2007年05月24日

ハービー・ハンコック『ヘッド・ハンターズ』

headhunters.jpg

ハービーの名を一躍世間に知らしめたメガヒット作、『ヘッド・ハンターズ』。電化路線に行き詰まりつつあったハービーが、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの演奏に衝撃を受け、ファンク・ビートを取り入れて、ある意味わかりやすい形で提示した本作は、ポップ・チャートを駆け上がって13位までのぼりつめ、150万枚を売ってプラチナ・ディスクを獲得したというから驚きです。

ビッチェズ・ブリュー』前後のマイルスのセッションに参加したミュージシャンのうち、ジャズ・ロック路線に活路を見出したチック・コリア(リターン・トゥ・フォーエヴァー)やジョン・マクラフリン(マハヴィシュヌ・オーケストラ)、フュージョン時代に天下をとったウェン・ショーターとジョー・ザウィヌル(ウェザー・リポート)とは違って、ハービーが押し進めたのはエレクトリック・ファンク路線。独特のうねるようなビートの主戦場は、コンサート会場ではなく、ダンス・フロアでした。

大ヒットしたディスコ・チューンというだけで引いてしまうジャズ・ファンも多いと思いますが(笑)、食わず嫌いなだけで、実はけっこう楽しめると思います。リズムはシンプルですが粘っこく、そのうえをエレピやシンセで駆け巡るハービーの妙技も堪能できます。電化以降のマイルス、とくに『ビッチェズ・ブリュー』や『オン・ザ・コーナー』にスッと入れた人なら、絶対気に入ります。一筋縄ではいかないマイルス盤よりはるかにわかりやすい(笑)。ハービーのポップな資質が見事に開花しています。

オープニングは、あまりにも有名な〈カメレオン〉。ポール・ジャクソンのベースが執拗にくり返す強烈なビートに思わず身体がよじれます。幾重にも重なるハービーのキーボード。ときおり聴こえるベニー・モウピンの低音ブロウが、電化サウンドのいいスパイスとなっています。七色に変化する曲調もそうですが、変幻自在のハービーの生き方を表してあまりあるタイトルです。

ハービー初のヒット曲〈ウォーターメロン・マン〉も、新たにアフリカンな装いをまとって再登場します。最初に聴こえる笛のような音は、なんでしょう? パーカッションのビル・サマーズの楽器リストに「Beer Bottle」とあるので、もしかしたらビール瓶に息を吹き込んで出した音!? まさかね。

〈スライ〉はそのものズバリ、ハービーがファンク路線に進むきっかけとなったスライ・ストーンに捧げた曲ですね。彼らの音楽に魅せられたハービーは、スライとの共演を望んだのに、スノッブな自分が邪魔をして果たせなかったとインタビューで答えています(『定本ハービー・ハンコック』より)。ベニー・モウピンが大活躍ですが、これ、サクセロですか? ソプラノ・サックスとはちと違うような。ローランド・カークのマンゼロを思わせる音色です。

 

Herbie Hancock "Head Hunters"
(Columbia KC 32731)

Bennie Maupin (soprano & tenor sax, saxello, bass clarinet, alto flute)
Herbie Hancock (Fender Rhodes, clavinet, synthesizer, pipes)
Paul Jackson (electric bass, marimbula)
Harvey Mason (drums)
Bill Summers (congas,shekere, balafon, agogo, cabasa, hindewho, tambourine, log drum, surdo, gankoqui, beer bottle)

Produced by David Robinson, Herbie Hancock
Recorded by Fred Catero, Jeremy Zatkin & Dane Butcher, John Vieira
Recorded at Wally Haider Studios & Different Fur Trading Co., SF; 1973

[Tracks]
01. Chameleon Herbie Hancock (music)
02. Watermelon Man Herbie Hancock (music)
03. Sly Herbie Hancock (music)
04. Vein Melter Herbie Hancock (music)

[Links: Bennie Maupin]
Bennie Maupin (Official Website)
Bennie Maupin Discography (by Christian Genzel)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Paul Jackson]
Paul Jackson (Official Website)
[Links: Harvey Mason]
Harvey Mason (Official Website)
[Links: Bill Summers]
Bill Summers (Official Website)

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2007年05月20日

ハービー・ハンコック『ファット・アルバート・ロウタンダ』

fatalbertrotunda.jpg

ハービーのワーナー移籍第一弾『ファット・アルバート・ロウタンダ』は、自身が手がけた1969年11月放映の TV アニメ・スペシャル『Hey, Hey, Hey, It's Fat Albert』の音楽を、ジャズ風にアレンジし直して吹きこんだアルバムです。番組のなかで一人で何役もの声優をこなしたビル・コズビーが、ワーナー・ブラザーズの重役連中にこの音楽を聴かせたことがきっかけで、ワーナーへの移籍が実現したというのですから、映画音楽も手がけるハービーらしいエピソードです(ちなみに、このスペシャル番組は好評だったようで、のちに『Fat Albert & Cosby Kids』としてシリーズ化されました)。

基本的なメンバーは前作『ザ・プリズナー』と同じセクステットですが、聴こえてくる音楽はまるで違います。それもそのはず、アルバムはどこかなつかしい(笑)ギター・サウンドで幕を開けます。ジャズ・ロックってやつですね。すでに1966年にミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画『欲望』(原題:Blow-up)のサントラ盤で大胆にロックを導入したハービーのこと、この手のアルバムの制作は必然だったのかもしれません。

ジャズ・ロックって、パッと聴いた感じは嫌いじゃないんですが、こればっかりだとつらい(笑)。構成は単純だし、ノリも一定だから、はっきりいって飽きちゃうんですよね。それを知ってか知らずか、曲を短めにしたり、途中でホーン・セクションをうまく取り入れたりして、飽きがこないようにつくってあるのは、さすがです。でも、それ以上に成長の跡を感じさせるのは、ハービーのエレピの腕前です。

ハービーは『ザ・プリズナー』でもエレクトリックとアコ―スティックの両方のピアノを使い分けていましたが、必然性はほとんど感じられませんでした。アコースティックと同じ弾き方でとりあえずエレピを弾いてみました、みたいなノリです。でも、ここでのエレピはきれいにはまっています。軽くてビューティフルな音を生かした曲づくりがよくやくサマになってきた。そんな気がします。

