2007年04月30日

パット・メセニー『トリオ 99 → 00』

metheny_trio99-00.jpg Pat Metheny Trio - Trio 99-00

引き続き、アニーの作曲者チャールズ・ストラウスのミュージカル『バイ・バイ・バーディー』より、〈ア・ロット・オブ・リヴィン・トゥ・ドゥ〉を。

パット・メセニーの純ジャズ作品『トリオ 99 → 00』。パットのオリジナル(と2曲のジャズメン・オリジナル)のなかに、たった1曲紛れ込んだスタンダード・ソング。それが〈ア・ロット・オブ・リヴィン・トゥ・ドゥ〉です。

ふつう、この展開だと期待するじゃないですか。特定のイメージと結びつかない抽象的なオリジナルの世界にあって、その片隅にそっと咲く一輪の花のように、具体的でたしかな何か。古くからあるスタンダード曲がもつ魅力というのは、親しみやすいメロディーに加えて、ある種の記憶とリンクしやすいところだと思うのですが、ここでは見事にそうした期待が裏切られます(笑)。

パットはなぜ、さほど有名ともいえないこの曲をとりあげたのでしょうか。ジョン・コルトレーンの〈ジャイアント・ステップス〉にしろ、ウェイン・ショーター〈カプリコーン〉にしろ、選曲の理由はなんとなくわかる気がします(あくまで想像ですが)。しかし、なぜ〈ア・ロット・オブ・リヴィン・トゥ・ドゥ〉なのか。私にはわかりませんでした。その曲に対する愛というか、思い入れというか、そういうのがダイレクトに伝わってこないんです。

私は楽器をやらないので情緒的な聴き方しかできませんが、パットのサラリとした音楽には、いつも、うまく感情移入できない自分を感じます。細かいところまで行き届いた、いつも清潔で新品同様の音楽。彼の作品につきまとう、よく作り込まれた商品パッケージのイメージは、私の心にある種のフィルターをつくってしまうようです。
いや、嫌いとかそういうわけじゃないですよ。でもジャズじゃないよね、やっぱり(ああ、言うてしもうた)。

 

Pat Metheny "Trio 99 → 00"
(Warner Bros. 9362 47632-2)

Pat Metheny (guitar)
Larry Grenadier (bass)
Bill Stewart (drums)

Produced by Pat Metheny
Co-Produced by Gil Goldstein, Stece Rodby
Recorded and Mixed by Rob Eaton
Recorded at Right Track Recording, NYC; August, 1999

[Tracks] Pat Metheny Trio - Trio 99-00
01. (Go) Get It Pat Metheny (music)
02. Giant Steps John Coltrane (music)
03. Just Like The Day Pat Metheny (music)
04. Soul Cowboy Pat Metheny (music)
05. The Sun In Montreal Pat Metheny (music)
06. Capricorn Wayne Shorter (music)
07. We Had A Sister Pat Metheny (music)
08. What Do You Want? Pat Metheny (music)
09. A Lot Of Livin' To Do Charles Strouse (music) / Lee Adams (lyrics)
10. Lone Jack Pat Metheny, Lyle Mays (music)
11. Travels Pat Metheny, Lyle Mays (music)

[Links: Pat Metheny]
Pat Metheny (Official Website)
Pat Metheny Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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オスカー・ピーターソン『プット・オン・ア・ハッピー・フェイス』

peterson_putonahappyface.jpg

昨日、家族でミュージカルアニーを観てきました。ミュージカル初体験の娘2人には、どう映ったのかな? 2人ともダンスと歌が何より好きだから、きっと何かを感じてくれたんじゃないかと、すぐに元を取ろうとするのは、よこしまな親心です(笑)。

それはさておき、私の頭のなかでは、昨日から主題歌〈トゥモロー〉がグルグル回っています。ひょっとして、私がいちばん感動してたりして(笑)。で、自分の iTunes を探してみたんですが、ないですねえ。ジャズ向きの曲じゃないってことでしょうか。

アニーのソングライター・チームは、作曲チャールズ・ストラウス、作詞マーティン・チャーニン(ストラウスのサイトで、英語版〈トゥモロウ〉が聴けます)。しかたがないので、同じストラウスが手がけたミュージカル『バイ・バイ・バーディー(Bye Bye Birdie, 1960)』より、〈プット・オン・ア・ハッピー・フェイス〉をとりあげます(作詞はリー・アダムス)。

