2007年06月15日

ウェス・モンゴメリー『インクレディブル・ジャズ・ギター』

theincrediblejazzguitar.jpg Wes Montgomery - Incredible Jazz Guitar

売れ線プロデューサー、クリード・テイラーのもとで、ウェス・モンゴメリーは商業的成功を手に入れ、そこにからめとられていくわけですが、そうしたウェスの生き方は、おそらく彼の本格デビュー前の極貧生活と無関係ではありません。

1959年当時、ウェスには6人の子どもがいました。「貧乏人の子だくさん」を地でいく家庭で、一家の大黒柱ウェスは、朝7時から午後3時半まで工場で溶接工として働き、夜7時から午前2時までは「ターフ・バー」で、午前2時半から5時までは「ミサイル・ルーム」で演奏をこなすというスケジュールで日々の生活の糧を稼いでいました。ろくに睡眠時間もとれない、こんな過酷な生活で身体が保つはずもなく、ウェスは何度か意識を失ったといいます。ウェスが家族に好きなものを買ってやれる幸せを口にするとき、その脳裏には、わずか数年前まで家族を覆っていた悲惨な状況が思い浮かんでいたに違いありません。

そんな出口の見えない状況に救いの手を差し伸べたのは、リヴァーサイド・レーベルのオリン・キープニューズでした。1959年9月、ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルのパッケージ・ツアーでウェスの地元インディアナポリスを訪れたキャノンボール・アダレイは、そこでウェスの驚くべき才能を目の当たりにします。ツアーを終え、ニューヨークに舞い戻ったキャノンボールは、すぐさまオリンのもとを訪ね、「インディアナポリスにすごいギタリストがいるんだよ。君はこの男と契約しなくちゃ……ほら、これが電話番号さ」と一気にまくしたてたといいます。オリンその日、たまたまガンサー・シュラーがジャズ・レビュー誌でウェスを激賞した次の記事を目にしていて、そのことも彼の決断を後押しします。

 ウェス・モンゴメリーについて最もわかりやすい言い方をすれば、ずば抜けてスリリングなギタリスト、ということになる。彼のソロを聴くことは、崖っぷちでしきりに揺さぶられるようなものだ。そのピーク時のプレイは耐え難いほどエキサイティングで、これ以上は耐えられないと感じるまで続く。(中略)
 ウェスは、決まったパターンでソロを配列する。(中略)この決まったパターンとは、まず抑制の利いた流れのなかでメロディに対するアイディアを主眼としたシングル・ラインから始まり、その次には "演奏不可能" と思われるようなオクターヴ奏法、最後には別の次元で "不可能" としか思えないブロック・コードといった構成である。このようにして、ソロはダイナミックに展開され、そしてリズム的にも究極のクライマックスに達するのである。ここに至り、リスナーは必ず打ちのめされる(途方に暮れてしまっているギタリストのためにさらに付け加えるならば、ウェスはピックを使わずにこれをやるのだ)。

ガンサー・シュラー「インディアナ・ルネッサンス」(『ジャズ・レビュー』1959年9月号)より。『ウェス・モンゴメリー』より引用(訳は小泉清人さん)。

ウェスの名を天下に知らしめた傑作『インクレディブル・ジャズ・ギター』は、リヴァーサイドとのプロ契約の興奮も冷めやらぬ翌60年1月に録音されました。冒頭の〈エアジン〉から、ウェスは全開です。これが初出の代表的オリジナル〈フォー・オン・シックス〉もしびれます。バックを支えるトミフラ以下、リズム・セクションもサイコーです。言葉はいりません。ただ耳を傾けてください。そして酔い痴れてください(ただ、こういうのを聴くと、やっぱり後年のイージー・リスニング路線を才能の無駄遣いと糾弾したくなる気持ちも、わかるんですよねえ。だって、ホンマにすごいですもん。なんとも困った人です)。

 

"The Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomery"
(Riverside RLP 320/1169)

Wes Montgomery (guitar)
Tommy Flanagan (piano)
Percy Heath (bass)
Albert Heath (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; January 26, 28, 1960

[Tracks] Wes Montgomery - Incredible Jazz Guitar
01. Airegin Sonny Rollins (music)
02. D-Natural Blues Wes Montgomery (music)
03. Polka Dots And Moonbeams Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
04. Four On Six Wes Montgomery (music)
05. West Coast Blues Wes Montgomery (music)
06. In Your Own Sweet Way Dave Brubeck (music)
07. Mr. Walker (Renie) Wes Montgomery (music)
08. Gone With The Wind Allie Wrubel (music) / Herbert Magidson (lyrics)

[Links: Wes Montgomery]
Wes Montgomery Fan Club
Wes Montgomery Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Wes Montgomery Discography (by Ed Fila)
[Links: Tommy Flanagan]
Tommy Flanagan Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2007年03月07日

『キャノンボール・アダレイ・クインテット・アット・ザ・ライトハウス』

cannonball_atthelighthouse.jpg The Cannonball Adderley Quintet - At the Lighthouse

西海岸に居を構えたヴィクター・フェルドマンは、クラシック界に転出したアンドレ・プレヴィンの後釜として、ウェスト・コースト派の重鎮シェリー・マンのグループに加わり(59年録音の『アット・ザ・ブラック・ホーク』シリーズで聴けます)、60年の秋ごろから、ファンキー・ブームの牽引役、キャノンボールとナットの兄弟グループに参加します。

キャノンボール・アダレイ・クインテット・アット・ザ・ライトハウス』は、彼らがハーモサ・ビーチの有名クラブライトハウスに長期出演したときのライヴです(録音は1960年10月16日)。クインテットに加わったばかりのフェルドマンは、ピアノ一本で勝負しています。これが奏功して、彼のピアノを楽しむにはもってこいの作品になっています。

コテコテのファンキー節が炸裂する〈サック・オー・ウォー〉。後々までバンドのレパートリーとなったキャノンボール自作のこの曲の初出は、弟ナット名義の『ワーク・ソング』でした。

さて、黒人特有のムンムン感あふれるこの曲を、バリバリの英国人フェルドマンが弾くとどうなるか。意外や意外、けっこうイケてるんですね。バンドの初代ピアニスト、ボビー・ティモンズのまとわりつくような粘りは望むべくもありませんが、たたみかけるようなトレモロ(?)の連打で、親分キャノンボールの轟音にも負けちゃいません。

そういえば、キャノンボールの人気が爆発した60年代、9年もの長きにわたってバンドを支えたのは、オーストリア出身のジョー・ザウィヌルだったわけで(この話は後日、ザウィヌル特集でやります)、ファンキーだけではないキャノンボールの器の大きさを感じます。

あるいは、フェルドマンのオリジナル〈アズール・セラペ〉(英訳すると「Blue Shawl」。青いショールという意味だそうです)。実にいい曲です。ジャララララ、ラーラーンと響き渡るピアノのなんと心地よいことか。思わず「イエ〜イ」のかけ声も漏れようというものです。最後にホーン陣が加わって徐々に盛り上がり、仕上げのベースソロが終わったあとの、キャノンボールの「アッハーン」というため息もどこか満足げです。

ジミー・ヒースの〈ビッグ・P〉は兄のパーシー・ヒースに捧げた曲。フランク・ロソリーノの〈ブルー・ダニエル〉なんて、かわいいワルツも演ってますねえ。

フェルドマンのジャズ界におけるキャリアを考えたとき、人気バンド、キャノンボール・アダレイ・クインテットへの参加は、エポック・メイキングな出来事だと思うのですが、最終的に、彼は西海岸でのスタジオ・ワークを選択して、グループを去ります(61年の夏ごろ)。クラブめぐりは、やはり儲からないということなのでしょう。63年に『セヴン・ステップス・トゥ・セヴン』を録音したときも、ジャズ界一ギャラが高かったはずのマイルスの誘いを断ったくらいですから、スタジオ通いとの収入格差は歴然としたものがあったんだろうと思います。



"The Cannonball Adderley Quintet At The Lighthouse"
(Riverside RLP 344/9344)

Nat Adderley (cornet)
Cannonball Adderley (alto sax)
Victor Feldman (piano)
Sam Jones (bass)
Louis Hayes (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Wally Heider
Recorded live at the Lighthouse, Hermosa Beach, CA; October 16, 1960

[Tracks] The Cannonball Adderley Quintet - At the Lighthouse
01. Sack O' Woe Julian "Cannonball" Adderley (music)
02. Big "P" Jimmy Heath (music)
03. Blue Daniel Frank Rosolino (music)
04. Azule Serape Victor Feldman (music)
05. Exodus Victor Feldman (music)
06. What Is This Thing Called Love Cole Porter (music and lyrics)
07. Our Delight Tadd Dameron (music)

[Links: Cannonball Adderley]
The Cannonball Adderley Rendez-vous (by Gilles Miton)
Cannonball Adderley Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Victor Feldman]
Victor Feldman Discography (@ British Modern Jazz)

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2007年02月27日

ウェス・モンゴメリー『フル・ハウス』

wes_fullhouse.jpg Wes Montgomery - Full House (Live)

飛行機が苦手で、生まれ故郷のインディアナポリスからなかなか外に出ようとしなかったウェス・モンゴメリー。しかし、元祖チャーリー・クリスチャンに次いでジャズ・ギター界に革命を引き起こしたといわれるウェスの存在を世間がほっておくわけがありません。レコーディングのたびに東と西の海岸沿いの大都市に呼び出され、そこでこの世の奇跡を記録して、ふたたび帰途についたのでした。

1962年の6月、ウェスが向かったのはカリフォルニア州バークレー。湾をはさんで対岸のサンフランシスコとはベイブリッジでつながっています。折しもマイルス・バンドがサンフランシスコのブラックホークに出演中、ジョニー・グリフィンもジャズ・ワークショップに出演中ということで、集められたのが、バークレーにあったコーヒーハウス「ツボ's」。そして生まれたのが、世紀の傑作『フル・ハウス』でした。

聴衆を入れたライヴ盤ですが(Full House は「大入り満員」の意味)、レギュラー・セットではなく、録音のためだけのスペシャル・セット。メンバーも寄せ集めのスペシャル・ユニットなのにもかかわらず、ここに聴かれる一体感はどうしたことでしょう? ウェスのマイルス&コルトレーン好きはつとに知られるところですが、最高のリズム・セクションを借り受け、心の底からスイングしまくるウェスの喜びが伝わってくるようです。

タイトルにもなったウェスのオリジナル〈フル・ハウス〉。テナーとギターが奏でるテーマ・ユニゾンが聴こえてきた瞬間、体温が2、3度上昇します。ウェスの代名詞、オクターヴ奏法も全開です。小さな巨人グリフィンもこのころになると、例の大ボラ吹きが影を潜め、フレーズが素直になったようで、聴いていて気持ちいいことこのうえない。われらがケリーも楽しげにピョンピョンと跳ね回っています。

ギター・トリオでやさしく奏でられるラーナー&ロウの〈アイヴ・グロウン・アカスタムド・トゥ・ハー・フェイス〉。ミュージカル『マイ・フェア・レディ』からのセレクトですね。最初バックにかすかに聴こえていたベースとドラムがいつのまにか姿を消し、やがてウェスの独り舞台に。ポロンポロンと奏でられるブロック・コードの甘美な響きに、もうメロメロです。身体中がとろけてしまいそうです。チョーしあわせ〜(笑)。

ラテン・フレーバーあふれる〈キャリバ〉。珍しくチェンバースのベース・ソロからはじまって少し肩すかしを食いますが、ケリー、グリフィンと徐々に体温が上がってきたところで真打ち登場、ウェスの必殺「三段変則ソロ」が炸裂します。出だしはいつもどおりのシングルトーン、途中でギアをセカンドに入れてオクターヴ奏法へ、さらに、もう一段階ギアを入れ直してコード弾きへ。

ウェスのオクターヴ奏法やコード弾きは、ホーン奏者に負けない分厚いサウンドを出すために編み出されたという説がありますが、さもありなんの、迫力のギターワーク。これで盛り上がらなきゃ、ウソです、ホンマに。

ここまででもじゅうぶん満腹ですが、このライヴのピークはいちばん最後にやってきます。ソロの途中、何度もくり返される「ジャン、ジャン、ジャン、ジャン、ジャン、ジャーン」にしびれまくる〈S.O.S.〉。もうめちゃめちゃカッコいいっす!

信じられない猛スピードで超絶技巧のかぎりを尽くすウェスに、かつて早撃ちで鳴らしたグリフィンも必死の形相でついていきます。熱にうなされたように、あらんかぎりのテクニックで応酬するケリー。これぞジャズ、これぞライヴの大熱演です!!!

ジャケットには、ウェスの両手が大写しになっています。DVD『JAZZ625 ウエス・モンゴメリー』が出た今でこそ、彼の親指弾きが「真実」であることは疑いようがありませんが、その昔、「動くウェス」を知らなかった時代には、このジャケ写によって、その特異な右手の動きをあれこれ想像したそうです。

 

Wes Montgomery "Full House"
(Riverside RLP 434/9434)

Johnny Griffin (tenor sax) except #2
Wynton Kelly (piano) except #2
Wes Montgomery (guitar)
Paul Chambers (bass)
Jimmy Cobb (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Wally Heider
Recorded live at Tsubo, Berkeley, CA; June 25, 1962

[Tracks] Wes Montgomery - Full House (Live)
01. Full House Wes Montgomery (music)
02. I've Grown Accustomed To Her Face Frederick Loewe (music) / Alan Jay Lerner (lyrics)
03. Blue 'n' Boggie Dizzy Gillespie, Frank Paparelli (music)
04. Cariba Wes Montgomery (music)
05. Come Rain Or Come Shine Harold Arlen (music) / Johnny Mercer (lyrics)
06. S.O.S. Wes Montgomery (music)

[Links: Johnny Griffin]
Johnny Griffin Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atsushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wes Montgomery]
Wes Montgomery Fan Club
Wes Montgomery Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Wes Montgomery Discography (by Ed Fila)
[Links: Jimmy Cobb]
Jazz Legend Jimmy Cobb (Official Website)

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2007年02月26日

ミルト・ジャクソン&ウェス・モンゴメリー『バグズ・ミーツ・ウェス』

wes_bagsmeetswes.jpg Milt Jackson & Wes Montgomery - Bags Meets Wes

ウィントン・ケリー特集(だったんですよ)の最後を飾るのは、天才ギタリスト、ウェス・モンゴメリーとの共演盤です。まずは、ギターとヴァイブの両巨頭がそろい踏みした『バグズ・ミーツ・ウェス』から。

バグズことミルト・ジャクソン(本名 Milton Jackson)はモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)のヴァイブ奏者。1923年1月1日(元旦)、ミシガン州デトロイト生まれ。1999年10月9日、ニューヨーク州ニューヨークで死去。享年76歳。

オクターヴ奏法(1オクターヴ離れた2つの音を同時にかき鳴らす)がトレードマークのギタリスト、ウェス・モンゴメリー。本名、John Leslie Montgomery。1923年3月6日、インディアナ州インディアナポリス生まれ。1968年6月15日、インディアナポリスの自宅で死去。享年45歳。

偶然にも同い年の2人の名人を看板に、リヴァーサイド御用達のリズム・セクションがつきしたがう本作は、いかにもリラックスしたジャム・セッション的気配が濃厚で、名手たちの妙技を堪能できる、スウィンギーでご機嫌な1枚です。

こういうアルバムは、能書きを垂れるよりも頭を空っぽにして聴くに限ります。冒頭の〈S.K.J.〉(ミルトの奥さんのイニシャルだそうです)から、ソウルフルでくつろぎにみちた演奏が続きます。無駄な力を抜いて、気持ちよさげにギターを操るマエストロ。ミルトのヴァイブは、聴く者の心をとろけさせる妙薬です。う〜ん、こりゃたまらんわ(笑)。

フィリー・ジョーの連打ではじまる〈ステイブルメイツ〉。テーマに続いてウェスの切れ味のよいシングルトーンが炸裂します。ウェスといえば、ピックを使わない親指弾きが有名ですが、ホントにこれ、親指で弾いているの???