マイルスに突然エレピを弾けといわれたときは面食らったかもしれませんが、ハービーは大学で電子工学で専攻していたぐらいですから、電気仕掛けの新種のオモチャに興味がわかないはずがない。実際、彼はわずか1年でエレピを完全にものにします。『マイルス・デイビス自叙伝2』には、ハービーの電気製品マニアぶりを伝えるエピソードが載っています(訳は中山康樹さん)。

ハービーは電気製品が大好きで、ツアーに出ると新しい電気製品を買うのにいつも大忙しだった。すべての演奏を録音したがって、いつも小さなテープ・レコーダーを持ってくるほどだった。そして彼は、ヤクとかそういう理由じゃなかったが、いつも遅刻して、最初の曲の最初のダウンビートから入ってくることが多かった。で、野郎をちょっときつく睨むんだが、なんと彼が最初にやることというのは、ピアノの下に潜って、いい音で録れるようにテープ・レコーダーを調整することだった。調整が終る頃には、オレ達はその曲の四分の三くらいまで行ってるというのに、彼はまだピアノを弾いてすらいない。それが、レコードにもなったオレ達のライブ・レコーディングの初めでピアノの音が聞こえない理由だ。ハービーが遅れるかどうかというのは、いつもバンドのジョークにまでなっていた。

神舘和典さんの『音楽ライターが、書けなかった話』(新潮新書)には、遅刻常習犯ハービーの言い訳(笑)が紹介されています。

ある宗教に入信しているハービーは、ホテルの部屋を出る前にたっぷりとお祈りをしてくるらしい。そのために、いつも約束の時間に間に合わなくなるそうだ。

ここで「ある宗教」とあるのは、創価学会です。「南無妙法蓮華経」のお題目を唱えていると遅刻してしまうんだそうな。ホンマかいな。

ちなみに、ハービーに創価学会をすすめたのは、ベースのバスター・ウィリアムズです。そして、ハービーは親友ウェイン・ショーターを創価学会に招き入れます(ウェインと当時の妻アナ・マリアは、長女イスカの障害に悩んでいました。生後3か月の赤ん坊に義務づけられた破傷風の予防接種でひきつけを起こし、脳に障害が残ってしまったのです。夫婦の苦悩と入信のいきさつは、『フットプリンツ:評伝ウェイン・ショーター』にくわしく載っています)。



Herbie Hancock "Fat Albert Rotunda"
(Warner Bros. WB 1834)

Johnny Coles (trumpet, flugelhorn)
Joe Henderson (alto flute, tenor sax)
Garnet Brown (trombone)
Herbie Hancock (piano, electric piano)
Buster Williams (bass, electric bass) #2-6
Albert "Tootie" Heath (drums) #2-6

on #1, 7
Joe Newman trumpet)
Ernie Royal (trumpet)
Benny Powell (trombone)
Joe Farrell (alto sax, tenor sax)
Arthur Clark (baritone sax)
Ray Alonge (French horn)
Billy Butler (guitar)
Eric Gale (guitar)
Jerry Jermott (electric bass)
Bernard Purdie (drums)
George Devens (percussion)

Produced by Herbie Hancock
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; October 4, 16, November 26, December 8, 1969

[Tracks]
01. Wiggle-Waggle Herbie Hancock (music)
02. Fat Mama Herbie Hancock (music)
03. Tell Me A Bedtime Story Herbie Hancock (music)
04. Oh! Oh! Here He Comes Herbie Hancock (music)
05. Jessica Herbie Hancock (music)
06. Fat Albert Rotunda Herbie Hancock (music)
07. Lil' Brother Herbie Hancock (music)

[Links: Joe Henderson]
Joe Henderson Discography (by Jeffrey Lovell @ JazzDiscography.com)
Joe Henderson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Buster Williams]
Buster Williams (Official Website)

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2007年05月19日

ハービー・ハンコック『ザ・プリズナー』

theprisoner.jpg Herbie Hancock - The Prisoner

1968年の夏を境に、ハービー・ハンコックは5年間在籍したマイルス・バンドを退団します。当時、マイルスは複数のキーボード奏者を投入した分厚いサウンドを試していたため、何度かスタジオに足を運んだハービーですが(その成果は『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ジャック・ジョンソン』『ゲット・アップ・ウィズ・イット』『ライヴ・イヴル』『オン・ザ・コーナー』などに分散して収録されています)、ふだんは自己のグループを率いて活動していました。

そのグループがトリオでなくセクステットだったという事実は、この時期のハービーの指向をよく表しています。前作『スピーク・ライク・ア・チャイルド』で、3管ホーン・セクションをバックに美しいピアノ世界を描き出したハービーは、この路線をさらに追求しようとレギュラー・セクステットを結成、さらに曲ごとに2組の3管を加えた計6管でアレンジの才を見せつけたのが、1969年4月録音の『ザ・プリズナー』です。

1曲目〈アイ・ハヴ・ア・ドリーム〉(有名なマーティン・ルーサー・キング Jr. 牧師の演説の一節。1963年8月28日のワシントン大行進にて)、2曲目〈ザ・プリズナー〉(囚われの身)と続けば、当然、黒人の地位向上を訴えたゴリゴリのプロテスト・ミュージックだと思うでしょう? でも、聴こえてくる音楽は、アレンジ重視の白っぽい音楽だったりするわけで、その落差にちょっと戸惑います。対象に没入しない、ハービーらしさがこんなところにも見え隠れしています。

編成からいっても『スピーク〜』の延長線上の作品なのは明らかですが、この両者、聴いた印象はずいぶん違います。『スピーク〜』は奇跡的なバランスで描き出された一枚の美しい絵画、『ザ・プリズナー』はねらいすぎて的をはずしたイミテーションといったらいいすぎでしょうか(いいすぎですね、やっぱり)。

たしかに洗練の度合いはあがっています。よく考えられたアレンジが、耳に心地よい風を運んでくれます。でも、それだけです。CTI のイージー・リスニング路線と同じにおいがします(そういえばこの時期、ハービーは、ウェス・モンゴメリーの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』を皮切りに、CTI の諸作に名前を連ねて、小遣い稼ぎに精を出していますね)。BGM として流すには気持ちのいい音楽ですが、残念ながら何度も取り出して聴く気にはなりません。

この作品を最後に、ハービーはブルーノートに別れを告げ、メジャーのワーナー・ブラザーズへ移籍します。人呼んで「暗黒時代」のはじまりです。

 

Herbie Hancock "The Prisoner"
(Blue Note BST 84321)

