2007年06月29日

エリック・ドルフィー『ラスト・デイト』

lastdate.jpg Eric Dolphy - Last Date

今から43年前の今日、エリック・ドルフィーが旅先のベルリンで亡くなりました。本名、Eric Allan Dolphy。1928年6月20日、カリフォルニア州ロサンジェルス生まれ。1964年6月29日、当時西ドイツのベルリンで客死。享年36歳。

チャールズ・ミンガス率いるジャズ・ワークショップが欧州ツアーに出発したのが1964年4月。18日間にわたる強行軍(こちらの記事を参照)を終え、ミンガス一行は帰国、ドルフィーはひとりパリに残ります。5月は主に、サンジャルマン・デ・プレの Chat Qui Peche(シャキペシュ。魚を釣る猫という意味で、セーヌ川沿いのパリでいちばん狭い通りの名前に由来)というクラブで演奏していたようです(ドルフィー研究家としても知られるマシュマロ・レコードの上不三雄さんが思い出のジャズクラブ/ジャズ喫茶その1:Jazz Club “Le Chat Qui Peche”という記事を書いています)。

5月29日にオランダに移動。6月2日にヒルベルサムでラジオ番組用にスタジオ・ライヴを録音、この音源が有名な『ラスト・デイト』となって日の目を見ます。その後いったんパリに戻り、6月11日に地元のラジオ局 ORTF で最後のレコーディングを敢行(『Last Recordings』というタイトルで CD 化されています)。6月27日、ベルリンに飛び、タンジェントというクラブで2ステージこなすも、衰弱のため降板。翌28日にはさらに容態が悪化して入院(ベルリン、アッヘンバッハ病院)、治療の甲斐なく29日にこの世を去りました。死因は糖尿病による心臓発作だといわれています。

『ラスト・デイト』のあまりの孤高ぶり、しかもアルバムの最後に本人の謎めいたセリフが挿入されるという遺言効果もあって、あたかもドルフィーの死は必然だったかのような錯覚に陥りますが、実際はまったく予期せぬ急死だったようで、ドルフィーは死の1週間前に新しいアルト・サックスを購入していて(パリのセルマー社にシリアル番号が残っているとは上不さんの言です。「ジャズ批評115 エリック・ドルフィー」に収録)、ベルリンの後はコペンハーゲンのカフェ・モンマルトルに出演する予定も入っていたそうです。

有名な「When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again.(音楽を聴き、終った後、それは空中に消えてしまい、二度と捕まえることはできない)」というセリフにしても、その場で録音されたものではなく、4月に行われたインタビューからの抜粋で、ドルフィーの死とはもともと無関係の発言でした(それでも、そこに何らかの意味を見出してしまうのがファン心理ってものですが)。

ドルフィーはアルト、フルート、バスクラの3つの楽器でそれぞれ独自の世界を描き出しましたが、この『ラスト・デイト』には3つの楽器による演奏が2曲ずつ収められています。バスクラの破壊力に脳天をぶち割られる〈エピストロフィー〉、どういうコンテキストの中で音を紡いでいくのか、依って立つ根拠が見えないがゆえに、得体の知れない不安感に襲われる〈ザ・マドリグ・スピークス、ザ・パンサー・ウォークス〉(別名〈マンドレイク〉)。どれもすばらしい演奏ですが、極めつきはやはり、フルートで奏でられる〈ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ〉。こわもてのアヴァンギャルドだけがドルフィーではありません。ハッとするようなやさしさ。その昔、自宅の庭で小鳥たちとの会話を楽しむようにフルートを練習したというドルフィーならではの、小鳥のさえずりです。

ジャケットが2種類あるのは、オランダ・フィリップス系のフォンタナの原盤(右の輸入盤)と米マーキュリー系ライムライト盤(左の邦盤)があるからです。

 

Eric Dolphy "Last Date"
(Fontana 681 008 ZL)
(Limelight LM 82013 / LS 86013)

Eric Dolphy (alto sax) #3, 6 (flute) #2, 5 (bass clarinet) #1, 4
Misja Mengelberg (piano)
Jacques Schols (bass)
Han Bennink (drums)

Recorded at VARA studio, Hilversum, Amsterdam, Holland; June 2, 1964

[Tracks] Eric Dolphy - Last Date
01. Epistrophy Thelonious Monk (music)
02. South Street Exit Eric Dolphy (music)
03. The Madrig Speaks, The Panther Walks (aka. Mandrake) Eric Dolphy (music)
04. Hypochristmutreefuzz Misha Mengelberg (music)
05. You Don't Know What Love Is Gene DePaul, Don Raye (music and lyrics)
06. Miss Ann Eric Dolphy (music)

[Links: Eric Dolphy]
Eric Dolphy (by Alan Saul)
Site Dolphy (by TAKAGI Masaru)
Making Eric Dolphy's Complete Discography (by Naohiko Hino)
Eric Dolphy Discography (by ANTAIOS)
Eric Dolphy Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Misja Mengelberg]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Jacques Schols]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Han Bennink]
Han Bennink (Official Website)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic

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2007年06月26日

レム・ウィンチェスター&ラムゼイ・ルイス・トリオ『クリフォード・ブラウンに捧ぐ』

performatributetocliffordbrown.jpg The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown

クリフォード・ブラウンを偲んで、ヴァイブ奏者レム・ウィンチェスターのアーゴ盤『クリフォード・ブラウンに捧ぐ』を。ブラウニーとは高校時代のバンド仲間だったという彼は、遅咲きのデビュー・アルバムを亡き友に捧げました。

レム・ウィンチェスター。1928年3月19日、ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれ。1949年からデラウェア州ウィルミントン(ブラウニーの生まれ故郷)で警官をしながら地元のクラブに出没。1958年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルでの演奏がきっかけでフル・タイムのミュージシャンに転向、本格的なレコーディング活動を開始します(30歳のとき)。しかし、そのわずか2年半後の1961年1月13日、ツアーで訪れていたインディアナ州インディアナポリスのジャズ・クラブで、遊びのつもりのロシアン・ルーレットでみずからの脳天を吹っ飛ばし、この世を去りました。享年32歳。

ブラウニーとレム・ウィンチェスター(奇しくも有名なライフルメーカーと同じ名字です)を結びつけたのは、地元ウィルミントンのハワード・ハイスクール。本格的な活動期間が極端に短いこと(どちらも3年くらい)、伸び盛りの時期に不慮の事故でこの世を去ったことなど、2人には共通点がいくつかあります。

さて、このアルバム。売り出し中のラムゼイ・ルイス・トリオ(不動のメンバー、ベースのエルディー・ヤングにドラムスのレッド・ホルト、そしてピアノのラムゼイ・ルイスはやがて『ジ・イン・クラウド』というビッグヒットを飛ばします)にレムが客演した形になっていて、ヴァイブ入りカルテットという構成がモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)を思わせます。そういえば、ラムゼイのピアノもまだコテコテ感は希薄で、典型的なハードバップの演奏といえそうです。レムはもともと MJQ のミルト・ジャクソンをスタイリッシュにしたようなヴァイブを聴かせますが、ラムゼイと共演したのがこの時期でよかった(笑)。後年人気を博すアーシーでコクのあるソウルピアノとは、相性がよくないはずです。

ブラウニーゆかりの曲を取り上げていますが、〈ジョイ・スプリング〉や〈ジョードゥ〉はブラウニーの光り輝くトランペットの音色と完全にリンクしているので、ほかの人の演奏を聴いても、どこか物足りない。しかも、地味めなヴァイブやピアノですからね。これはいたしかたない。でも、律儀なレムは、アルバムの最後に、ウィルミントン時代のブラウニーの恩師ロバート・”ボイジー”・ロワリーの〈メッセージ・フロム・ボイジー〉を収録しています。ボイジーはガレスピーとも親交のあるトランペット奏者兼バンドリーダーで、ジャズの個人レッスンもやっていました。若き日のブラウニーは彼のもとで即興の何たるかを学んだといいます。もしかしたら、レムもボイジーの薫陶を受けていたのかもしれませんね。



"Lem Winchester & Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown"
(Argo LP 642)

Lem Winchester (vibraphone)
Ramsey Lewis (piano)
Eldee Young (bass)
Red Holt (drums)

Produced by Dave Usher
Recorded by Malcolm Chisholm
Recorded in Chicago; October 8, 1958

[Tracks] The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown
01. Joy Spring Clifford Brown (music) The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown - Joy Spring
02. Where It Is Lem Winchester (music) The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown - Where It Is
03. Sandu Clifford Brown (music) The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown - Sandu
04. Once In A While Michael Edwards (music) / Bud Green (lyrics) The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown - Once In A While
05. Jordu Duke Jordan (music) The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown - Jordu
06. It Could Happen To You Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics) The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown - It Could Happen To You
07. Easy To Love Cole Porter (music and lyrics) The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown - Easy To Love
08. Message From Boysie Robert Lowery (music) The Ramsey Lewis Trio - Lem Winchester & The Ramsey Lewis Trio Perform A Tribute To Clifford Brown - A Message From Boysie

[Links: Lem Winchester]
Lem Winchester Discography (by Michael Fitzgerald)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Ramsey Lewis]
Ramsey Lewis (Official Website)
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Eldee Young]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic
[Links: Red Holt]
>> ウィキペディア / Wikipedia / allmusic

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クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ『ブラウン&ローチ・インコーポレイテッド』

brownandroachinc.jpg 

2007年6月26日は、クリフォード・ブラウンとリッチー・パウエルの51回目の命日です。1956年のこの日、2人を乗せた車はペンシルヴァニア・ターンパイクで雨天走行中、スリップ事故を起こして土手に激突、25歳と24歳の若き命が失われました。2人とも将来を嘱望されたミュージシャンでした。

1954年8月収録の『ブラウン&ローチ・インコーポレイテッド』は、ブラウン=ローチ・クインテットのエマーシー・レーベル第1弾としてリリースされました。知名度では同日録音を含む『クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ』や人気盤『スタディ・イン・ブラウン』に及びませんが、なかなかどうして「ブラウン&ローチ株式会社」も捨てたもんじゃありません。わずか2年後、不幸な事故で空中分解を余儀なくされたグループですが、子の時点では、幸先のよいスタートを切ったといえるでしょう。

1曲目〈スウィート・クリフォード〉は〈スウィート・ジョージア・ブラウン〉のコード進行に基づいたクリフォードのオリジナル。アップテンポなリズムに乗って、軽快に歌うクリフォードがすばらしい。途中マックスの切れ味鋭いドラム・ソロが入っておおいに盛り上がります。

2曲目はハロルド・ランドの抜けたカルテット、4曲目はトリオ、6曲目はクリフォードの抜けたカルテットによる演奏です。なかでも、ワンホーン・カルテットでクリフォードのペットを堪能できる〈ゴースト・オブ・ア・チャンス・ウィズ・ユー〉のすばらしさといったら! ダブル・タイムになるソロ・パートもいいけれど、ゆったりと奏でられるテーマ演奏の美しさはたとえようもありません。とくに演奏のしめくくりにクリフォードが歌い上げる高音のむせび泣きに思わず涙。感動です。