対するミルトは、魔法のようなマレットさばきで応戦します。アップテンポでもリキみを感じさせないのは、さすがです。こういうノリノリの曲ではウィントン・ケリーも黙っちゃいません。いつもながらの小気味いい、よく跳ねるピアノで彩りを添えます。

忘れちゃいけない、サム・ジョーンズのベースに火がついた、その名も〈サム・サック〉。よく走るミルトのヴァイブにからみあうリズム・ギター。いいねえ。ウェスのソロもシングルトーンからオクターヴへよどみなく続いていきます。ケリーのソロは、この曲がベストか。コロコロとよく歌っています。そして、ブンブンブルンと重低音を響かせるサム・ジョーンズのロング・ソロ、もうサイコーです。

続くウェスのオリジナル〈ジングルズ〉。リヴァーサイド・デビュー盤『ザ・ウエス・モンゴメリー・トリオ』や、兄のモンク (bass)、弟のバディ (vibe, piano) と組んだ兄弟ユニットのファンタジー盤『モンゴメリー・ブラザーズ』(輸入盤『Groove Brothers』で聴くことができます)でも取り上げられていた曲です。

ソロの先発はミルトに譲っていますが、このミルトがすごい。まさに縦横無尽に走りまわります。これを聴いて、作曲者のウェスが熱くならないほうがおかしい。クールな熱気を発散させながら突き進むウェスのカッコよさといったら。病みつき間違いなし、です。

 

Milt Jackson, Wes Montgomery "Bags Meets Wes!"
(Riverside RLP 407/9407)

Milt Jackson (vibraphone)
Wes Montgomery (guitar)
Wynton Kelly (piano)
Sam Jones (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Ray Fowler
Recorded at Plaza Sound Studios, NYC; December 18 (#2-4, 6), 19 (#1, 5, 7), 1961

[Tracks] Milt Jackson & Wes Montgomery - Bags Meets Wes
01. S.K.J. Milt Jackson (music)
02. Stablemates Benny Golson (music)
03. Stairway To The Stars Matty Malneck, Frank Signorelli (music) / Mitchell Paris (lyrics)
04. Blue Roz Wes Montgomery (music)
05. Sam Sack Milt Jackson (music)
06. Jingles Wes Montgomery (music)
07. Delilah Victor Young (music) / Jay Livingston, Raymond Evans (lyrics)

[Links: Milt Jackson]
Milt Jackson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wes Montgomery]
Wes Montgomery Fan Club
Wes Montgomery Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Wes Montgomery Discography (by Ed Fila)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atsushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Philly Joe Jones]
Philly Joe Jones Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2007年02月19日

ジョニー・グリフィン『ザ・リトル・ジャイアント』

griffin_thelittlegiant.jpg

「小さな巨人」グリフィンのニックネームを冠した1959年録音のリヴァーサイド盤『ザ・リトル・ジャイアント』。極度のええカッコしいだけど、ちっともクールじゃない(笑)というグリフィンのもうひとつの側面を代表する大迷盤です。

オープニングの〈オリーヴ・リフラクションズ〉。なんともヤクザな曲ですねえ。でも、このテーマ、私は嫌いじゃないですよ〜。ホーン陣との掛け合いでピアノを弾きまくるウィントン・ケリー。これって、ハンコックの『スピーク・ライク・ア・チャイルド』と同じ発想じゃないですか。大言壮語のグリフィンの基本は「ハッタリ」ですから、これくらいわかりやすくハッタリをかましてくれると、こっちはもう笑うしかありません。

続く〈ザ・メッセージ〉が輪をかけて笑えます。B級ギャング映画のテーマ曲といえば、アート・ファーマー&ベニー・ゴルソンのジャズテットですが、この曲なんか、彼らのレパートリーだといってもちっとも不思議じゃありません。嫌みなほどワザとらしいグリフィンです。

本人は大真面目でヒップな路線を狙っているのかもしれませんが、生き方そのものがヒップだったマイルスなんかと比べると背伸びもいいところ(あっ、小さいからしょうがないか)。ローティーンの子どもが必死に悪ぶっているようなおかしさがあります。

〈63丁目のテーマ〉も同じ路線で、怒濤のB級攻撃に身悶えします。ブルー・ミッチェルにもグリフィンの毒が乗り移っています。そして、ついに〈プレイメイツ〉でコメディー路線へと突入。これ、狙ってやったんだとしたらすごい才能です(笑)。だって、ホントに大爆笑ものですから!

 

Johnny Griffin "The Little Giant"
(Riverside RLP 304/1149)

Blue Mitchell (trumpet) except #3
Julian Priester (trombone) except #3
Johnny Griffin (tenor sax)
Wynton Kelly (piano) except #3
Sam Jones (bass)
Albert "Tootie" Heath (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; August 4, 5, 1959

[Tracks]
01. Olive Refractions Norman Simmons (music)
02. The Message Norman Simmons (music)
03. Lonley One Babs Gonzales Johnny Griffin (music)
04. 63rd Street Theme Johnny Griffin (music)
05. Playmates Saxie Dowell (music)
06. Venus And The Moon Norman Simmons (music)

[Links: Blue Mitchell]
"Blue" Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Johnny Griffin]
Johnny Griffin Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atsushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2007年01月31日

ウィントン・ケリー『ケリー・ブルー』

kelly_kellyblue.jpg Wynton Kelly - Kelly Blue

1959年初頭、ウィントン・ケリーはマイルス・バンドに加わります。彼のキャリアのなかでももっとも華やかな2年間のはじまりを宣言するかのように、ケリーはリーダー作でも傑作を残します。『ケリー・ブルー』は当時のマイルス・バンドのリズム・セクションに、ナット・アダレイ、ボビー・ジャスパー、ベニー・ゴルソンを迎え、トリオとセクステットという2つの編成で、ピアニスト、ケリーの魅力をあますところなく伝えた人気盤です。

とにかく、まずは超有名なタイトル・ナンバーからいきましょう。チェンバースのボロン、ボロンというベースに導かれて登場するのはジミー・コブのドラムスとボビー・ジャスパーのフルートです。続いて、ベニー・ゴルソンのテナーが加わり、最後に、ナット・アダレイのコルネットとケリーのピアノが加わって、テーマ・アンサンブルが完成します。いやはや見事! ゾクゾクしますねえ。このテーマは、ソロが切り替わるたびにくり返し演奏されます。

ソロのトップ・バッターはケリーですが、主役を食う大金星をあげるのは、意外や意外(失礼!)、ベルギー出身のテナー兼フルート奏者、ボビー・ジャスパーです。このフルート、淡々としているわりに、妙に印象に残るんですね。続くナットのコルネットのほうがずっとエキサイトしているのに、〈ケリー・ブルー〉といえば、思い浮かぶのは、フルートの音色。

そのことは、もう1曲、セクステットで演奏された、〈キープ・イット・ムーヴィング〉にも通じます。この曲、人気の〈ケリー・ブルー〉の影に隠れて損していますが、実はめちゃめちゃカッコいいです。3管メッセンジャーズの曲といっても通じそうな、モダンな響きです。曲想がいいから、ふだんはあまり好きになれないゴルソンのテナーにも色気を感じたりして、思わぬ発見があります。どちらもケリーのオリジナルですが、彼は作曲の才能もあったんですね。

でも、お楽しみはそれだけではありません。名手ケリーがトリオで聴かせる名曲3連発。〈朝日のようにさわやかに〉〈オン・グリーン・ドルフィン・ストリート〉〈ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー(柳よ泣いておくれ)〉。

〈朝日〜〉はブルーノート盤『ソニー・クラーク・トリオ』と、〈グリーン〜〉はエヴァンスの『グリーン・ドルフィン・ストリート』と、〈ウィロウ〜〉はレッド・ガーランドの『グルーヴィー』と、それぞれ聴き比べると、ケリーというピアニストの跳ねるような動き、ハッピーなノリがよくわかるというオマケつきです。

 

Wynton Kelly "Kelly Blue"
(Riverside RLP 298 / 1142)

Nat Adderley (cornet) #1, 5
Bobby Jaspar (flute) #1, 5
Benny Golson (tenor sax) #1, 5
Wynton Kelly (piano)
Paul Chambers (bass)
Jimmy Cobb (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; February 19 (#1, 5), March 10 (#2-4, 6), 1959

[Tracks] Wynton Kelly - Kelly Blue
01. Kelly Blue Wynton Kelly (music)
02. Softly, As In A Morning Sunrise Sigmund Romberg (music) / Oscar Hammerstein II (lyrics)
03. On Green Dolphin Street Bronislaw Kaper (music) / Ned Washington (lyrics)
04. Willow Weep For Me Ann Ronell (music and lyrics)
05. Keep It Moving Wynton Kelly (music)
06. Old Clothes Wynton Kelly (music)

[Links: Bobby Jaspar]
Bobby Jaspar Discography (by Mr. Manri)
[Links: Benny Golson]
Benny Golson's Official Website
The Jazztet Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atsushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jimmy Cobb]
Jimmy Cobb (Official Website)

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ウィントン・ケリー『ウィスパー・ノット』

kelly_piano.jpg Wynton Kelly - Wynton Kelly: Piano

抜群のリズム感で跳ね回るピアニスト、ウィントン・ケリー。1931年12月2日、ジャマイカ生まれ(ニューヨーク生まれという説もある。もし、そうだとしたら、ニューヨーク市クイーンズ区にあるジャマイカ地区の生まれかな?)。1971年4月12日、カナダのトロントで死去。

15歳のころからプロのミュージシャンとして活躍したそうで、下積み時代は、ダイナ・ワシントンの歌伴、ディジー・ガレスピーのビッグバンドへの参加が有名です。1957年あたりから急にレコーディングが増えはじめ、翌58年、26歳のときに、12インチ盤では初のリーダー作、『ウィスパー・ノット』を吹きこみます(10インチ盤『ピアノ・インタープリテーションズ・バイ・ウィントン・ケリー』を録音したのは1951年(19歳)でしたが、12インチ化はされませんでした)。

邦題『ウィスパー・ノット』は、傍系のジャズランドで再発されたときのタイトルからとったもののようです(Jazzland JLP 83)。原題は、なんともそっけない『ピアノ』ですが、これは、アナログ盤のA面はギター入りカルテット、B面はドラムレスのトリオという2つの編成で、ケリーの『ピアノ』を堪能してもらうというねらいだったのでしょう。

では、表題曲となったベニー・ゴルソンの名曲、〈ウィスパー・ノット〉を聴いてみましょう。個人的にはケニー・バレルがポロンとギターを奏でただけで、メロメロになってしまうのですが(笑)、今回の主役はケリーですから、彼に耳をすませましょう。

テーマ部分、ピアノとギターの音がかぶって、ちとうるさい。コード楽器どうしの相性の悪さが出てしまっているようです。ケリーのソロに移ってから、若干すっきりした印象をもちますが、バレルのバッキングが今度はドラムスの音にかき消されます。居心地の悪さがなくなり、落ち着いて楽しめるようになるのは、バレルのソロがはじまってからです。う〜ん、やっぱりバレルか(笑)。

むしろ後半のドラムレスのトリオのほうが、役割分担がはっきりしている分、完成度は高い気がします。一方がソロをとっているときは、もう一方がバッキングにまわる。とくにバレルのうまさは格別で、ドラムスの不在を感じさせません。

たとえば、オスカー・ブラウン・ジュニアの〈ストロング・マン〉。鼻歌でも聴こえてきそうな、なんてことのない曲ですが、この2人の組み合わせが、実にしっくりきます。続く〈イル・ウィンド〉もいいねえ。速すぎず遅すぎず、これぐらいのテンポが2人にあっているんでしょう、ケリーもバレルも、本当に気持ちよさそうです。

 

Wynton Kelly "Piano"
(Riverside 254)

Wynton Kelly (piano)
Kenny Burrell (guitar)
Paul Chambers (bass)
Philly Joe Jones (drums) #1-3

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Aaron Nathanson
Recorded at Metropolitan Sound Studios, NYC; January 31, 1958

[Tracks] Wynton Kelly - Wynton Kelly: Piano
01. Whisper Not Benny Golson (music)
02. Action Wynton Kelly (music)
03. Dark Eyes Harry Horlic, Gregory Stone (music and lyrics)
04. Strong Man Oscar Brown, Jr. (music and lyrics)
05. Ill Wind Harold Arlen (music) / Ted Koehler (lyrics)
06. Don't Explain Billie Holiday (music) / Arthur Herzog, Jr. (lyrics)
07. You Can't Get Away Wynton Kelly (music)

[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atsushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年11月27日

ビル・エヴァンス『インタープレイ』

evans_interplay.jpg 

1962年の春から秋にかけて、エヴァンスは立て続けにスタジオに籠ります。ヴァーヴへ移籍するため、リヴァーサイドとの契約を早く消化したかったということもあったのでしょうが、最大の要因は、金欠。つまり、ドラッグにはまって借金で首が回らなかったというのが、真相のようです。

借金取り立ての矢のような催促に、足繁くスタジオ入りするエヴァンス。そこで得られたなけなしのカネも、返済とドラッグに充てられます。そういう状態ですから、この時期の録音は、すべてが水準に達したわけではありませんでした。プロデューサー、オリン・キープニュースはリヴァーサイドの倒産後、マイルストーンというレーベルを新たに興して、過去のお蔵入り音源を次々にリリースしますが、そこには、この時期のエヴァンスの演奏もいくつか含まれています。しかし、そんなときでさえ、うまくハマれば、すばらしい演奏をしてみせるのですから、つくづく芸術家とはわからないものです。

インタープレイ』はうまくハマった瞬間をとらえた作品で、エヴァンスには珍しく、管入りクインテットによる録音です。メンバーは、おなじみのギタリスト、ジム・ホールに、MJQ のベーシスト、パーシー・ヒース(彼とは59年に『アイヴォリー・ハンターズ』で共演済み)、エヴァンスのフェイヴァリット・ドラマー、フィリー・ジョー、そして、トランペットはこちらも旧知のアート・ファーマーを予定していたものの都合がつかず、キープニュース推薦の新人(!)フレディ・ハバードという面々。これが当たります。

なにはともあれ、冒頭の〈あなたと夜と音楽と〉に耳を傾けてください。エヴァンスは、よくあるスタンダードに意表を突くテンポを取り入れて名演化するのが得意ですが(『ポートレイト・イン・ジャズ』の〈枯葉〉とか、『アンダーカレント』の〈マイ・ファニー・ヴァレンタイン〉が有名ですね)、これなどもその典型で、耳慣れたスタンダードに新鮮な息吹が吹きこまれ、まったく新しい曲として甦っているのがわかります。

鳴りすぎといわれるフレディのペットが、ここでは少しだけ控えめに、それでいてあのブリリアントな音色はそのままに、聴かせてくれます。フロントを分け合うのは、ジム・ホールのギター。最初のテーマ演奏を聴いただけで、わくわくします。そして現れる、エヴァンスのめちゃシビれるピアノ。こりゃ、たまりません。サイコーです!