Johnny Coles (flugelhorn)
Garnett Brown (trombone)
Joe Henderson (tenor sax, alto flute)
Herbie Hancock (piano, electric piano)
Buster Williams (bass)
Albert "Tootie" Heath (drums)

with horn section on #1, 2, 4
Hubert Laws (flute)
Jerome Richardson (bass clarinet)
Tony Studd (bass trombone)

with horn section on #3, 5
Jerome Richardson (flute)
Romeo Penque (bass clarinet)
Jack Jeffers (bass trombone)

Produced by Duke Pearson
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; April 18 (#2, 4), 21 (#1), 23 (#3, 5), 1969

[Tracks] Herbie Hancock - The Prisoner
01. I Have A Dream Herbie Hancock (music)
02. The Prisoner Herbie Hancock (music)
03. Firewater Buster Williams (music)
04. He Who Lives In Fear Herbie Hancock (music)
05. Promise Of The Sun Herbie Hancock (music)

[Links: Joe Henderson]
Joe Henderson Discography (by Jeffrey Lovell @ JazzDiscography.com)
Joe Henderson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Buster Williams]
Buster Williams (Official Website)

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2007年05月17日

ハービー・ハンコック『スピーク・ライク・ア・チャイルド』

speaklikeachild.jpg Herbie Hancock - Speak Like a Child

ハービー・ハンコックのブルーノート第6弾『スピーク・ライク・ア・チャイルド』が吹きこまれたのは、1968年3月6日と9日。すでに前年、『ソーサラー』と『ネフェルティティ』でアコースティック音楽の頂点を極めたマイルスは、この時期、エレクトリック・サウンドに活路を見出して試行錯誤を重ねており(『マイルス・イン・ザ・スカイ』を参照)、ハービーもフェンダー・ローズをはじめとする新しいオモチャと格闘している最中でした。

マイルスのなかではアコースティックの時代は終わったのかもれませんが、ハービーはそうは思いませんでした。まだやり残したことがある。やりようによっては別の可能性を切り開くことができる。カギは「編曲」でした。学生のころからハーモニーとアレンジに関心をもっていたハービーにとって、それは自然な選択でした。

『スピーク〜』は一見すると3管セクステットの作品に見えますが、よく聴けば、ホーン陣にソロ・パートはありません。背後で「和音」を吹いているだけです。つまり、通常のフロント陣とリズム・セクションの関係が逆転していて、あくまでメインはピアノ・トリオです。

選ばれた3つの楽器というのがこれまた変わっていて、フリューゲルホーンにベース・トロンボーン、アルト・フルートという、ほかではあまり見かけない編成となっています。キンキン響くトランペットや肉声に近いサックスを外したこの編成、ねらいはその音色にあると見ました。全体に音がくぐもっていて、独特の丸みを生んでいます。「子供のように話す」繊細さを表現するのに、ハービーにはこの音色がどうしても必要だった。一風変わった楽器編成で独自のビッグ・バンド・サウンドを生み出したギル・エヴァンスに影響を受けたというハービーらしいチョイスです。

聴きものは、やはり表題曲〈スピーク・ライク・ア・チャイルド〉でしょう。これ、現代のピアノ・トリオとして聴いても、まったく違和感はありません。実に美しい。ホレボレします。曲の後半、ホーン・セクションがふたたび登場するあたりからの、ピアノとホーン・アンサンブルのからみあいは、何度聴いてもため息が出ます。

〈ライオット〉は『ネフェルティティ』で、〈ソーサラー〉は『ソーサラー』ですでに収録済みですね。とくにホーン・セクションが加わった〈ライオット〉は、ぜひマイルス・バンドの演奏と聴き比べることをおすすめします。跳ねるようなトニーのドラムスに触発されて、ロンが自由に動きまわる『ネフェルティティ』版〈ライオット〉は、一回限りの真剣勝負。破綻と隣り合わせの危うさが、ゾクゾクするような快感を生み出します。それに対して、リズムが一定な『スピーク〜』版〈ライオット〉は、再生可能なポップ・ミュージック。時流に乗ることにかけては、師匠マイルスをも凌駕したハービーの、いい意味のわかりやすさが出た演奏です。

ジャケット写真でキスしているのは、ハービーとまもなく奥さんになるジジその人。2人が幸せいっぱいのハネムーンから帰ってみると、マイルス・バンドのキーボードの椅子にはチック・コリアが座っていた(笑)という話は、いずれ『キリマンジャロの娘』で。

 

Herbie Hancock "Speak Like A Child"
(Blue Note BLP 4279 / BST 84279)

Thad Jones (flugelhorn) #1, 2, 4, 5
Peter Phillips (bass trombone) #1, 2, 4, 5
Jerry Dodgion (alto flute) #1, 2, 4, 5
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Mickey Roker (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; March 6, 9, 1968

[Tracks] Herbie Hancock - Speak Like a Child
01. Riot Herbie Hancock (music)
02. Speak Like A Child Herbie Hancock (music)
03. First Trip Ron Carter (music)
04. Toys Herbie Hancock (music)
05. Goodbye To Childhood Herbie Hancock (music)
06. The Sorcerer Herbie Hancock (music)

[Links: Jerry Dodgion]
Jerry Dodgion and the joy of Sax! (Official Website)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site

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2007年05月16日

ハービー・ハンコック『処女航海』

maidenvoyage.jpg Herbie Hancock - Maiden Voyage (The RVG Edition)

ハービー・ハンコックの代表作であるとともに、60年代新主流派を代表する超有名盤『処女航海』。1965年5月の録音ということは、マイルス・クインテットの『E.S.P.』の4か月後。前作『エンピリアン・アイルズ』のメンバーに加えて、1964年2月のライヴ盤『フォア&モア』ですさまじいバトルをくり広げたジョージ・コールマンが参加してます(ということは、ジョージはこの時点でハービーらと仲違いしてなかったのか。くわしくはここを見て)。

英国王室御用達の香水メーカー YARDLEY のテレビ CF 用に作曲したという〈処女航海(メイデン・ヴォヤージュ)〉。この曲を中心に、「海の広さと荘厳さ」を念頭に書き下ろした5つの美曲たち(ただし、〈リトル・ワン〉のみ『E.S.P.』が初出)。この時代には珍しいトータル・コンセプト・アルバムとして、『処女航海』はみずみずしい輝きを放っています。

アルバムはもちろん〈処女航海〉でスタートします。陽光きらめく朝の港から、たった今、はじめての航海へと船出する一艘の船。穏やかな波に揺られて、徐々に盛り上がっていくさまに、これからはじまる冒険への期待が高まります。前途洋々、旅立ちはいつも心躍るものです。

