。

 

Stan Getz "Stan Getz Plays"
(Norgran MGN-1042 / Verve MGV-8133)

Stan Getz (tenor sax)
Duke Jordan (piano)
Jimmy Raney (guitar)
Bill Crow (bass)
Frank Isola (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in NYC; December 12 (#1-8), 29 (#9-12), 1952

[Tracks] Stan Getz - Stan Getz Plays
01. Stella By Starlight (music: Victor Young / words: Ned Washington)
02. Time On My Hands (music: Vincent Youmans / words: Harold Adamson, Mack Gordon)
03. 'Tis Autumn (music: Henry Nemo)
04. The Way You Look Tonight (music: Jerome Kern / words: Dorothy Fields)
05. Lover Come Back To Me (music: Sigmund Romberg / words: Oscar Hammerstein II)
06. Body And Soul (music: Johnny Green / words: Edward Heyman, Robert Sauer, Frank Eyton)
07. Stars Fell On Alabama (music: Frank Perkins / words: Mitchell Parish)
08. You Turned The Tables On Me (music: Louis Alter / words: Sidney Mitchell)
09. Thanks For The Memory (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
10. Hymn Of The Orient (music: Gigi Gryce)
11. These Foolish Things (Remind Me Of You) (music: Jack Strachey, Harry Link / words: Holt Marvell)
12. How Deep Is The Ocean (music+words: Irving Berlin)

[Links: Stan Getz]
Stan Getz Discography (by Riccardo Di Filippo, Luigi Maulucci & Nicola Rascio)
Stan Getz Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Duke Jordan]
Duke Jordan Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年06月20日

『フォー・ミュージシャンズ・オンリー』

formusiciansonly.jpg

看板スターをズラリとそろえて、「あとはまかせるから好きなように料理して」というのが、JATP の興行主でもあるプロデューサー、ノーマン・グランツの好きなやり方でした。ある意味、安直ともとれるオールスター・セッションですが、実は、即興主体のジャズの本質をこれくらいわかった人もいなかったのではないかと思います。

セッションはいつも成功するとは限らない。でも、とにかくテープを回し続けて決定的瞬間を待つ。ヴァーヴには駄盤も多くありますが、ジャズの醍醐味がギュッと詰まったウキウキするような傑作も数多い。お宝探しの楽しさが、ヴァーヴの作品にはあります。

すでに一家をなした看板スターの共演といっても、ただ呼び集めればそれでいいというわけにはいきません。そこには、全員をまとめるオーガナイザーが不可欠です。そこで登場するのが、人呼んでお祭り男ディジー・ガレスピーです。1917年10月21日、サウス・カロライナ州シェロー生まれ。1993年1月6日、ニュージャージー州イングルウッドで亡くなりました。

どんな大物も一目置かざるをえないキャリア、周囲を楽しませずにはおかないエンタテイナーぶり、そして人間としての器の大きさ(陽気で気のいい男だったそうです)。どれをとっても、これ以上ないほどのはまり役です。グランツがこの手のセッションにガレスピーを重用した理由もわかろうというものです。

フォー・ミュージシャンズ・オンリー』(ミュージシャンのためだけに)という珍妙なタイトルがつけられたこの作品は、ガレスピーとソニー・スティットというバップ系の大物にスタン・ゲッツというクール派の代表選手をぶつけると、はたしてどんな音が出てくるか。そんなグランツの個人的な興味を満たすためだけに実現した一夜かぎりの共演です。

血湧き肉踊る熱帯系のジャズとどこかひんやりとしたクールな音色。ふつう、あわないと思うでしょ? でも、あうんですよ、これが。熱い日差しを浴びた後は、少し冷たいシャワーを浴びてクールダウン。窓を開け放った部屋をくぐりぬける心地よい風に潮の香りがただよっています。ク〜ッ、たまらん。こういう無茶な取り合わせをやらせたら、ホント、グランツの右に出る者はいません。

1曲目はその名も〈ビバップ〉。ガレスピー作の熱いナンバーです。2曲目の〈ウィー〉も熱い。どちらもものすごいスピードで、聞く人の心を煽り立てます。ウォ〜ッ、猛烈に熱くなってきた! 

3曲目で少しクールダウンしましょう。ロシア民謡〈ダーク・アイズ〉の哀愁漂うメロディーには、ディジーのひかえめなペットとハーブ・エリスのギターがよく似合う。でも、この面子ですから、単にクールダウンするだけでは終わりません。日差しも傾き、うっすらと暗がりが広がりはじめる頃、浜辺で怪しげな炎が燃え上がる。そこに集う男と女。いいねえ。色っぽくて。

トリを飾るのは、〈恋人よ我に帰れ〉。こちらも静かにスタートしますが、途中何度かテンポが切り替わり、熱くなったり涼しくなったり忙しい演奏です。そして、浜辺の男女は夜通し踊り狂うのでした。おしまい(笑)。

 

"For Musicians Only"
(Verve MGV 8198)

Dizzy Gillespie (trumpet)
Sonny Stitt (alto sax)
Stan Getz (tenor sax)
John Lewis (piano)
Herb Ellis (guitar)
Ray Brown (bass)
Stan Levy (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in LA; October 16, 1956

[Tracks]
01. Be Bop (music: Dizzy Gillespie)
02. We (music: Harry Woods / words: Charles Tobias, Al Sherman)
03. Dark Eyes (traditioal)
04. Lover Come Back To Me (music: Sigmund Romberg / words: Oscar Hammerstein II)

[Links: Dizzy Gillespie]
Dizzy Gillespie Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Stan Getz]
Stan Getz Discography (by Riccardo Di Filippo Luigi Maulucci & Nicola Rascio)
Stan Getz Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: John Lewis]
John Lewis and Modern Jazz Quartet (@ Michael Furstner's JAZCLASS)