そして、ディズニー映画『ピノキオ』より〈星に願いを〉。有名なテーマ部分をフレディではなく、ジム・ホールに「語らせる」ニクい演出。続く〈アイル・ネヴァー・スマイル・アゲイン〉では、一瞬マイルス登場か(笑)と思わせるフレディのミュートが炸裂します。

こうやって順番に聴いていくと、このアルバムは、エヴァンスにしては珍しくハードバップを感じさせます。モードやフリーが勃興しつつあった60年代の作品としては、いささか時代がかった気もしますが、巧みなホール、ハードボイルドなエヴァンス、新時代到来を感じさせるフレディの輝かしい音色が、そうしたことを忘れさせてくれます。まあ、〈あなたと夜と音楽と〉の圧倒的な新鮮さを聴けば、この作品が「古くさい」と思う人など、いないでしょうが。

 

Bill Evans "Interplay"
(Riverside 445/9445)

Freddie Hubbard (trumpet)
Bill Evans (piano)
Jim Hall (guitar)
Percy Heath (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Tom Nola
Reocrded at Nola Penthouse Studios, NYC; July 16, 1962

[Tracks] 
01. You And The Night And The Music Arthur Schwartz (music) / Howard Dietz (lyrics)
02. When You Wish Upon A Star Leigh Harline (music) / Ned Washington (lyrics)
03. I'll Never Smile Again Ruth Lowe (music and lyrics)
04. Interplay Bill Evans (music)
05. You Go To My Head J. Fred Coots (music) / Heven Gillespie (lyrics)
06. Wrap Your Troubles In Dreams Harry Barris (music) / Ted Koehler, Billy Moll (lyrics)

[Links: Freddie Hubbard]
Hub's disc: Freddie Hubbard Discography
Hub Tunes: Freddie Hubbard Discography
[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jim Hall]
Jim Hall: The Official Website
Jim Hall Maniacs (by 益満妙:エキマンタエ)
ジム・ホール:アルバム蒐集 (by kawagu)
[Links: Philly Joe Jones]
Philly Joe Jones Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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ビル・エヴァンス『ハウ・マイ・ハート・シングス』

evans_howmyheartsings.jpg ビル・エバンス・トリオ - How My Heart Sings!

前作『ムーンビームス』に収録された1962年の5月17日、同29日、6月5日の3回のセッションからは、もう1枚、別のアルバムがつくられました。それがこの『ハウ・マイ・ハート・シングス』で、『ムーンビームス』はバラード集、『ハウ・マイ・ハート〜』はアップテンポの曲が中心になっています。

タイトル曲〈ハウ・マイ・ハート・シングス〉は、アール・ジンダースが婚約者アンのために作曲したワルツで、途中、四分の四拍子に切り替わりながら演奏が続きます。ラファロのいたころをファースト・トリオとすると、イスラエルが加わったセカンド・トリオの最良の部分がここで聴けます。

ラファロの才気あふれるアグレッシヴなベースとは違い、イスラエルの特質はこの落ち着きにあります。刺激という意味ではファースト・トリオにはかないませんが、イスラエルの安定したベースラインがエヴァンスにいい意味のゆとりをもたらしているように感じられます。転調子をくり返すややこしい曲なのにそう聴こえないのは、モチアンの柔軟なスティックさばきはもちろん、新加入のイスラエルに負うところが大きいのではないでしょうか。

ちなみに、ピーター・ペッティンガー著のエヴァンスの伝記の原題は、『Bill Evans: How My Heart Sings』です。ペッティンガーはなぜこのタイトルを選んだのか。そのヒントは、たぶん次のエヴァンスの発言に隠されています(引用は、相川京子訳『ビル・エヴァンス―ジャズ・ピアニストの肖像』より)。

特に、私は自分の演奏ーーそして願わくばトリオの演奏ーーに歌って欲しいんだ。私は自分の聴きたいものを演奏したい。変わったことや新しいことをするつもりはない。自分のやることが自然に育っていけば、それでいい。でも、そこには歌っているような素晴らしい感覚が無くてはいけないんだ。

このアルバムには、エヴァンス・オリジナルが3曲も入っています。モンクの楽曲を思わせる複雑な構成の〈ウォーキング・アップ〉に、同じくワルツと四拍子を行ったり来たりする〈34スキドー〉(「skidoo」というのは、スノーモービルのことなのですが、「23 skidoo」で「出て行け、うせろ」というスラングがあるそうで、「skidoo」は「skedaddle(「一目散に逃げる」)が変化したものだそうです)、エヴァンスが陽気に飛び回る〈ショウ・タイプ・チューン〉。

でも、アール・ジンダースの表題曲と並ぶ聴きものは、ブルーベックの〈イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ〉でしょう。楽曲がもつ高貴な香りがエヴァンスの繊細なタッチとあわさって、あやしいまでの高みに達しています。

 

Bill Evans "How My Heart Sings!"
(Riverside 473/9473)

Bill Evans (piano)
Chuck Israels (bass)
Paul Motian (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Bill Schwartau
Recorded in NYC; May 17 (#1, 5), 29 (#4, 6, 8), June 5 (#2, 3, 7), 1962

[Tracks] ビル・エバンス・トリオ - How My Heart Sings!
01. How My Heart Sings Earl Zindars (music)
02. I Should Care Axel Stordahl, Paul Weston (music) / Sammy Cahn (lyrics)
03. In Your Own Sweet Way Dave Brubeck (music)
04. Walking Up Bill Evans (music)
05. Summertime George Gershwin (music) / DuBose Heyward (lyrics)
06. 34 Skidoo Bill Evans (music)
07. Ev'rything I Love Cole Porter (music and lyrics)
08. Show-Type Tune Bill Evans (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Chuck Israels]
Chuck Israels (Official Website)
[Links: Paul Motian]
Paul Motian (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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2006年11月26日

ビル・エヴァンス『ムーンビームス』

evans_moonbeams.jpg Bill Evans - Moonbeams

スコット・ラファロ亡き後のエヴァンス・トリオには、チャック・イスラエルが迎えられました(1961年末頃)。1936年10月10日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれのベーシストは、このとき25歳。彼とエヴァンスの出会いは、実は4年前までさかのぼります。

ときは1957年。マサチューセッツ州ウォルサムにあるユダヤ系名門私立大学ブランダイス大学は、その年の芸術祭の総監督を、サード・ストリーム(第三の流れ。ジャズとクラシックの融合を目指した一連の運動を指す)の提唱者ガンサー・シュラーに依頼します。そこでは、ジャズ界から3人、クラシック界から3人の作曲家が選ばれ、彼らの楽曲が演奏されたのですが、そのなかに、エヴァンスの才能を高く買っていたジョージ・ラッセルがいました。ラッセル作の組曲〈オール・アバウト・ロージー〉には、エヴァンスのピアノにスポットライトを当てたパートもあったとか(私は未聴です。輸入盤ですが、このときの演奏を後日再演した『ブランダイス・ジャズ・フェスティヴァル』というアルバムが出ています)。

チャック・イスラエルは当時、このブランダイス大学に在学中で、ステージ後の歓迎会で、ピアノのスティーヴ・キューン(!)とともにトリオを組んで演奏してみせたといいます。彼らの演奏を気に入ったエヴァンスは、イスラエルとも言葉を交わしたと伝えられています。

ラファロが突然この世から姿を消したとき、イスラエルは遠くヨーロッパを旅していました。ジェローム・ロビンズ・バレエ(!)の楽団に加わり、各地を転々としていたようですが、かの地でのイスラエルの足跡は、『エリック・ドルフィー・イン・ヨーロッパ Vol. 1』に1曲だけ刻印されています(ただし、録音は61年9月8日。ドルフィーのフルートとのデュオ)。

ラファロの訃報を聞いたとき、彼には不思議な高揚感がありました。直感的に、自分がエヴァンス・トリオの次のベーシストになるとわかったというのです。ツアーを終えて帰国すると、案の定、エヴァンスから誘いの電話がかかってきます。同じ頃、有名なジャズ雑誌『ダウンビート』は、エヴァンスがヴァーヴ・レコードと契約したと報じます(大物プロデューサー、クリード・テイラーが引っこ抜いた)。リヴァーサイドとの契約はまだ残っていましたが、エヴァンスの周囲はにわかに騒がしくなってきます。

ムーンビームス』は、チャック・イスラエル加入後のエヴァンス・トリオ初の公式録音です。セッションは3日間に分けて収録されました。最初の録音は、62年5月17日。ジム・ホールとの共演盤『アンダーカレント』からわずか3日後の出来事です。

アルバムはプロデューサー、オリン・キープニュース (Orrin Keepnews)の名前をもじってつけたエヴァンス・オリジナル〈リ・パーソン・アイ・ニュー〉(Re: Person I Knew)で幕を開けます。エヴァンスはピアノに驚くほどのニュアンスを込めることができました。丸みをおびたやさしい音、壊れてしまいそうな繊細な音、跳ねるように歯切れのいい音、硬質で耳に鋭く切れ込む音。どれもエヴァンスならではの音色です。この使い分けがすばらしい! 心の動きにあわせ、相手の出方にあわせて、刻々と変わっていくタッチ。そして、その変化を(表面的には)意識させない。まったくこの人は、どこまで深く考えながら演奏していたというのでしょう!

エヴァンスのバラードといえば必ず名前の挙がるこのアルバム。〈ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス(水玉模様と月光)〉、〈アイ・フォーリン・ラヴ・トゥ・イージリー〉、〈ステアウェイ・トゥ・ザ・スターズ(星へのきざはし)〉、そして、1か月前にタッド・ダメロンの『ザ・マジック・タッチ』に客演して、録音したばかりの〈イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ〉と続いたら、どんなにしかめっ面をした人でも、うっとりすること間違いなしです(笑)。

ところで、ジャケットを飾るひときわ印象的なこの女性、ニコこと、クリスタ・パフゲンというモデル兼女優兼歌手で、アンディ・ウォーホルやヴェルヴェット・アンダーグラウンドとの活動で知られているそうです(私はちっとも知りませんでしたが)。なまめかしい流し目を送るこの写真を、横倒しにして使ったデザイナー(Ken Deardoff)のセンスに拍手!

 

Bill Evans "Moon Beams"
(Riverside 428/9428)

Bill Evans (piano)
Chuck Israels (bass)
Paul Motian (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Bill Schwartau
Recorded in NYC; May 17 (#5), 29 (#1, 8), Jun 5 (#2-4, 6, 7), 1962

[Tracks] Bill Evans - Moonbeams
01. Re: Person I Knew Bill Evans (music)
02. Polka Dots And Moonbeams Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
03. I Fall In Love Too Easily Jule Styne (music) / Sammy Cahn (lyrics)
04. Stairway To The Stars Matty Malneck, Frank Signorelli (music) / Mitchell Paris (lyrics)
05. If You Could See Me Now Tadd Dameron (music) / Carl Sigman (lyrics)
06. It Might As Well Be Spring Richard Rodgers (music) / Oscar Hammerstein II (lyrics)
07. In Love In Vain Jerome Kern (music) / Leo Robin (lyrics)
08. Very Early Bill Evans (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Chuck Israels]
Chuck Israels (official website)
[Links: Paul Motian]
Paul Motian (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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ビル・エヴァンス『エクスプロレイションズ』

evans_explorations.jpg Bill Evans - Explorations

いよいよ大本命盤『エクスプロレイションズ』の登場です。録音されたのは、1961年2月2日。前作『ポートレイト・イン・ジャズ』から実に1年以上後のことでした。この間、彼らは全米各地をツアーで巡り、音楽的に成熟を重ね、さらなる「探検」の準備を整えます(エヴァンスは肝炎を患い、一時離脱を余儀なくされました)。

このアルバムは、よく前作と比較され、『ポートレイト〜』が「動」なら『エクスプロレイションズ』は「静」といわれます。この日、ラファロとエヴァンスは激しく口論していて、うんざりするような険悪なムードが漂っていたとか、ラファロが自前のベースを修理に出していて、代わりのベースと格闘中だったとか、いろいろいわれていますが、このアルバムに聴かれるのは、そのようなアクシデントをものともせずに、トリオが極限まで一体化して、リリカルでデリケートな世界を生み出した、その姿です。わずか13か月で、彼らはここまで深化した。これを成熟と呼ばずして、何を成熟というのでしょう!

たとえば、ジョン・キャリシ作の〈イスラエル〉。アルバムの冒頭を飾るこの演奏を聴けば、エヴァンス・トリオがこれまでの誰とも違う新たな地平へ、一歩踏み出したことが手に取るようにわかります。緊密にからみあうピアノ、ベース、ドラム。このえもいわれぬ一体感を何と表現したらいいのでしょう。

たとえば、エヴァンスとは兵役時代以来の友人であるパーカッション奏者アール・ジンダース作の〈エルザ〉。彼はエヴァンスお気に入りの作曲者で、ほかにも〈ハウ・マイ・ハート・シングス〉など、いくつかエヴァンスのレパートリーを飾ることになります。

たとえば、マイルスが『ポートレイト・オブ・キャノンボール』収録にあたって、キャノンボールのために書いた〈ナルディス〉。マイルス自身は一度も演奏しなかったこの愛らしい曲は、エヴァンスの生涯にわたる愛奏曲となりました。

あるいは、スタンダードの〈ビューティフル・ラヴ〉。エヴァンスのために書かれたようなこの切ない曲で、トリオはクールに抑制された美を追求します。このアルバムをおとなしすぎるという人がいるそうですが、とんでもない! ハードさとエレガントさのこの絶妙なせめぎあいに耳を傾けてください。

ところで、中山康樹さんが『ビル・エヴァンス名盤物語』(音楽出版社)で指摘しているのですが、このアルバムから録音スタジオとエンジニアが変わっています。エヴァンスは前のスタジオのピアノを嫌っていたそうなのですが、音にこだわるエヴァンスらしいエピソードです。

 

Bill Evans "Explorations"
(Riverside 351/9351)

Bill Evans (piano)
Scott LaFaro (bass)
Paul Motian (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Bill Stoddard
Recorded at Bell Sound Studios, NYC; February 2, 1961

[Tracks] Bill Evans - Explorations
01. Israel John E. Carisi (music)
02. Haunted Heart Arthur Schwartz (music) / Howard Dietz (lyrics)
03. Beautiful Love Victor Young, Wayne King, Egbert Van Alstyne, Heven Gillespie (music and lyrics)
04. Elsa Earl Zindars (music)
05. Nardis Miles Davis (music)
06. How Deep Is The Ocean Irving Berlin (music and lyrics)
07. I Wish I Knew Harry Warren (music) / Mack Gordon (lyrics)
08. Sweet And Lovely Gus Arnheim, Harry Tobias, Jules Lemare (music and lyrics)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Scott LaFaro]
Scott LaFaro: Beacon for Jazz Bassists (by Charles A. Ralston)
Scott LaFaro Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Paul Motian]
Paul Motian (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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2006年11月25日

ビル・エヴァンス『ポートレイト・イン・ジャズ』

evans_portraitinjazz.jpg Bill Evans - Portrait In Jazz

エヴァンスがマイルスのグループを去ったのは、1958年11月。アルバム『カインド・オブ・ブルー』を収録するためだけに、マイルスに呼び戻されたのが、翌59年の3月2日と4月22日。そして、同年10月28日には、トニー・スコット (cl) の『サング・ヒーローズ』というアルバムで、エヴァンス (p)、スコット・ラファロ (b)、ポール・モチアン (ds) の3人が初共演をはたします。そう、あの歴史的なトリオがはじめて顔をそろえたのです。

11月、エヴァンスはニューヨークの東42通り、ベイズン・ストリート・クラブに出演します。期間は3週間。御大ベニー・グッドマンの相方バンドという惨めなポジションです。当初エヴァンスは、マイルスの推薦もあって、ジミー・ギャリソン (b)、ケニー・デ二ス (ds) とトリオを組んでいましたが、グッドマン・バンドとの待遇の違いに怒り、二人は去ってしまいます。エヴァンスは何人ものベーシスト、ドラマーに声をかけますが、最終的にメンバーに落ち着いたのは、『サング・ヒーローズ』で共演したばかりのラファロとモチアンでした。

ビル・エヴァンス。
1929年8月26日、ニュージャージー州プレインフィールド生まれの30歳。
スコット・ラファロ。
1936年4月3日、ニュージャージー州ニューアーク生まれの23歳。
ポール・モチアン。
1931年5月25日、ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれの28歳。

彼らの快進撃はモダンジャズの黄金時代、50年代も終わろうかという1959年12月28日に録音された、『ポートレイト・イン・ジャズ』からはじまります。

曲目は、かつてのボス、マイルスがらみの3曲。シャンソンの名曲〈枯葉〉(『サムシン・エルス』に収録)、〈ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ〉(『スティーミン』に収録)。作曲のクレジットをマイルスに奪われたといういわくつきの〈ブルー・イン・グリーン〉(『カインド・オブ・ブルー』に収録)。そして、唯一のオリジナル、〈ペリズ・スコープ〉。当時のガールフレンドにせがまれてタイトルをつけたそうです。さらに、ディズニー初の(というよりも世界初の)長編アニメーション映画『白雪姫』より〈いつか王子様が〉。

どれから聴いても OK です。エヴァンスのハードな面も、チャーミングな面も、リリカルな面も、ぜんぶ楽しめます。そして、早くもエヴァンスと対等なパートナーシップを築きあげた若き天才ベーシスト、ラファロの技に聞き惚れてください。んーもう、最高ですから!