忘れちゃいけない、リッチー・パウエルのピアノを聴くなら、トリオによる〈アイル・ストリング・アロング・ウィズ・ユー〉を。狂気の天才バド・パウエルの弟という肩書きだけで片づけられてしまう人ですが、聴くものを置き去りにして疾走するバドとは、まったく違うタイプのピアニストです。よくいえば安定、悪くいえば平凡。スリリングな展開はほとんどありませんが、独りでひそかに味わいたい名曲〈タイム〉を残してくれました(『アット・ベイズン・ストリート』に収録)。

最後に収録された〈アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー〉の、4分の3拍子と4分の4拍子をいったりきたりするアレンジは、サド・ジョーンズのものだとか。ワルツタイムによる転調は、ブラウン=ローチ・クインテットの十八番となった手法です。

 

Clifford Brown, Max Roach "Brown And Roach Incorporated"
(EmArcy MG 36008)

Clifford Brown (trumpet) omit #4, 6
Harold Land (tenor sax) omit #2, 4
Richie Powell (piano)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Produced by Bob Shad
Recorded at Capitol Studios, LA; August 2 (#6), 3 (#1, 2), 5 (#3, 4, 7), 6 (#5), 1954

[Tracks] 
01. Sweet Clifford Clifford Brown (music)
02. (I Don't Stand) A Ghost Of A Chance With You Victor Young (music) / Bing Crosby, Ned Washington (lyrics)
03. Stompin' At The Savoy Edgar Sampson, Chick Webb, Benny Goodman (music) / Andy Razaf (lyrics)
04. I'll String Along With You Harry Warren (music) / Al Dubin (lyrics)
05. Mildama Max Roach (music)
06. Darn That Dream Jimmy Van Heusen (music) / Eddie DeLange (lyrics)
07. I Get A Kick Out Of You Cole Porter (music and lyrics)

[Links: Clifford Brown]
Blownie! (by Greg Morey)
Clifford Brown Discopgraphy (by ANTAIOS)
Clifford Brown Discography Project (@ Jazz Discography Project)
I Remember Clifford: The Clifford Brown Discography
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Harold Land]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Richie Powell]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: George Morrow]
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic

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2007年06月22日

ハービー・ハンコック『ザ・ニュー・スタンダード』

thenewstandard.jpg Herbie Hancock - The New Standard

Mac ユーザーのみなさん、半角チルダ[〜]の文字化けで悩んでませんか?(たぶん、この[〜]も表示されるときは全角になっているんじゃないかな)昨日、その解決法がわかりました。チルダのところに「%7E」と入れておけば、リンク切れにならずに済みます(これって、もしかして常識なのかな?)。下の「Jack DeJohnette Home Page」をクリックしてみてください。たぶん表示されるはずです(Windows ユーザーのみなさん、不具合があるようでしたら教えてください)。

私の Mac(OS X 10.4.10, Safari の環境)では、Wikipedia 日本語版のように、URL のなかに日本語が混じっている場合もリンク切れを起こしていましたが、この解決法もわかりました。WEBプログラミング NOW! さんのこちらの記事をごらんください。いやあ、すばらしい。感謝感謝です。

さて、ハービー・ハンコック特集の続きです。1996年リリースの『ザ・ニュー・スタンダード』は、90年代オールスターズとでもいうべき面々を集めた豪華な作品で、ストレートアヘッドなジャズ作品としても、近年まれに見る出来となっています。

ここにはロンもトニーもウェインもいません。V.S.O.P. はアコースティック・ジャズの復権に多大な影響を与えたビッグ・プロジェクトでしたが、演っている音楽は60年代の焼き直しにすぎなかった。過去の再発見にはつながっても、未来を感じさせてくれる要素はなかった。ジャズを進化と同義語ととらえてきた昔からのファンには、そこが物足りなくもあったわけですが、あれから20年が経ち、アコースティック・ジャズがふたたび全盛期を迎えるなかで、ハービーは今一度、新しいメンバーと新たな地平を目指しはじめた。それが『ザ・ニュー・スタンダード』の「ニュー」に込められた意味なんじゃないかと思います。

もちろん、この「ニュー」は「スタンダード」にもかかっていて、自分たちの時代にふさわしい「新しいスタンダード」を提示するというのが最大の眼目なのですが、このアルバムから感じられる同時代感(しっくり感といってもいい)は、取り上げられた楽曲によるものだけではないようです。誰もが知っている有名な曲であっても、テーマ・メロディーに頼った演奏がほとんどないことが、その証拠です。曲はあくまで素材であって、どこまでも熱いアドリブを聴くことが、この作品の最大の楽しみです。

ハンコック弾きまくり、マイケル吹きまくり、ジャック煽りまくり。ジョンスコもデイヴ・ホランドもドン・アライアンスも、水を得た魚のように暴れまくります。これで熱くならなきゃウソでしょ。実際、めちゃめちゃカッコいいっす。おすすめ。

 

Herbie Hancock "The New Standard"
(Verve 529584)

Michael Brecker (soprano and tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
John Scofield (guitar)
Dave Holland (bass)
Jack DeJohnette (drums)
Don Alias (percussion)

#2, 3, 6 (Woodwinds & Brass)
Lester Lovitt, Oscar Brashear (trumpet, flugelhorn)
Maurice Spears (bass trombone)
Sam Riney, William E. Green (flute, alto flute)
Gary Herbig (bass clarinet, flute)
Gene Cipriano (oboe, English horn)
Suzette Moriarty (French horn)

#2, 3, 4, 8 (Strings)
Lili R. Haydn, Margaret R. Wootn, Richard S. Greene (violin)
Cameron L. Stone (cello)

Produced by Herbie Hancock and Guy Eckstine
Arranged by Bob Belden, Herbie Hancock
Recorded by John Pace
Recorded at Manhattan Center Studios, NYC
Strings, horns, and woodwinds recorded by Joel Moss
Strings, horns, and woodwinds recorded at Signet Sound, West Hollywood, CA

[Tracks] Herbie Hancock - The New Standard
01. New York Minute Don Henley, Danny Kortchmar, Jai Winding (music)
02. Mercy Street Peter Gabriel (music and lyrics)
03. Norwegian Wood (This Bird Has Flown) John Lennon, Paul McCartney (music and lyrics)
04. When Can I See You Kenny "Babyface" Edmonds (music and lyrics)
05. You've Got It Bad Girl Stevie Wonder, Yvonne Wright (music and lyrics)
06. Love Is Stronger Than Pride Sade Adu, Andrew Halem, Stuart Matthewman (music and lyrics)
07. Scarborough Fair Paul Simon, Art Garfunkel (music and lyrics)
08. Thieves In The Temple Prince (music and lyrics)
09. All Apologies Kurt Cobain (music and lyrics)
10. Manhattan (Island Of Lights And Love) Herbie Hancock, Jean Hancock (music)

[Links: Michael Brecker]
Michael Brecker (Official Website)
Michael Brecker Fan Site (by Inaba Takeshi)
Michael Brecker Live Recordings (by Louis Gerrits)
iBrecker.com
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: John Scofield]
John Scofield (Official Website)
The John Scofield Homepage (by Samo Salamon)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Dave Holland]
Dave Holland (Official Website)
Dave Holland (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Jack DeJohnette]
Jack DeJohnette (Official Website)
Jack DeJohnette Home Page (by Piotr Marek, Jr.)
Jack DeJohnette Discography (by ANTAIOS)
Jack DeJohnette Complete Discography を目指すページ (by 東北大学モダンジャズ研究会)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic
[Links: Don Alias]
Don Alias (Official Website)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic

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2007年06月21日

ジューン・クリスティ『サムシング・クール』

somethingcool.jpg June Christy - Something Cool

今から17年前の今日、6月の歌姫ジューン・クリスティがこの世を去りました。本名、Shirley Luster。1925年11月20日、イリノイ州スプリングフィールド生まれ。1990年6月21日、カリフォルニア州ロサンジェルスのシャーマン・オークスで死去。享年64歳。

アニタ・オディ(1944〜45年)、ジューン・クリスティ(1945〜49年、50年一時復帰)、クリス・コナー(52〜53年)と続く歴代ケントン・ガールズのうち、バンド・リーダー、スタン・ケントンともっとも長い時間をともにしたのがジューンでした(ジューン・クリスティという芸名をつけたのもスタン・ケントンです)。この2人、相当いい仲だったようで、もうすぐ結婚するんじゃないかという憶測も乱れ飛んだと伝わっていますが、46年、ジューンは突如ケントン楽団の同僚テナー奏者ボブ・クーパーと結婚して、ことなきを得ます(しかし、その後、ジューンはスタン・ケントンと2人きりで『デュエット』というアルバムを出しています。出会ってから10周年を記念した1955年の録音という手の込みよう。夫ボブの心境やいかに)。

ジューン・クリスティの代表作『サムシング・クール』は彼女のファースト・ソロ作品で、以後、彼女は18枚ものアルバムをキャピトルに残します。ピート・ルゴロの洒落たアレンジ(文句なしにすばらしいです。ひととおりジューンの歌声を楽しんだら、ぜひバック・バンドを中心に聴いてみてください。新たな発見がいっぱいあるはずです)で知られるこのアルバムの聴きものは、やはり表題曲〈サムシング・クール〉。抑制されたクールな歌声に、ほのかにただよう清廉な香り。もうメロメロです(笑)。

メンバーを見ると、ショーティ・ロジャース、フランク・ロソリーノ、バド・シャンク、ラス・フリーマン、バーニー・ケッセル、シェリー・マンなどなど、西海岸の名手がゴロゴロ入っています(もちろん夫ボブ・クーパーも)。それもそのはず、ジューン・クリスティとアレンジャーのピート・ルゴロが在籍したスタン・ケントン楽団は、ウディ・ハーマン楽団と並び称される2大モダンジャズ・ビッグバンドで、戦中から戦後にかけて、クール〜ウェストコースト派のインキュベーター(卵をかえす「孵卵器」)としての役割を果たしたことで知られています。

さて、この『サムシング・クール』。実は、53年から55年の6つのセッションをまとめたモノラル盤(Capitol H/T 516)と、まったく同じ楽曲を60年4月26〜28日の3日間で取り直したステレオ盤(Capitol ST/SM 516)の2種類があって、モノラル盤はジューンが目を閉じている2色刷りのジャケット、ステレオ盤は目を開けているカラー(4色刷り)のジャケットとなっています(CD化に際して、両者が混同されたものも出回っているようです)。

and i am dumb のクマキチさんも書いていますが、Wikipedia(日本語版)の記事がとてもよくまとまっていて、参考になります。英語版よりくわしいのがうれしいですね。