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2005年06月17日

『ソニー・サイド・アップ』

sonnysideup.jpg Dizzy Gillespie, Sonny Rollins & Sonny Stitt - Sonny Side Up

ソニー・スティットのすごいところは、相手がどんな大物であっても一歩も引けをとらないどころか、派手な立ち回りやらせればタフなファイターぶりを遺憾なく発揮するし、しっとりとしたバラードをやらせれば息もぴったりの大人の対話を楽しめるという、芸域の広さ、深さだと個人的には思っています。

だから、スティットの真の実力は、共演者が大物であれば大物であるほど、引き出されます。スティットに「バトルもの」が多いのは、彼のそういう性格を見越してのことではないかと思うのですが、数あるスティットの「バトルもの」の中でも最高傑作が、今日紹介する『ソニー・サイド・アップ』です。タイトルはもちろん「サニーサイド・アップ(目玉焼き)」のもじりですね。

サックス界を代表する2人のソニー、スティットとロリンズがガップリ四つに組んだアルバムというだけで興奮してきますが、聞きものは何といっても2曲目〈エターナル・トライアングル〉。14分を超すこの熱演に、ジャズの醍醐味がすべて詰まっています! 直訳すると、「永遠のトライアングル=三角関係」。といっても、お祭り男ディジー・ガレスピーは背後でたまにハイノートをヒットするだけで、主役はもっぱら2人のソニーです。

実力者同士のガチンコ・バトルですから、お互いの意地と意地がぶつかりあい、一歩も譲りません。とにかく相手を打ち負かそうと次から次へとパンチをくり出しますが、攻撃する側も受ける側も百戦錬磨の強者ですから、なかなか勝負はつきません。それこそ「おいおい、いつまでやってるんだよ」とツッコミを入れたくなるほどです。でも、それがやがて「ああ、サイコー! 時よ止まらないで〜!」に変わってくる(笑)。スタジオ録音なのに、ライヴの興奮と熱気が伝わる名演中の名演です。

まったく遅蒔きながら、私もようやく最近になってロリンズの『サキコロ』に開眼したのですが、このアルバムのロリンズは昔から好きでした。豪快なテナーというのはこういうものだといわれれば、私にだってわかるんです(笑)。いや、ホントに2人とも超カッコイイ!!!

 

Dizzy Gillespie, Sonny Stitt, Sonny Rollins "Sonny Side Up"
(Verve MGV 8262)

Dizzy Gillespie (trumpet)
Sonny Stitt (tenor sax)
Sonny Rollins (tenor sax)
Ray Bryant (piano)
Tommy Bryant (bass)
Charlie Persip (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded at Nola Recording Studio, NYC; December 19, 1957

[Tracks] Dizzy Gillespie, Sonny Rollins & Sonny Stitt - Sonny Side Up
01. On The Sunny Side Of The Street (music: Jimmy McHugh / words: Dorothy Fields)
02. The Eternal Triangle (music: Sonny Stitt)
03. After Hours (music: Avery Parish / words: Robert Bruce, Buddy Fayne)
04. I Know That You Know (music: Vincent Youmans / words: Anne Caldwell)

[Links: Dizzy Gillespie]
Dizzy Gillespie Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Sonny Rollins]
The Sonny Rollins Page
The Complete Sonny Rollins
Sonny Rollins Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ray Bryant]
Ray Bryant Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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ジーン・アモンズ&ソニー・スティット『ボス・テナーズ・イン・オービット』

bosstenorsinorbit.jpg Gene Ammons & Sonny Stitt - Boss Tenors In Orbit

前回投稿したアモンズ評を読んで、勘のいい方なら「これってデクスター・ゴードンとおんなじ表現じゃん!」とお気づきになったかもしれません。「男性的」「雄大な」「スケールの大きな」「泰然自若」といった形容詞は、たしかにアモンズにもデックスにも通用します。でも、この2人には決定的な違いがある。それが「泥臭さ」です。

ブルースの本場シカゴは、黒人が多い街としても知られています(黒人39%、白人37%、ヒスパニック系20%)。シカゴ生まれのアモンズのテナーは、だから土の匂いがします。そして、野太い。一歩間違えると野暮ったい田舎の音になりそうなのに、そうならないのは、彼の懐の深さのなせる業です。アモンズの吹くバラードは、デカくて力のある男ならではのゆとりを感じさせます。

対するデックスはLA生まれ。メキシコに近いこともあって、ヒスパニック系が全体の半数近くを占めています(ヒスパニック系47%、白人30%、黒人11%、アジア系10%)。西海岸の陽気は南国そのもの。ここでは何事もおおらかに進みます。デックスの飄々とした性格とゆったりとした(=急かない)テナーは、彼の生まれた土地とも関係しているに違いありません。

アモンズの泥臭さは、アモンズのテナーがアーシーなオルガンと親和性が高いことでもわかります。デックスとオルガンも合わないことはないかもしれませんが、アモンズのほうがしっくりします。

ボス・テナーズ・イン・オービット』(「in orbit」の直訳は「軌道に乗った」「軌道上の」。2人のかけあいの滑らかさを評したものだとすれば、「丁々発止のボス・テナーズ」といった感じでしょうか)にもオルガン奏者ドン・パターソンが参加していますが、アモンズ&スティットのチームは、ソウルジャズの大御所ブラザー・ジャック・マクダフとその名も『ソウル・サミット』というおそろしげなアルバムも残しています。筋金入りの泥臭さです。

〈ロング・タイム・アゴー・アンド・ファー・アウェイ〉の出だしから、オルガン特有のアーシーな響きが充満します。遅れて登場するアモンズのテナーが輪をかけて男臭い。スティットのテナーが軽く聴こえてしまうほどです。やっぱり、ボスはいちばんおいしいツボを心得ているんです。