最後に、ジャケット&タイトルについて。「銀行員」とも「学校教師」ともいわれるエヴァンスの「肖像」ですが、これはエヴァンスの「ポートレイト」であるとともに、文字どおりジャズの「ポートレイト」でもあります。まもなく花開く60年代のジャズシーンを先んじて切り取ってみせたジャズの「新しい姿」。さすがです。

 

Bill Evans "Portrait In Jazz"
(Riverside 315/1162)

Bill Evans (piano)
Scott LaFaro (bass)
Paul Motian (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; December 28, 1959

[Tracks] Bill Evans - Portrait In Jazz
01. Come Rain Or Come Shine Harold Arlen (music) / Johnny Mercer (lyrics)
02. Autumn Leaves Joseph Kosma (music) / Jacques Prevert (French lyrics), Johnny Mercer (English lyrics)
03. Witchcraft Cy Coleman (music) / Carolyn Leigh (lyrics)
04. When I Fall In Love Victor Young (music) / Edward Heyman (lyrics)
05. Peri's Scope Bill Evans (music)
06. What Is This Thing Called Love Cole Porter (music and lyrics)
07. Spring Is Here Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)
08. Someday My Prince Will Come Frank Churchill (music) / Larry Morey (lyrics)
09. Blue In Green Bill Evans, Miles Davis (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Scott LaFaro]
Scott LaFaro: Beacon for Jazz Bassists (by Charles A. Ralston)
Scott LaFaro Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Paul Motian]
Paul Motian (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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2006年11月22日

『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』

evans_everybodydigs.jpg ビル・エバンス・トリオ - Everybody Digs Bill Evans

「ビル・エヴァンスからはたしかに多くのことを学んだ。彼はピアノが演奏されるべきやり方でピアノを演奏する」(マイルス・デイヴィス)

「ビル・エヴァンスはここ数年でいちばん気持ちのよいピアニストだ」(ジョージ・シアリング)

「ビル・エヴァンスは屈指の存在の一人だと思う」(アーマド・ジャマル)

「ビル・エヴァンスには類い稀なオリジナリティとテイストがあるが、さらにすごいのは曲に対する構想を練る力で、彼が演奏すると、それがその曲の最終形と思わせるものがある」(ジュリアン・キャノンボール・アダレイ)

ずいぶんとエラいほめ言葉が並んだものですが、これらはすべて、『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』の表紙に載った推薦の言葉です。ふつう、こうした推薦文は、オビやシールに表記されるか、表紙にあったとしても別枠で載っていたりするものですが、これは推薦の文字だけでジャケットが構成された、きわめて珍しい作品です。

このことは、裏を返せば、エヴァンスの世間での認知度がまだそれほど高くなかったことを間接的に証明しています。エヴァンスがマイルスのグループにいたのは、1958年の4月から11月までのわずか7か月間。その間、エヴァンスは長足の進歩を遂げますが、その評価は一部のミュージシャン、評論家だけにとどまっていました。だからこその『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』。一流のミュージシャンたちによって、エヴァンスは「発掘」されなければならなかったわけです。

このアルバムが収録されたのは、1958年12月15日。マイルス・バンド脱退の翌月です。ボスだったマイルスとキャノンボールから推薦文をもらい、元同僚のフィリー・ジョーが録音に参加していることから、エヴァンス脱退は、実は円満に行われたことがわかります。脱退直後は心身ともに疲れ果て、親元に帰って体を休めたエヴァンスでしたが、マイルス・バンドでの経験は、確実にプラスの方向に働きました。初リーダー作から2年3か月もの時を経て、エヴァンスがふたたびリーダー作を吹きこむ気になったのは、やはり、みずからの成長に対する確信があったからでしょう。この2作を順番に聴けば、その確信が本物だったことがわかります。

前作同様、トリオとソロがバランスよく配置されていますが、聴いた感じはまるで違います。トリオでは硬さがとれ、ソロではより深みが増しています。トリオのリラックスした雰囲気をもたらしたのは、エヴァンスのファイヴァリット・ドラマー、フィリー・ジョーの参加によるところが大きいようです。このトリオは同年7月にキャノンボールのリヴァーサイド第一弾『ポートレイト・オブ・キャノンボール』ですでに共演していて、そのことも、いい方向に作用していると感じます。

ただ、エヴァンスがいかにジャンキー仲間のフィリー・ジョーを好んだからといって、この二人は本質的な部分で相容れない。叩きすぎのフィリー・ジョーはやはりコンボで栄えるドラマーで、ちまちまとしたトリオという編成では欲求不満がたまるはずです。エヴァンスもそのことを知ってか知らずか、やけにドラムをフィーチャーしたアレンジを採用しています。小気味よくプッシュするフィリー・ジョーに反応して、意外なほどハードで力強いピアノを聴かせるエヴァンス。ジジ・グライス作の〈マイノリティ〉やソニー・ロリンズ作の〈オレオ〉といった躍動的な曲で、そうした違和感は顕著です。

同じトリオ演奏でも、〈ヤング・アンド・フーリッシュ〉ではその後のエヴァンス・トリオを思わせる響きが横溢しています。そうそう、これこれ、これなんです。後ろ髪を引かれるような魅惑的な音色としっとりとした情感。これで、エヴァンスはジャズピアノの新境地を開いたのです。

そして、忘れてならないのは、ソロで演奏された〈ピース・ピース〉。この静かなる音の連なりは、エヴァンスの心象風景なのでしょうか。エヴァンスここにありを世に知らしめた決定的な名演です。当時はだれもこんな(ジャズ)ピアノは聴いたことがなかった。ECM 的な音世界というのか、ゆったりとした調べのなか、エヴァンスはたった独りで新たな地平を目指す冒険の旅に出ます。

伝記『ビル・エヴァンス―ジャズ・ピアニストの肖像』(水声社)には、〈ピース・ピース〉の誕生秘話(?)が載っています。エヴァンスの当時のガールフレンド、ペリによると、彼がレナード・バーンスタインの〈サム・アザー・タイム〉を弾くと、知らないうちに〈ピース・ピース〉(と後に命名された曲)に変わってしまうことがよくあった、というのです。私がもっている OJC 盤の CD には、最後にボーナス・トラックとして、問題の〈サム・アザー・タイム〉が入っています。それを聴くと、彼女の発言が本当らしいことがよくわかる。ほとんど同じ雰囲気をたたえた演奏です。前掲書には、エヴァンスのこんな発言が載っています。

曲のイントロを弾きはじめると、その曲独特の感じや個性がどんどん膨らんでいって、まあ、このまま続けようと思ったんだ。

さて、推薦文が連なったジャケットを見たエヴァンスは、ひと言「どうして私の母から一言もらわなかったんだい?」。美しいだけじゃない、カミソリのように鋭い刃を演奏のそこかしこに忍び込ませるエヴァンスの、一筋縄ではいかない感じがにじみ出た発言だと私は思います。

 

"Everybody Digs Bill Evans"
(Riverside 291/1129)

Bill Evans (piano)
Sam Jones (bass) except #3, 5, 7, 10
Philly Joe Jones (drums) except #3, 5, 7, 10

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; December 15, 1958

[Tracks] ビル・エバンス・トリオ - Everybody Digs Bill Evans
01. Minority Gigi Gryce (music)
02. Young And Foolish Albert Hague (music) / Arnold B. Horwitt (lyrics)
03. Lucky To Be Me Leonard Bernstein (music) / Betty Comden, Adolph Green (lyrics)
04. Night And Day Cole Porter (music and lyrics)
05. Epilogue Bill Evans (music)
06. Tenderly Walter Gross (music) / Jack Lawrence (lyrics)
07. Peace Piece Bill Evans (music)
08. What Is There To Say Vernon Duke (music) / Edgar Y. Harburg (lyrics)
09. Oleo Sonny Rollins (music)
10. Epilogue Bill Evans (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Philly Joe Jones]
Philly Joe Jones Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年11月02日

ビル・エヴァンス『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』

evans_newjazzconceptions.jpg

エヴァンス27歳にして初のリーダー作『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』。硬質で、熟す前の初々しいエヴァンスが聴けるアルバムです。

1956年当時、エヴァンスはまだ無名に近い存在で、トニー・スコットやジョージ・ラッセルのもとで研鑽を積んでいました。そんなエヴァンスがリーダー作を録音するきっかけをつくったのは、ギタリストのマンデル・ロウでした(50年代はじめ、エヴァンスがニューヨークに出るきっかけをつくったのも、マンデル・ロウでした)。

シャイで引っ込み思案なエヴァンスにかわって、頼まれもしないのに、リヴァーサイドの経営者&プロデューサーのコンビ、ビル・グロウア―とオリン・キープニュースに電話をかけ、手元にあった録音テープを聴かせて彼らのハートを射止めたというのですから、すごい。エヴァンス・ファンはロウに足を向けて寝られません(笑)。

渋るエヴァンスをなんとか説き伏せたリヴァーサイドは、彼のレコーディングのために、2日間スタジオを押さえました。これはリヴァーサイドのようなインディーズには珍しいことで、まして相手はほとんど無名の新人なのですから、彼らとしては、最大限の配慮をしたということなのでしょう。

記念すべき第1回目のレコーディングは、1956年9月18日。エヴァンスはひとりでスタジオに籠り、3曲のソロ演奏を吹きこみます。エリントン・ナンバーに、ロジャース&ハートの〈マイ・ロマンス〉、そして、エヴァンス自作のワルツ〈ワルツ・フォー・デビー〉。敬愛する兄ハリー Jr. の愛娘(エヴァンスにとっては姪っ子)デビーに捧げられた愛らしいこの曲は、やがてエヴァンスを代表する曲となります。無伴奏ソロによる〈ワルツ〜〉はわずか1分20秒の演奏ですが、香り高きクラシックの小品を聴いたときのようなこの感じは、やはりエヴァンスならではです。

2回目のレコーディングは、9日後の同月27日、今度は、ベースのテディ・コティックとドラムのポール・モチアン(!)を迎えて行われました。彼らはジョージ・ラッセルの『ジャズ・ワークショップ』のセッションなどで共演していた、いわば同僚です。勝手知ったるメンバーとともにリラックスして演奏した、なんてことはまったくなくて、エヴァンスはどこか堅苦しい。これが未熟ゆえのことなのか、初体験の緊張からくるのかはわかりませんが、音色は硬質、タッチも意外なほど鋭く、力強い。

このアルバムから漂ってくるハードな印象は、ピアノの音色もさることながら、エヴァンスがぎこちないバップを弾いていることとも関係しています。アルバム冒頭の〈アイ・ラヴ・ユー〉を予備知識なしではじめて聴いて、エヴァンスだと当てられる人はあまりいないはず。細かく聴くと、音使いに少々風変わりなところはありますが、やっぱりこれはバップ・ピアノです。つまり、バド・パウエルの流れを汲むジャズ・ピアノの王道をいく演奏です。わたしたちがエヴァンスと聞いて思い浮かべるどの演奏とも違っています。

続くエヴァンス・オリジナルの〈ファイヴ〉。〈アイ・ガット・リズム〉のコード進行にもとづいて書かれた曲ですが、非常に理が勝った印象があります。つまり、頭でっかちで未消化。実験くさい。でも、1曲目のバップ・ピアノとは明らかに異質です。ここらへんが、エヴァンスの「新しさ」だったのでしょうが、このあとに開花する彼の才能からすれば、まだまだ習作の域を出ていないと思います。

最後のエヴァンス自作のブルース〈ノー・カヴァー、ノー・ミニマム〉。「カヴァーチャージ(席料)なし、最低料金なし」という意味で、レストランやバーの用語ですね。泥臭いブルースを苦手としていたエヴァンスですが、やはりこれなどを聴くと、さもありなんという気がします。ときおり混じる異質な音使いに、気が緩められません。ブルースの名手、たとえばレッド・ガーランドに弾かせたほうが、おそらくリラックスして楽しめるはずです。

ちなみに、タイトルのコンセプションは、コンセプトと同じ「考え、概念」という意味ですが、ほかにも「受胎、受精」という意味があるようです。つまり、「新しいジャズの受胎」。まだ完成形には至らないけれど、確実に植えつけられたジャズの新しい生命。この時期のエヴァンスを表してあまりあるタイトルです。

 

Bill Evans "New Jazz Conceptions"
(Riverside 223)

Bill Evans (piano)
Teddy Kotick (bass) except #3, 8, 10
Paul Motian (drums) except #3, 8, 10

Produced by Orrin Keepnews, Bill Grauer
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; September 18 (#3, 8, 10), 27 (#1, 2, 4-7, 9, 11), 1956

[Tracks]
01. I Love You Cole Porter (music and lyrics)
02. Five Bill Evans (music)
03. I Got It Bad (And That Ain't Good) Duke Ellington (music) / Paul Francis Webster (lyrics)
04. Conception George Shearing
05. Easy Living Ralph Rainger (music) / Leo Robin (lyrics)
06. Displacement Bill Evans (music)
07. Speak Low Kurt Weill (music) / Ogden Nash (lyrics)
08. Waltz For Debby Bill Evans (music)
09. Our Delight Tadd Dameron (music)
10. My Romance Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)
11. No Cover, No Minimum Bill Evans (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Paul Motian]
Paul Motian (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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2006年05月24日

セロニアス・モンク『5・バイ・モンク・バイ・5』

5bymonkby5.jpg

最近、古参の G4 Mac のパワー・容量不足が目立ってきたので、iBook で仕事をすることがふえました。それに伴い、ついにわが家もワイヤレス化にふみきりました。AirMac Express を導入して数日たちますが、いいねえ、これ。仕事部屋でもリヴィングでも、ケーブルなしで移動自由。ついでに LAN 接続型の300GB のハードディスクも買ったので、ふえ続ける iTunes のデータも、どこからでもアクセス可能になりました(現在、CD 2241枚分、95.67GB のデータが入っています)。