その名も『プット・オン・ア・ハッピー・フェイス』というオスカー・ピーターソンのアルバムがあります。シカゴのロンドン・ハウスでのライヴ作品です。「ピーターソン+ロンドン・ハウス」でピンときた人は、当たりです。あの有名な『ザ・トリオ』と同じ場所、同じメンバーでのパフォーマンスなんですね(ただし録音年は別)。

1961年と62年のシカゴ、ロンドン・ハウスでのライヴは、
『ザ・トリオ』(Verve V/V6 8420)
『ザ・サウンド・オブ・ザ・トリオ』(Verve V/V6 8480)
『プット・オン・ア・ハッピー・フェイス』(Verve V/V6 8660)
『サムシング・ウォーム』(Verve V/V6 8681)
の4枚に分散収録されています。

現在は、この4枚に収められたマスターテイクだけを集めた『Complete Master Takes at the London House』や、その他の未収録曲もあわせたCD5枚組の『London House Sessions』などの箱ものが出ています。私がもっているのは、かつて日本で発売された『ライヴ・アット・ザ・ロンドン・ハウス』というCDで、『サムシング〜』と『プット〜』の2枚がカップリングされています。

さて、ピーターソンの奏でる〈プット〜〉はどうか。「(嫌なことがあっても)ハッピーな顔して」という原曲どおりの、ご機嫌な演奏です。手数は多いけれど、安心して聴けるピアノ・トリオ。古き良きアメリカのにおいがしてきます。

そういえば、アニーの舞台も大恐慌時代のニューヨーク。辛くても希望をもって生きよう、明日はきっとよくなるよ、という単純明快なメッセージが、今の私にはかえって新鮮に響きました。

  

Oscar Peterson "Put On A Happy Face"
(Verve V/V6 8660)

Oscar Peterson (piano)
Ray Brown (bass)
Ed Thigpen (drums)

Produced by Jim Davis
Reocrded by Val Valentin
Recorded live at the London House, Chicago; September 27, 1962

[Tracks]
01. Put On A Happy Face Charles Strouse (music) / Lee Adams (lyrics)
02. Old Folks Willard Robinson (music) / Dedette Lee Hill (lyrics)
03. Woody'n You Dizzy Gillespie (music)
04. Yesterdays Jerome Kern (music) / Otto Harbach (lyrics)
05. Diablo Oscar Peterson (music)
06. Soon George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
07. The Lonesome One Oscar Peterson (music)

[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peteson (Official Website)
Oscar Peterson: A Jazz Sensation (@ Library and Archives Canada)
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ed Thigpen]
Ed Thigpen Online

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2007年04月24日

『プラグド・ニッケルのマイルス・デイヴィス』

miles_atpluggednickel.jpg

1965年4月、持病の股関節痛が悪化したマイルスは手術を受けますが、術後の経過は思わしくなく、手術した側の脚を骨折したり、人工関節につけかえたりして、結局、回復までに半年もの時間を要することとなります。

その間、バンドのメンバーたちは、ブルーノートのセッションなどで糊口を凌ぎます。早くも65年3月にはハービーが『処女航海』を録り終え、同年8月にはトニーが『スプリング』を、10月にはウェインが『ジ・オール・シーイング・アイ』をそれぞれ吹き込んで、ボスの帰還に備えます。

マイルスの復帰は11月、フィラデルフィアのショーボートから。ニューヨークのカムバック公演はヴィレッジ・ヴァンガードで行われ、ベースは都合のつかなかったロン・カーターに代わって、レジー・ワークマンがつとめています。12月の下旬にはシカゴに移動して、プラグド・ニッケルで2週間のステージを行っています(このときはロン・カーターも参加)。

プラグド・ニッケルのマイルス・デイビス』。私がもっているのは、かつて「Vol. 1」として売り出されたものですが、「Vol. 2」があったり、「Cookin'」があったり、「More Cookin'」があったり、さらには「Highlights from」があったりして、ややこしいこと、このうえない。現在は、CD8枚組のコンプリート・ボックスが出ているので、収録曲のダブりが気になる人は、最初からそっちを買ったほうがいいかも。