4曲目の〈ジョン・ブラウンズ・ボディ〉。どこかで聞いたことがあるメロディーだと思ったら、「ま〜るい緑の山手線、真ん中通るは中央線、新宿西口駅の前、カメラはヨ○ドバシカメラ」の元ネタでした(笑)。ちなみに、このトラッド・ソングはオスカー・ピーターソンとミルト・ジャクソンの共演盤『ヴェリー・トール』でも演奏されていました。

 

Gene Ammons, Sonny Stitt "Boss Tenors In Orbit"
(Verve V/V6-8468)

Gene Ammons (tenor sax)
Sonny Stitt (tenor sax) #1, 3-5 (alto sax) #2
Don Patterson (organ)
Paul Weeden (guitar)
Billy James (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; February 18, 1962

[Tracks] Gene Ammons & Sonny Stitt - Boss Tenors In Orbit
01. Long Ago And Far Away (music: Jerome Kern / words: Ira Gershwin)
02. Walkin' (music: Richard Carpenter)
03. Why Was I Born (music: Jerome Kern / words: Oscar Hammerstein II)
04. John Brown's Body (traditional)
05. Bye Bye Blackbird (music: Ray Henderson / words: Mort Dixon)

[Links: Gene Ammons]
Gene Ammons Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Paul Weeden]
The Paul Weeden Discography (by Carl-Bernhard Kjelstrup, Jr.)

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2005年06月16日

ジーン・アモンズ&ソニー・スティット『ボス・テナーズ』

bosstenors.jpg

シカゴ・テナー界のボスといえば、ボス・テナーことジーン・アモンズその人です。1925年4月14日、イリノイ州シカゴ生まれ。1974年8月6日、イリノイ州シカゴでガンのため亡くなりました。

彼がボスだったのは、父親が「ブギウギ・ピアノの父」と呼ばれたアルバート・アモンズだったからではありません。それはそれで、シカゴ・マフィアの血の継承みたいでおかしいのですが。

また、麻薬売買の罪で服役したアモンズが7年半の「おつとめ」を終えて出所したとき(1969年)、おおぜいのミュージシャン(=子分)が親分の現場復帰を祝って、刑務所の門の前にずらりと勢ぞろいして出迎えたという逸話も、彼がいかに偉大なボスだったかを伝えるエピソードではあっても、アモンズがボスたりえた理由を説明してはくれません。

アモンズがボスとしてシカゴ・テナー界に君臨したのは、そのスケールの大きなサウンドでほかの者を寄せつけない真の実力者だったからです(きっと)。同じくシカゴ出身のグリフィンが霞んでしまうほどの、雄大なテナー・サウンド。リトルなグリフィンが文字どおり小僧に見えてしまうのは、細かいことは気にしない、大人(「たいじん」と読んでください)然とした親分の懐の深さに触れた瞬間です(艶々のグリフィンも好きですよ、念のため)。

そんな男前の親分ですが、たった一人、その実力を認めて、兄弟の杯を酌み交わした相手がいます。それが、ミスター・サキソフォンことソニー・スティットです。1924年2月2日、マサチューセッツ州ボストン生まれ。1982年7月22日、ワシントンDCで死去。

同じ楽器奏者が同じステージに立てば、聴衆はどうしたって両者の聞き比べ(=実力判定)をするでしょう。逃げも隠れもできない同一楽器によるガチンコ対決は、古くから「バトル」と呼ばれて親しまれてきたのですが、なかでも「テナー・バトル」は、歴代のツワモノたちが火花を散らせてきたこともあり、恒常的に活動する人気のバトル・チームが何組も育ちました。

たとえば、デクスター・ゴードン&ワーデル・グレイ、ジョニー・グリフィン&エディ・ロックジョー・デイヴィス、アル・コーン&ズート・シムズなどなど。でも、そのなかで最高の人気を誇ったのが、アモンズ&スティットの「ボス・テナーズ」(複数形)です。

4曲目のテナー・バトルの定番曲〈ブルース・アップ・アンド・ダウン〉は、このコンビが生み出した最大のヒット曲。初出はプレスティッジ盤『オールスター・セッションズ』ですが、ヴァーヴ盤『ボス・テナーズ』はステレオ録音なので、左右に分かれた2本のテナーのかけあいがよくわかります。どこまでも太くたくましいアモンズの男くさいテナーと、低音から高音まよどみなく行き来するスティットのテナーの聞き比べを楽しんでください。

 

Gene Ammons, Sonny Stitt "Boss Tenors"
(Verve V/V6-8426)

Gene Ammons (tenor sax)
Sonny Stitt (alto sax, tenor sax)
John Houston (piano)
Chales Williams (bass)
Geoge Brown (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded in Chicago; August 27, 1961

[Tracks]
01. There Is No Greater Love (music: Isham Jones / words: Marty Symas)
02. The One Before This (music: Gene Ammons)
03. Autumn Leaves (music: Joseph Kosma / words: Jacques Prevert, Johnny Mercer [E])
04. Blues Up And Down (music: Gene Ammons, Sonny Stitt)
05. Counter Clockwise (music: Sonny Stitt)

[Links: Gene Ammons]
Gene Ammons Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年05月10日

『ディス・イズ・タル・ファーロウ』

thisistalfarolow.jpg

日曜日は、静岡で今年度初めての講義をしてきました。最初というのはいつも新鮮で、ちょっぴり緊張するものです。受験生というのは毎年入れ替わるから、なおさらです(高2のときからとってくれた生徒もいますが)。彼らがこの1年でどれだけ伸びるか、今からすごく楽しみです。

タル・ファーロウはもともと看板描きを生業としていました。クラブやホールなどでよく出演者を紹介する立て看板が出てたりするでしょう。あれを描いていたわけです。ギターも弾くには弾いていたようですが、それはあくまで余技(実際、彼は最後まで譜面に強くなかったといいます)。そんな彼がジャズに目覚めたのは、1950年代当時のほかのギタリストたちの例に漏れず、ベニー・グッドマン楽団に在籍していたチャーリー・クリスチャンの演奏を聞いたからです。