グリフィンがモンクのもとを離れ、地元シカゴに帰った後、モンクのグループに迎えられたのは、チャーリー・ラウズでした。ラウズがはじめて参加したのは、1959年2月録音の『セロニアス・モンク・オーケストラ・アット・タウン・ホール』ですが、文字どおり大所帯の作品なので、ラウズに関してとりたてていうべきことはありません。続いて吹きこまれたのがこの『5・バイ・モンク・バイ・5』で、「モンクによる5つの楽曲を5人で演奏する」というタイトルどおり、サド・ジョーンズのコルネットを加えたクインテットによる作品です(1959年6月1日、2日録音)。

トレーンやグリフィンといった「とんがった」人たちの後釜に座ったのが、エリントンやベイシー楽団、オスカー・ペティフォードのグループなど、ビッグバンドを渡り歩いたラウズだったというのは、正直驚きです。ラウズには、フレンチホルンのジュリアス・ワトキンスとの双頭コンボ「ル・ジャズ・モード」の諸作も残されていますが、個性や切れ味で勝負するタイプではありません。オールド・タイプの「なごみ系」テナーというのが、私の印象です。

そして、これまた「なごみ系」のペット奏者サド・ジョーンズがいます。ベイシー楽団の花形トランぺッター、サドが吹くコルネットは、ほどよいアタック感がありながらも、全体として丸みをおびたやわらかさが感じられて、実にいい塩梅です。

さらに、メンバーにふさわしい、ゆったりとした曲が並びます。これまで録音された曲も、前よりゆったりとしたテンポで演奏されます。あたたかい空気の中をゆっくりとたゆたう感じ。いい意味で、眠気を誘うのです。モンクの演奏に特有の「危うさ」は皆無で、これなら安心して眠りにつくことができそうです。

ここにきて、モンクの目指す音楽は完全に違うものに変質しました。自己主張の激しい「モンクス・ミュージック」から、親しみあふれるインティメットな音楽へ。個性のぶつかり合いがスリリングな展開を生んでいたこれまでと違い、みずからの音楽性に対するよき理解者ラウズを得て、モンクは心から演奏を楽しむようになります。

兆候はあったんです。クラーク・テリーの『イン・オービット』に参加したあたりから、モンクに明らかな変化が感じられます。相手に合わせるようになっているのです。相手の音に耳を傾け、きちんとバッキングするモンク。『ミステリオーソ』のところでは否定的に書きましたが、あれは相手がグリフィンだから、という要素が強いんです。まったく歩み寄らないグリフィン相手に、モンクが一方的に譲るというのは、やはり違和感があったわけです。

でも、パートナーがラウズに変わって、その不満は解消されました。ラウズは強烈な個性の持ち主ではありませんから、モンクの音楽にスーッと染まっていきます。だから、モンクが無理に歩み寄らなくても、自然にインティメットな空間ができあがるのです。

このナチュラルな力の抜け加減を楽しめるかどうか。後期のモンクを好きになれるかどうは、ここにかかっています。「強力な磁場を発してこそモンクだ」「コロンビア時代のモンクは燃えかすだ」そういう人がいたとしても、不思議はありません。『セロニアス・ヒムセルフ』の緊張感や『ブリリアント・コーナーズ』の完成度を一度でも味わった人なら、むしろ当然の反応かもしれません。

でも、私はラウズと組んで、力の抜けたモンクも好きです。〈ウン・ポコ・ロコ〉のすごさは認めながらも、パウエルといえば晩年の『ゴールデン・サークル』を聞いてしまう人、パーカーはダイヤル、サヴォイ時代に限るといっておきながら、ひそかに『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』を聞いている人、きっとお友だちになれるはずです(笑)。まずは、このアルバムからはじめてみてください。

ここには、〈アスク・ミー・ナウ〉が入っています。何気ない曲ですが、個人的には〈ラウンド・ミッドナイト〉と並ぶ名曲だと思っています。初出は『ジニアス・オブ・モダン・ミュージック Vol. 2』ですが、この子守唄のようなやさしい旋律は、サド・ジョーンズとチャーリー・ラウズが吹いてこそ、際立ちます。

いわゆる大名盤ではないけれど、不思議と何度も聞きたくなる愛聴盤です。

 

Thelonious Monk "5 By Monk By 5"
(Riverside RLP 305 / 1150)

Thad Jones (cornet)
Charlie Rouse (tenor sax)
Thelonious Monk (piano)
Sam Jones (bass)
Art Taylor (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; June 1 (#3), 2 (#2, 4, 5), 4 (#1), 1959

[Tracks]
01. Jackie-Ing (music: Thelonious Monk)
02. Straight, No Chaser (music: Thelonious Monk)
03. Played Twice (music: Thelonious Monk)
04. I Mean You (music: Thelonious Monk)
05. Ask Me Now (music: Thelonious Monk)

[Links: Thelonious Monk]
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セロニアス・モンク『ミステリオーソ』

misterioso.jpg Thelonious Monk - Misterioso

セロニアス・イン・アクション』に引き続き、モンク&グリフィンのファイヴ・スポットにおけるライヴから、『ミステリオーソ』の紹介です(1958年8月7日録音)。

このころから、モンクの音楽からある種の危うさがなくなっていきます。次の展開が読めない不安感。どっちに転ぶかわからない不安定さ。それでいて破綻寸前で踏みとどまる危なっかしさ。モンクス・ミュージックを聞くと感じる違和感は、この危うさに起因するところが多いのです。パウエルの狂気とも、マイルスの殺気とも違うモンクの危うさ。これこそ、モンクのユニークさの源だと思うのです。

ところが、モンクがようやく名声を獲得し、精神的な落ち着きを取り戻していくにつれて、彼の演奏から凄みが消えていきます。このアルバムのモンクは、たしかに聞きやすい。演奏だって手を抜いているようには聞こえない。むしろモンクの気持ちは充実しているようです。演奏を心から楽しんでいるのが手に取るようにわかります。でも、このどっしりとした安定感は、モンクらしくないのです。予定調和といったらいいすぎですが、モンクに「先が読める展開」というのは似合わないと思うのです。

ここでは、合わないはずのモンクとグリフィンがしっくりいっています。驚くべきことに、相手に合わせているのは、グリフィンではなく、モンク本人のような気がするのです。演奏中に突然いなくなったり、踊り出したりするモンクが、ですよ。見境なしにくり出される不協和音に、あのマイルスでさえダメだしをしたモンクが相手に合わせるなんて。にわかに信じられないことですが、私にはそう聞こえます。

グリフィンは、『イン・アクション』よりもリラックスして、完全に自分のペースで吹いています。このライヴにも参加しているドラムのロイ・ヘインズは、「モンクと演奏するときは、他の人と演奏するときの3倍疲れる」といっていたそうですが、これこそ、本来のモンクのパートナーの姿です。モンクと演るときは、特別な「耳」が必要なのです。ちょっとした変化も逃すまいと神経をすり減らすのがふつうです。

ところが、グリフィンはよほど鈍感なのか、「われ関せず」でどこまでも自分のワールドを展開しています。だから、本来なら合わないはずなのに、モンクが歩み寄っています。う〜ん、これをモンクの成熟といっていいものか。私は、残念ながら、そうは思えませんでした。

表紙を飾る絵は、形而上絵画で知られるイタリアの画家ジョルジョ・デ・キリコ(Giorgio de Chirico, 1888-1978)の「The Seer(予言者、見る人)」です。「ミステリオーソ(イタリア語で、神秘的な)」というタイトルとともに、摩訶不思議なモンクの魅力を表してあまりある、と思います。でも、当のモンクが、このアルバムの前後からミステリアスな存在でなくなっていってしまうのですから、世の中、不思議なものです。

 

Thelonious Monk "Misterioso"
(Riverside RLP 279/1133)

Johnny Griffin (tenor sax)
Thelonious Monk (piano)
Ahmed Abdul-Malik (bass)
Roy Haynes (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Ray Fowler
Recorded live at Five Spot Cafe, NYC; August 7, 1958

[Tracks] Thelonious Monk - Misterioso
01. Nutty (music: Thelonious Monk)
02. Blues Five Spot (music: Thelonious Monk)
03. Let's Cool One (music: Thelonious Monk)
04. In Walked Bud (music: Thelonious Monk)
05. Just A Gigolo (music: Leonello Casucci / words: Julius Brammer [German] Irving Caesar [English])
06. Misterioso (music: Thelonious Monk)

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2006年05月23日

セロニアス・モンク『セロニアス・イン・アクション』

theloniousinaction.jpg

セロニアス・モンクのファイヴ・スポット公演といえば、ニューヨーカーが彼を「再発見」した1957年のコルトレーンとのロングラン公演が有名ですが、当時、モンクはリヴァーサイドと、トレーンはプレスティッジと専属契約を結んでいたので、残念ながら公式なライヴ盤は残されていません。連日連夜くり広げられたであろう二人のエキサイティングな演奏は、永遠に封印されてしまったわけです。

リヴァーサイドのオリン・キープニューズがそのことを悔やんだかどうかはわかりませんが、翌58年に、テナーに速吹き男ジョニー・グリフィンを迎えたモンク・カルテットのファイヴ・スポット公演を録音します。『セロニアス・イン・アクション』と『ミステリオーソ』の2枚がそれで、モンク初のライヴ盤となっています。

モンクとグリフィンは合わないと個人的には思っています。というか、はなから合わせる気がないんじゃないかと思うのです。モンクはそもそも他人に合わせる気などもちあわせていませんから、共演者が譲るしかないのですが、豪快で鳴らすシカゴ・テナーのグリフィンに譲る気などありません。だから、ぶつかる。当然です。

たとえば、3曲目の〈リズマニング〉。グリフィンはモンクの間の手を完全無視して突き進みます。いかにもグリフィンらしい、わが道を行くロングソロが炸裂します。途中からモンクの音が消えます(踊り出したのでしょうか?)。ベースとドラムだけをバックに豪快に吹きまくるグリフィン。ところが、モンクのソロの順番がくると、意外や意外、モンクがノッているんですね。珍しく指がよく動く。完全にミスマッチのはずなのに、演奏が破綻しないどころか、モンクは楽しんでいるように聞こえます。これはいったいどうしたわけでしょう?

この続きは、次回の『ミステリオーソ』で(笑)。

 

Thelonious Monk "Thelonious In Action"
(Riverside RLP 262/1190)

Johnny Griffin (tenor sax)
Thelonious Monk (piano)
Ahmed Abdul-Malik (bass)
Roy Haynes (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Ray Fowler
Recorded live at Five Spot Cafe, NYC; August 7, 1958

[Tracks]
01. Light Blue (music: Thelonious Monk)
02. Coming On The Hudson (music: Thelonious Monk)
03. Rhythm-A-Ning (music: Thelonious Monk)
04. Epistrophy (theme) (music: Thelonious Monk)
05. Blue Monk (music: Thelonious Monk)
06. Evidence (music: Thelonious Monk)
07. Epistrophy (theme) (music: Thelonious Monk)

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2006年05月16日

セロニアス・モンク『モンクス・ミュージック』

monksmusic.jpg Thelonious Monk - Monk's Music

W杯の日本代表が発表されました。FWの久保がはずれたのには驚きましたが、個人的には、MFの松井を連れていってほしかった。ジーコの頭のなかでは玉田と役割がかぶったんだと思いますが、4年後を考えたら、次世代の中心選手である松井に本番を経験させておかないと、とんでもないことになる気がします。日本が誇る黄金の世代も、4年後は30歳。スピードが生命線の日本代表で、30歳ではいかにもきつい。だからこその松井だったわけですが、かえすがえすも残念です。

それはさておき、『モンクス・ミュージック』が録音された1957年は、ジョン・コルトレーンにとって非常に重要な年でした。前年の11月、マイルスの黄金のクインテット(日本代表の中盤、黄金のカルテットではありません)を離れたトレーンは、セロニアス・モンクのもとで腕を磨きます。この年、51年の「事件」以来、没収されたままになっていたキャバレーカードを手にしたモンクは、コルトレーンを加えたカルテットで、ファイヴ・スポットに長期出演を果たします。ちょうどモンクの評価がうなぎのぼりに上がっていた時期でもあり、クラブは連日満員盛況だったといいます。

この『モンクス・ミュージック』は、トランペットにレイ・コープランド、アルトにジジ・グライス、テナーに御大コールマン・ホーキンスとトレーンを迎えたセプテット(七重奏団)によるアルバムです。モンクが参加した作品には、いわくつきの名盤(迷盤?)がいくつかありますが(マイルスとのケンカ・セッション、もといクリスマス・セッションとかね)、これなんかもその代表です。

1曲目〈アバイド・ウィズ・ミー〉はホーン・セクションのみの演奏です。トランペット1本にサックス3本だけで、モンクが好きだという「賛美歌」を奏でます。

2曲目〈ウェル・ユー・ニードント〉。途中、モンクの「コルトレーン、コルトレーン!」という叫びが響き渡ります。ソロの出だしを間違えたのかと思いきや、なんとトレーンは本番中に眠りこけていたのでした。以下、J.C. トーマス著、武市好古訳『コルトレーンの生涯』(学研M文庫)より、現場にいたレイ・コープランドの発言です。

1957年に私はコルトレーンと一緒に録音の仕事をした。彼は明らかに麻薬を打っていたと思う。リーダーのモンクが長いピアノ独奏をやっているあいだ、私たち二人はリズム・セクションの近くにすわっていた。コルトレーンが独奏をする時が迫っていた。彼の方を見ると、彼はサキソフォンを膝のあいだに抱えて居眠りをしていた。私が声をかけようと思ったとたん、たまたまピアノから眼を上げたリーダーがトレーンの様子に気がついて「コルトレーン、おい、コルトレーン!」と叫んだのである。次の瞬間、私が、一生忘れることのできないすばらしい出来事が起こったのだ。トレーンはさっと立ちあがり、まるで何事もなかったかのように見事な抑揚をつけて、ピアノ独奏にかわって演奏を始めた。それは実にすばらしい独奏だった。独奏が終ると、彼はまた腰を下ろし前を同じように居眠りを始めた。

マイルスのグループにいたときは、同僚のフィリー・ジョーの影響もあってドラッグ漬けになっていたトレーンですが、57年の春ごろ(?)には麻薬と酒を完全に絶ったといいます。やがてタバコも絶ってベジタリアンとなり、精神世界(笑)へと旅立っていくわけですが、この録音のときは、まだまだ覚醒していなかったようです。

5曲目〈エピストロフィー〉。これも演奏中の「ミス」が記録として残された珍しい例です。ミスしたのは、テナーの父コールマン・ホーキンス。ウィルバー・ウェアのベース・ソロのあと、ブレイキーのロールからモンクがテーマを弾くあたり(6分35秒)、ホーキンスが一瞬、出を間違えてブーッ、ブーッと吹きます。さらに、ブレイキーがソロを叩き続けている間(7分32秒)にも、バーッ、バーッというホーキンスの音が聞こえてきます。やはり御大には、モンクの楽曲はむずしかったのか。前述の『コルトレーンの生涯』には、この件に関連して、アート・ブレイキーの興味深い証言が残されています。

ホークはその曲(モンクのオリジナル)がよくわからなかったので、トレーンと自分のために説明してほしいとモンクにたのんだ。モンクはホークに言った。「君は、偉大なコールマン・ホーキンスだ。そうだね。テナー・サキソフォンを発展させた男だろう?」ホークはうなずいた。こんどは、トレーンに向かって言った。「君は、偉大なジョン・コルトレーンだね」トレーンは顔を赤らめ、「いや、私はそれほどでもない……」と口ごもるように答えた。すると、モンクは二人に向かって言った。「君たちは二人とも、サキソフォンを吹いているんだろう」二人はうなずいた。「いいかね、この音楽はサキソフォンで演奏するんだ。だから、君たちは二人でその方法を探すんだ。できないわけはない。