 

June Christy "Something Cool"
(Capitol H/T 516)

June Christy (vocal)
Pete Rugolo (arranger, conductor)

#1 (Recorded in Hollywood, CA; August 14, 1953)
Maynard Ferguson, Conrad Gozzo, Shorty Rogers, Jimmy Zito (trumpet)
Milt Bernhart, Herb Harper, Tommy Pederson (trombone)
George Roberts (bass trombone)
Gus Bivona, Bud Shank (alto sax)
Bob Cooper, Ted Nash (tenor sax)
Chuck Gentry (baritone sax)
Jeff Clarkson (piano)
Barney Kessel (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Frank Carlson (drums)

#6 (Recorded in Hollywood, CA; December 27, 1953)
Conrad Gozzo, Frank Beach, Ray Linn, Ray Triscari, Uan Rasey, Ray Anthony (trumpet)
Nick DiMaio, Dick Noel, Tommy Pedersen, Dick Reynolds (trombone)
Skeets Herfurt, Wilbur Schwartz (alto sax)
Fred Fallensby, Ted Nash (tenor sax)
Chuck Gentry (baritone sax)
Paul Smith (piano)
Tony Rizzi (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Alvin Stoller (drums)

#2, 3, 9 (Recorded in Hollywood, CA; January 18, 1954)
Maynard Ferguson, Conrad Gozzo, Shorty Rogers (trumpet)
Milt Bernhart, Harry Betts, Tommy Pederson (trombone)
John Graas (French horn)
Paul Sarmento (tuba)
Harry Klee, Bud Shank (alto sax)
Bob Cooper, Ted Nash (tenor sax)
John Rotella (baritone sax)
Russ Freeman (piano)
Howard Roberts (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Shelly Manne (drums)

#7, 8 (Recorded in Hollywood, CA; January 19, 1954)
Chuck Gentry (baritone sax) replaces Rotella

#10 (Recorded in LA; December 29, 1954)
Conte Candoli, Conrad Gozzo, Shorty Rogers (trumpet)
Milt Bernhart, Bob Fitzpatrick, Herb Harper (trombone)
Bud Shank (alto sax)
Jimmy Giuffre, Bob Cooper (tenor sax, flute, oboe)
Bob Gordon (baritone sax)
Claude Williamson (piano)
Howard Roberts (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Shelly Manne (drums)

#4, 5, 11 (Recorded in Hollywood, CA; May 10, 1955)
Conrad Gozzo, Maynard Ferguson, Shorty Rogers (trumpet)
Milt Bernhart, Harry Betts, Frank Rosolino (trombone)
George Roberts (bass trombone)
Harry Klee, Bud Shank (alto sax)
Jimmy Giuffre (tenor sax)
Bob Gordon (baritone sax)
Claude Williamson (piano)
Howard Roberts (guitar)
Harry Babasin (bass)
Shelly Manne (drums)

[Tracks] June Christy - Something Cool
01. Something Cool William Billy Barnes (music and lyrics)
02. It Could Happen To You Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
03. Lonely House Kurt Weill (music) / Langston Hughes (lyrics)
04. This Time The Dream's On Me Harold Arlen (music) / Johnny Mercer (lyrics)
05. The Night We Called It A Day Matt Dennis (music) / Tom Adair (lyrics)
06. Midnight Sun Lionel Hampton, Sonny Burke (music) / Johnny Mercer (lyrics)
07. I'll Take Romance Ben Oakland (music) / Oscar Hammerstein II (lyrics)
08. A Stranger Called The Blues Mel Torme, Robert Wells (music and lyrics)
09. I Should Care Axel Stordahl, Paul Weston (music) / Sammy Cahn (lyrics)
10. Softly, As In A Morning Sunrise Sigmund Romberg (music) / Oscar Hammerstein II (lyrics)
11. I'm Thrilled Sidney Lippman (music) / Sylvia Dee (lyrics)

[Links: June Christy]
THE MISTY MISS CHRISTY (by Jim Smith)
>> Wikipedia 日本語 / Wikipedia English / allmusic

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2007年06月19日

『ラウンド・ミッドナイト』

roundmidnight_movie.jpg

1983年の〈ロックイット〉の爆発的ヒット以来、グラミー賞の常連となったハービー・ハンコックですが、1986年には、アメリカ・エンタテインメント業界のもうひとつの栄冠を手にします。音楽監督をつとめ、みずからもキャストとして出演した映画『ラウンド・ミッドナイト』(原題 'Round Midnight。サントラ盤はこちら)でオスカーを獲得したのです(Best Music, Original Score)。流行りものをかぎとる独特の嗅覚から、つねに陽の当たる場所を歩み続けるハービーの「らしさ」は、こんなところからも感じられます。

考えてみれば、ハービーと映画音楽の関係は深いわけです。早くも1966年にミケランジェロ・アントニオーニ監督の『欲望』(原題 Blow-Up。サントラ盤はこちら)の音楽を担当し、73年には『ブラック・ミッション/反逆のエージェント』(原題 The Spook Who Sat by the Door。日本劇場未公開。ヴィデオあり)、74年にはチャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』(原題 Death Wish。サントラ盤はこちら)と続きます。83年『ジョ・ジョ・ダンサー』(原題 Jo Jo Dancer, Your Life Is Calling。劇場未公開。ヴィデオあり)、84年『ソルジャー・ストーリー』(原題 A Soldier's Story)ときて、86年に『ラウンド〜』でオスカー受賞。88年はB級アクション映画『アクション・ジャクソン/大都会最前線』(原題 Action Jackson。ヴィデオあり)、デニス・ホッパー監督の『カラーズ/天使の消えた街』(原題 Colors。サントラ盤はこちら)の2本立て、89年はエディー・マーフィー監督主演の『ハーレム・ナイト』(原題 Harlem Night)、91年の『Livin' Large!』(劇場未公開? ヴィデオあり。サントラ盤はこちら)と続きます。

というわけで、映画『ラウンド・ミッドナイト』です。デクスター・ゴードン扮する飄々とした主人公デイル・ターナーの印象が強烈ですが(デックスはアカデミー賞主演男優部門にノミネートされた)、チョイ役で登場するミュージシャンの顔ぶれもすごいです。セリフのあったハービーやボビー・ハッチャーソンは言うに及ばず、フレディ、ウェイン、ロン、トニーの V.S.O.P. の面々に、ジョン・マクラフリン、シダー・ウォルトン、マッズ・ヴィンディング、ビリー・ヒギンズといった人たちが、演奏シーンを盛り上げます。こりゃ聴かずにはいられまい! 

上のリストを見る限り、ハービーのかかわる映画は必ずしも良作ばかりではなさそうですが、これは例外。50年代のパリを舞台に、故郷アメリカを遠く離れ、酒とドラッグで落ちぶれた大物サックス奏者を、貧乏デザイナーが献身的に支える感動的な物語。2人の絆は徐々に深まっていきますが、死を前にしてデイルがとった行動とは、、、必見です。



"'Round Midnight" (1986)

Produced by Irwin Winkler
Directed by Bertrand Tavernier
Screenplay by David Rayfiel, Bertrand Tavernier
Music by Herbie Hancock

Cast:
Dexter Gordon (as Dale Turner)
Francois Cluzet (as Francis Borler)
Herbie Hancock (as Eddie Wayne)
Bobby Hutcherson (as Ace)

Freddie Hubbard (trumpet)
Palle Mikkelborg (trumpet)
Wayne Shorter (tenor and soprano sax)
Cedar Walton (piano)
John McLaughlin (guitar)
Pierre Michelot (bass)
Ron Carter (bass)
Mads Vinding (bass)
Tony Williams (drums)
Billy Higgins (drum)

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ハービー・ハンコック『フューチャー・ショック』

futureshock.jpg

V.S.O.P. の成功以来、作品によってアコースティックとエレクトリックを完全に使い分けてきたハービーが、満を持して発表した電化路線の傑作。それが1983年リリースの『フューチャー・ショック』です。ビル・ラズウェルとのコラボレーションによって、ミュージック/ダンス・シーンに旋風を巻き起こしました。

このアルバムの衝撃は、当時、チューボーだった私もよく覚えています。なにしろ、ヒップホップとかスクラッチとか、誰も知らない時代です(知らなかったのは私が幼かったから?)。今と違って、洋モノのランキングの大半は白人ロック系のアーティストだったわけで、そんななか、突如として登場した〈ロックイット〉の異質さ加減といったら。斬新とか革新とか、そんな言葉じゃたりないくらい、圧倒的に違っていました。そして、めちゃめちゃヒップだった!

音楽と同じくらい(いや、それ以上か)話題となった〈ロックイット〉のミュージック・ヴィデオ。YouTube で探してみたらありますねえ(Herbie Hancock Rockit で検索してください)。マネキンというかロボットというか、ヘンテコな人形たちがスクラッチにあわせて踊るという(笑)。CG 全盛の今から見ると、あまりのチープさに思わず脱力しちゃいますが、これ、当時はめちゃめちゃ新しかったんですよ。ヴィデオに金かけてる奴なんかいない時代ですからね。1984年の MTV MTV Video Music Awards も受賞しました。

 

Herbie Hancock "Future Shock"
(Columbia FC 38814)

Herbie Hancock (keyboards)
Michael Beinhorn (keyboards)
Bill Laswell (electric bass)
Grand Mixer D.S.T. (turntable) #1, 4, 6 (vocal) #6
Daniel Ponce (bata) #1, 4
Pete Cosey (guitar) #2
Sly Dunbar D (bongo) #2, 6
Dwight Jackson, Jr. (vocal) #2
Bernard Fowler (background vocal) #2, 6
Roger Trilling (background vocal) #6
Nicki Skopeltis (backing vocal) #6

Produced by Material, Herbie Hancock
Recorded by Martin Bisi (at OAO), Dominic Maita (at RPM)
Mixed by Dave Jerden
Recorded at OAO Studios, Brooklyn, NY / at RPM Studios, NYC; 1982

[Tracks]
01. Rockit Herbie Hancock, Bill Laswell, Michael Beinhorn (music)
02. Future Shock Herbie Hancock, Bill Laswell, Michael Beinhorn (music)
03. T.F.S. Herbie Hancock, Bill Laswell, Michael Beinhorn (music)
04. Earth Beat Herbie Hancock, Bill Laswell, Michael Beinhorn (music)
05. Autodrive Herbie Hancock, Bill Laswell, Michael Beinhorn (music)
06. Rough Herbie Hancock, Bill Laswell, Michael Beinhorn (music)

[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Michael Beinhorn]
Michael Beinhorn Discography (by Christian Genzel)
[Links: Bill Laswell]
Sacred Dub: The Music and Projects of Bill Laswall (by Kevin Potts)
Bill Laswell @ Silent Watcher
The Bill Laswell Discography (by Jurgen Geissler)