プロとしてのスタートは21、2歳の頃というから、ずいぶん遅かったようです。今の感覚でいうと当たり前かもしれませんが、昔のミュージシャンの略歴を見ると、10代から、場合によってはロー・ティーンの時代からステージに立っていたという人が驚くほど多いんです。

下積み時代で印象に残るのは、スイング系のヴァイブ奏者レッド・ノーヴォのトリオへの参加でしょう。ノーヴォのヴィブラフォンにタルのギター、そしてチャールズ・ミンガス(!)のベースという変則的なトリオでの経験が、ドラムレスでも立派にスイングする、後のタルのスタイルの下地になったのかもしれません。彼らの演奏は、サヴォイ盤『ムーヴ』に記録されています。

タルとコスタの出会いが実現したのは1955年の秋、一通の電報がきっかけでした。ニューヨークにあった小さなクラブ「コンポーザー」のオーナー、サイ・バロンが、レッド・ノーヴォの元にいたタルに、エディ・コスタ、ヴィニー・バークと組んでお店に出演するよう依頼してきたのです。

これはあくまで私の想像ですが、ドラムのセットも満足に置けないほど小さな店だったのではないでしょうか。だからこそ、ドラムなしでもスイングする組み合わせが必要だったのではないか、と。だとしたら、このサイ・バロンの見識の高さは特筆ものです。天の配剤ともいえるタルとコスタの組み合わせを考え出したサイ・バロンに拍手!

こうして生まれたタルのドラムレス・トリオは、1958年に「コンポーザー」が店じまいするまで、同店で演奏を続けました。閉店後、トリオは解散。ついでにタルも引退してしまいます(ただし、68年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルで復活)。ニュージャージーに引きこもったタルのもとを、ジム・ホールやバーニー・ケッセルら錚々たるギタリストが訪れてジャム・セッションに興じたという、心温まる逸話も残されています。

ディス・イズ・タル・ファーロウ』は、タル引退直前の58年2月に録音されました。残念ながらトリオでの演奏ではなく、ドラム入りのカルテットで、しかもベースがなぜか別人になっていますが、タルもコスタも健在です。数年後にコスタが亡くなってしまったことを考えると、なぜもっと録音を残してくれなかったのか。それが悔やまれてなりません。

 

Tal Farlow "This Is Tal Farlow"
(Verve MGV-8289)

Eddie Costa (piano)
Tal Farlow (guitar)
Knobby Totah (bass) #1-4
Bill Takas (bass) #5-8
Jimmy Campbell (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded at WOR Studio, NYC; February 17 (#1-4), 18 (#5-8), 1958

[Tracks]
01. Lean On Me (music: Allan Green, Edwin Waldman)
02.Wonder Why (music: Nicholas Brodszky / words: Sammy Cahn)
03. Night And Day (music+words: Cole Porter)
04. Stella By Starlight (music: Victor Young / words: Ned Washington)
05. The More I See You (music: Harry Warren / words: Mack Gordon)
06. All The Things You Are (music: Jerome Kern / words: Oscar Hammerstein II)
07. How Long Has This Been Going On (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
08. Topsy (music: Edger William Battle, Eddie Durham)

[Links: Eddie Costa]
The Official Site of Eddie Costa
Eddie Costa Discography (@ Tony King's Jazz Homepage)
[Links: Tal Farlow]
Tal Farlow: a Biography (by Guy Littler-Jones)
Tal Farlow (@ Dave Gould's Guitar Pages)

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2005年05月06日

『スウィンギング・ギター・オブ・タル・ファーロウ』

theswingingguitar.jpg Tal Farlow - The Swinging Guitar of Tal Farlow

同じ雰囲気の人間が自然に集まり1つの集団をつくるように、ギターのタル・ファーロウとピアノのエディ・コスタがお互いの匂いに引き寄せられるようにレギュラー・バンドを組んだのが1955年。以来、彼らはヴァーヴに3枚のアルバムを残します(その他、ザナドゥにも私家録音盤が2枚ある)。『スウィンギング・ギター・オブ・タル・ファーロウ』は、偶然というにはあまりによくできた彼らの出会いを記録した最初のレコードです。

「ピアノ+ギター+ベース」というのは今ではあまり流行らない形式ですが、昔はドラム抜きのトリオもまた市民権を得ていました。〈恋こそはすべて〉〈スターダスト〉など、とろけるような甘い歌声で一世を風靡したナット・キング・コール。彼はスゴ腕のピアニストでもあったのですが、その彼が採用していたのがドラムレス・トリオ。その形式は、同じくバカテクのピアニスト、オスター・ピーターソンにも引き継がれます。有名な「ザ・トリオ」結成以前は、ピーターソン (piano)、ハーブ・エリス (guitar)、レイ・ブラウン (bass) が固定メンバーでした。

ただ、ドラムスが生み出す多彩なリズムが、その後のジャズの発展において重要な役割を果たしたのはまぎれもない事実で、リズムの革新者がいないこの形式が、やがて廃れていくのは時代の必然だったのかもしれません。

タルとコスタのドラムレス・トリオは、そんな時代の趨勢に逆らうように登場した最後の名コンビでした。ドラム抜きというと、どうしても気の抜けた炭酸のような「しまりのなさ」を想像してしまいますが、タルもコスタも中低音を中心にドライヴしまくるタイプなので、演奏そのものは引き締まっています。さらにいうなら、タルの絶妙なバッキングがドラムの不在をほとんど意識させません。ヴィニー・バークの堅実なベースも一役買っています。