最後の〈クレプスキュール・ウィズ・ネリー〉。「crepuscule」はフランス語で「黄昏、夕焼け」。最愛の妻ネリーに捧げられた曲ですね。実はこの曲、すべて譜面に書かれていてアドリブはゼロだといいます。徘徊癖があり、ステージ上でも突然踊り出すなど、奇抜な行動で知られたモンクは、後輩パウエルと同様、精神に「闇」を抱えていました。そんなモンクのかたわらを片時も離れなかったネリー。モンクのネリーに対する態度は、幼子が母親に対するものだったのかもしれません。ネリー抜きでは外出もしなかったとも伝えられています。

 

Thelonious Monk "Monk's Music"
(Riverside RLP 242/1102)

Ray Copeland (trumpet) #1, 2, 4-6
Gigi Gryce (alto sax) #1, 2, 4-6
Coleman Hawkins (tenor sax)
John Coltrane (tenor sax) #1, 2, 4-6
Thelonious Monk (piano)
Wilbur Ware (bass)
Art Blakey (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; June 26, 1957

[Tracks] Thelonious Monk - Monk's Music
01. Abide With Me (P.D. arr. Thelonious Monk)
02. Well, You Needn't (music: Thelonious Monk)
03. Ruby, My Dear (music: Thelonious Monk)
04. Off Minor (music: Thelonious Monk)
05. Epistrophy (music: Thelonious Monk)
06. Crepuscule With Nellie (music: Thelonious Monk)

[Links: Thelonious Monk]
THE MONK ZONE: The Official Thelonious Sphere Monk Website
The Thelonious Monk Website
Thelonious Monk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Gigi Gryce]
Gigi Gryce (by David Griffith)
Rat Race Blues: The Musical Life of Gigi Gryce (by Noal Cohen and Michael Fitzgerald)
[Links: John Coltrane]
John Coltrane (Official Website)
John Coltrane (@ Dave Wild's WildPlace)
John Coltrane Discography (by ANTAIOS)
John Coltrane Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wilbur Ware]
Wilbur Ware Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: Art Blakey]
The Official Art Blakey Website
Art Blakey School of Hardbop
Art Blakey Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年05月08日

セロニアス・モンク『ブリリアント・コーナーズ』

brilliantcorners.jpg Thelonious Monk - Brilliant Corners

プレスティッジのオーナー、ボブ・ワインストックは、あまり支払いのきれいな人ではなかったようで、マイルスやロリンズ、MJQ など錚々たる面子を抱えていながら、そのほとんどに逃げられるという大失態を演じて後世に名を残しました。モンクもその一人で、金銭的な不満から、プレスティッジと手を切りたがっていた彼に救いの手を差し伸べたのは、リヴァーサイドのプロデューサー、オリン・キープニューズでした。

わずか108ドル27セント(モンクがプレスティッジに前借りしていた額)でモンクとの専属契約をとりつけたキープニューズは、さっそく彼の売り出しをはかります。この類い稀なるユニークな才能をいかにして世間に認知させるか。キープニューズが考えたのは、入り口の敷居を下げることでした。誰もが知っている曲をモンクに弾かせれば、親しみやすいし、モンク独特のユーモアもわかってもらえるに違いない。そうしてできあがったのが、移籍第一弾『プレイズ・デューク・エリントン』(エリントン集)と第二弾『ザ・ユニーク』(スタンダード集)だったわけです。

ところが、この二つのトリオ作品は思惑が外れてあまり売れませんでした。聞きやすさを優先するあまり、モンクのオリジナリティを殺してしまったというか、要するに、時代を読み間違えたんですね。キープニューズは、モンクが「わかりにくい」と思った。だから「聞きやすい」アルバムにしあげたわけですが、時代はもっと先を行っていた。彼のようなユニークな個性を楽しめる聴衆が育ってきた時期だったんです。だから、素のままのモンクを前面に押し出せば結果はついてくる。

モンクの最高傑作の呼び声も高い『ブリリアント・コーナーズ』は、ありものの「曲」という制約を外し、人選を含めて、モンクに思いっきり自由に演奏させたアルバムです(1956年10月9日、15日、12月7日録音)。

結果は「吉」と出ます。しかも、生涯に一度あるかないかの「大吉」です。モンクの評価はこのアルバムのリリースを境に一変します。それまでの不遇時代がウソのように、モンクの風変わりな才能に惜しみない拍手が贈られました。モンクに「ジニアス」の称号を贈ったのは、早くも1947年にモンクの初リーダー作品を録ったブルーノートのアルフレッド・ライオンでしたが、それから10年がたち、ようやく世間に彼の天才ぶりが認知された。モンクの時代がやってきた(It's Monk's Time)のです。

世にいう歴史的名盤というのは、えてして眉唾ものなのですが、『ブリリアント・コーナーズ』に限ってはそんな心配は無用です。黙って耳を傾けてください。モンクス・ミュージックの最良の表現者はモンクしかいない、というのが通説ですが、アルトのアーニー・ヘンリー、テナーのロリンズが、モンクのユーモア、モンクの内なる音楽に肉薄していきます。

もし、冒頭の〈ブリリアント・コーナーズ〉に少しでも違和感を感じるなら、迷わず CD のトラックナンバーを「3」にあわせてください。子守唄のようなやさしい音楽があなたを包み込んでくれるでしょう。モンクが物心両面で世話になったニカ男爵夫人に捧げられたこの〈パノニカ〉では、珍しいモンクのチェレスタが聞けます。チェレスタは、外見はアップライト・ピアノに似ていますが、鍵盤を叩くことによって中にある「鉄琴」を鳴らす楽器です。ピアノ線という「弦」を鳴らしているピアノとは、そこが違います。チェレスタのかわいらしい音色に乗って、摩訶不思議なハーモニーを生み出すヘンリーとロリンズ。この「おかしさ」がわかれば、あなたはもう立派なモンク・フリークです(笑)。

そのまま続けて〈アイ・サレンダー・ディア〉へと進みましょう。このアルバムで唯一のスタンダードは、モンクが独りで料理します。これはもう絶品です。無伴奏のソロ・ピアノは、弾く人の個性がそのまま出ます。強烈な個性の持ち主にアプローチするには、ソロを聞くに限ります。

そうして耳が慣れてきたら、トラックナンバーを「1」に戻してください。いよいよ世紀の難曲〈ブリリアント・コーナーズ〉と対決します。用意ができたら、さあ、スタートボタンを押してください。実にゆったりとした導入です。このモンクのピアノを聞いて「おっ、きたな」と思ったあなた、あなたはもうモンクと友だちです(笑)。テーマ部分のロリンズの野太いテナーが強烈です。ブブブブブブブーッと、ビブラートをきかせて耳元に迫ってきます。えもいわれぬ快感が全身を貫きます。ウオーッ。

途中、倍速になったり、元に戻ったりしながら演奏が続きます。すごい緊張感です。まったくダレません。ロリンズのソロもすごいですが、アーニー・ヘンリーのアブストラクトなアルトが話題を呼んだといいます。あまりの難しさに演奏者が途中で悲鳴をあげ、最後はやむなくテープ編集で曲としての体裁を整えたとそうですが、そんなことは関係ありません。ここには、モンクス・ミュージックの理想型があります。モンク以外の人間がはじめて到達した「モンクの世界」です。

 

Thelonious Monk "Brilliant Corners"
(Riverside RLP 226/1174)

Clark Terry (trumpet) #5
Ernie Henry (alto sax) #1-3
Sonny Rollins (tenor sax) #1-3
Thelonious Monk (piano, celesta #3)
Oscar Pettiford (bass) #1-3
Paul Chambers (bass) #5
Max Roach (drums) #1-3

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; October 9 (#2, 3), 15 (#1, 4), December 7 (#5), 1956

[Tracks] Thelonious Monk - Brilliant Corners
01. Brilliant Corners (music: Thelonious Monk)
02. Ba-Lue Bolivar Ba-Lues Are (music: Thelonious Monk)
03. Pannonica (music: Thelonious Monk)
04. I Surrender, Dear (music: Harry Barris / words: Gordon Clifford)
05. Bemsha Swing (music: Thelonious Monk)

[Links: Thelonious Monk]
THE MONK ZONE: The Official Thelonious Sphere Monk Website
The Thelonious Monk Website
Thelonious Monk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Sonny Rollins]
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2006年04月05日

ブルー・ミッチェル『ブルー・ソウル』

bluesoul.jpg

最近まじめに更新しているせいか(笑)、久しぶりにランキングひとケタ台をキープしてますね。ついでに、こちらをポチッとワンクリックお願いします。

ブルー・ミッチェルは1959年の1月から、ホレス・シルヴァー・クインテットに加わります。この事実を前にしたとき、私の脳裏にはどうしても「ブルー・ミッチェル=リー・モーガンになれなかった男」という公式が浮かんでしまうのです。

モーガンもミッチェルも、デビュー時にはベニー・ゴルソンの手を借りた。そして、次のステップとして、モーガンはブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズに、ミッチェルはシルヴァーのクインテットに参加した。どちらも時代を代表するファンキー・コンボです。でも、世間の評価はどうでしょう。自己宣伝に長けたモーガンは天才の名をほしいままにしましたが、ミッチェルに与えられたのは、一流になりきれないB級アーティストという称号でした。

リー・モーガンにあって、ブルー・ミッチェルになかったもの。ガレスピー楽団への参加。永遠の名曲名演〈アイ・リメンバー・クリフォード〉。ジャズ市場を超えるメガ・ヒット『ザ・サイドワインダー』。そして、同居していた女性に射殺されるという衝撃のラスト。う〜ん、こりゃかなわないな(笑)。

でも、と私はいいたいのです。ブルー・ミッチェルには、ジャズファンが愛してやまないワンホーン・カルテットの傑作『ブルース・ムーズ』があります。そして、次にくるのが3管セクステットの隠れ名盤、『ブルー・ソウル』です(1959年9月28日録音)。

とにかく冒頭の〈マイナー・ヴァンプ〉に耳を傾けてください。このイキのよさ、「ク〜ッ、たまらん」。これ、ゴルソンも参加したカーティス・フラーの人気盤『ブルースエット』でも演奏されていましたね。わずか4か月前の出来事ですが、ペットが入っている分、こちらの切れ味に軍配が上がりそうです。

続くミッチェルのオリジナル〈ザ・ヘッド〉も、いいねえ。伸びやかに歌うミッチェルのよさが出た好演です。テナーがゴルソンでないのもいいです(笑)。そうそう、これだよね、テナーは。この小気味よさはゴルソンじゃ出ないもん(ゴメンよ、ゴルソン)。

ゴルソンと同じく、作編曲を得意としたジミー・ヒースの6曲目〈ウェイヴァリー・ストリート〉も、独特の哀感がたまりません。

3管の重厚なアンサンブルにほどよく配置されたワンホーン・カルテットの演奏も冴え渡ります。ノリノリのミッチェルもウィントン・ケリーも楽しいけれど、サム・ジョーンズのベースを聞いているだけでもムズムズしてくる〈今宵の君は(ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト〉。ゴルソンが後にジャズテットでも取り上げた名曲〈パーク・アヴェニュー・ペティート〉。エコーのかかったミッチェルのペットがスペースを感じさせます。

アルバムの最後は当時のボス、ホレス・シルヴァーの〈ニカの夢〉で締めくくります。

 

Blue Mitchell "Blue Soul"
(Riverside RLP 309/1155)

Blue Mitchell (trumpet)
Curtis Fuller (trombone) except #3, 4, 7
Jimmy Heath (tenor sax) except #3, 4, 7
Wynton Kelly (piano)
Sam Jones (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins, Roy Friedman
Recorded at Reeves Sound Studio, NYC; September 28, 1959

[Tracks] 
01. Minor Vamp (music: Benny Golson)
02. The Head (music: Richard "Blue" Mitchell)
03. The Way You Look Tonight (music: Jerome Kern / words: Dorothy Fields)
04. Park Avenue Petite (music: Benny Golson)
05. Top Shelf (music: Jimmy Heath)
06. Waverley Street (music: Jimmy Heath)
07. Blue Soul (music: Richard "Blue" Mitchell)
08. Polka Dots And Moonbeams (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
09. Nica's Dream (music: Horace Silver)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Jimmy Heath]
Jimmy Heath of the Legendary Heath Brothers (Official Website)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Philly Joe Jones]
Philly Joe Jones Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年04月04日

ブルー・ミッチェル『アウト・オブ・ザ・ブルー』

outoftheblue.jpg

さて、ブルー・ミッチェルの影にベニー・ゴルソンあり、という話の続きです。1959年1月5日録音のミッチェルの 2nd アルバム、『アウト・オブ・ザ・ブルー』には、ヨーロッパ・ツアーから帰国したばかりのメッセンジャーズから、御大ブレイキーとゴルソンが参加しています。ゴルソンが裏方に徹するどころか、思いきり前面に出てきてしまった(失礼!)のは、メッセンジャーズ参加と欧州ツアー成功の自信がそうさせたのでしょうか。

なにしろ1958年の11月から12月にかけて行われたこのツアーでは、名盤『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』や『パリ・オランピア・コンサート』が生まれています。ゴルソンとしても、人生最良の瞬間を迎えていたわけで、そんな彼に黒子に徹しろというのは、惨い仕打ちかもしれません。

メンバーはほかに、ミッチェルの作品には欠かせない能弁でゴキゲンなピアニスト、ウィントン・ケリーに、名門リヴァーサイドのベースラインを支え続けたサム・ジョーンズとポール・チェンバースが参加しています。

そんなわけで、アルバムはゴルソン作の〈ブルース・オン・マイ・マインド〉で幕を開けます。でも、ゴルソンには悪いですが、出来はイマイチ。ちょっとダレます。むしろ、クラーク・テリー作〈ブーメラン〉のカッコよさや(初出はテリーの『セレナーデ・トゥ・ア・バス・シート』)、ミッチェル自作の〈スウィート・ケイクス〉のほのかなラテン・フレイヴァーに引かれます。

ほかにも、ロンネル・ブライトの〈ミッシング・ユー〉とか、〈聖者の行進〉なんて珍しい曲も演ってますが、隠れたおすすめ曲は、ヴァン・ヒューゼン作の有名スタンダード〈イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〉です。

この出だしの雰囲気、『ブルース・ムーズ』でミッチェルのほんわかしたラッパにクラクラきた向きには、きっと気に入ってもらえると思います。「やった、この曲だけワンホーンか」と思いきや、途中でゴルソンが乱入するのが気に入りませんが、非常に短いので、勘弁してあげましょう(笑)。

そうそう、このゴルソンのソロを聞けば、休みなくウネウネと吹き続けるシーツ・オブ・サウンドのゆっくりバージョン(爆笑)の気持ち悪さがわかってもらえると思います。「もっと歯切れよくいかんかい!」とツッコミたくなるんです。

 

Blue Mitchell "Out Of The Blue"
(Riverside RLP 293/1131)

Blue Mitchell (trumpet)
Benny Golson (tenor sax)
Wynton Kelly (piano)
Sam Jones (bass) #1, 3, 5
Paul Chambers (bass) #2, 5, 6
Art Blakey (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studio, NYC; January 5, 1959