海風の香り漂う心地よい旅立ちから一転、船は嵐に遭遇します。〈ジ・アイ・オブ・ザ・ハリケーン〉。台風の目ならぬハリケーンの目です。不協和音に心がざわつきます。風雲急を告げる展開に、動揺が隠せません。大洋のなかでたった一人、取り残された不安と孤独。嵐に翻弄されるちっぽけな存在。〈リトル・ワン〉。自己の存在を見つめ直す機会です。嵐が去れば、時間だけは山ほどあります。瞑想の世界に浸ります。

嵐を生き残った自分という存在。ふとまわりを見渡すと、海には生命が満ちあふれています。〈サヴァイバル・オブ・ジ・フィッテスト〉。適者生存。過酷な生存競争を生き延びてきた生命にはどれも価値がある。その不思議に思いが至ったとき、自分はなぜ生かされたのか、その答えをつかんだ気がするのです。船の傍らをイルカの群れが泳いでいます。〈ドルフィン・ダンス〉。生きていてよかった。ホッとする一瞬です。心が洗われます。

 

Herbie Hancock "Maiden Voyage"
(Blue Note BLP 4195 / BST 84195)

Freddie Hubbard (trumpet)
George Coleman (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; May 17, 1965

[Tracks] Herbie Hancock - Maiden Voyage (The RVG Edition)
01. Maiden Voyage Herbie Hancock (music)
02. The Eye Of The Hurricane Herbie Hancock (music)
03. Little One Herbie Hancock (music)
04. Survival Of The Fittest Herbie Hancock (music)
05. Dolphin Dance Herbie Hancock (music)

[Links: Freddie Hubbard]
Freddie Hubbard Discography (by hubtones)
Hub Tunes: The Freddie Hubbard Discography
[Links: George Coleman]
George Coleman (Official Website)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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ハービー・ハンコック『エンピリアン・アイルズ』

empyreanisles.jpg Herbie Hancock - Empyrean Isles

三日月山脈(the mountains of Lune)を越えて、大東洋(the Great Eastern Sea)の中心に、光り輝く4つの宝石、エンピリアン諸島がある。靄に覆われた島々はときに輝き、ときに歪められながら、水面の少し上を彷徨っているように見える。どうやら空想の世界でしかお目にかかれないようだ。神話と伝承によって、島は神秘のヴェールをまとっている。その存在はとらえがたく、ふつうの人間は近づくことができないといわれている。

ブルーのジャケットが印象的なハービー・ハンコックの 4th アルバム『エンピリアン・アイルズ』。ノラ・ケリーによるオリジナル・ライナーには、神と天使が住まうというエンピリアン(=天空)の島々が幻想的に描かれています(訳は拙訳です)。伝説のその島からは、熟したカンタロープ(メロンの一種。果肉はオレンジ色)の匂いがたちこめ、その実を食べると不老不死になるといいます。よく晴れた風の強い日には、龍が住むというドーム型の火山エッグの頂上を拝むことができます。夢の島にはオリロクィ渓谷があります。人々はそこで意識を奪われ、怪しげな言語を操り、指を鳴らす複雑でビューティフルなダンスについて、あれこれ話しているといいます。

この架空の物語はおそらく、ハービー自作の4つの楽曲をあとから聴いたノラ・ケリーが、頭のなかで組み立てたものだと思いますが(先にストーリーがあって、それにあわせて曲を作ったのではなく)、ある種のコンセプトを感じさせる統一感が、このアルバムにはたしかにあります。

〈ワン・フィンガー・スナップ〉、日本語ふうにいうと「指パッチン」ですね(爆)。もう、めちゃめちゃカッコイイです。クールな熱情を思う存分、味わってください。ロン・カーターのベースではじまる〈オリロクィ・ヴァレー〉。これもいいです。背中がゾクゾクしてきます。続いて〈カンタロープ・アイランド〉、訳して「メロン島」(訳すなってか)。メロンといえば〈ウォーターメロン・マン〉なわけで、この曲がファンキー路線の正統な後継者であることが題名からもわかります。そして、〈ジ・エッグ〉。トニーがフリーに暴れまくるこの曲がなんで「卵」なんだろうと前から疑問に思っていたのですが、ノラはいつ噴火するかわからない恐ろしい火山になぞらえたんですね。なるほど〜。

〈カンタロープ・アイランド〉が有名ですが、はっきりいって、このなかではいちばんゆるい演奏です。むしろ、それ以外の3曲こそ聴くべきです。異様に張りつめた空気。揺れ動く感情を極限まで抑え込むことで、息苦しいほどの緊張感を生み出しています。明晰な頭脳によって描き出される研ぎすまされた世界。シビレるね〜。

1964年6月に吹きこまれた本作は、時期的には『フォア&モア』『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』(64年2月)と、『マイルス・イン・トーキョー』(64年7月)のあいだにあたります。ハービー、ロン、トニーの3人が従来のリズム・セクションの役割をはるかに超えて、表舞台に名乗りをあげつつあった、その時期です。メンバーは上記の三人に加えて、珍しくコルネットを吹くフレディ・ハバードをフロントに迎えたワン・ホーン作品。このフレディがいいんです。いつもの饒舌を封印して、爆発寸前のエモーションをうまくコントロールすることで、異様なテンションを封じ込めることに成功しています。

 

Herbie Hancock "Empyrean Isles"
(Blue Note BLP 4175 / BST 84175)

Freddie Hubbard (cornet)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; June 17, 1964

[Tracks] Herbie Hancock - Empyrean Isles
01. One Finger Snap Herbie Hancock (music)
02. Oliloqui Valley Herbie Hancock (music)
03. Cantaloupe Island Herbie Hancock (music)
04. The Egg Herbie Hancock (music)

[Links: Freddie Hubbard]
Freddie Hubbard Discography (by hubtones)
Hub Tunes: The Freddie Hubbard Discography
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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2007年05月11日

ハービー・ハンコック『インヴェンションズ&ディメンションズ』

inventionsanddimensions.jpg Herbie Hancock - Inventions and Dimensions RVG 2005

1963年5月、マイルスの『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』セッションに参加したハービーは、その後、ジャズ界を牽引するバンドのメンバーとして、長足の進歩を遂げます。3rd アルバム『インヴェンションズ&ディメンションズ』には、マイルス・バンド加入3か月後のハービーの姿が記録されています。