コスタ・ファンの私のおすすめは、3曲目〈ユー・ステップド・アウト・オブ・ア・ドリーム〉。急速調の演奏のなかにこそ、彼ら2人の最良の部分を聞きとることができます。

 

"The Swinging Guitar Of Tal Farlow"
(Verve MGV-8201)

Eddie Costa (piano)
Tal Farlow (guitar)
Vinnie Burke (bass)

Produced by Norman Granz
Recorded in NYC; May 31, 1956

[Tracks] Tal Farlow - The Swinging Guitar of Tal Farlow
01. Taking A Chance On Love (music: Vernon Duke / words: John Latouche, Ted Fetter)
02. Yardbird Suite (music: Charlie Parker)
03. You Stepped Out Of A Dream (music: Nacio Herb Brown / words: Gus Kahn)
04. They Can't Take That Away From Me (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
05. Like Someone In Love (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
06. Meteor (music: Tal Farlow)
07. I Love You (music+words: Cole Porter)

[Links: Eddie Costa]
The Official Site of Eddie Costa
Eddie Costa Discography (@ Tony King's Jazz Homepage)
[Links: Tal Farlow]
Tal Farlow: a Biography (by Guy Littler-Jones)
Tal Farlow (@ Dave Gould's Guitar Pages)

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2005年05月02日

タル・ファーロウ『タル』

tal.jpg

つい最近、桜の花を愛でたと思ったら、もう5月なんですね。季節の移り変わりは早いものです。GW の中休み、お仕事されているみなさん。今日は電車もすいているでしょうから、張り切っていきましょう(笑)。

タル・ファーロウは、白人ギタリストのソフト路線が中心だった1950年代のジャズ・ギター界にあって、スピードとテクニックをあわせもった傑出した才能の持ち主として、今でも多くのギタリストにリスぺクトされている存在です。1921年6月7日、ノース・カロライナ州グリーンスボロ生まれ。1998年7月24日、ニューヨーク州ニューヨークで死去。

中低音を中心に、強烈なドライヴ感でグイグイ引っ張る演奏というと、まるでエディ・コスタのピアノの紹介のようですが、実はこれ、タル・ファーロウにもあてはまる表現なんです。

そう、この2人の個性は実によく似ています。あえて「水と油」の2人を組み合わせて、両者の化学反応(ケミストリーですね)によって傑作が生まれる、というのもジャズらしくて楽しいのですが、もともと似た者同士の組み合わせで悪かろうはずがありません。そして、彼らの最高傑作として知られているのが、この『タル』なんです。

CDをプレイヤーにセットしたら、迷わず「5」を選択してください(頭から順番に聞くと、今の耳には少しゆるく感じられてしまうかもしれません)。5曲目の〈イエスタデイズ〉には、エディ・コスタの生涯最高のソロが記録されています。同じ曲を収録したザナドゥ盤『セカンド・セット』というアルバムもありますが、これはエド・ファーストという一ジャズ・ファンが記録した私家録音盤なので、音があまりよくありません。ただ、コスタのソロに関しては、こちらのほうが上だという意見も根強くあります。

ところで、タルやコスタの邦盤CDを買うと、だいたいジャズ評論家の油井正一さん(故人)の LP 当時のライナーが載っているのですが、これがなかなか味のある、いい文章なんです。油井さんといえば、ストーリー仕立てのアーティスト紹介が抜群にうまいのですが、淡々とした筆致のなかに、アーティストに対する愛が感じられます。私もこういう文章が書けるようになりたいと、日々思っています。



Tal Farlow "Tal"
(Norgran MGN-1102 / Verve MGV-8021)

Eddie Costa (piano)
Tal Farlow (guitar)
Vinnie Burke (bass)

Produced by Norman Granz
Recorded in NYC; June 1956

[Tracks]
01. Isn't It Romantic (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
02. There Is No Greater Love (music: Isham Jones / words: Marty Symes)
03. How About You (music: Burton Lane / words: Ralph Freed)
04. Anything Goes (music+words: Cole Porter)
05. Yesterdays (music: Jerome Kern / words: Otto Harbach)
06. You Don't Know What Love Is (music: Gene DePaul / words: Don Raye)
07. Chuckles (music: Clark Terry)
08. Broadway (music+words: Henry Woode, Teddy McRae, Bill Byrd)

[Links: Eddie Costa]
The Official Site of Eddie Costa
Eddie Costa Discography (@ Tony King's Jazz Homepage)
[Links: Tal Farlow]
Tal Farlow: a Biography (by Guy Littler-Jones)
Tal Farlow (@ Dave Gould's Guitar Pages)

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2005年03月18日

チャーリー・パーカー『ナウズ・ザ・タイム』

nowsthetime.jpg Charlie Parker Quartet - Now's the Time

ついにこの日がやってきてしまいました。いよいよ真打ち、チャーリー・パーカーの登場です。本名、チャールズ・パーカー Jr. 。1920年8月29日、カンザス州カンザスシティ生まれ。1955年3月12日、ニューヨーク州ニューヨークで死去。愛称はご存じ Bird(空高く舞うトリさんです)。このブログのタイトルも、バードをもじってつけました。

でも、正直な話、バードのことを書くのは気乗りがしないんです。相手が大きすぎるというか、バードについて蘊蓄を垂れるほどバードのことをわかっている自信がないというか、要するに、闘う前から腰が引けてる状態ですね(笑)。

ジャズの世界には、それを認めるかどうかでその人の嗜好がたちどころにわかる「踏み絵」のようなやっかいな人が何人かいます。たとえば、オーネット・コールマンを認めるかどうか、エレクトリック・マイルスを認めるかどうか、というのはかなりエグイ質問です(幸いにして、私はどちらも好きですが)。この手の悪質な質問に下手に答えようものなら、フフンと鼻で笑われるか、場合によっては全人格(全ジャズ人生)を否定されかねない(笑)。バードもそんな「踏み絵」の1人です。というより、「バードを聞かずしてジャズを語る資格なし」という言葉が威圧感をもって迫ってくるのがジャズの世界です。