[Tracks]
01. Blues On My Mind (music: Benny Golson)
02. It Could Happen To You (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
03. Boomerang (music: Clark Terry)
04. Sweet-Cakes (music: Richard "Blue" Mitchell)
05. Missing You (music: Ronnell Bright)
06. When The Saints Go Marching In (traditional)

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2006年04月03日

ブルー・ミッチェル『ビッグ6』

big6.jpg

コンポーザー&アレンジャーとしては、抜群の人気を誇るベニー・ゴルソンですが、テナー奏者としてはどうなのでしょう?1929年1月25日、ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれ。

いーぐるの後藤雅洋さんがあちこちで「彼のウネウネと続くテナー・ソロにはついていけない」と書いていますが、実はこれ、私も同感です(笑)。譜面を書かせたら、あんなにも美しいハーモニーを生み出すゴルソンですが、彼のソロにはひらめきが感じられません。「ウネウネ」という表現がピッタリの、同じフレーズの垂れ流しが耳について、どうも好きになれない。

じゃあ、なんでゴルソンにスポットを当てた記事を書いているのかというと、理由はただ一つ、ブルー・ミッチェルのことが書きたかったからです。

「ミッチェルとゴルソン? どこかで関係してたっけ? リー・モーガンとか、アート・ファーマー(ジャズテット)の間違いじゃないの???」という声が聞こえてきそうですが、この二人、ひそかに接点をもっているんですよ。しかも、モーガンのときと同じように、ミッチェルのデビューをゴルソンが影で支えた節がある。

「え〜?」という人は、まずブルー・ミッチェルの初リーダー作『ビッグ6』を手に取ってみてください(1958年7月2、3日録音)。

ここにはなんと、〈ブルース・マーチ〉の初演が入っています。ジャズ・メッセンジャーズが『モーニン』を吹きこむのはこの3か月後ですから、ゴルソンはとびっきりの自信作を無名に近かった新人のデビュー盤に提供したことになります(アレンジも提供したと、プロデューサーのオリン・キープニューズはライナーで述べています)。

なにやら臭ってきましたね。これって、モーガンのデビュー時と同じ黒子役じゃないかと。この続きは、次回ということで(笑)。

ちなみに、2曲の作曲家としてクレジットされているウィリアム・ブーン・ジュニアという人は、ブルー・ミッチェルのマイアミ時代の友人。ミッチェル自作の〈ブラザー・ボール〉は、同じフロリダ出身の先輩キャノンボールに捧げられています。そういえば、彼がリヴァーサイド・デビューを飾ったのは、『ポートレイト・オブ・キャノンボール』でしたね。

 

Blue Mitchell "Big 6"
(Riverside RLP 273)

Blue Mitchell (trumpet)
Curtis Fuller (trombone)
Johnny Griffin (tenor sax)
Wynton Kelly (piano)
Wilbur Ware (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Matthews
Recorded at Reeves Sound Studio, NYC; July 2. 3, 1958

[Tracks]
01. Blues March (music: Benny Golson)
02. Big 6 (music: William Boone, Jr.)
03. There'll Never Be Another You (music: Harry Warren / words: Mack Gordon)
04. Brother 'Ball (music: Richard "Blue" Mitchell)
05. Jamph (music: Curtis Fuller)
06. Sir John (music: Richard "Blue" Mitchell)
07. Promenade (music: William Boone, Jr.)

[Links: Blue Mitchell]
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2006年03月29日

ジュニア・クック『ジュニアズ・クッキン』

juniorscookin.jpg

ホレス・シルヴァー・クインテットの面々がボスのシルヴァー抜きで行った西海岸と東海岸の2つのセッションをまとめた作品、それがこの『ジュニアズ・クッキン』です。リヴァーサイドの傍系ジャズランドに吹き込まれました(1961年4月10日@西海岸、12月4日@東海岸の録音)。

名前のとおり、そこはかとないブルーな雰囲気が魅力のブルー・ミッチェル。彼と相性ばっちりの相方といえば、やっぱりこの人、ジュニア・クックをおいてほかにはいません。1934年7月22日、フロリダ州ペンサコラ生まれ。1992年2月3日、ニューヨーク州ニューヨークで死去。同郷には、アルトのジジ・グライスがいます。マイアミ出身のブルー・ミッチェルともご近所さんです。

シルヴァー抜きのシルヴァー・クインテット。さて、結果はどうでたか。ここには湧き立つようなグルーヴもなければ、この時期のシルヴァー・クインテットしか持ち得なかったどこまでも駆け抜けていく、あの「疾走感」もありません。そういう意味では、シルヴァーが役者の違いを見せつけたわけですが、それだけじゃつまらない。

ノリノリの高速演奏で悦楽の境地へと誘ってくれるミッチェルやクックもいいですが、もう一つ、彼らのおいしいところは、ミディアムからスロー・バラードに聞かれるけっして重すぎないブルージーな響きじゃないでしょうか。

というわけで、〈イージー・リヴィング〉です。ボスのグループでは絶対取り上げられないであろうこの曲を、クックはメロディーを慈しむように歌い上げていきます。ミッチェルの出番が冒頭と最後だけに限られているのが惜しい気がしますが、これはクックのリーダー・アルバムだから致し方ない。むしろ、わずかひと吹きでその場に大輪の花を咲かせるミッチェルの力量を楽しみたい気がします。

5曲目のミッチェル・オリジナル〈スウィート・ケイクス〉は、『アウト・オブ・ザ・ブルー』の再演です。



Junior Cook "Junior's Cookin'"
(Jazzland JLP 958)

Blue Mitchell (trumpet)
Junior Cook (tenor sax)
Ronnie Mathews (piano) #1-3, 7
Dolo Coker (piano) #4-6
Gene Taylor (bass)
Roy Brooks (drums)

Produced by Orrin Keepnews (#1-3, 7), Russell Jacquet (#4-6)
Recorded by Ray Fowler (#1-3, 7)
Recorded at Gold Star Studios, Long Beach, CA; April 10, 1961 (#4-6)
Recorded at Plaza Sound Studios, NYC; December 4, 1964 (#1-3, 7)

[Tracks]
01. Myzar (music: Roland Alexander)
02. Turbo Village (music: Charles Davis)
03. Easy Living (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
04. Blue Farouq (music: Richard "Blue" Mitchell)
05. Sweet Cakes (music: Richard "Blue" Mitchell)
06. Field Day (music: Dolo Coker)
07. Pleasure Bent (music: Roland Alexander)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)

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2006年02月16日

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ『ウゲツ』

ugetsu.jpg Art Blakey & The Jazz Messengers - Ugetsu

ジャズ・メッセンジャーズのバードランド録音というと、ブルーノート盤ばかりに目が向きますが、名門リヴァーサイド(アルバムリストはこちら)にも残されています。それがこの『ウゲツ』です(1963年6月16日録音)。

ところで、『ウゲツ』とはなんぞや? 日本語で「ファンタジー」を意味するとはブレイキーの弁ですが、きっと上田秋成の『雨月物語』なんでしょうね。3管メッセンジャーズはこのメンバーでこの年の1月に来日をしていますが(ベースがレジー・ワークマンに代わった)、そこで誰かが妙な話を吹き込んだのでしょう。ファンタジーはファンタジーでも怪談ですからね、明るい曲調とはずいぶん違う気がします(笑)。

ところで、この〈ウゲツ〉、またしてもシダー・ウォルトンの作品なんですね。この人、知名度は低いですが、ホント、いい曲を書きます。白人ビバッパーとして鳴らしたアル・ヘイグの70年代の傑作『インヴィテイション』の冒頭を飾った〈ホーリーランド〉。ベースがリーダーということで見逃しがちなピアノ・トリオの傑作、レイ・ブラウンの『サムシング・フォー・レスター』のこれまた冒頭を飾った〈オホス・デ・ロホ〉。そして、ご存じ〈モザイク〉や〈プレクサス〉など、個人的にはかなり好きな曲ばかり。

で、この〈ウゲツ〉なんですが、実は長いこと聞かずにすっかり忘れていた存在だったんです。それを「再発見」させてくれたのが、ジョシュア・レッドマンのバンドで活躍していたアーロン・ゴールドバーグの『ターニング・ポイント』という作品で、冒頭に〈ファンタジー・イン・D〉という曲が入っています。クレジットを見るとウォルトンの名前があり、気にはなっていたのですが、いかんせん曲名が違うので、検索をかけても出てこない。いい曲なのに残念だとあきらめていたのですが、ある日、iTune で JM のアルバムをかけっぱなしにしていたら、聞き慣れたメロディーが流れてくるじゃないですか! すかさずタイトルを確認しましたよ。「こんなところにいましたか」的な驚きと、買ったことに満足して、ちゃんと聞き込んでいなかった自分に対する反省とで、妙に思い入れのある盤と相成ったのでした、ちゃんちゃん。

 

Art Blakey & The Jazz Messengers "Ugetsu"
(Riverside RLP-464/9464)

Freddie Hubbard (trumpet)
Curtis Fuller (trombone)
Wayne Shorter (tenor sax)
Cedar Walton (piano)
Reggie Workman (bass)
Art Blakey (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Dave Jones
Recorded live at Birdland, NYC; June 16, 1963

[Tracks] Art Blakey & The Jazz Messengers - Ugetsu
01. One By One (music: Wayne Shorter)
02. Ugetsu (music: Cedar Walton)
03. Time Off (music: Curtis Fuller)
04. Ping-Pong (music: Wayne Shorter)
05. I Didn't Know What Time It Was (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
06. On The Ginza (music: Wayne Shorter)

[Links: Freddie Hubbard]
Hub's Disc: Freddie Hubbard Discography
Hub-Tunes: The Freddie Hubbard Discography
[Links: Wayne Shorter]
The Complete Wayne Shorter
ウェイン・ショーターの部屋 (@ T. Pot 氏)
Wayne Shorter Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Reggie Workman]
Reggie Workman's BassScanz (Official Website)
[Links: Art Blakey]
The Official Art Blakey Website
Art Blakey School of Hardbop
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2005年10月18日

ブルー・ミッチェル『ブルーズ・ムーズ』

bluesmoods.jpg 

ライブドアから引っ越ししてきました。引っ越し作業は、ボチボチやっていきます。

リリカルなトランペットで人気のブルー・ミッチェルです。本名は Richard Allen Mitchell。1930年3月13日フロリダ州マイアミ生まれ。1979年5月21日カリフォルニア州ロサンゼルスで亡くなりました。

ブルース・ムーズ』は彼の代表作です。みんな大好きワン・ホーン・カルテットで、気持ちよくスタンダードを吹くミッチェル。このくつろぎは、ちょっと得がたいものがあります。何回聞いても聞き飽きないアルバムって、実はそう多くはないのですが、これなんかは、まさにそうです。ほかに聞きたいものが思いつかないときなど、しょっちゅう取り出して聞いてます。

冒頭のウィントン・ケリーのコロコロ転がるピアノ。これを聞いただけで、心がウキウキしてきます。〈アイル・クローズ・マイ・アイズ〉というマイナーな曲なんですが、これが実にいい曲なんです。携帯の着メロにも使ってます(笑)。

こんなにいい曲なのに、ほかの人がほとんど取り上げないのが、不思議なくらいです。私の手もとにあるのは、ジミー・スミスの『オルガン・グランダー・スウィング』とキース・ジャレットの『アット・ザ・ブルー・ノート』(BOXセット)。でも、この曲はやっぱりブルー・ミッチェルで聞きたい。この1曲だけのために買っても損はしません。保証します!

 

Blue Mitchell "Blue's Mood"
(Riverside RLP 336/9336)

Blue Mitchell (trumpet)
Wynton Kelly (piano)
Sam Jones (bass)
Roy Brooks (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Ray Fowler
Recorded at Plaza Sound Studios, NYC; Aug 24, 25, 1960

[Tracks] 
01. I'll Close My Eyes (music: Billy Reed / words: Buddy Kay)
02. Avars (music: Rocky Boyd)
03. Scrapple From The Apple (music: Charlie Parker)
04. Kinda Vague (music: Richard "Blue" Mitchell, Wynton Kelly)
05. Sir John (music: Richard "Blue" Mitchell)
06. When I Fall In Love (music: Victor Young / words: Edward Heyman)
07. Sweet Pumpkin (music: Ronnell Bright)
08. I Wish I Knew (music: Harry Warren / words: Mack Gordon)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年06月12日

ジョニー・グリフィン『ドゥ・ナッシング・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー』

donothingtil Youhearfromme.jpg

世界一の早吹き男(笑)、ジョニー・グリフィンが得意の早吹きを封印して、艶のある音色で極上のバラードを奏でます。前回紹介した『ケリー・ダンサーズ』と同じ、くつろぎ路線のグリフィンを楽しみたいなら、『ドゥ・ナッシング・ティル・ユー・ヒア・フロム・ミー』がおすすめです。

以前、いつもお世話になっているオーディオ・マニアのHさんのお宅で、このアルバムのオリジナル盤を聞かせてもらったことがあります。そして、驚いた。「水も滴るいい男」とはステレオタイプな物言いですが、音から水が滴り落ちるのを「見た」ことってありますか? 私は目の前で見ました。

グリフィンのテナーはまさにツヤツヤのジュルジュルで、こんな色っぽい音色は聞いたことがありません。それまで私は、いちばん艶っぽい音色を出すテナー奏者はバルネ・ウィランだと思っていたのですが、認識が改まりました。グリフィンは男の色気のかたまりです(背は小さいけれど)。

録音場所を見て「アレ?」と思ったアナタはかなりの通です。カリフォルニアのバークレイにあるクラブ「ツボ」といえば、ウェス・モンゴメリーの傑作ライヴ・アルバム『フル・ハウス』が録音されたところです。そして、このライヴは絶好調のグリフィンが聞けるアルバムとしても知られています。

その1年後、今度はウェスの兄弟バディとモンクをともなって、同じ場所でこの『ドゥ・ナッシング〜』を録音した(ただし、ライヴではない)。そう考えるとワクワクしますが、グリフィンのディスコグラフィーを見ると、「1963年、ニューヨーク録音」としているものが多いようです。「ツボ」録音というのは、間違いなのでしょうか?(ご存じの方、いらっしゃいませんか? 情報求む)

このアルバムを最後に(これがリヴァーサイドへの最終録音でした)、グリフィンはヨーロッパへと旅立ちます。

 

Johnny Griffin "Do Nothing 'Til You Hear From Me"
(Riverside RLP-462/9462)

Johnny Griffin (tenor sax)
Buddy Montgomery (piano) #1, 3, 5, 6 (vibraphone) #2,4
Monk Montgomery (bass)
Art Taylor (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Wally Heider
Recorded at Tsubo, Berkeley, CA; Jun 1963


[Tracks]
01. Do Nothin' Till You Hear From Me (music: Duke Ellington / words: Bob Russell)
02. The The Midnight Sun Will Never Set Will Never Set (music: Quincy Jones, Cochran, Salvador)
03. That's All (music: Bob Haymes)
04. Slow Burn (music: Johnny Griffin)
05. Wonder Why (music: Nicholas Brodszky / words: Sammy Cahn)
06. Heads Up (music: Johnny Griffin)

[Links: Johnny Griffin]
Johnny Griffin Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年06月02日

ジョニー・グリフィン『ザ・ケリー・ダンサーズ 』

thekerrydancers.jpg

「のっぽ」のデクスターの後は、「小さな巨人」ジョニー・グリフィンといきましょう。1928年4月24日、イリノイ州シカゴ生まれです。

「リトル・ジャイアント」というくらいですから、グリフィンはちっちゃい。一説には160センチに満たないともいいます。小さなグリフィンがでっかいテナーを抱きかかえる姿を見たら、「もっと小さいアルトにかえたら?(笑)」と思わず忠告したくなるかもしれません。

ところがどっこい、グリフィンのテナーの音は誰よりもデカイ。デカイだけじゃなく、スピード勝負をしたら誰にも負けない。(シーツ・オブ・サウンド完成以前の)コルトレーンもモブレーもグリフィンに完膚なきまでに打ちのめされたクチです。「リトル」だけど「ジャイアント」と呼ばれるゆえんです。

シカゴ・テナーの伝統を継ぐ豪快なブロウと速射砲のように次から次へとくり出す早吹きで男をあげたグリフィンですが、根っこの部分では意外と「心やさしき男」なのかもしれないと思わせるのが、『ザ・ケリー・ダンサーズ』です。

副題に「その他のスイングするフォークソング」とあるように、この作品では英米に古くから伝わるフォークソングがとりあげられています(前半の4曲のみ)。民謡を歌うのに、豪快なブロウはいりません。そんなことは百も承知とばかり、グリフィンはいつもの過剰なブロウはひかえ、メロディーを慈しむようにリラックスして吹いています。これが実にいいんです。

グリフィンというと、「そこのけ、そこのけ、おれサマが通る」とばかりに肩で風を切って歩くタイプと思われがちですが、彼は派手な殴り合いばかりしている粗野な男じゃありません。愛すべきメロディーに出会えば、たちまち表情が一変して、それをやさしく包み込むような度量の大きさももっています。カッコよすぎるぞ、グリフィン!

