2005年05月12日

キース・ジャレット『ソロ・コンサート』

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久しぶりにキースのソロが出ましたね。どういうわけか、私のまわりにはキース・ファンの女性が多いようなので(笑)、『レイディアンス』の発売を記念して、今日からキースのソロピアノ作品を頭から順番に紹介する、というちょっと無謀な特集を組みたいと思います(途中で飽きちゃったらゴメンなさい)。

キース・ジャレットが、ECM のプロデューサー、マンフレート・アイヒャーの申し出によって、初のソロピアノ作品『フェイシング・ユー』を録音したのが1971年11月。マイルス・バンドのヨーロッパ・ツアー中、わずか3時間の出来事だったといいます(稲岡邦彌さん『ECM の真実』より)。

続く72年から、キースとアイヒャーは計18回にも及ぶヨーロッパ・ツアー(ソロピアノによる完全即興演奏)を敢行。その中から、73年3月のスイス・ローザンヌでの演奏と、同年7月のドイツ・ブレーメンでの演奏をピックアップして3枚組のLPとしてまとめたのが、この『<ソロ・コンサート』です。

それにしても、どえらいことを考えたものです。譜面なし、曲なしで、たった独り舞台に立ち、1時間以上も途切れなく演奏しつづける。ものすごいプレッシャーだと思います。全神経を集中して、感覚を極限まで研ぎすませないと実現できないことです。しかも、その音楽が聴衆を魅了し、世界中の人に感動を与えているなんて、この世の奇跡としかいいようがありません。

比べるのもどうかとは思いますが、私も人前で講義をする身です。2時間の授業に事前の準備なしでのぞむなど、想像しただけでも恐ろしい。しかも、それで生徒に感動を与えつづけるなんて。若い人は正直ですから、こちらがちょっと準備を怠っただけで、すぐに居眠りする生徒が出てきます(笑)。だから、よけいにキースのすごさが実感できるんです。

それだけプレッシャーのかかる行為ですから、やはり肉体も精神もボロボロになります。先のヨーロッパ・ツアー中、アイヒャーは自分で車を運転して満身創痍のキースを運んでいたそうですが、とくにブレーメンではひどかった。コルセットでなんとか体を支えて長時間ドライヴを乗り切ったキースですが、ホテルに到着と同時にベッドに倒れ込んでしまった。もうだめだ、このままではコンサートは中止するしかない。でも、キースは舞台に立ちます。そして、静かに鍵盤をつまびきはじめるのです。〈ブレーメン・パート1〉

稲岡さんは前掲書で、その音楽を「山の岩陰に端を発した小さな流れが、森を走り、山を下り、表情を変えながら川幅を増し、急流になれば蛇行して速度をゆるめ、やがて、とうとうと流れる大河になって海に流れ込む」と評されていますが、まったく同感です。実は私も、まさに「川の一生」を想像しながらこの音楽を聞いていたのです。今回、飯岡さんがまったく同じようなイメージでこの音楽をとらえていたことを知って、うれしくなりました。

もう1つ、〈ブレーメン・パート2〉の15分00秒から19分20秒あたりまで続く「桜吹雪」(と勝手に呼んでいます。桜の花びらが風に舞うなかを、桜の妖しさに魅入られた男が一人佇む。そんなイメージなんです)が私のお気に入りです。あまりの美しさにため息しか出てきません。

一連のキースのソロ・コンサート作品で、最初に聞くべきアルバムはやはり『ソロ・コンサート』だと個人的には思っています。というのも、この『ソロ・コンサート』では、まだキースもはじめてということで猫を被っていたのか、例のうなり声がほとんど聞こえないからです(笑)。

キースのうなり声については、実は私も気にならなくなるまでに何年か費やしたのですが、特効薬は目で見ること。

コンサートに足を運ぶもよし、映像作品を観るもよし(ビデオアーツ・ミュージックから何作か出ています)、とにかく一度でもキースのプレイを目の当たりにすれば、立ったり、座ったり、顔をしわくちゃにしたり、うなったり、という一連の行為が、キースの音楽表現と一体化していることがわかります。いったんそうとわかると、今度は音だけの作品を聞いていても、「ああ、ここでキースは例の渋面をつくっているだろうな」「ここで興奮して立ち上がったかな」などと想像する別の楽しみもあったりします。

 

Keith Jarrett "Solo Concerts"
(ECM 1035/37)

Keith Jarrett (piano)

Produced by Manfred Eicher
Recorded by Rolf Rockstroh (#1, 2), Pierre Grandjean, Alain Kobel (#3)
Recorded live at Radio Bremen, Kleiner Sendesaal, Losanna; Jul 12, 1973 (#1, 2)
Recorded live at Radio Suisse Romande, Studio Lausanne, Salle de Spectacles D'Epalinges; Mar 20, 1973 (#3)

[Tracks]
01. Bremen, July 12, 1973, Part 1 (music: Keith Jarrett)
03. Lausanne, March 20, 1973 (music: Keith Jarrett)

[Links: Keith Jarrett]
keithjarrett.org (by Olivier Bruchez)
The ultimate on-line Keith Jarrett Discography (by Mirko Caserta)
Keith Jarrett Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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posted by ユキヒロ at 09:45| Comment(1) | TrackBack(0) | ECM (Japo, Watt) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして
1月28日12時20分に世田谷美術館の講堂で、このレコードをかけます。
ネットを見ていまして、こちらに出会いました。ガルバレクのルミネセンスもかけます。もし、よろしければお立ち寄りください。お近くかもしれないと思いました。参加費無料です。
Posted by 本田 純 at 2017年01月26日 16:33
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