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2007年06月15日

エラ・フィッツジェラルド『エラ・イン・ベルリン』

macktheknifeellainberlin.jpg Ella Fitzgerald - The Complete Ella In Berlin: Mack the Knife

アート・ペッパー(1982年)、ウェス・モンゴメリー(1968年)ときて、ようやく6月15日の命日特集も打ち止めかと思いきや、もうひとり、とんでもない大物がこの日に亡くなっています。「ファースト・レディ・オブ・ソング」こと、エラ・フィッツジェラルド。1917年4月25日、ヴァージニア州ニューポートニューズ生まれ。1996年6月15日、カリフォルニア州ビヴァリーヒルズで亡くなりました。享年79歳。

晩年は糖尿病のため視力を失い、両足の切断も余儀なくされたという悲しい話が伝わっていますが、元気だったときのエラはほんとにすごかった。グラミー賞に輝くこと、なんと13回。大編成のオーケストラにも負けない存在感がありながら小技もうまく、急速調のスキャットをやらせても、しっとりとしたバラードを歌わせてもサマになる、スケールの大きなシンガーでした。そして、見かけに似合わず、どこかかわいらしさを感じさせる歌声。機械のような正確な音程を誇る技巧派である一方、歌に情感を込めること実に巧みで、二度とこんな歌手は出ないでしょう、きっと。非の打ち所がないとはこのことです。

不世出の歌姫エラのライヴ・パフォーマンスの頂点を記録した『エラ・イン・ベルリン』。1960年、西ドイツ(当時)のベルリンを訪れたエラを、ドイッチュラントホールに集まった1万2000人の大観衆が迎えます。あたたかい拍手に包まれて、うれしそうに「サンキュー」をくり返すエラ。客席の熱気に押される形でコンサートは徐々にヒートアップしていきます。

ひとつめのピークが、クルト・ワイルの〈マック・ザ・ナイフ〉で訪れます。ベルリンにちなんで、ドイツ出身の作曲家の曲をとりあげたわけですが、これが大受け。調子に乗ったエラは、歌詞を変えて「ボビー・ダーリン」「ルイ・アームストロング」などと叫び、得意のルイの物真似まで披露します(3分18秒あたり)。エラの当たり曲となった〈マック・ザ・ナイフ〉ですが、実はこのときはじめて歌ったんだそうで、よっぽどこのコンサートが忘れられなかったんでしょう。

続いて、エラの十八番〈ハウ・ハイ・ザ・ムーン〉。このエキサイティングなスキャットを聴けば、エラがなぜ「ファースト・レディ」なのか、わかります。圧倒的なドライヴ感、正確無比のテクニック、途中で〈煙が目にしみる〉などを挿入してみせるセンス、どれをとっても天下一品です。

バックをつとめるのは、切れ者ポール・スミス率いるカルテット。ジム・ホールがギターで加わっています。彼らの巧みな伴奏も聴きものです。ホントにすばらしい!

 

Ella Fitzgerald "Mack The Knife: Ella In Berlin"
(Verve MGV 4041 / MGVS 6163)

Ella Fitzgerald (vocal)
Paul Smith (piano)
Jim Hall (guitar)
Wilfred Middlebrooks (bass)
Gus Johnson (drums)

Recorded live at Deutschland Halle, Berlin, West Germany; February 13, 1960

[Tracks] Ella Fitzgerald - The Complete Ella In Berlin: Mack the Knife
01. Gone With The Wind Allie Wrubel (music) / Herbert Magidson (lyrics)
02. Misty Erroll Garner (music) / Johnny Burke (lyrics)
03. The Lady Is A Tramp Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)
04. The Man I Love George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
05. Summertime George Gershwin (music) / DuBose Heyward (lyrics)
06. Too Darn Hot Cole Porter (music and lyrics)
07. Lorelei George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
08. Mack The Knife Kurt Weill (music) / Bertolt Brecht (German lyrics), Marc Blitzstein (English lyrics)
09. How High The Moon Morgan Lewis (music) / Nancy Hamilton (lyrics)

[Links: Ella Fitzgerald]
Ella Fitzgerald (Official Website)
Ella Fitzgerald Fan Page
[Links: Jim Hall]
Jim Hall (Official Website)
Jim Hall Maniacs (by 益満妙:エキマンタエ)
ジム・ホール:アルバム蒐集 (by kawagu)

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ウェス・モンゴメリー『インクレディブル・ジャズ・ギター』

theincrediblejazzguitar.jpg Wes Montgomery - Incredible Jazz Guitar

売れ線プロデューサー、クリード・テイラーのもとで、ウェス・モンゴメリーは商業的成功を手に入れ、そこにからめとられていくわけですが、そうしたウェスの生き方は、おそらく彼の本格デビュー前の極貧生活と無関係ではありません。

1959年当時、ウェスには6人の子どもがいました。「貧乏人の子だくさん」を地でいく家庭で、一家の大黒柱ウェスは、朝7時から午後3時半まで工場で溶接工として働き、夜7時から午前2時までは「ターフ・バー」で、午前2時半から5時までは「ミサイル・ルーム」で演奏をこなすというスケジュールで日々の生活の糧を稼いでいました。ろくに睡眠時間もとれない、こんな過酷な生活で身体が保つはずもなく、ウェスは何度か意識を失ったといいます。ウェスが家族に好きなものを買ってやれる幸せを口にするとき、その脳裏には、わずか数年前まで家族を覆っていた悲惨な状況が思い浮かんでいたに違いありません。

そんな出口の見えない状況に救いの手を差し伸べたのは、リヴァーサイド・レーベルのオリン・キープニューズでした。1959年9月、ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルのパッケージ・ツアーでウェスの地元インディアナポリスを訪れたキャノンボール・アダレイは、そこでウェスの驚くべき才能を目の当たりにします。ツアーを終え、ニューヨークに舞い戻ったキャノンボールは、すぐさまオリンのもとを訪ね、「インディアナポリスにすごいギタリストがいるんだよ。君はこの男と契約しなくちゃ……ほら、これが電話番号さ」と一気にまくしたてたといいます。オリンその日、たまたまガンサー・シュラーがジャズ・レビュー誌でウェスを激賞した次の記事を目にしていて、そのことも彼の決断を後押しします。

 ウェス・モンゴメリーについて最もわかりやすい言い方をすれば、ずば抜けてスリリングなギタリスト、ということになる。彼のソロを聴くことは、崖っぷちでしきりに揺さぶられるようなものだ。そのピーク時のプレイは耐え難いほどエキサイティングで、これ以上は耐えられないと感じるまで続く。(中略)
 ウェスは、決まったパターンでソロを配列する。(中略)この決まったパターンとは、まず抑制の利いた流れのなかでメロディに対するアイディアを主眼としたシングル・ラインから始まり、その次には "演奏不可能" と思われるようなオクターヴ奏法、最後には別の次元で "不可能" としか思えないブロック・コードといった構成である。このようにして、ソロはダイナミックに展開され、そしてリズム的にも究極のクライマックスに達するのである。ここに至り、リスナーは必ず打ちのめされる(途方に暮れてしまっているギタリストのためにさらに付け加えるならば、ウェスはピックを使わずにこれをやるのだ)。

ガンサー・シュラー「インディアナ・ルネッサンス」(『ジャズ・レビュー』1959年9月号)より。『ウェス・モンゴメリー』より引用(訳は小泉清人さん)。

ウェスの名を天下に知らしめた傑作『インクレディブル・ジャズ・ギター』は、リヴァーサイドとのプロ契約の興奮も冷めやらぬ翌60年1月に録音されました。冒頭の〈エアジン〉から、ウェスは全開です。これが初出の代表的オリジナル〈フォー・オン・シックス〉もしびれます。バックを支えるトミフラ以下、リズム・セクションもサイコーです。言葉はいりません。ただ耳を傾けてください。そして酔い痴れてください(ただ、こういうのを聴くと、やっぱり後年のイージー・リスニング路線を才能の無駄遣いと糾弾したくなる気持ちも、わかるんですよねえ。だって、ホンマにすごいですもん。なんとも困った人です)。

 

"The Incredible Jazz Guitar Of Wes Montgomery"
(Riverside RLP 320/1169)

Wes Montgomery (guitar)
Tommy Flanagan (piano)
Percy Heath (bass)
Albert Heath (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studios, NYC; January 26, 28, 1960

[Tracks] Wes Montgomery - Incredible Jazz Guitar
01. Airegin Sonny Rollins (music)
02. D-Natural Blues Wes Montgomery (music)
03. Polka Dots And Moonbeams Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
04. Four On Six Wes Montgomery (music)
05. West Coast Blues Wes Montgomery (music)
06. In Your Own Sweet Way Dave Brubeck (music)
07. Mr. Walker (Renie) Wes Montgomery (music)
08. Gone With The Wind Allie Wrubel (music) / Herbert Magidson (lyrics)

[Links: Wes Montgomery]
Wes Montgomery Fan Club
Wes Montgomery Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Wes Montgomery Discography (by Ed Fila)
[Links: Tommy Flanagan]
Tommy Flanagan Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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ウェス・モンゴメリー『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』

adayinthelife.jpg 

アート・ペッパーの死をさかのぼること14年、今から39年前の1968年の今日、ウェス・モンゴメリーがこの世を去っています。本名、John Leslie Montgomery。1923年3月6日、インディアナ州インディアナポリス生まれ。1968年6月15日、インディアナ州インディアナポリスの自宅で死去。享年45歳。

ウェスはもともと狭心症を患っていて、ニトログリセリンの錠剤を飲んでいたそうですが、亡くなる少し前にひどい頭痛に襲われてからは、これを飲まなくなったといいます。その結果の心臓麻痺。A&M のコマーシャル路線でポップスターの座にのぼりつめたウェスの命を奪ったのは、突然の発作でした。

ヴァーヴ時代の『ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド』(1965年12月録音)にはじまるウェスのコマーシャル路線は、プロデューサー、クリード・テイラーの移籍にともなって A&M に活躍の場を移し、そこで大輪の花を咲かせます。人呼んで「イージー・リスニング・ジャズ」。かろうじて「ジャズ」という言葉が入っていますが、アドリブなし、テーマ・メロディをオクターヴで奏でるだけのこれらの音楽は、もはや「ジャズ」ではありません。でも、それが何だというのが、正しいファンのありかたです(笑)。

1967年6月録音の A&M 移籍第1弾『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』。ウェス最大のヒット作で、ウェスの存命中に25万枚を売り、ビルボードのアルバム・チャートで32週連続トップを飾ったという怪物アルバムです。こういうポップ・アルバムに、ふつうのジャズの感覚を持ち込んではいけません。シリアスに聴こうとするから文句のひとつもいいたくなるわけで、BGM として、こんなに気持ちのよいアルバムも、そうあるもんじゃないでしょう?