さて、バードです。バードの最盛期は1940年代。というわけで、録音状態はきわめて悪い。しかも、ビバップ革命というジャズ史上最大の事件の歴史的価値から、マスターテイクはもちろんのこと、何種類もの別テイクから未完成テイクにいたるまで、ありとあらゆる音源が CD 化されています。

同じ曲を何回もくり返して、それぞれ違った演奏をしてしまうバードは、たしかにすごい。それくらい、私にだってわかります。でも、同じ曲を何テイクもくり返して聞く忍耐力は、残念ながら私にはありません。だって、そうでしょう? 他のどんなジャンルの音楽で、制作途中の音源を市場に出しますか? 試行錯誤をくり返してながら、最終的に一番よかったものを商品としてリスナーに届ける(=それ以外のものは捨て去る)のが、プロフェッショナルじゃないかと思うのです。

ジャズの世界でよくある「コンプリート盤」は、一見すると価値がありそうな気がしますが、本来ならプロデューサーやミュージシャンの判断で「市場に出すべきではない」としたものを、市場に出すわけです。「それって、ボッタクリちゃう?」というのが、ふつうの神経です。

私がいいたいのは、バードは「研究」の対象であっても、「鑑賞」の対象じゃないのではないか、ということです。それは、バード関連サイトのいくつかが「研究(室)」を名乗っているところからもうかがわれます(下のリンクをご覧ください)。他の人のことはよくわかりませんが、少なくても私にとってはそうなんです、ごめんなさい(誰に謝っているのでしょう?)。

そんなわけで、気弱な私は、晩年(といっても30代前半ですが)のヴァーヴ盤をひそかに楽しむことにしています。『ナウズ・ザ・タイム』、いいじゃないですか。歴史的名演として名高いダイヤル盤とサヴォイ盤は、CD ラックの片隅で私に聞かれるのを待ち続けていますが、きっと待ちくたびれて眠りこけていることでしょう(しかも、別テイクてんこもりのコンプリート盤はもっていません。マスターテイク集だけはかろうじてもっていますが)。

追記:
この投稿を書いていて、はじめて寺島靖国さんの偉大さがわかりました。彼はおそらく、日本ではじめて公の場でパーカー至上主義に真っ向から異を唱えた人です。好きな音楽は必ずしも一致しませんが、寺島さんの勇気ある行動に拍手!

 

Charlie Parker "Now's The Time"
(Verve MGV-8005)

Charlie Parker (alto sax)
Hank Jones (piano)
Teddy Kotick (bass)
Max Roach (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in NYC; December 30, 1952

[Tracks] Charlie Parker Quartet - Now's the Time
01. The Song Is You (music: Jerome Kern / words: Oscar Hammerstein II)
02. Laird Baird (music: Charlie Parker)
03. Kim [alt.] (music: Charlie Parker)
04. Kim (music: Charlie Parker)
05. Cosmic Rays (music: Charlie Parker)
06. Cosmic Rays [alt.] (music: Charlie Parker)
07. Chi-Chi [alt.] (music: Charlie Parker)
08. Chi-Chi (music: Charlie Parker)
09. Chi-Chi (music: Charlie Parker)
10. I Remember You (music: Victor Schertzinger / words: Johnny Mercer)
11. Now's The Time (music: Charlie Parker)
12. Confirmation (music: Charlie Parker)

[Links: Charlie Parker]
Charlie Parker (Official Website)
Charlie Parker Sessions (@ Miles Ahead)
Charlie Parker Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Chasein' The Bird (by よういち)
村山秀樹による Charlie Parker 研究
Charlie Parker 研究室 (by netjazz)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年03月17日

『ソニー・スティット・シッツ・イン・ウィズ・オスカー・ピーターソン・トリオ』

sonnystittsitsinwith.jpg

ソニー・スティットとオスカー・ピーターソンの共演盤です。大物同士の顔合わせは、ノーマン・グランツ率いるヴァーヴの得意とするところですが、ジャズ界きっての名手2人がそろって悪かろうはずがありません(ジャケットはイマイチですが)。

この2人、楽器こそ違いますが、実はよく似たタイプなんです。まず、どちらもすごいテクニシャン。たんに指がよく動くだけじゃなくて、どんなにスピードをあげても髪型ひとつ乱れない(笑)。むずかしいことを軽々とやってのけるのが、真のテクニックでしょう? 饒舌(すぎる)という批判が多いのも共通しています。

2人とも、ものすごい多作家です。録音の数もさることながら、作品のレベルが均質なため、好きになると、あれもこれも買い集めなければならないという、コレクター泣かせの罪な人です(笑)。

つねに偉大な先人と比較されるところも似ています。スティットはもちろんチャーリー・パーカーと、ピーターソンはアート・テイタムと、いろいろ比べられてしまうわけです。2人の名誉のためにいっておくと、バードとテイタムはたしかにジニアスですが、ふだん聞くにはちょっと重い(録音も古いし)。気軽に匠の技を味わうなら、間違いなくスティットとピーターソンに軍配があがります。

ソニー・スティット・シッツ・イン・ウィズ・オスカー・ピーターソン・トリオ』は、グランツの JATP(Jazz At The Philharmonic の略。スイング〜モダン期の大物をごっそり引き連れて毎年のように行われたジャズ史上最大の興行ツアー)がヨーロッパを訪れた際に録音されました(録音はパリ)。

LP 時代のA面(1〜5曲目)をバード、B面(6〜8曲目)をプレス(レスター・ヤングの愛称)、スィーツ(ハリー・エディソンの愛称)、ベン・ウェブスターらスイング期の大物に捧げようというのは、スティットのアイディアだそうです。アルト(A面)とテナー(B面)の両刀使いのスティットならではの楽しい作品にしあがっています。