さて、このライヴ。一聴して驚くのは、その激しさです。マイルスがもっともフリーに接近した瞬間の記録。ここには親分の帰還を祝福する雰囲気など微塵もありません。殺るか殺られるかという殺気がみなぎっています。実はこれ、マイルスに対するメンバーたちの謀反なんですね。

マイルス不在の間、彼らはただ待っていたわけではありません。新しいアイディアがどんどん湧いてくる。巷に吹き荒れるフリー・ジャズ旋風も気になる。『E.S.P.』で解き放たれた、真に創造的な音楽を希求する心がざわつきます。

ところが、ボスが帰ってきたとたん、かつてのレパートリーを演奏する日々に逆戻り。先の読める展開、予定調和の居心地のよさに、かえってメンバーたちの不満は高まります。もっと他のことができるはずだ、もっと新しい、もっと激しい何か。プラグド・ニッケルの楽屋で、トニーはメンバーに提案します。

「なあ、アンチ・ミュージック(反音楽)をやったらどうかな? 誰かに先の展開を読まれるようなプレイは、ぎりぎりまでやらないっていうことなんだけど、どう?」(『フットプリンツ:評伝ウェイン・ショーター』より。訳は新井崇嗣さん)

賽は投げられた。心の重しのとれた4人は集団即興演奏に突入します。驚いたのはマイルスです。「お前ら、いったい何をやってんだ!」マイルス怒りの一撃が響き渡ります。しかし、ここは下克上の世界。ボスの一喝にもひるまない反逆の闘士たちが、一丸となって燃え上がります。ああ〜、めっちゃ気持ちいい〜!

なにものにも束縛されない、ひたすら自由な音楽。伝統とアヴァンギャルドのギリギリのせめぎ合い。これこそ、究極のフリー・ジャズじゃないでしょうか。興奮してください。そして、圧倒されてください。それだけの音楽が、ここにはあります。

 

"Miles Davis At Plugged Nickel"
(CBS/Sony 23AP 2567)

Miles Davis (trumpet)
Wayne Shorter (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Recorded live at Plugged Nickel, Chicago; December 23, 1965

[Tracks]
01. Walkin' Richard Carpenter (music)
02. Agitation Miles Davis (music)
03. On Green Dolphin Street Bronislaw Kaper (music) / Ned Washington (lyrics)
04. So What 〜 Theme Miles Davis (music)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wayne Shorter]
ウェイン・ショーターの部屋 (by Y. Yamada)
Dr. Morf's Wayne Shorter Page
The Complete Wayne Shorter Discography
Wayne Shorter Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Herbie Hancock]
Herbie Hancock: The Offcial Site (Official Website)
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Ron Carter]
Jazz Basist Ron Carter Official Site
[Links: Tony Williams]
Tony Williams Discography (by ANTAIOS)

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2007年04月23日

マイルス・デイヴィス『E.S.P.』

miles_esp.jpg

1965年の正月、マイルスは新しいメンバーを率いて、『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』以来1年8か月ぶりにスタジオへと足を運びます。この時期マイルスはプロデューサーのテオ・マセロと絶交状態にあり(ギル・エヴァンスとのコラボ作『クワイエット・ナイト』の予定外の発売をめぐってケンカしていた)、ライヴ・レコーディングが続いたのはそのせいでもあったのですが、別の人間をプロデューサーに迎えてまでもマイルスをしてスタジオ入りの決断をさせたのは、やはりショーター加入の影響が大きかったはずです。

ショーターといえば、フレージングの新しさもさることながら、意表をつくメロディなのにどこか印象に残る、一風変わったオリジナル曲も大きな魅力のひとつです。コンポーザー・タイプのショーターの才能を引き出そうと思ったら、彼の自作曲にまさるものはないわけで、〈枯葉〉や〈ウォーキン〉といったライヴでおなじみのレパートリーからはうかがい知れない彼の凄みは、スタジオという閉ざされた空間のなかでこそ静かに燃え上がります。

「当時のウェインは、オレが知る限り、バードが書いたように何かを書いた、真に唯一の人間だった」とはマイルスの弁ですが、マイルスはショーターの作曲の才を愛していました。この『E.S.P.』からマイルスお得意のスタンダード曲が消え、メンバーのオリジナルばかりになったのも、偶然ではありません。

