2006年11月26日

ビル・エヴァンス&ジム・ホール『アンダーカレント』

evans_undercurrent.jpg

1961年6月25日の日曜日、エヴァンス・トリオは2週間にわたるヴィレッジ・ヴァンガード公演のしめくくりに、はじめてのライヴ・レコーディングにのぞみます。当初、このライヴは1枚のアルバムにまとめられる予定でしたが、ラファロの不慮の死(7月6日、ニューヨーク近郊のジニーヴァで自動車事故死)によって、急遽、ラファロの追悼盤の色彩が強い『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』が同年9月にリリースされ、時をおいて、翌62年の春に『ワルツ・フォー・デビー』が発売されました。

エヴァンス・トリオはこのライヴ・パフォーマンスで、彼らは理想の形を実現させました。3人がたがいに触発されながら自由にふるまい、それでいて、ひとつの美しい作品に結実させていく。このあたりの事情は、現場証人に語ってもらうのがいちばんです。当時ヴァンガードに入り浸っていた高校生のジャズファン、ピーター・ティトルマンのエヴァンス・トリオの見聞記(以下、引用はピーター・ペッティンガー著、相川京子訳『ビル・エヴァンス―ジャズ・ピアニストの肖像』より)。

ラファロ、モチアン、そしてエヴァンスはそれぞれ独自のスタイルを持っていたが、なぜか同じタイミングで演奏していた。彼らは全員が集中して常に自分自身のなかへ深く入り込んでいるようだったが、他のふたりの演奏に耳を傾けながら相互に反応し、まるで超生命体の様だったーーたぶん、そうだったのだろう。つまり、感情に操られた関係のように、存在、もしくは相互に作用し合っていた。

そして、ラファロについてのエヴァンスのコメント。

スコットは私の次の考えが読める、信じられないような奴だった。いつも「どうして彼は私がこっちへ行くとわかるんだ?」と不思議だった。たぶん彼も同じように思っていたに違いない。

あれ(この日のライヴ)がスコットに会った最後で、一緒に演奏した最後でもあった。ある特定の傑出したミュージシャンの演奏に依存する部分が多いコンセプトを発展させてしまったら、その人物がいなくなってしまった時はどうやってふたたび演奏し始めればいいのだろう?

自分の分身を失ってしまった失意のエヴァンスは、しばらくピアノに向かうことすらできませんでした。もともとあったドラッグ癖が悪化したのもこの頃だと思われます。エヴァンスの死後に陽の目を見たマイルストーン盤『コンセプション』には、ドラッグでボロボロになった(?)エヴァンスの破綻した演奏が残されています(有名な〈ダニー・ボーイ〉など、1962年4月4日収録の4曲は、日本編集盤『ビル・エヴァンス・ソロ:イージー・トゥ・ラヴ』や、輸入盤『タイム・リメンバード』で聴くことができます)。

エヴァンスの低迷は、しかし、そう長くは続きませんでした。ギタリスト、ジム・ホールとの共演盤『アンダーカレント』は、エヴァンス完全復活を高らかに告げる傑作です。

セッションは2回にわたって行われました。62年4月24日の第1回目のレコーディングでは、エヴァンスがまだ本調子でなかったようで、結局〈アイ・ヒア・ア・ラプソディー〉1曲のみが本採用となりました。

2回目は3週間後のの5月14日。ここで、エヴァンスとホールは、有名な〈マイ・ファニー・ヴァレンタイン〉を急速調で料理します。ふたりの息をつかせぬインタープレイ。名手ジム・ホールを相手に、過激なまでに原曲のイメージを解体していくスリリングな展開に、思わず拍手! 長いトンネルを抜け出したエヴァンスの高揚感が伝わってくるようです。

哀しみがこぼれおちる3曲目〈ドリーム・ジプシー〉。切々と胸に迫るジム・ホールのギターの響き。エヴァンスも負けていません。感情をひとつひとつていねいに込めるように、シンプルに歌い上げていきます。

そして、ジム・ホールのオリジナル〈ロメイン〉、ジョン・ルイスの〈スケーティング・イン・セントラル・パーク〉と続くこの流れ。まったくため息が出そうです。

 

Bill Evans, Jim Hall "Undercurrent"
(United Artists UAJ-14003/UAJS-15003)

Bill Evans (piano)
Jim Hall (guitar)

Produced by Alan Douglas
Recorded by Bill Schwartan
Recorded at Sound Makers, NYC; April 24 (#2), May 14 (#1, 3, 4-6), 1962

[Tracks]
01. My Funny Valentine Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)
02. I Hear A Rhapsody George Fragos, Jack Baker, Dick Gasparre (music and lyrics)
03. Dream Gypsy Judith Veevers (music)
04. Romain Jim Hall (music)
05. Skating In Central Park John Lewis (music)
06. Darn That Dream Jimmy Van Heusen (music) / Eddie DeLange (lyrics)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jim Hall]
Jim Hall: The Official Website
Jim Hall Maniacs (by 益満妙:エキマンタエ)
ジム・ホール:アルバム蒐集 (by kawagu)

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posted by ユキヒロ at 14:04| Comment(0) | TrackBack(0) | United Artists (Solid State) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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