さて、このアルバム。ピアノ・トリオ作がほとんどないハンコックの、珍しい「トリオ+パーカッション」の作品だというとらえ方が一般的(?)で、私もそう思ってました。ところがよくよく聴いてみると、ドラムスなしのパーカッション2人に聴こえます。それもそのはず、ドラムスを叩いているのはコンガ奏者のウィリー・ボボ。つまり、彼は典型的なジャズ・ドラマーの役割を期待されていたのではなく、一風変わったパーカッション奏者として、この場に参加していたわけです。

さあ、困った。地味な印象しかなかった本作が、にわかに存在意義を主張しはじめました(笑)。さらに意識を集中して聴いていくと、あやしげな呪縛に意識がからめとられていくのがわかります。執拗にくり返されるリズム。同じところを行ったり来たりするフレーズ。けっして熱くならないのに、どういうわけかジワジワと身体がほてってきます。ジャワのガムランを聴いたときのような、不思議な恍惚感が全身を覆い尽くします。

なんだ、こりゃ。これまでまともに聴いてなかったのがバレバレですが、それにしても、こんな変なアルバムだったっけ? 聴けば聴くほど、妙な気分になってきます。ハイではない、即効性もない、でも徐々に身体が蝕まれる感じ。ジワジワと時間をかけてトランス状態にいたる摩訶不思議なこれらの音楽は、驚くべきことに、ほとんど事前の取り決めなしで、その場で即興的につくられたといいます。

でも、あらためてそういわれてみると、たしかにそんな気がします。曲として完結しない、出口の見えない迷宮のような音楽です。4曲目の〈ミモザ〉だけ、かろうじて「曲っぽさ」が感じられますが、これは正解でした。ナット・ヘントフの手になるオリジナル・ライナーには、この曲だけあらかじめ「書かれていた」と述べられています。おお、私の耳も捨てたもんじゃないな(笑)。

 

Herbie Hancock "Inventions And Dimensions"
(Blue Note BLP 4147 / BST 84147)

Herbie Hancock (piano)
Paul Chambers (bass)
Willie Bobo (drums, timbales)
Osvaldo "Chihuahua" Martinez (conga, bongo)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; August 30, 1963

[Tracks] Herbie Hancock - Inventions and Dimensions RVG 2005
01. Succotash Herbie Hancock (music)
02. Triangle Herbie Hancock (music)
03. Jack Rabbit Herbie Hancock (music)
04. Mimosa Herbie Hancock (music)
05. A Jump Ahead Herbie Hancock (music)

[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)

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2007年05月10日

ハービー・ハンコック『マイ・ポイント・オブ・ヴュー』

mypointofview.jpg Herbie Hancock - My Point of View

モンゴ・サンタマリアがカヴァーした〈ウォーターメロン・マン〉の大ヒットによって、「ビューティフルで真っ白の人目を引くスポーツ・カー(コブラ)」を手に入れたハービー・ハンコック。ブルーノートがこの状況を放っておくはずはなく、ハービーは早くも1963年3月には、 2nd アルバム『マイ・ポイント・オブ・ヴュー』を吹きこみます。

アルバムの冒頭を飾る〈ブラインド・マン、ブラインド・マン〉。これはもう完全に受け狙いの〈ウォーターメロン・マン〉路線ですね(笑)。シカゴ生まれのハービーはオリジナル・ライナーで「南部の綿花畑もワーク・ソングも知らない」と告白していますが、シカゴにだって黒人を取り巻く厳しい状況はあったわけで、「ストリートに立つ盲目のギタリスト」を題材にこの曲をつくったといいます。

でも、比較的裕福な家庭で育ち、クラシック・ピアニストの鍛錬も積んできたお坊ちゃんにとっては、「スイカ男」も「盲目のギタリスト」もあくまで観察の対象で、自分を同類視することはなかった。相手に共感し、ともに嘆き、ともに叫ぶという同胞愛的な熱さはなく、対象と距離をとって観察しているようです。ブルースの本場で育ちながらブルースを感じさせない、バリバリのブラック・ミュージックを演っても黒っぽさ一辺倒にならないハービー・ハンコックという特異なキャラクターは、この冷静な観察眼がもとになっている気がします。

印象に残るのは、ファンキー路線の1曲目や R&B の影響を受けたという5曲目〈アンド・ホワット・イフ・アイ・ドント〉よりも、むしろ3管メッセンジャーズ的な行き方にハッとする3曲目〈キング・コブラ〉です。ハービー自慢の愛車の名前を借りたこの曲は、のちに「新主流派」と称される音楽のクールネスを感じさせます。

メンバーでは、やはりトニー・ウィリアムズの参加が目を引きますね。ハービーとトニーの初共演かと思いきや、1か月ほど前にジャッキー・マクリーンのセッションで顔を合わせていたんですね。そのときの模様は『ヴァーティゴ』(Blue Note LT 1085)という後年発表盤で聴くことができます。

 

Herbie Hancock "My Point Of View"
(Blue Note BLP 4126 / BST 84126)

Donald Byrd (trumpet)
Grachan Moncur III (trombone)
Hank Mobley (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Grant Green (guitar)
Chuck Israels (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; March 19, 1963

[Tracks] Herbie Hancock - My Point of View
01. Blind Man, Blind Man Herbie Hancock (music)
02. A Tribute To Someone Herbie Hancock (music)
03. King Cobra Herbie Hancock (music)
04. The Pleasure Is Mine Herbie Hancock (music)
05. And What If I Don't Herbie Hancock (music)

[Links: Donald Byrd]
Donald Byrd Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Grachan Moncur III]
Trombone master and living regend Grachan Moncur III (Official Website)
Grachan Moncur III Discography (by Vincent Bessieres)
[Links: Hank Mobley]
Hank Mobley Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Grant Green]
The Green Room (Official Website)
Grant Green Page (by John Harris)
Grant Green: a discography with cover photos (by Atushi acchan Ueda)
Grant Green Discography Projact (@ Jazz Discography Projact)
[Links: Chuck Israels]
Chuck Israels (Official Website)
[Links: Tony Williams]
Tony Williams a few Collction (by ANTAIOS)

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2007年05月08日

ハービー・ハンコック『テイキン・オフ』

takinoff.jpg Herbie Hancock - Takin' Off

ハービー・ハンコック(Herbert Jeffrey Hancock)は1940年4月12日、イリノイ州シカゴで生まれました。7歳でクラシック・ピアノをはじめたハービーは、早くも11歳で(!)地元シカゴ交響楽団と共演しています。演目はモーツァルトのピアノ協奏曲だったとか。

