

ローランド・カークの音楽には聴く者の心をわしづかみにして離さない強烈な地場があって、1曲聴くと次から次へと彼のアルバムを聴かずにはいられなくなります。何が飛び出すかわからない、何でもありのおもちゃ箱。
一度ラサーンの魅力にとり憑かれると、たいへんです。過激な言葉で聴衆を惑わすアジテーター、手がつけられない暴れん坊、その場にいる人を退屈させないエンタテナー、身体中に楽器をぶらさげた異様な見てくれ、超絶技巧をこれでもかと見せつけるテクニシャン、ブラック・ミュージックの歴史を体現した生き字引、全部いっしょくたにしたのがラサーンです。
ラサーニアンはそのすべてを受け止め、彼の肉声に共鳴し、そして不覚にも涙します(笑)。病みつきなんてナマやさしい表現ではたりません。それなしでは生きていられなくなるのが、ラサーンの音楽です。
『カーク・イン・コペンハーゲン
しかも、共演のピアノはスペインの至宝テテ・モントリューという、うれしいおまけつき。ふたりとも目が見えませんが、そんなことは微塵も感じさせない芸達者ぶりを見せつけます。
1963年の秋から冬にかけて、ラサーンはヨーロッパ各地をツアーでめぐります。ロンドンのロニー・スコッツでの1か月ロングラン公演にはじまり、デンマーク、スウェーデン、フランス、イタリア、ドイツ、オランダ、ベルギーへと続く旅。行く先々でラサーンは熱狂的に受け入れられ、クラブの入場記録を塗り替えるなど、連日大入り満員の大盛況だったといいます。
そのウワサを聞きつけたクインシー・ジョーンズ(当時マーキュリー・レコードのプロデューサーをしていました)が、急遽ライブ・レコーディングを企画し、実現したのがこのアルバムです。
1曲目〈ナロウ・ボレロ〉は、ラサーンがラヴェルの〈ボレロ〉にインスパイアされて書いた曲。ラサーンの3管同時吹奏の妙技が楽しめます。
2曲目〈ミンガス=グリフ・ソング〉はもちろん、かつてのボス、チャールズ・ミンガスと「グリフ」ことジョニー・グリフィンに捧げられた曲です。途中、ラサーンの十八番、息継ぎなしのロングソロが炸裂します。循環奏法といって、口から息を吐くと同時に鼻から吸う(本人は「耳から」吸っていると言い張っていました)のですが、どうやるのかは門外漢の私には想像もつきません。
続く〈ザ・モンキー・シング〉では雰囲気がぐっと変わって、こってりモードの濃厚なブルースが楽しめます。しゃべりながらフルートを吹く(息が漏れるのではなく、実際に言葉を発している)のもラサーンのトレードマークのひとつです。シカゴ・ブルースの重鎮サニー・ボーイ(ハーモニカ)が飛び入りで参加しています。
6曲目〈キングとスコット通りの角にて〉とあるのは、ロンドンで出会ったばかりのロニー・スコットとピート・キングのことです。
もともとは1枚のLPですが、日本ではかつて、LP未収録曲をあわせてライブの演奏順におさめた完全版CDが2枚に分けて発売されました(2枚組じゃなくて2枚別売り!)。今では入手が困難かもしれませんが、いちおうリンクを貼っておきます。
Roland Kirk "Kirk In Copenhagen"
(Mercury MG 20894 / SR 60894)
Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, flute, siren)
Tete Montoliu (piano)
Niels Henning Orsted Pedersen or Don Moore (bass)
J.C. Moses (drums)
Sonny Boy Williamson II [as Big Skol] (harmonica) #3
Produced by Quincy Jones
Recorded by Birger Svan Mertonome
Recorded live at the Club Monmartre, Copenhagen; October, 1963
[Tracks]

01. Narrow Bolero Roland Kirk (music)

02. Mingus - Grif Song Roland Kirk (music)

03. The Monkey Thing Roland Kirk (music)

04. Mood Indigo Duke Ellington, Barney Bigard, Irving Mills (music and lyrics)

05. Cabin In The Sky Vernon Duke (music) / John Latouche (lyrics)

06. On The Corner Of KIng And Scott Streets Roland Kirk (music)

[Links: Roland Kirk]
Periodicals > 林建紀 (『ローランド・カーク伝』訳者のラサーン研究@read NKYM!)
Nagata's Jazz Page (by 永田昌俊)
the Rahsaan Roland Kirk website
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Tete Montoliu]
Tete Montoliu (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
Tete Montoliu Discography (by Agustin Perez)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Niels Henning Orsted Pedersen]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Don Moore]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: J.C. Moses]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Sonny Boy Williamson]
Sonny Boy's Lonesome Cabin
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
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