 

"Sonny Stitt Sits In With The Oscar Peterson Trio"
(Verve MGV-8344)

Sonny Stitt (alto sax, tenor sax)
Oscar Peterson (piano)
Ray Brown (bass)
Ed Thigpen (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in Paris; May 18, 1959

[Tracks] 
01. I Can't Give You Anything But Love (music: Jimmy McHugh / words: Dorothy Fields)
02. Au Privave (music: Charlie Parker)
03. The Gypsy (music: Billy Reid)
04. I'll Remember April (music: Gene DePaul, Pat Johnston / words: Don Raye)
05. Scrapple From The Apple (music: Charlie Parker)
06. Moten Swing (music: Bennie Moten, Buster Moten)
07. Blues For Pres, Sweets, Ben & All The Other Funky Ones (music: Sonny Stitt)
08. Easy Does It (music: Sy Oliver, Lester Young)

[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peterson (Official Website)
Oscar Peterson: A Jazz Sensation (@ Library and Archives Canada)
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen (Official Website)

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ソニー・スティット『ニューヨーク・ジャズ』

newyorkjazz.jpg Sonny Stitt - New York Jazz

ソニー・スティットは活動期間が長く、ものすごい多作家なうえ(リーダー作だけでゆうに 100 枚は超えるそうです)、アルトをもたせてもテナーを吹かせても、つねに安定した実力を発揮したので、「スティットといえば、この1枚」という誰もが認める決定的名盤というのがありません。あまたある名盤選でも、スティットの推薦盤は人によって違っていることが多く、あとは個人の思い入れ次第という、ちょっと困った人なんです。逆にいうと、どれを買ってもソンはしないという希有な人でもあります。

ジャズは即興が基本の「瞬間芸術」ですから、そのときの体調や感情の起伏によって作品の出来、不出来に顕著な差が出ます。ジャズ史を彩る巨人といえども例外ではありません。だから、スティットのクオリティの一定さが際立つわけです。

そんなわけで、私はスティットのアルバムを買うときは、好きな曲が入っているかどうかを1つの基準にしています。スティットを聞くなら、やっぱり歌ものがいい。耳になじんだスタンダードを、何の飾り気もなく淡々と吹く彼は絶品です。とくに凝ったアレンジを施すわけでもないので、「心を激しく揺さぶる感動」とか「新鮮な驚き」とは無縁ですが、不思議と何度聞いても飽きがこない。スティットを凡百のサックス奏者と隔てているのは、やはり汲めども尽きない「引き出しの多さ」ではないでしょうか。

ニューヨーク・ジャズ』は、スタンダード中心の選曲もさることながら、ハイセンスなジャケットによって、私のお気に入りのリストに入っています。



Sonny Stitt "New York Jazz"
(Verve MGV-8219)

Sonny Stitt (alto s, tenor sax)
Jimmy Jones (piano)
Ray Brown (bass)
Jo Jones (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded at Fine Sound, NYC; September 14, 1956

[Tracks] Sonny Stitt - New York Jazz
01. Norman's Blues (music: Sonny Stitt)
02. I Know That You Know (music: Vincent Youmans / words: Anne Caldwell)
03. If I Had You (music+words: Ted Shapiro, James Campbell, Reg Connelly)
04. Alone Together (music: Arthur Schwartz / words: Howard Dietz)
05. 12th Street Rag (music: Euday L. Bowman)
06. Down Home Blues (music: Sonny Stitt)
07. Sonny's Tune (music: Sonny Stitt)
08. Stars Fell On Alabama (music: Frank Perkins / words: Mitchell Parish)
09. Body And Soul (music: Johnny Green / words: Edward Heyman, Robert Sauer, Frank Eyton)
10. Between The Devil And The Deep Blue Sea (music: Harold Arlen / words: Ted Koehler)

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2005年03月12日

ジミー・スミス『ルート・ダウン』

rootdown.jpg Jimmy Smith - Root Down

ジミー・スミスがジャズ史上最高のオルガン奏者だということを天下に知らしめた白熱のライヴ盤です。いやもう、熱い熱い。ものすごいテンションで、ギターもベースもオルガンも切れまくっています。これを聞くと、ブルーノート時代のスミスがいかに猫を被っていたかがよくわかります(笑)。

この『ルート・ダウン』は、ビースティー・ボーイズのサンプリング・ネタ(『Ill Communication』に収録)として新たに定番入りを果たしたのですが、学生時代、ジャイルス・ピーターソンのアシッド・ジャズ・ムーヴメント(なつかしいね)からジャズの世界に入った私としては、こういうグルーヴ感は嫌いじゃない。というか、はっきりいって大好きです。

クルセイダーズのウィルトン・フェルダーの参加もうれしいジミー・スミス入門の1枚です。おすすめ。

 

Jimmy Smith "Root Down"
(Verve V6 8806)

Jimmy Smith (organ)
Steve Williams (harmonica) #3
Arthur Adams (guitar)
Wilton Felder (bass)
Paul Humphrey (drums)
Buck Clarke (percussion)

Produced by Eric Miller
Recorded by Ed Greene, Jack Hunt
Recorded live at the Bombey Bicycle Club, LA; February 9, 1972

[Tracks] Jimmy Smith - Root Down
01. Sagg Shootin' His Arrow (music: Jimmy Smith)
02. For Everyone Under The Sun (music: Peter Chase)
03. After Hours (music: Avery Parrish)
04. Root Down (And Get It) (music: Jimmy Smith)
05. Let's Stay Together (music: Al Green, Al Jackson Jr., Willie Mitchell)
06. Slow Down Sagg (music: Jimmy Smith)