早熟なピアノ少年はしかし、黒人の大衆音楽についてはウブでした。中学に入って R&B を聴くようになりますが、それも最初は「不思議なコードが鳴っていて、変わったフレーズが聞こえてきた」からでした。つまり、ハービーにとって、黒人のリズムやブルースは分析の対象であって、はじめから身体に備わった感覚ではなかった。ハービーの作品は、たとえそれがファンキー路線の曲であっても、非常に知的な営みを感じさせますが、対象に埋没せず、距離を置いて演奏する彼のクールネスは、このころから培われてきたものなのでしょう。

ハイスクール時代、ジョニー・スミスの『ヴァーモントの月』を聴いてジャズに目覚めたハービーの、最初のアイドルは英国人ジョージ・シアリングでした。デイヴ・ブルーベック、ピート・ジョリー、スタン・ケントン。出てくる名前は白人ばかり。さらには白人コーラス・グループ、ハイ・ローズのアレンジ(編曲はクレア・フィッシャー)に興味をもって、コピーに励んだりしたそうです。

大学は、オハイオ州グリネル・カレッジで電子工学を専攻します。途中、芸術学部作曲科に転入しますが、のちに電気楽器をあやつり、コンポーザー/アレンジャー・タイプのピアニストとして大成するハービーの関心は、当時から「電気」と「作編曲」にあったわけです。

そしてこの時期、世紀の傑作『カインド・オブ・ブルー』と出会います。ハービーの心をとらえたのは、ビル・エヴァンスの斬新なハーモニーでした。以下、引用はジャズ批評ブックス『定本ハービー・ハンコック』より。

「ビル・エヴァンスから影響を受けたのは、ハーモニー感覚だ。初めて『カインド・オブ・ブルー』を聴いた時、私はすでにある種のハーモニー感覚を身につけていたが、このレコードでビル・エヴァンスを知ってからは、勉強のためにずい分聴いた。ハーモニック・コンセプトが彼と似ているクリス・アンダーソンと共に、ビル・エヴァンスは私の基礎だ」

大学卒業後の1960年6月、ハービーは故郷のシカゴに戻り、コールマン・ホーキンスのバンドで演奏するなど、地元で頭角を現します。同年12月、シカゴを訪れたドナルド・バード&ペッパー・アダムスの双頭クインテットに参加(大雪で来られなかったレギュラー・ピアニスト、デューク・ピアソンの代役だった)。それがきっかけとなって、翌61年1月、ニューヨークに呼び寄せられ、すぐさまバンドの正式メンバーとなりました。

初リーダー作『テイキン・オフ』が吹きこまれたのは、1962年の5月。バード&アダムスのリズム・セクションをそのまま借り受け、フロントには進境著しいフレディ・ハバードと、前年シーンに復帰した生粋のビバッパー、デクスター・ゴードンを迎えます。新旧世代が入り交じった意表をつく組み合わせですが、ハービーのプレイそのものはまだおとなしく、完全に猫をかぶっています。有名なファンキー・チューン〈ウォーターメロン・マン〉だって、かわいいもんです(笑)。

幼少時代に見た、リヤカーを引きながらスイカを売る「スイカ男」をイメージしてつくったというこの曲、ハービー自身の演奏もシングルカットされたようですが、そのときはちっとも話題にならず、翌63年にキューバ生まれのパーカッション奏者モンゴ・サンタマリアがカバーしてから一気にブレイクします(ビルボードのチャートでトップ10入り)。「ヘイ! ウォーターメロン・マン」のかけ声も楽しいモンゴのカバー・ヴァージョンは、アルバム『グレイテスト・ヒッツ』などで入手可能です。

この曲のヒットで、ニューヨークに出てきてから〈エンプティ・ポケット〉(からのポケット=一文無し)だったというハービーの懐も少しは潤ったことでしょう。ここからハービーの躍進がはじまります。

 

Herbie Hancock "Takin' Off"
(Blue Note BLP 4109 / BST 84109)

Freddie Hubbard (trumpet)
Dexter Gordon (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Butch Warren (bass)
Billy Higgins (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; May 28, 1962

[Tracks] Herbie Hancock - Takin' Off
01. Watermelon Man Herbie Hancock (music)
02. Three Bags Full Herbie Hancock (music)
03. Empty Pockets Herbie Hancock (music)
04. The Maze Herbie Hancock (music)
05. Driftin' Herbie Hancock (music)
06. Alone And I Herbie Hancock (music)

[Links: Freddie Hubbard]
Freddie Hubbard Discography (by hubtones)
Hub Tunes: The Freddie Hubbard Discography
[Links: Dexter Gordon]
DexterGordon.com (Official Website)
Long Tall Dexter: Dexter Gordon Story (by Big-M)
Dexter Gordon Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Sophisticated Giant: The Dexter Gordon Discography
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)

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2007年05月07日

マイルス・デイヴィス『マイルス・イン・ザ・スカイ』

miles_milesinthesky.jpg

GW 最終日の昨日は、原宿でドラリオンを観てきました(4人で4万円の出費!!!)。娘はもちろん、親の私たちもシルク・ドゥ・ソレイユは初体験。人間離れした技の数々に興奮しっぱなしでした。出演者はアジア系が多かったようですが、やっぱり中国雑技団の出身なのでしょうか? 

人間離れというか、世俗を遠く離れ、神の領域に踏み込もうとした哀れなジョン・コルトレーン。彼が肝硬変であの世へと旅立っていったのは、1967年7月17日のことでした。そのわずか2日後、スタジオ入りしたマイルスは『ネフェルティティ』を録り終え、トレーンとは別の意味で、この世のものとは思えない音楽を完成させます。

アコースティックの世界でやるべきことは残っていない。モダンジャズの生き証人、パーカーとの共演からクール、ハードバップ、モードと、つねにシーンの最前線で時代の変遷を目の当たりにしてきたマイルスをして、そう確信させるほどの、究極の音楽。『ネフェルティティ』のすばらしさについては、ジョニ・ミッチェルがコメントを残しているので、こちらの「追記」に引用しておきました。

アコースティックな音楽で前人未到の高みにまで登り詰めたマイルスの次なる関心は、当然のことながら、エレクトリック楽器に向かいます。とくにギターのヴォイシングをいかにみずからの音楽に取り入れるか。あわせて、同じコード楽器のピアノをどうするか。そこに焦点を絞ったマイルスは、1967年12月以降、立て続けにギタリストを加えたレコーディングを重ねます。