商業的な成功を手に入れたウェスを取り巻く状況は、しかし、そう単純なものではなかったようです。ジャズ・ギターの歴史のなかでも屈指のインプロヴァイザーでありながら、アドリブをとらせてもらえない。高度なアドリブを封印したことで、レコードの売り上げが伸び、ジャズ界では絶対得られないほどの収入を手にした。古くからのファンや批評家からは酷評されますが、ファン層は逆に拡大して、桁違いに多くの人がウェスの音楽に耳を傾けるようになります。彼らはウェスにそもそもアドリブを求めない。レコードで聴いたとおりの音楽が「再現」されることを期待するわけです。だから、ライヴであっても、ウェスは思うとおりに演奏できなくなる。じわじわと首を絞められていくようです。

ウェスのイージー・リスニング路線は嫌いではありませんが、一方で、根っからのジャズ・ファンでもある私としては、ウェス本人がこの状況をどう思っていたか、気になります。エイドリアン・イングラム著『ウェス・モンゴメリー』(旧 JICC 出版局(現在は宝島社)刊。訳は小泉清人さん) には、ギタリスト仲間のバーニー・ケッセルのこんな発言が引かれています。

僕は客のよく入ったあるクラブにウェス・モンゴメリーが出演している時、彼と話したのを覚えている。彼は別にふてくされたふうではなく、醒めた様子でこんなことを言っていた。「ほら、この連中を見てごらんよ。みんな僕を聴きにきたんじゃない。僕がヒット・レコードの曲を演奏するのを見にきたんだよ。だって、僕が〈ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド〉の代わりにオリジナル曲やコルトレーンの〈ジャイアント・ステップス〉をやると、みんな退屈して、お喋りを始めるんだ。実際、連中は侮辱された気になるんだ。彼らは〈テキーラ〉を聴けば、あるパートを一緒に口ずさんで、友達に自分が知ってるってことを示せる。だからこそわざわざ六〇マイルも運転して来るってわけさ。もし、僕が去年より今年のほうがうまくなっているとしたら、連中はここにはいないはずだよ。みんな僕がレコードと同じように演奏するのを聴きにきているんだから。

さらに、ケッセルの発言です。

 ウェスは罠に陥ったと思うんだ。それは魅力的な罠でね。有名になれたし、お金も得られた。一連のレコーディングの結果として、家族のために、必要なものだけじゃなく、長いこと手に入れられなかったものまでいろいろと与えることができるようになった。だってそれまでは、金銭的に決して恵まれていなかったんだからね。だからウェスにとって、家族たちが欲しがるものを与えることができるというのは、とても楽しいことだったというわけさ。
 ウェスにとって一般大衆のために演奏することや彼らと会うことは楽しいことだったし、そんな自分の立場を心底喜んでいた。ある意味ではね。しかしその反面、みんながウェスを知るようになると、彼らは特定の条件下でしかウェスを受け入れてくれなくなった。(中略)彼らは〈ゴーイン・アウト・オブ・マイ・ヘッド〉や〈テキーラ〉を演奏する時のウェスしか受け入れなかったんだ。他の曲ではダメだったんだ。(中略)そのことはウェスにとってちょっと悲しいことだったけど、だからといってやめようなどとは思わなかった。だって、いい暮らしができることが何と言っても嬉しかったんだから。


 

Wes Montgomery "A Day In The Life"
(A&M LP 2001 / SP 3001)

Wes Montgomery (guitar)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Grady Tate (drums)
Ray Barretto, Jack Jennings, Joe Wohletz (purcussion)

George Marge, Romeo Penque, Joe Soldo, Stan Webb (bass flute)
Stan Webb, Phil Bodner (woodwinds)
Ray Alonge (French horn)
Julius Brand, Peter Buonconsiglio, Mac Ceppos, Lewis Eley, Harry Glickman, Harry Katzman, Leo Kruczek, Gene Orloff, Tosha Samaroff, Sylvan Shulman, Harry Urbont, Jack Zayde (violin)
Harold Coletta, Emanuel Vardi (viola)
Charles McCracken, Alan Shulman (celli)
Margaret Ross (harp)

Arranged and Conducted by Don Sebesky

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs; June 6 (#1, 4), 7 (#2, 3, 5, 6, 8, 10), 26 (#7, 9), 1967

[Tracks] 
01. A Day In The Life John Lennon, Paul McCartney (music and lyrics)
02. Watch What Happens Michel Legrand (music) / Norman Gimbel (lyrics)
03. When A Man Loves A Woman Lewis, Wright
04. California Nights Hamlisch, Liebling
05. Angel Wes Montgomery (music)
06. Eleanor Rigby John Lennon, Paul McCartney (music and lyrics)
07. Willow Weep For Me Ann Ronell (music and lyrics)
08. Windy Ruthann Friedman (music)
09. Trust In Me Wever, Schwartz, Ager
10. The Joker Anthony Newley, Leslie Bricusse (music and lyrics)

[Links: Wes Montgomery]
Wes Montgomery Fan Club
Wes Montgomery Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Wes Montgomery Discography (by Ed Fila)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Ron Carter (Official Website)

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posted by ユキヒロ at 15:24| Comment(0) | TrackBack(0) | A&M/CTI | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『ジ・アート・ペッパー・カルテット』

theartpepperquartet.jpg

アート・ペッパー没後四半世紀企画の続きです。晩年の作品だけじゃなく、ペッパーがまだ水も滴るいい男だったころの作品も、1枚紹介しておきましょう。西海岸のマイナー・レーベル、タンパ(アルバム・リストはこちら)に残された『ジ・アート・ペッパー・カルテット』です。

このアルバムが録音された1956年は、ペッパー絶頂期のはじまりとして知られています。ドラッグによる2年間の刑期を終えてペッパーがシャバに戻ったのが、56年の夏。早くも8月に『ザ・リターン・オブ・アート・ペッパー』を吹き込んでみずから復帰を祝ったかと思うと、そこから怒濤のレコーディングを開始します。それまでの不遇が嘘のような快進撃。50年代後半のペッパーは快作を連発しますが、なかでもきわめつきの人気盤が、この『カルテット』です。

ここには、今やペッパーの代名詞となった〈ベサメ・ムーチョ〉が入っています。みんな大好き、哀愁のラテン(笑)。まとわりつくようなリズムのうえを、どこまでも軽やかに舞うペッパーです。1曲目〈アーツ・オーパス〉もすばらしい! ペッパーのくり出すアルトはまさに小鳥の歌声。軽妙洒脱とはこのことです。ふだんはクセのあるラス・フリーマンも、ここでは微笑みかけてきます。とっても幸せな気分です。『タンパのペッパー』、サイコーです!!



"The Art Peppet Quartet"
(Tampa TP 20)

Art Pepper (alto sax)
Russ Freeman (piano)
Ben Tucker (bass)
Gary Frommer (drums)

Produced by Robert Scherman
Recorded by Val Valentin
Recorded in Hollywood, CA; November 25, 1956

[Tracks]
01. Art's Opus Art Pepper (music)
02. I Surrender, Dear Harry Barris (music) / Gordon Clifford (lyrics)
03. Diane Art Pepper (music)
04. Pepper Pot Art Pepper (music)
05. Besame Mucho Conseulo Velasquez (music and lyrics)
06. Blues At Twilight Art Pepper (music)
07. Val's Pal Art Pepper (music)

[Links: Art Pepper]
Art Pepper Discography Project (@ Jazz Discography Project)
The Art Of Pepper

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アート・ペッパー『ウィンター・ムーン』

wintermoon.jpg

今から25年前の今日、アート・ペッパーがこの世を去りました。生涯のほとんどをドラッグとの闘いに費やし、引退と復帰をくり返しながら、容姿のみならず、音楽性まで一変させて、最後の瞬間まで命を燃焼し尽くした男 Arthur Edward Pepper, Jr. は、1982年6月15日、カリフォルニア州パノラマ・シティで脳溢血のため亡くなりました。享年56歳。

ペッパー没後四半世紀を飾るにふさわしいのは、なんといっても最後のスタジオ録音作『ゴーイン・ホーム』ですが、これはすでに紹介済み(「追記」に共演者ジョージ・ケイブルスのインタビューを追加しました。ここをクリック)。そこで、今回は最晩年(80年代)のもう1枚の傑作、『ウィンター・ムーン』をとりあげます。

ジャズ・ミュージシャンなら誰でも一度は演ってみたいというストリングスとの共演。ヴァイオリンやチェロが奏でる甘美な旋律に身を委ねて、思いのままにプレイするというのは、たしかに気持ちのいい体験なのでしょう。とくにペッパーのような極上のバラード吹きにとって、ウィズ・ストリングス作品は夢の舞台となり得ます。

オープニングは、ペッパー自作の〈アワ・ソング〉。わきあがってくるこの感動をどう表現したらいいのでしょう。この世のものとは思えない旋律美、そこはかとない寂寥感、そしてある種の諦観。絞り出す一音一音に、激動の人生の1コマ1コマを重ね合わせるような、どこまでも深い表現力。けっして饒舌とはいえない淡々としたプレイだからこそ、そこに込められた多くの思い、そこに至ったペッパーの来し方に思いを馳せずにはいられません。いつまでも聴いていたいと思わせるペッパーの、頂点をなすバラードのひとつだと思います。

唯一クラリネットで奏でられる〈ブルース・イン・ザ・ナイト〉。バスクラじゃなくてクラリネットというところが、その昔、アルトの軽やかな音色で一世を風靡したペッパーらしくて好きですが、このクラリネットも深い。どちらも西海岸を中心に活躍するビル・ホルマンのアレンジですが、あくまでペッパーを引き立てるひかえめな編曲に思わず感謝。うまいです、この人(それと比べると、ジミー・ボンドのアレンジはクサいね、はっきりいって)。

 

Art Pepper "Winter Moon"
(Galaxy GXY 5140)

Art Pepper (alto sax) except #6 (clarinet) #6
Stanley Cowell (piano)
Howard Roberts (guitar)
Cecil McBee (bass)
Carl Burnett (drums)

with strings
arranged and conducted by Bill Holman #1, 4, 5, 6
arranged and conducted by Jimmy Bond #2, 3, 7

Produced by Ed Michel
Recorded by Baker Bigsby, Wally Buck
Recorded at Fantasy Studios, Berkeley, CA; September 3-4, 1980

[Tracks] 
01. Our Song Art Pepper (music)
02. Here's That Rainy Day Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
03. That's Love Art Pepper (music)
04. Winter Moon Hoagy Carmichael (music and lyrics)
05. When The Sun Comes Out Harold Arlen (music) / Ted Koehler (lyrics)
06. Blues In The Night Harold Arlen (music) / Johnny Mercer (lyrics)
07. The Prisoner (Love Theme From "The Eyes Of Laura Mars") y Karen Lawrence, John DeSautels (music)

[Links: Art Pepper]
Art Pepper Discography Project (@ Jazz Discography Project)
The Art Of Pepper
[Links: Howard Roberts]
Howard Roberts: Jazz Guitarist (by Mike Evans)