[Links: Jimmy Smith]
The Incredible Jimmy Smith

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ジミー・スミス『ザ・キャット』

thecat.jpg Jimmy Smith - The Cat

1963年、ブルーノート最大のスター、ジミー・スミスはより資金が潤沢にあったヴァーヴに引き抜かれます(当時、ヴァーヴの売れ筋路線を引っ張っていたのは、のちに CTI を興した名プロデューサー、クリード・テイラーです)。同じ時期、リヴァーサイドのビル・エヴァンスやウェス・モンゴメリーもヴァーヴに移籍しています。スターが育たないと経営が成り立たない、でもあまり売れすぎると他にもっていかれる、というインディーズのつらさを物語る出来事です。

ヴァーヴといえば、お金にものをいわせたゴージャスなアルバムづくりに定評がありますが(そこが気に入らないという人がいることも事実です)、移籍後のスミスも例外ではありません。この『ザ・キャット』は、古くは映画『燃えよドラゴン』、最近では『ミッション・インポッシブル』でおなじみの名コンポーザー、ラロ・シフリンのド派手なオーケストラをバックに、スミスがオルガンを弾きまくった、なんともぜいたくなアルバムです。

のっけから、タンゴの本場アルゼンチン生まれのシフリンらしいエキゾチック・サウンドが炸裂します。そうそう、このダイナミックなホーン・セクションこそ、シフリン・ミュージックの楽しさなんですよ。そこに乗っかるスミスもキテます。大言壮語のホラ吹き親父というのが、ジミー・スミスの素顔らしいのですが、こういうド派手なお祭り騒ぎでも貫禄を見せつけるスミスは、やっぱり口に違わずエラかった!

 

Jimmy Smith "The Cat"
(Verve V6 8587)

Jimmy Smith (organ)
Lalo Schifrin (arranger, conductor)
Ernie Royal, Bernie Glow, Jimmy Maxwell, Marky Markowitz, Snooky Young, Thad Jones (trumpet)
Ray Alonge, Jim Buffington, Earl Chapin, Bill Correa (French horn)
Billy Byers, Jimmy Cleceland, Urbie Green (trombone)
Tony Studd (bass trombone)
Dib Buttefield (tuba)
Kenny Burrell (guitar)
George Duvivier (bass)
Grady Tate (drums)
Phil Kraus (percussion)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; April 27, 29, 1964

[Tracks] Jimmy Smith - The Cat
01. Theme From "Joy House" (music: Lalo Schifrin)
02. The Cat (music: Lalo Schifrin)
03. Basin Street Blues (music: Spencer Williams)
04. The Carpetbaggers' Theme (music: Elmer Bernstein)
05. Chicago Serenade (music: Eddie Harris)
06. St. Louis Blues (music: William Christopher Handy)
07. Delon's Blues (music: Jimmy Smith)
08. Blues In The Night (music: Harold Arlen / words: Johnny Mercer)

[Links: Jimmy Smith]
The Incredible Jimmy Smith
[Links: Lalo Schifrin]
the official website of Lalo Schifrin

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2005年03月02日

リー・コニッツ『モーション』

motion.jpg リー・コニッツ - Motion - EP

パーカー派のフィル・ウッズ、ウェストコースト派のアート・ペッパーときたので、今度は同じ白人でもクール派の代表選手、リー・コニッツにご登場いただきましょう。クール・ジャズの創始者の1人、レニー・トリスターノの門下生のなかでは、つねに筆頭株だった実力者リー・コニッツ。1927年10月13日、イリノイ州シカゴ生まれ。

この『モーション』。曲目を見て「ああ、よくありがちなスタンダード集ね」なんて思ったら大間違い。ヤケドします(笑)。演っているのはたしかに誰もが知っているスタンダードばかりですが、テーマ(原曲のメロディー)はほとんど登場しません。全編アドリブだらけ。有名な〈ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ〉なんか、冒頭からアドリブではじまるので、最後まで聞かないと何の曲かまったくわかりません。即興の鬼と化したコニッツの面目躍如です。そのスゴさを実感するためにも、ぜひブラウニーが参加した『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』などで原曲のメロディーを覚えてから鑑賞してください。

クール派のコニッツと肉体派(笑)のエルヴィンの組み合わせというと、水と油のような気がしますが、そんな心配はご無用です。クールに燃える青白い炎と、熱く燃えたぎる真っ赤な炎が織りなすスリリングな展開。しかも、ピアノレスのトリオ作品というわけで、この両者がガップリ四つに組んで果し合いをするのですから、もうたまりません。

それにしても、リー・コニッツというのはビミョーな存在です。感情表現を極力抑えたクール派ですから、もともと感情移入しにくい人なのですが、「アルトサックスの代表選手を10人あげて」とか聞かれると、無視するわけにもいかない実力者です。実際、この『モーション』なんかを聞くと、「やっぱコニッツってスゲエな」と思ったりするわけです。徹底的に甘さを排して、ハードに迫るコニッツ。背中のほうからゾクゾクしてくる音楽なんて、そうざらにはありません。好きになりきれないけれど、気になる人。リー・コニッツ、侮れない存在です。

 

Lee Konitz "Motion"
(Verve MGV 8399)

Lee Konitz (alto sax)
Sonny Dallas (bass)
Elvin Jones (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded at Olmsted Sound Studios, NYC; August 29, 1961

[Tracks] リー・コニッツ - Motion - EP
01. I Remember You (music: Victor Schertzinger / words: Johnny Mercer)
02. All Of Me (music: Gerald Marks / words: Seymour Simons)
03. Foolin' Myself (music: Thomas "Fats" Waller / words: Andy Razaf)
04. You'd Be So Nice To Come Home To (music+words: Cole Porter)
05. I'll Remember April (music: Gene DePaul, Pat Johnston / words: Don Raye)

[Links: Elvin Jones]
Elvin Jones (Official Website)

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