12月04日、ジョー・ベック (guitar)、ハービー (celeste)。
12月28日、ジョー・ベック (guitar)、ハービー (Fender Rhodes, clavinet)。
さらに年が明けて(1968年)、
01月12日、バッキー・ピザレリ (guitar)、ハービー (electric harpsichord)。
01月16日、ジョージ・ベンソン (guitar)、ハービー (piano, Fender Rhodes)。

こうしてみると、見事なまでにマイルスの試行錯誤のあとがうかがえます。このなかで、当初リリースされたのは最後のジョージ・ベンソンが参加したセッションだけでした。〈パラフェルナリア〉という曲が、エレクトリック・マイルスの端緒となった『マイルス・イン・ザ・スカイ』に収録されています(残りの演奏は後年発売されたオムニバス盤『サークル・イン・ザ・ラウンド』『ディレクションズ』に入っていました)。

ジャズ批評ブックス『定本ハービー・ハンコック』には、突如エレクトリック・ピアノを弾くよう指示されたハービーの戸惑いが記録されています。

ある日 CBS のスタジオへ行った。(中略)ところが……ピアノがないんだよ、どこにも。で、「マイルス、ボクに何を弾いて欲しいんだい?」って訊くと、「あれだ」って、例の奇妙な声で言うんだ。(中略)そこにあるのは、エレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)だった。でも僕は、エレクトリック・ピアノなんて、おもちゃだ、シリアスな楽器じゃないって思ってたんだ。こんなオカシな楽器なんて弾いてみたこともなかった。まあ、仕方なく弾いてみたんだけど、これがビューティフル・サウンドなんだ(笑)。暖かくて。

さすがに習作の域を出ない作品ですが、単純なリフのくり返しと生まれたばかりの電気ピアノ、フェンダー・ローズの響きが、その後のマイルスを予兆させるアルバムとなっています。ひとたびエレクトリックの世界に足を踏み入れたマイルスは、二度と振り返ることはありませんでした。

 

Miles Davis "Miles In The Sky"
(Columbia CS 9628)

Miles Davis (trumpet)
Wayne Shorter (tenor sax)
Herbie Hancock (piano, electric piano #1, 2)
George Benson (guitar) #2
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by Teo Macero
Recorded by Frank Laico, Arthur Kendy
Recorded at Columbia Studio B, NYC; January 16 (#2), May 15 (#4), 16 (#3), 17 (#1), 1968

[Tracks]
01. Stuff Miles Davis (music)
02. Paraphernalia Wayne Shorter (music)
03. Black Comedy Tony Williams (music)
04. Country Son Miles Davis (music)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wayne Shorter]
ウェイン・ショーターの部屋 (by Y. Yamada)
Dr. Morf's Wayne Shorter Page
The Complete Wayne Shorter Discography
Wayne Shorter Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: George Benson]
George Benson (Official Website)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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2007年05月04日

マイルス・デイヴィス『ソーサラー』

miles_sorcerer.jpg

1967年5月、西海岸での仕事を終えたマイルス・バンドの一行はニューヨークのスタジオに集結、『ソーサラー』を吹きこみます(といっても、ベースのロン・カーターは西海岸ツアーに不参加。リチャード・デイヴィスが代役をつとめています)。

オープニングは、ウェインのオリジナル〈プリンス・オブ・ダークネス〉。「暗黒の王子」とは恐れ入りますが、これ、マイルスの愛称です(笑)。どこから来たのか、どこへ行くのか。それともどこへも行かないのか。この独特なゆらぎを生み出しているのは、トニーのシンバルにからみつく、ロンの自在なベース・ワークです。才気走ったトニーやハービー、空中からメロディーをとりだすウェインの陰に隠れがちですが、ここでのロンのベースはすごい。本来のキープ役を放棄して、あっちへふらふら、こっちへふらふら。それでいて、曲のもつ雰囲気を見事に表現しています。

続いて、マイルス抜きのカルテットによる〈ピー・ウィー〉。トニーのオリジナルですね。〈マスクァレロ〉〈リンボ〉〈ヴォネッタ〉はウェインの作。表題曲〈ソーサラー〉(魔術師)はハ―ビーのオリジナルです。

ここにきてついに、マイルスのオリジナルさえ姿を消します。創造力のピークに達しつつあったウェイン、トニー、ハービー。彼ら自身の楽曲をとりあげ、思う存分演奏させながら、最後の一線だけは越させない、この異様なまでの威圧感。陰で糸を引きながら、すべてを「マイルスの音楽」にまとめあげるこの圧倒的な統率力こそ、「魔術師」マイルスのカリスマ性の源です。

ジャケットの女性はマイルスの新恋人シシリー・タイソン。邦盤ライナー(村井康司さん)の指摘で気づいたのですが、次作『ネフェルティティ』のマイルスとセットになっています(2枚を横に並べると、2人が向き合う格好になっている)。そういえばこの2枚、録音時期も近く(前者が67年5月、後者が6, 7月)、音楽的な方向性も似ています。にもかかわらず、アルバムから漂ってくるオーラが決定的に違う。それはひとえに、意味不明の〈ナッシング・ライク・ユー〉のせいです!

中山康樹さんはかねてより〈ナッシング・ライク・ユー〉の抹殺を主張されていますが(『マイルスを聴け! Version 7』)、まったく同感です。この世から消えてほしい(笑)。で、私は消しました。私の iTunes にはボブ・ドローの名前は出てきません(爆)。

私は基本的に、オリジナル盤の制作者の意図を無視したボーナストラックには反対の立場ですが(それは私が本の編集という制作者サイドの仕事を本職としていることと無関係ではありません)、これはいただけない。マイルスとウェインの初共演セッションだからといって、なぜ62年のまぬけな録音を『ソーサラー』に入れたのか。ホントにいまいましい。センス、ゼロです、テオ・マセロさん!!!