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2007年06月13日

『ウィントン・マルサリスの肖像』

wyntonmarsalis.jpg

1981年7月27日にはじまったハービーのマラソン・セッション@東京信濃町。27日の『トリオ』、28日の『カルテット』と続いて、翌29日はウィントンの兄ブランフォードを加えたクインテット。ブランフォードはライヴ・アンダー・ザ・スカイには出演しなかったので、この日のためだけに来日をしています。

現代ジャズ界のオピニオン・リーダー、ウィントン・マルサリス。1961年10月18日、ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。父エリスが同じピアニストとして尊敬するウィントン・ケリーの名前をつけたという話は、有名ですね。初リーダー作『ウィントン・マルサリスの肖像』収録時の年齢は弱冠19歳。ジャケットを見るかぎり、まだ少年の面影を残していますが、出てくる音楽の完成度の高さといったら! デビューの瞬間、並みいる先輩トランぺッターを全員置き去りにして、一躍シーンの中心に躍り出たモンスターのような人です。

プロデューサーのハービーは、若き天才をこの世に送り出すために、2種類のセットを用意します。ひとつは自らも参加した7月29日の東京セッション、もうひとつは8月にニューヨークで行われたセッションで、こちらには、のちにウィントンのレギュラー・バンドのメンバーとなるブランフォード、ケニー・カークランド、ジェフ・ワッツが顔をそろえています。

そうとなったら、聴き比べしたくなるのが人情ですが、どうでしょう? トニーの美曲〈シスター・シェリル〉が目を引く東京セッションですが、ハービー、ロン、トニーの3者が役者の違いを見せつけたかと思いきや、個人的には、若手だけで固めたニューヨーク・セッションに愛着を覚えます。この3者入りなら、前日録音の『カルテット』のほうが熱い。ブランフォードが加わったことで、バランス感が生じたというか、うまくまとめようという意思が働いている気がします。それならむしろ、これからひと旗揚げようという若さゆえの熱気のほうを買います。彼らはみんな抜群にうまい! うますぎる人というのは、えてして批判の対象となるものですが、この作品では、そのうまさが嫌みにならず、ストレートに感動につながっています。

 

"Wynton Marsalis"
(Columbia SRCS 9173)

#1, 2, 7
Wynton Marsalis (trumpet)
Branford Marsalis (tenor and soprano sax) omit #7
Kenny Kirkland (piano)
Clarence Seay (bass) #1, 2
Charles Fambrough (bass) #7
Jeff "Tain" Watts (drums)

Recorded at CBS Recording Studios, NYC; August, 1981

#3-6
Wynton Marsalis (trumpet)
Branford Marsalis (tenor and soprano sax) omit #6
Herbie Hancock (piano) omit #4
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Recorded at CBS/Sony Studio, Shinanomachi, Tokyo; July 29, 1981

Produced by Herbie Hancock
Recorded by Tomoo Suzuki (#3-6), Tim Geelan (#1 ,2, 7)

[Tracks]
01. Father Time Wynton Marsalis (music)
02. I'll Be There When The Time Is Right Herbie Hancock (music)
03. R.J. Ron Carter (music)
04. Hesitation Wynton Marsalis (music)
05. Sister Cheryl Tony Williams (music)
06. Who Can I Turn To (When Nobody Needs Me) Anthony Newley, Leslie Bricusse (music and lyrics)
07. Twilight Wynton Marsalis (music)

[Links: Wynton Marsalis]
Wynton Marsalis (Official Website)
WyntonMarsalis.net (Official Website @ Sony Music)
[Links: Branford Marsalis]
Branford Marsalis (Official Website)
Branford Marsalis: a discography with cover photos (by Atushi acchan Ueda)
[Links: Kenny Kirkland]
Kenny Kirkland Homepage (@ Stone Alliance)
Kenny Kirkland Discography
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Jeff "Tain" Watts]
Jeff "Tain" Watts: the Chambers of Tain (Official Website)
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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2007年06月11日

『ハービー・ハンコック・カルテット』

herbiehancockquartet.jpg

1980年、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズで衝撃的なデビューを飾ったウィントン・マルサリスは、自己の初リーダー作のプロデュースをハービー・ハンコックに依頼します。以下、引用はジャズ批評ブックス『定本ハービー・ハンコック』のハービーのインタビューより(インタビュアーは高木宏真さん)。

ウィントン・マルサリスは、僕に自分のリーダー・アルバムをプロデュースして欲しいと言って、テープを持ってきた。A面がクラシックで、トランペット・コンチェルト、B面が父親のエリス・マルサリスと演奏してるものだった。とてもファンタスティックなもので、感銘を受けた。そこで、他のツアーのメンバーである、ロンとトニーに、彼を入れるのはどうだろうと話してみたんだ。すると彼はまだ若すぎるし、経験も少ない、少しキビシイんじゃないか、と言うんだ。僕らだってそうだったじゃないか。若いんだから僕達が彼に経験させてやろう。そう言ったら彼らも同意して、ツアーに出た。結果は、素晴らしいもので、もはや何の問題もなかった。

トニーと仲が悪かったフレディ・ハバードが抜け(トニーのドラムスがうるさすぎることに、いつもぶち切れていたそうです)、障害児イスカを抱えるウェイン・ショーターも抜けた V.S.O.P. の後釜にウィントンが座ったのは、要するに、次回アップする『ウイントン・マルサリスの肖像』に向けたトレーニングの一環だったわけですね。1981年、ライヴ・アンダー・ザ・スカイのために来日したカルテットは、『ハービー・ハンコック・トリオ '81』の翌日ふたたびスタジオに入り、LP2枚分(CDでは1枚分)の演奏をわずか1日でレコーディングします。それが『ハービー・ハンコック・カルテット』で、3日間の現代版マラソン・セッションの中日(7月28日)に収録されました。

すでに一家をなした巨人たちに囲まれてひとり息巻く新人ウィントン。もちろん手練の三人は、そんなウィントンをあたたかく見守るだけではありません。ときに挑発し、ときにうまく先導しながら、将来ある若者の力を存分に引き出そうと、熱い情熱で応えます。昨日のリラックス・セッションとはうってかわった、リキの入った演奏です。ある意味、予定調和の V.S.O.P. よりおもしろい!

ハービー、ロン、トニーの楽曲が2曲ずつ、モンクス・オリジナル2曲にスタンダード1曲。完全に相手の土俵で勝負させられているわけですが、ウィントンは踏ん張ります。堂々たる吹きっぷりです。メンバーに臆することなく、豊かな音色と完璧な楽器コントロールで存在感を示します。さすが、ウィントン。彼の成功はこの時点で約束されていたのですね。

マイルス・クインテット時代に何度も演奏された名曲〈ラウンド・ミッドナイト〉。ウィントンのミュートは切れ味鋭いだけではありません。音に奥行きがある。細かい芸も達者です。ギル・エヴァンスのアレンジによる例のヴァンプあたりの展開は、まさに戦慄もの。背筋が寒くなるとはこのことです。やっぱ、どえらい才能です。

 

"Herbie Hancock Quartet"
(Sony SRCS 9343)

Wynton Marsalis (trumpet)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by David Robinson, Herbie Hancock
Recorded by Tomoo Suzuki
Recorded at CBS Sony Studios, Shinanomachi, Tokyo; July 28, 1981

[Tracks]
01. Well You Needn't Thelonious Monk (music)
02. 'Round Midnight Thelonious Monk, Cootie Williams (music) / Bernie Hanighen (lyrics)
03. Clear Ways Tony Williams (music)
04. A Quick Sketch Ron Carter (music)
05. The Eye Of The Hurricane Herbie Hancock (music)
06. Parade Ron Carter (music)
07. The Sorcerer Herbie Hancock (music)
08. Pee Wee Tony Williams (music)
09. I Fall In Love Too Easily Jule Styne (music) / Sammy Cahn (lyrics)

[Links: Wynton Marsalis]
Wynton Marsalis (Official Website)
WyntonMarsalis.net (Official Website @ Sony Music)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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『ハービー・ハンコック・トリオ '81』

herbiehancocktrio81.jpg

70年代から80年代初頭にかけて、毎年のように日本にやってきては膨大な数の録音を残したハービー・ハンコックですが、なかでも極めつけは1981年。ライヴ・アンダー・ザ・スカイ '81 のために来日したハービー様御一行は、7月27日〜29日の3日間、東京信濃町のソニー・スタジオに通いつめ、1日1枚、3日で3枚のアルバムを立て続けに録音します。

初日は、ハービー、ロン、トニーの3人で『ハービー・ハンコック・トリオ '81』を収録。「バッキング命」を公言するハービーには、ピアノ・トリオというフォーマットはさほど魅力的ではないようで、全編トリオで通したのは、77年来日時の『ハービー・ハンコック・トリオ '77』とロン・カーター名義の『サード・プレイン』、それに翌78年のライヴ・アンダー・ザ・スカイの模様を収めたロン・カーター盤『1+3』くらいしかありません。

じゃあ、この『トリオ '81』はつまらないかというと、そんなことはありません。V.S.O.P. ばりのド派手な演出や60年代マイルス・クインテット時代のスリリングな展開を期待すると肩すかしを食いますが、一見、手抜きと思われがちなこのアルバムは、実は意外なほど飽きがこない。最近のハービーのゴージャスなつくりのアルバムからは想像もできないほど、シンプルで、リラックスした好盤となっています。

天下無敵の暴れん坊少年トニーもこのとき35歳。20年近くも共演してきた彼らだからこそ実現できた、自然体の演奏です。みずみずしいハーモニーを生み出すハービーのピアノに「円熟」という言葉はあいませんが、肩肘張らずに聴ける佳作だと思います。



"Herbie Hancock Trio"
(CBS/Sony 25AP2190)

Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by David Rubinson
Recorded by Tom Suzuki
Recorded at CBS/Sony Shinanomachi Studio, Tokyo; July 27, 1981

[Tracks]
01. Stablemates Benny Golson (music)
02. Dolphin Dance Herbie Hancock (music)
03. A Slight Smile Ron Carter (music)
04. That Old Black Magic Harold Arlen (music) / Johnny Mercer (lyrics)
05. La Maison Goree Tony Williams (music)

[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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ハービー・ハンコック&チック・コリア『イン・コンサート』

herbie_chickinconcert.jpg

ハービー・ハンコックとチック・コリア。永遠のライヴァルともいわれる2人の歩みは、これまで何度か交差しています。

ともにマイルス・バンド出身で(ハービーは1963年〜68年の「黄金のクインテット」、チックは68年〜70年の「ロスト・クインテット」に参加)、名盤『イン・ア・サイレント・ウェイ』や『ジャック・ジョンソン』、『ライヴ・イヴル』のスタジオ・セッションでは共演も果たしています。マイルス・バンド脱退後、72年にチックが『リターン・トゥ・フォーエヴァー』(通称カモメ)、73年にはハービーが『ヘッド・ハンターズ』を吹きこんで、クロスオーヴァー〜フュージョン時代を牽引したのもそっくりです。そういえば、チックがデビューしたのはモンゴ・サンタマリアのグループだったというのも、どこか因縁めいています(62年、リヴァーサイド盤『Go, Mongo!』が初録音。翌63年にはモンゴがハービーの〈ウォーターメロン・マン〉を大ヒットさせます)。