新しいクインテットには、可能性が詰まっていました。ロックの台頭で、ジャズはポピュラリティを失い、「食えない時代」になりつつありましたが、このアルバムが放つみずみずしさは、半世紀近く経ったいまも少しも損なわれてはいません。いかにもショーターらしく、奇妙にゆがんだ〈E.S.P.〉にはじまり、マイルス初の8ビート曲〈エイティ―・ワン〉、ハンコックの〈リトル・ワン〉と途切れなく続く冒頭の3曲。クールな情熱を封じ込めたこの3連発に、しびれます。

ジャケットでマイルスが見上げているのは、当時の奥さんのフランシス。でも、この写真が撮られた1週間ほどあとに、フランシスは家を出、2人の結婚生活は破綻します。マイルスは何を思ってこの写真をジャケットに採用したのでしょう。彼の「ESP(第六感)」がそうしろと囁いたのでしょうか。

余談ですが、私の高校以来の友人で、裏渋谷の名店ローディのオーナー、タニさんは好きなマイルス盤にこの『E.S.P.』をあげています。

 

Miles Davis "E.S.P."
(Columbia CL 2350 / CS 9150)

Miles Davis (trumpet)
Wayne Shorter (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by Irving Townsend
Recorded at Columbia Studio, Hollywood, CA; January 20 (#1, 4), 21 (#2, 3), 22 (#5-7), 1965

[Tracks]
01. E.S.P. Wayne Shorter (music)
02. Eighty-One Ron Carter (music)
03. Little One Herbie Hancock (music)
04. R.J. Ron Carter (music)
05. Agitation Miles Davis (music)
06. Iris Wayne Shorter (music)
07. Mood Ron Carter (music)

[Links: Miles Davis]
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マイルス・デイヴィス『マイルス・イン・ベルリン』

miles_inberlin.jpg

マイルスは執念の男でした。ほしいものは是が非でも手に入れる。けっしてあきらめない。そのしつこさはまさにストーカー並みです。ウェイン・ショーターに対するマイルスの執着ぶりは『マイルス・デイビス自叙伝2』や『フットプリンツ:評伝ウェイン・ショーター』にくわしく載っています。

話は1960年(59年?)、コルトレーン脱退時までさかのぼります。一本の電話がマイルスのもとにかかってきます。かけたのはウェインです。

「テナーを探しているそうですね。トレーンが僕を推薦したようですが」。ショックだった。「自分で見つけるさ!」と言って、ガチャンと切った。で、トレーンに会って言ってやった、「オレにあんなふうに電話してみろなんて、誰にも言うな。辞めたけりゃ辞めろ。だがヨーロッパから戻ってからにしたらどうだ」(『自叙伝2』より。訳は中山康樹さん)

素直に「ウン」と言えないマイルスです(笑)。でも、ここからマイルスのしつこい勧誘がはじまります。1961年、今度はマイルスからウェインにはじめて電話がかってきます。

ウェインが受話器を取ると、誰かが複雑なコード進行の曲を弾いているのが聞こえてきた。まるで僕が書いた曲みたいじゃないか。そう思いながらウェインは演奏に耳を傾け、その素晴らしさに魅了された。数分にわたって演奏が続いたあと、マイルスがついに口を開いた。「ギターはクソだな。そうだろ?」ウェインがこれに同意すると、マイルスが訊いてきた。「お前、今のところで満足してるのか?」「ベネディクト・アーノルドみたいな男を好きなやつはいませんよ」。それがウェインの答えだった。(『フットプリンツ』より。訳は新井崇嗣さん)

当時、ウェインは御大アート・ブレイキーのもとで研鑽を積んでいました。マイルスはジャズ・メッセンジャーズのステージに何度か足を運び、最前列に陣取って、食い入るような目つきでウェインを見ていたといいます。そのプレッシャー、いかばかりか。

そして、マイルスの求愛コールは続きます。最初は慎重を期してウェインの自宅へ。しかし、やがてそれでは我慢できなくなったマイルスは、大胆にも、ツアー中のメッセンジャーズの楽屋に電話をかけます。