ちなみに、このセッションの残りの1曲は『ジングル・ベル・ジャズ』という身もふたもないコンピ盤に収められています。以下、マイルス自身の回想です(『マイルス・デイビス自叙伝2』より)

コロンビアは続いて、クリスマス・レコードを作ることを思いついて、ギルにアレンジを頼んだ。そこまではよかったが、ボブ・ドローという馬鹿げたボーカリストを入れて歌わせたほうがヒップだと考えやがった。ウェイン・ショーターのテナー、フランク・リハクというトロンボーン、ウィリー・ボボのコンガで、8月にレコーディングした。最悪のレコーディングだった。これについては話さなければ話さないほどいい。ただ、ウェインと初めて一緒にやれたし、彼のやったことは、すごく気に入った。


 

Miles Davis "Sorcerer"
(Columbia CL 2732 / CS 9532)

Miles Davis (trumpet) omit #2
Wayne Shorter (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by Teo Macero
Recorded by Fred Plaut, Ray Moore
Recorded at Columbia Studio B, NYC; May 16 (#5, 6), 17 (#3, 4), 1967
Recorded at Columbia 30th Street Studio, NYC; May 24 (#1, 2), 1967

#7
Bob Dorough (vocal)
Miles Davis (trumpet)
Frank Rehak (trombone)
Wayne Shorter (tenor sax)
Paul Chambers (bass)
Jimmy Cobb (drums)
Willie Bobo (bongo)

Recorded at Columbia Studio A, NYC; August 21, 1962

[Tracks]
01. Prince Of Darkness Wayne Shorter (music)
02. Pee Wee Tony Williams (music)
03. Masqualero Wayne Shorter (music)
04. The Sorcerer Herbie Hancock (music)
05. Limbo Wayne Shorter (music)
06. Vonetta Wayne Shorter (music)
07. Nothing Like You Fran Landesman, Bob Dorough (music and lyrics)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wayne Shorter]
ウェイン・ショーターの部屋 (by Y. Yamada)
Dr. Morf's Wayne Shorter Page
The Complete Wayne Shorter Discography
Wayne Shorter Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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2007年05月02日

マイルス・デイヴィス『マイルス・スマイルズ』

miles_milessmiles.jpg

シカゴ、プラグド・ニッケルでの壮絶な果たし合いを経て、究極の高みへと達しつつあったマイルス・デイヴィス・クインテット。でも、すべてが順風満帆だったわけではありません。むしろ、プライヴェートな面では困難な時期を迎えていました。

1962年に父を、64年に母を失い、コカインに手を染めたマイルス。65年には、それが原因で妻フランシスさえ家を出ていきます(マーロン・ブランドとの浮気が新聞報道される、というダメージもあった)。みずからも股関節炎で手術、その後肝炎を患い一時離脱するなど、文字どおり心身ともにボロボロだったマイルスです。

同僚ウェイン・ショーターにも個人的な災厄がふりかかります。妻アイリーン(日本名テルコ)との離婚、そして父親の突然の交通事故死(どちらも1966年)。心にポッカリ空いたすきまを埋めるために、マイルスとウェインは夜な夜な酒を傾けたといいます。

ウェインはもともと孤独を好む人間で、ツアー中もメンバーと行動をともにすることはほとんどありませんでした。仕事が終わると一人でホテルの部屋に帰り、古い映画を観たり、本を読んだり、思索に耽ったりするのがウェインの日課でした。そのウェインがコニャックに溺れます。アルコールの影響はプレイにも現れ、メンバーの怒りを買ったといいます。

そんななか、20か月ぶりに訪れたスタジオで、傑作『マイルス・スマイルズ』が生まれます。ほとんどワン・テイクで録ったというのに驚くべき完成度の高さ。ウェインもマイルスも、悲しみに暮れるだけの男ではありませんでした。

ここには、ウェインの曲が3曲も収められています。〈オービット〉(軌道)。〈フットプリンツ〉(足跡)。そして、いとこの名をとったという〈ドロレス〉。ウェインの代表曲〈フットプリンツ〉の初出は、8か月前に吹きこんだリーダー作『アダムズ・アップル』ですが、アップテンポで演奏される本作のほうに強い愛着を覚えます。ちなみに、私のフリーランスの仕事の屋号は「フットプリンツ」です。

追記:タイトルについて

Miles は「マイルズ」と濁るのが正しい発音なので、本来なら『マイルズ・スマイルズ』となって、ダイレクトに洒落がわかる仕組みになっているのですが、そんなことが言いたいわけじゃありません。

「マイルスが笑う」って、変だと思いませんか? いや、マイルスだって人間だから笑うに決まっているのですが、ステージ上でも、いつもむっつりと押し黙り、「黙ってオレの歌を聴け」といわんばかりの傲慢さがマイルスの専売特許だったはず。その彼が「笑う」というのですから、これは一大事件です(笑)。

ジャケットを見ると、たしかにマイルスはニヤついています。だらしなく口を開け、目元も垂れ下がっています。この「笑い」が意味するのは何か。これこそ勝利の微笑みじゃないか、というのが私の解釈です。プラグド・ニッケルでのあからさまな謀反を抑え、バンドの主導権を取り戻した帝王マイルスの勝利の微笑み。

このアルバムでは、演ってることは相当激しいのに熱くならず、非常に均整のとれた音楽が展開されています。2曲目のマイルス唯一のオリジナル〈サークル〉なんか、まんま『カインド・オブ・ブルー』の世界です。メンバーの気持ちが冷めているわけじゃありません。彼らは内に熱い激情を燃やしている。でも、それをストレートに表出するのではなく、あくまでグループ表現のなかで自己の可能性を追求する。

表現したいという欲望とグループとしての統制。この両者が非常に高い次元でせめぎあい、極度の緊張を生む。このクインテットがほかのどのバンドとも決定的に違う、唯一無二の存在となったのは、このギリギリ感に負うところが大きいのではないかと思います(ついでにいうと、このギリギリのせめぎあいが最高潮に達し、爆発寸前までいったのが『ネフェルティティ』だと個人的には思っています)。

メンバーのあくなき表現欲をギリギリのところで統制するリーダー、マイルス。この統制力を手に入れた喜びが、はからずも微笑みとなって現れた。うがった見方だというのは百も承知。でも、そう考えたくもなるマイルスの奇妙な「笑い」なのでした。

 

Miles Davis "Miles Smiles"
(Columbia CL 2601 / CS 9401)

Miles Davis (trumpet)
Wayne Shorter (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by Teo Macero
Recorded at Columbia 30th Street Studio, NYC; October 24 (#1, 2, 4, 5), 25 (#3, 6), 1966

[Tracks]
01. Orbits Wayne Shorter (music)
02. Circle Miles Davis (music)
03. Footprints Wayne Shorter (music)
04. Dolores Wayne Shorter (music)
05. Freedom Jazz Dance Eddie Harris (music)
06. Gingerbread Boy Jimmy Heath (music)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wayne Shorter]
ウェイン・ショーターの部屋 (by Y. Yamada)
Dr. Morf's Wayne Shorter Page
The Complete Wayne Shorter Discography
Wayne Shorter Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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