2008年01月03日

マイルス・デイヴィス『ジャック・ジョンソン』

A Tribute to Jack Johnson.jpg

あけましておめでとうございます。今年もゆる〜く更新していきますので、おつきあいくださいな。

イン・ア・サイレント・ウェイ』(記事はこちら)以降、マイルス・デイヴィスはコロンビアのスタジオに足繁く通いますが、そこで収録された音源を1つのアルバムにまとめあげるという忍耐力は、彼には残されていませんでした。
マイルスは創作活動をやめたわけではありません。むしろ彼の創造力はピークにありました。なにかアイディアが浮かぶと、すぐさまそれに見合ったメンバーをセレクトし、スタジオにいって試してみる。複数のキーボードを組み合わせたり、ベースを倍にしたり、ギターを倍にしてみたりするのは、頭のなかに鳴っている音楽を具現化するための試行錯誤であって、いったん実現されてしまえば、それはもう彼の関心をとらえることはありませんでした。やりたいことは山ほどあったので、過去をふり返る余裕なんてなかった。録るだけ録ったら「あとはよろしく!」というわけです。
「あと」をまかされたのが、プロデューサーのテオ・マセロです。彼のテープの切り貼り編集がなければ、この時期のマイルスのスタジオ録音は、そのほとんどが垂れ流しの習作の域を出ませんでした。
これ以降、マイルスのオフィシャル盤は録音日やメンバーが入り乱れ、ほとんどがオムニバス盤のような体裁となっていきますが、それは、そもそもマイルスに1枚単位で区切られたアルバムを制作する意図がなかったからです。録りためた音源を、あるコンセプトで切り取って、売れる形に仕上げたのが、コロンビアの社員でもあったテオ・マセロです。

死刑台のエレベーター』(記事はこちら)以来、実に10数年ぶりのサントラ盤『ジャック・ジョンソン』は、テオの編集技術なくしては、この世に出てくることさえなかったであろうアルバムです。
なにしろマイルスは、映画のサントラ盤の依頼は受けたけれども、そのために曲をつくったわけでもなければ、それ専用に録音したわけでもない。宝島社文庫の『自叙伝2』には、

その春、ジャック・ジョンソンというボクサーの生涯を描いた映画「ジャック・ジョンソン」のサウンドトラックになる演奏をレコーディングした。(中略)オレの頭の中には、ボクサーがよくやる、摺り足のあの動きがあった。それはダンスのステップのようで、汽車の音のようなものだ。時速八〇マイル(約一三〇キロ)で走っている汽車に乗って、車輪が線路に触れているスピードが一定だと、ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトンと、車輪が線路の継ぎ目を走っていく一定のリズムが想像できる。ジョー・ルイスやジャック・ジョンソンといった偉大なボクサーを思った時、そんなイメージが湧いてきたんだ。大きなヘビー級のボクサーが向かってくると、汽車が走ってくるように見えるだろ?

と、もっともらしく語られていますが、実際はギャラの2000ドルの半分をテオに渡して、「よろしく」と丸投げしただけだということが、中山康樹さんの『マイルスを聴け!〈Version 7〉』(双葉文庫)で暴露されています。
テオは映画とは無関係に録音されたありものの素材を使って、それらしい音楽に仕上げただけでした。「エエッ? そんなのありかよ」というアナタ。それがありなのがマイルスです。そして、そういうマイルスのイメージは、テオ・マセロの手腕によって作られた部分も大きかったということです。

説明が後づけであろうがそうでなかろうが、ここで聴かれる音楽は、マイルスの音以外の何ものでもありません。そこがいかにもマイルス(&テオ)らしいと思うのは、私だけではないはずです。

 

Miles Davis "A Tribute To Jack Johnson"
(Columbia KC 30455)

Miles Davis (trumpet)
Steve Grossman (soprano sax)
Bennie Maupin (bass clarinet) #2
Herbie Hancock (keyboard)
Chick Corea (electric piano) #2
John McLaughlin (guitar)
Sonny Sharrock (guitar) #2
Michael Henderson (electric bass)
Dave Holland (electric bass) #2
Billy Cobham (drums)
Jack DeJohnette (drums) #2

Produced by Teo Macero
Recorded at Columbia Studio B, NYC; February 18 (part of #2), April 7 (#1, 2), 1970

[Tracks]
01. Right Off Teo Macero, Miles Davis (music)
02. Yesternow Miles Davis (music)

[Links: Miles Davis]
Miles Davis (Official Website)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Steve Grossman]
Steve Grossman (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Bennie Maupin]
Bennie Maupin (Official Website)
Bennie Maupin Discography (by Christian Genzel)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Chick Corea]
Chick Corea (Official Website)
Chick Corea Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: John McLaughlin]
John McLaughlin (Official Website)
Pages of Fire: The John McLaughlin WWW Tribute Server (by David Marshall)
John McLaughlin Archives
John McLaughlin Discography (by Johann Haidenbauer)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Sonny Sharrock]
The Sonny Sharrock Visual Discography
Sonny Sharrock: Sweet Butterfingers (by Enit Farber)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Michael Henderson]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Dave Holland]
Dave Holland (Official Website)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Billy Cobham]
Billy Cobham (Official Website)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Jack DeJohnette]
Jack DeJohnette (Official Website)
Jack DeJohnette Homepage (by Piotr Marek, Jr.)
Jack Dejohnette Collection (by ANTAIOS)
Jack DeJohnette Complete Discography を目指すページ (@ 東北大学モダンジャズ研究会)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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posted by ユキヒロ at 20:19| Comment(0) | TrackBack(0) | Columbia (Epic) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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