電話に出たアートは、「ミスター・ショーター」に代わって欲しい、という声の主にすぐ気づいた。「デューイ、お前だろ?」アートが訊いた。マイルスは短気な性格を表に出して、大声でわめくこともできただろう。しかし、騒ぎを起こしたくはなかった。マイルスは冷静さを失わず、堂々とした物言いで会話を続けた。
「おいウェイン、マイルスがお前さんと話したいってよ」。アートは軽い口調でそう言うと、ウェインに受話器をぽんと手渡した。ところが、このバンドリーダーは急に興奮し出した。彼は部屋中を歩き回りながら、「マイルスはおれのテナー・プレイヤーを盗むつもりだ」と、呪文のように繰り返しつぶやき続けた。困ったウェインは通話口を手で覆い、声が漏れないようにしたという。(『フットプリンツ』より)

怖いですねえ。めちゃめちゃ怖いです。ブレイキーにぶん殴られると考えただけで卒倒もんです。しかし、幸いなことに殺傷沙汰は起きず(笑)、ウェインは1964年4月録音の『インデストラクティブル』を最後に独立、マイルスの行く手を遮るものはいなくなりました。

ウェイン・ショーターがジャズ・メッセンジャーズを辞めたという、待ちに待った知らせが入ってきたのは、ロサンゼルスにいる時だった。すぐにジャック・ウィットモアに電話して、ウェインに連絡するよう指示した。バンドの連中にもウェインに電話するように言ったが、それはみんなもオレと同じように、彼の演奏が大好きだったからだ。だからウェインには、オレ達全員からバンドへの参加を求める電話が殺到したはずだ。
とうとう彼から電話がかかってきた時には、オレは「飛んでこい!」と叫んだ。間違いなく来るように、しかも恰好もつけて来れるようにと、ファースト・クラスの切符を送ってやった。オレはそうまでしてウェインを入れたかったんだ。(『自叙伝2』より)

ようやく意中の人を口説き落としたマイルスの浮かれぶりが伝わってきます。ウェインの加入で、マイルスはついに完璧なバンドを手にします。トレーンの脱退から、すでに4年の歳月が経っていました。

マイルス・イン・ベルリン』はウェイン加入後、はじめて公式にレコーディングされたライヴ盤です。舞台はドイツ、かのベルリン・フィルのお膝元のホール。ウェインが仲間入りしてからまだ数週間しか経っていませんが、演奏のそこかしこに感じられる一体感はどうしたことでしょう? 60年代半ばを駆け抜けた「黄金のクインテット」の幕開けを飾るにふさわしい作品です。

 

Miles Davis "Miles In Berlin"
(CBS [Germany] SBPG 62976)

Miles Davis (trumpet)
Wayne Shorter (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Recorded live at Philharmonie, Berlin; September 25, 1964

[Tracks]
01. Milestones Miles Davis (music)
02. Autumn Leaves Joseph Kosma (music) / Jacques Prevert (French lyrics), Johnny Mercer (English lyrics)
03. So What Miles Davis (music)
04. Walkin' Richard Carpenter (music)
05. Theme Miles Davis (music)

[Links: Miles Davis]
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マイルス・デイヴィス『マイルス・イン・トーキョー』

miles_intokyo.jpg

フリーでアヴァンギャルドなリズム感覚をもった神童トニーと伝統的なコード演奏を好んだサックス奏者ジョージ・コールマン。この2人は反りが合わなかったようで、コールマンがバンドを去るのは時間の問題でした。

ウェイン・ショーターの評伝『フットプリンツ』には、トニーやハービーらとコールマンの間に確執があったことをうかがわせるエピソードが載っています(訳は新井崇嗣さん)。

ジョージと他のメンバーとの間には、それからかなりあとになってもまだ憎しみの感情が残っていたという事実を示す逸話を、複数のミュージシャンが語ってくれた。ヴィレッジ・ヴァンガードで記念パーティが開かれた際、ハービー、ロン、トニーはトリオを再結成した。すると、バックステージにジョージ・コールマンがホーンを手に現れた。旧交を温め合おうと言うジョージに対して、ハービーの返事はひと言「あり得ないね」だった。普段のハービーの性格からはとても考えられないほど、冷たい態度だったという。

こうなると、純粋に音楽的な理由だけではなさそうですね。もしかしたら、『フォア&モア』のチャリティ・コンサートでのケンカ(「追記」に書いておきました)が遠因なのかもしれません。

コールマンの後任には、トニーの推薦で前衛派のサム・リヴァースが迎えられました。前衛派といっても、リヴァースはこのとき41歳。リーダーのマイルスよりも年上なんですね。