聞きどころは、グリフィンの十八番〈ハッシャ・バイ〉。これはやはり押さえておきたい。渋いトーンで迫る男の色気を感じてください。背はちっちゃいけど(笑)。それと、最近の私のお気に入りは、2曲目の〈ブラック・イズ・ザ・カラー・オブ・マイ・トゥルー・ラブズ・ヘア〉。アメリカ南部の民謡だそうですが、実にいい曲なんです。

あとは、1曲目がアイルランド民謡、3曲目がスコットランド民謡だそうです。4曲目はイギリス民謡ですが、〈ダニー・ボーイ〉として知られていますね。ハリー・ベラフォンテが歌って有名になりました。

 

Johnny Griffin "The Kerry Dancers And Other Swinging Folk"
(Riverside RLP-420/9420)

Johnny Griffin (tenor sax)
Barry Harris (piano)
Ron Carter (bass)
Ben Riley (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Ray Fowler
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; Deccember 21, 1961 (#2, 6, 7), January 5 (#3, 5, 8), 29 (#1, 4), 1962

[Tracks] 
01. The Kerry Dancers (trad; arr. Johnny Griffin)
02. Black Is The Color Of My True Love's Hair (trad; arr. Johnny Griffin)
03. Green Grow The Rushes (trad; arr. Johnny Griffin)
04. The Londonderry Air (aka. Danny Boy) (trad; arr. Johnny Griffin)
05. 25 1/2 Daze (music: Sara Cassey)
06. Oh, Now I See (music: Johnny Griffin)
07. Hush-A-Bye (music: Sammy Fain / words: Jerry Seelen)
08. Ballad For Monsieur (music: Sara Cassey)

[Links: Johnny Griffin]
Johnny Griffin Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Barry Harris]
The Official Barry Harris Website
[Links: Ron Carter]
Ron Carter | Official Webite

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2005年04月05日

『ボビー・ティモンズ・トリオ・イン・パーソン』

bobbytimmonsinperson.jpg

50年代後半から60年代前半にかけて人気を博したファンキー・ジャズの3大コンボといえば、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズ、ホレス・シルバー・クインテット、キャノンボール・アダレイ・クインテットですが、そのうちの2つ(ブレイキーとキャノンボール)を渡り歩いたのが、今日紹介するボビー・ティモンズです。1935年12月19日、ペンシルバニア州フィラデルフィア生まれ。1974年3月1日、ニューヨーク州ニューヨークで死去。

このティモンズ、耳にまとわりつくようなタッチが尋常じゃありません。指の力もさることながら、鍵盤をはなすタイミングが他人よりコンマ何秒か遅いため、一度吸いついたらはなれないというか、非常に粘っこい、後を引くピアノを弾きます。有名な〈モーニン〉の出だしにしても、ふつうの人が譜面どおりに弾いても、ぜったいあの感じは出せません(ブレイキーの黒光りする顔がおそろしい名盤 『モーニン』に収録。ティモンズの作曲です)。

作曲のセンスも抜群です。先にあげた〈モーニン〉はまだ序の口で(朝ではありません。Moan は「うめく、ブツブツ言う」といった意味)、〈ディス・ヒア(This Here)〉、〈ダット・デア(Dat Dere。That There のもじり)〉〈ソー・タイアド(ああ疲れた!)〉など、熱気みなぎるゴキゲンなナンバーを数多くものにしています。

ボビー・ティモンズ・トリオ・イン・パーソン』はヴィレッジ・ヴァンガードにおけるライヴ盤です(1961年録音)。ロン・カーターがベース、ヒース3兄弟の末弟アルバートがドラムスを叩いています(兄は MJQ のベーシスト、パーシー・ヒース。次兄はテナーのジミー・ヒース)。

ティモンズのオリジナル曲はもちろん、〈枯葉〉〈朝日のように〉といった人気のスタンダード・ナンバーも、彼の手にかかれば、真っ黒なファンキー・ジャズに早変わり。理屈抜きに楽しめます。

 

”Bobby Timmons Trio In Person"
(Riverside RLP-391/9391)

Bobby Timmons (piano)
Ron Carter (bass)
Albert "Tootie" Heath (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Ray Fowler
Recorded live at Village Vanguard, NYC; October 1, 1961

[Tracks]
01. Autumn Leaves (music: Joseph Kosma / words: Jacques Prevert, Johnny Mercer)
02. So Tired (music: Bobby Timmons)
03. Goodbye (music+words: Gordon Jenkins)
04. Dat Dere (theme) (music: Bobby Timmons)
05. Popsy (music: Bobby Timmons)
06. I Didn't Know What Time It Was (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
07. Softly, As In A Morning Sunrise (music: Sigmund Romberg / words: Oscar Hammerstein II)
08. Dat Dere (theme) (music: Bobby Timmons)

[Links: Bobby Timmons]
Bobby Timmons Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ron Carter]
Ron Carter (Official Website)

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2005年03月30日

ビル・エヴァンス『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』

sundayatvillagevanguard.jpg

ビル・エヴァンス生涯最高のトリオの活動期間はわずか1年半。この1年半、たった4枚のアルバムで、ジャズピアノの歴史をかえてしまったのですから驚きです。

1961年、エヴァンス・トリオは何度もヴィレッジ・ヴァンガードに出演します。リヴァーサイド・レーベル(アルバムリストはこちら)のプロデューサー、オリン・キープニューズは、完璧主義者ゆえに録音を渋りがちなエヴァンスに初のライヴ録音をもちかけます。「腰の重いピアニストにとって、アルバムをつくる比較的楽な方法」とはキープニューズの弁ですが、その「楽な方法」によって、こんなにもすばらしいアルバムができてしまうのが、ジャズのおもしろいところです。

録音は2週間公演の最終日(6月25日の日曜日)。昼2セット、夜3セットの計5セットで行われました。人気があるのは『ワルツ・フォー・デビー』のほうですが、発売は本作『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』が先です。

ジャケットをよく見ると、「Featuring Scott LaFaro」の文字が見えます。曲目を見ても、なるほどラファロの自作曲ではじまり、最後もラファロの曲でしめくくられています。

スコット・ラファロは、この録音の11日後の7月6日の夜、両親のもとへ向かうため、ニューヨーク郊外で車を運転中、木に激突します。即死でした。享年25歳。したがって、この日がエヴァンス・トリオでの最後の演奏となってしまったのです(エヴァンス・トリオ以外では、7月3日、スタン・ゲッツのカルテットでニューポート・ジャズ・フェスティバルに出演したときの模様が残されています)。

最高のパートナー、ラファロを失い、失意のどん底に陥ったエヴァンスは、その後1年ほど人前で演奏するのをやめてしまいます。

 

Bill Evans "Sunday At The Village Vanguard"
(Riverside RLP-376/9376)

Bill Evans (piano)
Scott LaFaro (bass)
Paul Motian (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Dave Jones
Recorded live at the Village Vanguard, NYC; June 25, 1961

[Tracks] 
01. Gloria's Step (music: Scott LaFaro)
02. My Man's Gone Now (music: George Gershwin / words: DuBose Heyward, Ira Gershwin)
03. Solar (music: Miles Davis)
04. Alice In Wonderland (music: Sammy Fain / words: Bob Hilliard)
05. All Of You (music+words: Cole Porter)
06. Jade Visions (music: Scott LaFaro)

[Links: Bill Evans]
The Bill Evans Webpage
Bill Evans Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Scott LaFaro]
Scott LaFaro: Beacon for Jazz Bassists (by Charles A. Ralston)
Scott LaFaro Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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ビル・エヴァンス『ワルツ・フォー・デビー』

waltzfordebby.jpg ビル・エバンス・トリオ - Waltz for Debby

1961年には、ジャズ史に残る伝説のライヴがもう1つ残されています。ドルフィー&リトルのファイヴ・スポット・セッションの3週間前、場所は同じニューヨークにあるヴィレッジ・ヴァンガード。6月中旬の2週間、ここで演奏をくりひろげたのは、ビル・エヴァンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンの3人。世にいう「黄金のトリオ」唯一のライヴ音源からは、『ワルツ・フォー・デビイ』と『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』という2枚のアルバムが制作されました。

ピアノが主、ベースとドラムスが従というそれまでのピアノ・トリオの常識を覆し、三者対等の緊密なインタープレイで、ピアノ・トリオの理想形を実現したという一般的な説明は、もういいですね(笑)。書いている自分が情けなくなります。そんな能書きなしに、純粋に彼らの音楽に耳を傾けるだけで、この世の奇跡としかいいようのない究極の美に触れることができます。

冒頭の〈マイ・フーリッシュ・ハート〉。この美しさを何にたとえればいいのでしょう。「エヴァンス=ロマンチスト」のイメージは、この1曲がつくったといっても過言ではありません。掛け値なしの名演です。

2曲目の〈ワルツ・フォー・デビー〉。エヴァンスが姪のデビーに捧げたこの曲は、デビュー盤『ニュー・ジャズ・コンセプションズ』では、ソロピアノでひっそりと演奏されていました。愛する姪っ子を包み込むような、叔父さんのやさしい眼差しがそのまま曲になったような、すてきな曲です。

4曲目、その名もずばり〈マイ・ロマンス〉。夢見るおとめ(死語)のようなウキウキしたピアノに鋭く切り込むラファロのベース。甘いだけではない、スリリングな展開が楽しめます。

 

Bill Evans "Waltz For Debby"
(Riverside RLP-399/9399)

Bill Evans (piano)
Scott LaFaro (bass)
Paul Motian (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by David Jones
Recorded live at the Village Vanguard, NYC; June 25, 1961

[Tracks] ビル・エバンス・トリオ - Waltz for Debby
01. My Foolish Heart (music: Victor Young / words: Ned Washington)
02. Waltz For Debby (music: Bill Evans)
03. Detour Ahead (music+words: Herb Ellis, John Frigo, Lou Carter)
04. My Romance (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
05. Some Other Time (music: Leonard Bernstein / words: Betty Comden, Adolph Green)
06. Milestones (music: Miles Davis)

[Links: Bill Evans]
The Bill Evans Webpage
Bill Evans Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Scott LaFaro]
Scott LaFaro: Beacon for Jazz Bassists (by Charles A. Ralston)
Scott LaFaro Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2004年12月29日

セロニアス・モンク『セロニアス・ヒムセルフ』

thelonioushimself.jpg Thelonious Monk - Thelonious Himself

セロニアス・スフィア・モンク。1917年10月10日、ノース・カロライナ州ロッキー・マウント生まれ。1982年2月17日、ニュージャージー州ウィーホーケンで亡くなりました。ビバップ革命の立役者にして、偉大なるコンポーザー。独特の「間」とパーカッシヴなピアノ奏法で、一度聞いたら忘れられない強烈なインパクトの持ち主です。

ジャズの巨人というと、たいてい神棚(笑)に祭り上げられて、ふだんは敬遠されがちな存在なわけですが、ことモンクに限っては、そんなことはないはずです。同時期に出たピアノの巨人、バド・パウエルと比べてよくいわれるのは、パウエルの演奏法は「パウエル派」ともいうべき追従者(その多くは50〜60年代前半のハードバップ期の人気者になった)をたくさん生み出したけれど、モンクの音楽は、そのあまりのユニークさによって、後継者を生み出さなかった(したがって、モンクはむずかしい)、というものですが、こんな定型フレーズのような無意味な説明はそろそろやめにしませんか?

たしかに、パウエル派には人気者がたくさんいますが、パウエルその人を日常的によく聞く人というのを、私は知りません。たまに聞くとすごいと思うけれど、疲れちゃうんだよね、あのテンションは。録音も古いし。これがふつうの感想ではないでしょうか。

その点、モンクは今も聞かれる存在ではないかと思うのです。今聞いても、じゅうぶん新しい。というよりも、フリーやフュージョンを通過してきた耳からすると、古くて辛気くさいパウエルよりはモンクのほうが親しみやすい存在なのではないか。そんな気がします。モンクのようなヘタウマなアーティストを楽しむゆとりが、昔はなかったんですね、きっと。

とはいえ、モンクの楽しさがわかるにはそれなりのルートがあるわけで、ソロ・ピアノ作品からアプローチする、というのが私のおすすめです。彼のソロは代表的なものだけで4枚ありますが、この『セロニアス・ヒムセルフ』を推すのは、モンクの代表曲〈ラウンド・ミッドナイト〉の本人による名演が聞けるだけでなく、その制作過程を収録したボーナス・トラックがついているからです。これを聞くと、1つの曲、1つの演奏にかけるモンクの入れ込み方がよくわかるし、一度として同じ演奏をしないというジャズの本質をかいま見ることができます。

私は基本的にはボーナス・トラック(別テイク)を入れることに反対なのですが(そうしないと、演奏者、プロデューサーが何のためにこの曲にかけたのか、その意味がなくなってしまうからです)、これは例外中の例外です。こんなトラックなら、いくらでも聞きたい。そう思います。

 

Thelonious Monk "Thelonious Himself"
(Riverside RLP-235)

Thelonious Monk (piano)
John Coltrane (tenor sax) #8
Wilbur Ware (bass) #8

Produced by Orrin keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; April 12, 16, 1957

[Tracks] Thelonious Monk - Thelonious Himself
01. April In Paris (music: Vernon Duke / words: Edgar Y. Harburg)
02. I Don't Stand A Ghost Of A Chance With You (music: Victor Young / words: Bing Crosby, Ned Washington)
03. Functional (music: Thelonious Monk)
04. I'm Getting Sentimental Over You (music: George Bassman / words: Ned Washington)
05. I Should Care (music: Axel Stordahl, Paul Weston / words: Sammy Cahn)
06. 'Round Midnight (in progress)* (music: Thelonious Monk, Cootie Williams / words: Bernie Hanighen)
07. 'Round Midnight (music: Thelonious Monk, Cootie Williams / words: Bernie Hanighen)
08. All Alone (music: Irving Berlin)
09. Monk's Mood (music: Thelonious Monk)
(* bonus track)

[Links: Thelonious Monk]
THE MONK ZONE: The Official Thelonious Sphere Monk Website
The Thelonious Monk Website (by howardm)
Thelonious Monk Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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