マイルスが火をつけた電化路線を邁進していた2人ですが、76年の『V.S.O.P. 〜 ニューポートの追想』の成功に気をよくしたハービーは、いち早くアコースティック&エレクトリックの二方面作戦に打って出ます。そんななか、かねてより共演を望んでいたというチックの『マッド・ハッター』にハービーが参加、伝説のエレピ・ソロを披露して主役を食う勢いを見せつけます(77年)。翌78年、意気投合した2人は1月25日から2月20日にかけて、アコースティック・ピアノによるデュオ・コンサート・ツアーを敢行、2月15日には日本の武道館にも立ち寄りました。

コロンビア盤『イン・コンサート』はこのときのツアーの模様をおさめたアルバムで、サンフランシスコのメイソニック・オーディトリアム、ロサンジェルス・ミュージック・センターのドロシー・チャンドラー・パヴィリオン、サンディエゴのゴールデン・ホール、ミシガン大学ヒル・オーディトリアムの4つの会場で行われたコンサートから、ベスト・テイクを集めて制作されました(もう1枚、チックが所属していたポリドールから『デュオ・ライヴ』というアルバムもつくられています。こちらは後日チック特集で)。

2大スターの夢の共演。こう書いてしまうと元も子もないのですが(笑)、看板に偽りなし。すばらしい演奏です。アコースティック・ピアノによる2人だけの対話。相手の音に感応してくり出す音がさらなる感応を生み出す。2人が対話を通じてどんどん高みへ登り詰めていくのが手に取るようにわかります。いやあ、こりゃミラクル・ワールドだ(笑)。

それにしても、2人の耳のよさには感動します。ブラック・ファンクで名を売ったハービーと、スパニッシュ路線に活路を見出したチックですが、根っこをたどれば、2人とも行き着く先はクラシック。鍛えられ方が違うんでしょうね、きっと。相手のちょっとした変化も聞き逃さない耳のよさと、変化を瞬時にとりこむ反応のはやさ、それにどんなスタイルの音楽も縦横無尽にかけめぐるテクニックがあれば、もう怖いものはありません。おすすめです。

 

"An Evening With Herbie Hancock & Chick Corea In Concert"
(Columbia PC2 35663)

Herbie Hancock (piano)
Chick Corea (piano)

Produced by Herbie Hancock, David Rubinson
Recorded by Bernie Kirsh
Recorded live at Masonic Auditorium, SF; Dorothy Chandler Pavillion, LA; Golden Hall, San Diego; Hill Auditorium, Ann Arbor; February, 1978

[Tracks: Disc 1]
01. Someday My Prince Will Come Frank Churchill (music) / Larry Morey (lyrics)
02. Liza George Gershwin (music) / Ira Gershwin, Gus Kahn (lyrics)
03. Button Up Herbie Hancock, Chick Corea (music)

[Tracks: Disc 2]
01. Introduction Of Herbie Hancock By Chick Corea
02. February Moment Herbie Hancock (music)
03. Maiden Voyage Herbie Hancock (music)
04. La Fiesta Chick Corea (music)

[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Chick Corea]
Chick Corea (Official Website)
Chick Corea Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2007年06月06日

V.S.O.P.『ザ・クインテット』

vsopthequintet.jpg

1回限りのスペシャル・プロジェクトだったはずの V.S.O.P. が、1977年にレギュラー・バンドとして全米ツアーに打って出たのは、前作『V.S.O.P. 〜 ニューポートの追想』に予想を超える反響があったからですが、60年代新主流派の焼き直しにすぎない(どころか、大衆受けをねらってポップス化した)彼らの活動に意味があったとすれば、フュージョンしか知らなかった若い世代に、アコースティック・ジャズのおもしろさを知らしめたという点においてです。実際、彼らの成功なくして、80年代以降のアコースティック・ジャズの復権はなかったでしょうし、ネオ・コンサヴァティブ(新保守主義)路線を牽引したウィントン・マルサリスが第二期 V.S.O.P. から巣立っていった事実は、そのことを象徴してあまりあります。

ビ・バップ革命にはじまったモダン・ジャズの潮流は、周辺の音楽を飲み込みながら、刻々と姿を変えてきました。即興性を極限まで押し進めたフリー・ジャズは、67年にジョン・コルトレーン、70年にアルバート・アイラーという2人の巨人を失い、失速します。楽器の技術革新とともにあった電化路線のフュージョンも、すでにこの時期、爛熟の兆しを見せはじめ、20世紀生まれのモダニズム運動は行き詰まりつつありました。そこへ降って湧いたような、過去への回帰現象。成熟といえば聞こえはいいですが、モダン・ジャズの終焉を嘆く人がいても不思議じゃありません。

では、演奏している当人たちはどう思っていたのか。『フットプリンツ:評伝ウェイン・ショーター』には、ウェインのこんな証言が紹介されています(訳は新井崇嗣さん)。

V.S.O.P. の活動中、ウェインは観る者をしぶれさせる素晴らしいパフォーマンスを披露した。また、旧友たちと過ごす時間も楽しいものだった。しかし、過去を生き直すような行為が彼の心を満たすことはなかった、とウェインは言う。「メトロポリタン・オペラ・ハウスを壊しているとする。立て直すためにね。で、誰かがオペラ・シンガーに『古い建物がなくなって寂しい?』と訊くと、そのシンガーは『いいや、まったく!』と即答する。あれはそんな感じだったね」

う〜ん。相変わらずウェインの宇宙語は意味不明ですが(笑)、少なくとも、彼にとって、この時点で、昔ながらのアコースティック・ジャズを演奏することは、心惹かれるものではなかったらしいことだけはわかります。それはそうでしょう、ウェインは前年『ヘヴィー・ウェザー』でメガヒットを飛ばしたばかり。ハービーはヘッド・ハンターズで電化路線まっしぐら、フレディは CTI でポップス路線、トニーはライフタイムでジャズ・ロック路線を経験済み、ロンはよくわかりませんが(笑)、いずれにしても、V.S.O.P. での演奏は、彼らにとって60年代の回顧でしかなかったわけです。

とまあ、いろいろ書いてきましたが、V.S.O.P. を知るにはその音楽を聴くしかないわけで、アメリカ西海岸でのライヴ盤『ザ・クインテット』です。メンバーがメンバーなだけに、どうしても60年代マイルス・クインテットと比較してしまうのは悪いクセですが、マイルス・バンドが暴力的な衝動を無理矢理抑え込むことで、異様なテンションを保っていたのと比べると、実に開けっぴろげな音楽です。先の展開が読めるというか、予定調和というか、要はわかりやすいんですね。手練のミュージシャンが集まって、カッコつけて演奏するとこうなる、という見本のような演奏です。

カラッと晴れあがった青空のような、痛快なジャズ。これを楽しめるかどうかは、おそらく聴く人の音楽的バック・グラウンドによります。単純におもしろいと感じられる人は幸せです。頭でっかちな私は、ピュアな気持ちで彼らの音楽に向かい合うことができません。残念なことです。

 

V.S.O.P. "The Quintet"
(Columbia C2 34976)

Freddie Hubbard (trumpet, flugelhorn)
Wayne Shorter (soprano & tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by David Rubinson
Recorded by Fred Catero
Recorded live at The Greek Theatre, University Of California, Berkeley; July 16, 1977 / The San Diego Civic Theatre, July 18, 1977

[Tracks]
01. One Of A Kind Freddie Hubbard (music)
02. Third Plane Ron Carter (music)
03. Jessica Herbie Hancock (music)
04. Lawra Tony Williams (music)
05. Darts Herbie Hancock (music)
06. Dolores Wayne Shorter (music)
07. Little Waltz Ron Carter (music)
08. Byrdlike Freddie Hubbard (music)

[Links: Freddie Hubbard]
Freddie Hubbard Discography (by hubtones)
Hub Tunes: The Freddie Hubbard Discography
[Links: Wayne Shorter]
ウェイン・ショーターの部屋 (by Y. Yamada)
Dr. Morf's Wayne Shorter Page
The Complete Wayne Shorter Discography
Wayne Shorter Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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2007年06月05日

ハービー・ハンコック『V.S.O.P. 〜 ニューポートの追想』

vsop.jpg

1976年6月29日は、当時36歳のハービー・ハンコックにとって忘れられない日となりました。ジョージ・ウィーン主催のニューポート・ジャズ・フェスティヴァル(ただし、この日の会場はニューヨーク市センター)のスペシャル・プログラムとして "Retrospective of the Music of Herbie Hancock" が開催されたからです。人生を「回顧」するにはちと若すぎる気もしますが(笑)、記念すべきその日のプログラムは、『V.S.O.P. 〜 ニューポートの追想』というアルバムに刻印されています。

プログラムには、それぞれ時代を画したハービーの3つのバンドが登場します。

トップバッターは、60年代のマイルス・クインテットを模した V.S.O.P (Very Special One-time Performance)。1回限りの復活劇ということで、当時、雲隠れしていたマイルス(75年9月5日のセントラル・パークでの野外ライヴを最後に、公の場から姿を消していた)を引っ張り出そうと画策したのではないかという憶測が飛び交っていますが、真相は不明。ウェインにハービー、ロン、トニーのおなじみの面子にフレディ・ハバードが加わっています。

続いて、ハービーが70年代初頭のワーナー時代に率いていた電化セクステットが登場します。メンバーそれぞれがスワヒリ語の名前を名乗り(ハービーは「ムワンディシ (MWANDISHI)」と称していた)、みずからのアフリカン・ルーツを模索した「暗黒時代」。フリー・ファンクの混沌とした世界に、今一度光を当てます。

トリを飾るのは、ミリオンセラーもかっ飛ばしたヘッド・ハンターズです。ワウ・ワウ・ワトソンとレイ・パーカー Jr. のツイン・ギターを加えた最強布陣で、もうノリノリ。実は彼らのベスト・パフォーマンスだと密かに確信しているのですが、あんまり話題になりませんねえ(笑)。

このアルバム、2枚組み CD の1枚目しか聴かない人も多いとか。オールスター・キャストが奏でるアコースティック・ジャズの魅力はたしかに捨てがたいものがありますが(といっても、ハービーが弾いているのは YAMAHA のエレクトリック・グランド・ピアノです。エレピと生ピの中間ぐらいの音がします)、V.S.O.P. からは、60年代マイルス・クインテットが身にまとっていた凄み(殺気という言葉がいちばん近い気がします)はまったく感じられません。メリハリがきいていて、とてもわかりやすい演奏ですが、どちらに転ぶかわからない崖っぷちのスリルは皆無です。どうにもビミョーなんですね。

前進を止めた懐古趣味のジャズなんてジャズじゃないという人もいれば、アコースティック・ジャズ復活の先鞭を付けたと評価する人もいます。どちらも一面の真実を言い当てているのでしょうが、私は、あんまり聴きません(あっ、言っちゃった)。むしろ、Disc 2 のほうが素直に楽しめます。

ところで、ブランデーなんかで見かける VSOP は Very Superior Old Pale の略で、18〜25年の長期熟成物を指します。11年以下が VO (Very Old) 、12〜17年が VSO (Very Superior Old) で、XO (EXtra Old) は26年以上の超高級ブランデーを指すそうです。本当においしいお酒をつくるには、四半世紀以上の時間がかかる。私の仕事人生はたかだか13年。ということは、本当にいい本をつくるには、あと12年は働き続けなければならないようです。先は長いなあ(笑)。

 

Herbie Hancock "V.S.O.P."
(Columbia PG 34688)

Disc 1: #1-4
Freddie Hubbard (trumpet)
Wayne Shorter (soprano & tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Disc 2: #1, 2
Eddie Henderson (trumpet, flugelhorn, effects)
Bennie Maupin (alto flute)
Julian Priester (trombone)
Herbie Hancock (piano, electric piano)
Buster Williams (bass)
Billy Hart (drums)

Disc 2: #3, 4
Bennie Maupin (soprano & tenor sax, lyricon)
Herbie Hancock (piano, electric piano, synthesizer)
Wah Wah Watson (guitar, voice bag)
Ray Parker, Jr. (guitar)
Paul Jackson (electric bass)
James Levi (drums)
Kenneth Nash (percussion)

Produced by David Rubinson
Recorded by Fred Catero, David Rubinson
Recorded live at New York City Center; June 29, 1976

[Tracks: Disc 1]
01. Piano Introduction Herbie Hancock (music)
02. Maiden Voyage Herbie Hancock (music)
03. Nefertiti Wayne Shorter (music)
04. Eye Of The Hurricane Herbie Hancock (music)

[Tracks: Disc 2]
01. Toys Herbie Hancock (music)
02. You'll Know When You Get There Herbie Hancock (music)
03. Hang Up Your Hang Ups Herbie Hancock, Paul Jackson, Wah Wah Watson (music)
04. Spider Herbie Hancock, Paul Jackson, Wah Wah Watson (music)

[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Freddie Hubbard]
Freddie Hubbard Discography (by hubtones)
Hub Tunes: The Freddie Hubbard Discography
[Links: Wayne Shorter]
ウェイン・ショーターの部屋 (by Y. Yamada)
Dr. Morf's Wayne Shorter Page
The Complete Wayne Shorter Discography
Wayne Shorter Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)
[Links: Eddie Henderson]
The Eddie Henderson Official Web Site
[Links: Bennie Maupin]
Bennie Maupin (Official Website)
Bennie Maupin Discography (by Christian Genzel)
[Links: Julian Priester]
The official website of Julian Priester
[Links: Buster Williams]
Buster Williams Website (Official Website)
[Links: Billy Hart]
Drummer Billy Hart (Official Website)
[Links: Wah Wah Watson]
Wah Wah Watson (Official Website)
[Links: Ray Parker, Jr.]
Ray Parker, Jr. (Official Website)
[Links: Paul Jackson]
Paul Jackson (Official Website)
[Links: Kenneth Nash]
Kenneth Nash Productions (Official Website)

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2007年06月04日

ハービー・ハンコック『洪水』

flood.jpg

なにかと日本と縁の深いハービー・ハンコックはこの時期、毎年のように日本にやってきては置き土産を残しています。『洪水』もそのひとつで、1975年、東京の渋谷公会堂中野サンプラザでライヴ録音され、日本のみでリリースされました。

こういうと、小遣い稼ぎの安直なアルバムと思いがちですが(実際、そうとしか思えないアルバムもあるにはあります)、エレクトリック・ファンク時代のハービー唯一のライヴ盤(アコースティック・バンドの演奏も含む『V.S.O.P.〜ニューポートの追想』は除きます)と聞けば、このアルバムの価値もわかろうというものです。

コンサートはアコースティック時代の一里塚〈処女航海〉で幕を開けます。おそらく日本のコアなファンを意識したのでしょうが、このメンバーでこの選曲は、はっきりいって違和感があります。一時代前の音がする。あちゃ〜、やっちゃった? そう思って停止ボタンを押そうと手を伸ばした瞬間、突然曲が切り替わります。〈アクチュアル・プルーフ〉。これが、めちゃめちゃカッコイイんです! ハービーは引き続きアコースティック・ピアノを弾いていますが、火が出るような熱いソロをくり広げています。必聴です。こんなに熱いハービーって、そうは聴けません。

私はいわゆるフュージョンはほとんど聴かないのですが、ヘッド・ハンターズがおもしろいのは、彼らのインプロヴィゼーションにまだ力があったからではないかと思います。クロスオーヴァーからフュージョンへと時代が下るにつれて、ジャズ色は希薄になり、ポップス色が強くなっていくわけですが、それは即興の度合いが減っていく過程でもあります。私はかなりジャズ寄りの人間ですが、たとえ楽器が電化しても、即興主体の音楽なら楽しめる。引退前のエレクトリック・マイルスも、初期の RTF も、ミロスラフ・ヴィトウス参加時代のウェザー・リポートも、同じ意味で楽しめます。

アルバムはヘッド・ハンターズのヒットパレードで、『ヘッド・ハンターズ』から2曲、『スラスト』から3曲、『マン・チャイルド』から1曲、セレクトされています。最初の2曲以外、ハービーはエレピやシンセを操っていますが、こちらも相当熱い。スタジオでは捉えきれなかったヘッド・ハンターズの全貌が明らかになります。



"Flood: Herbie Hancock Live In Japan"
(CBS/Sony SOPZ 98)

Bennie Maupin (soprano, tenor sax, saxello, bass clarinet, flute, percussion)
Herbie Hancock (piano, Fender Rhodes, clavinet, synthesizer)
DeWayne "Blackbird" McKnight (guitar)
Paul Jackson (Fender bass)
Mike Clark (drums)
Bill Summers (congas, percussion)

Produced by David Rubinson
Recorded by Tomoo Suzuki
Recorded live at Shibuya Kohkaido, Tokyo; June 28, 1975 / Nakano Sun Plaza, Tokyo; July 1, 1975

[Tracks]
01. Maiden Voyage Herbie Hancock (music)
02. Actual Proof Herbie Hancock (music)
03. Spank-A-Lee Herbie Hancock (music)
04. Watermelon Man Herbie Hancock (music)
05. Butterfly Herbie Hancock (music)
06. Chameleon Herbie Hancock, Bennie Maupin, Paul Jackson, Harvey Mason (music)
07. Hang Up Your Hang Ups Herbie Hancock (music)

[Links: Bennie Maupin]
Bennie Maupin (Official Website)
Bennie Maupin Discography (by Christian Genzel)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Paul Jackson]
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[Links: Mike Clark]
Mike Clark (Official Website)
[Links: Bill Summers]
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ハービー・ハンコック『スラスト(突撃)』

thrust.jpg

ハービー・ハンコックが『ヘッド・ハンターズ』の大ヒットを受けて制作した続編『スラスト(突撃)』。ドラマーがマイク・クラークに代わったほかはメンバーも同じ、録音時期も比較的近く、裏ヘッド・ハンターズ的なアルバムに仕上がっています。

〈カメレオン〉のような、強烈にクセのある曲はありませんが、これはこれで完成度の高い一枚です。たとえば、ハービーがシンセで奏でる「ティティッ、ティティッ、ティーティッティ」のリフレインが病みつきになる〈パーム・グリース〉。あるいは、ファンク路線から一歩突き抜けた感のある〈バタフライ〉の美しさもすてがたい。

極めつけは、ファンク・ビートにカラフルで叙情的なメロディーを乗せた名曲〈アクチュアル・ブルーフ〉です。この曲の原題は〈The Spook Who Sat By The Door〉で、ハービーが音楽を担当した1973年公開の同名映画(日本未公開。『ブラック・ミッション/反逆のエージェント』としてビデオ化されたことがあるようです)からのセレクションです。

ところで、私が持っている CD (Columbia/Legacy CK 64984) のライナーは、ドラマーのマイク・クラークが過去をふり返って書いていて、ハービーのバンドに誘われた当時の様子も回想しています(訳は拙訳です)。

ハービー・ハンコック・バンドのオーディションの電話がかかってきた日は、ぼくの人生でもっともエキサイティングな日のうちのひとつだね。(中略)最初、ぼくらはトリオで演奏した。はじめてすぐに、ぼくらは「ワープ・スピード」に突入した。ハービーはポールとぼくがやっていたことを瞬時に悟って、最初の8小節でそれを別の次元に引き上げたんだ。全員が同時にソロをとっているかのようだった。ぼくらはみなお互いの音を注意深く聴いていたから、混乱はなかった。ファンクと情熱が惜しみなく注がれた、正真正銘のインプロヴィゼーションだ。20分ほど演奏したあと、ハービーはすっくと立ち上がり、黒のロングコートを羽織って、ぼくのそばを通りすぎながら、ひと言こういった。「月曜にはシカゴへ出発だ」ハービーは静かにドアを出て行った。まるでダース・ベイダーのようだったよ。

なんかどこかで聞いたような話です(笑)。かつてマイルスの自宅で隠しオーディションを受け、そのまま次のレコーディングに呼ばれたハービーは、自分でも同じことをやってみたかったのかもしれません。ジャズの伝統はこうやって先輩から後輩へと受け継がれていくのでしょう???

 

Herbie Hancock "Thrust"
(Columbia PC 32965)

Bennie Maupin (soprano, tenor sax, saxello, bass clarinet, alto flute)
Herbie Hancock (Fender Rhodes, clavinet, synthesizer)
Paul Jackson (electric bass)
Mike Clark (drums)
Bill Summers (percussion)

Produced by David Rubinson, Herbie Hancock
Recorded by Fred Catero
Recorded at Wally Heider Studios, SF; August 1974

[Tracks]
01. Palm Grease Herbie Hancock (music)
02. Actual Proof Herbie Hancock (music)
03. Butterfly Herbie Hancock, Bennie Maupin (music)
04. Spank-A-Lee Herbie Hancock, Mike Clark, Paul Jackson (music)

[Links: Bennie Maupin]
Bennie Maupin (Official Website)
Bennie Maupin Discography (by Christian Genzel)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Paul Jackson]
Paul Jackson (Official Website)
[Links: Mike Clark]
Mike Clark (Official Website)
[Links: Bill Summers]
Bill Summers (Official Website)

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