70年代ロフト・ジャズ・ムーヴメントの立役者の一人サム・リヴァース。1923年9月25日、オクラホマ州エル・レノ生まれ。1947年からマサチューセッツ州ボストンを拠点に活動し、1959年には当時ボストンにいた13歳のトニーを「発見」します。以来、父親代わりの存在になって、トニーを育てます。

そんな浅からぬ縁でマイルス・バンドに加わったリヴァースですが、彼が残した公式盤は、この『マイルス・イン・トーキョー』1枚だけ。かわいそうに、すぐにウェイン・ショーターに取って代わられる運命にあります。

1964年7月、マイルス・デイヴィスは初来日を果たします。ツアーの詳細はわかりませんが、音源が残っているのは、7月12日の日比谷野外音楽堂。1日おいて14日に、新宿の厚生年金会館。翌15日は、京都の八坂神社の裏にある円山公園野外音楽堂。このうち『イン・トーキョー』は厚生年金会館でのライヴです。

音楽性がかみ合なかったといわれるサム・リヴァースですが、実際のところはどうなんでしょう? 

3曲目〈ソー・ホワット〉。出だしはいつものマイルスです。もちろんフロントは独り占め。一瞬の静寂を切り裂く、鋭い音色ですね。開始3分、ソロがリヴァースに受け渡されます。いきなり調子が変わりましたね(笑)。なにやらおかしなフレーズが飛び出してきました。さすがにトニーは手慣れたものですが、ハ―ビーはどうでしょう。つづく自分のソロの出だしで、やや躊躇するそぶりが見られます。

こうして聴いてみると、多少問題はあるにしても、「合わない」というほどではないですねえ。リヴァースの摩訶不思議系フレーズは、たしかにマイルスの好みではないのでしょうが、ハービーもトニーも、フリーにもっとも接近した時期だし、もしウェインがいなければ、しばらくはこのメンツで活動したのではないでしょうか。

  

Miles Davis "Miles In Tokyo"
(CBS/Sony SONX 60064/23AP 2564)

Miles Davis (trumpet)
Sam Rivers (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Recorded by Kenichi Hanada
Recorded live at the Shinjuku Kohseinenkin Hall, Tokyo; July 14, 1964

[Tracks]
01. If I Were A Bell Frank Loesser (music and lyrics)
02. My Funny Valentine Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)
03. So What Miles Davis (music)
04. Walkin' Richard Carpenter (music)
05. All Of You Cole Porter (music and lyrics)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
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Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
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[Links: Sam Rivers]
Jazz Regend Sam Rivers (Official Website)
The Sam Rivers Sessionography and GIGography (by Rick Lopez)
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マイルス・デイヴィス『マイルス・イン・ヨーロッパ』

miles_ineurope.jpg

前作『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』でそろい踏みしたハービー、ロン、トニーのリズム・セクション。彼らの初の公式ライヴ盤『マイルス・イン・ヨーロッパ』は、マイルス怒濤のフリー・ブローイング時代の幕開けを飾る作品です。この時点での、メンバーの年齢を確認しておきましょう。

リーダーはもちろんマイルス・デイヴィス、37歳。
1926年5月26日、イリノイ州アルトン生まれ。
1991年9月28日、カリフォルニア州サンタモニカで死去。

テナーのジョージ・コールマン、28歳。
1935年3月8日、テネシー州メンフィス生まれ。

ピアノのハービー・ハンコック、23歳。
1940年4月12日、イリノイ州シカゴ生まれ。

ベースのロン・カーター、26歳。
1937年5月4日、ミシガン州ファーンデール生まれ。

ドラムのトニー・ウィリアムズ、17歳!
1945年12月12日、イリノイ州シカゴ生まれ。
1997年2月23日、カリフォルニア州デーリーシティで死去。

ボスのマイルスは別格として、ブッカー・リトルやフィニアス・ニューボーンと同じメンフィス・コネクション出身のコールマンが兄貴分で、トニーとハービーの若手二人がやんちゃ盛りの特攻隊、ロンがその押さえ役といった感じでしょうか。

マイルスは『自叙伝2』(訳は中山康樹さん)のなかで、トニーを手に入れた喜びをこう語っています。

トニーはメンバー全員をやたら燃え上がらせるんだ。ずっと気になっていた関節の痛みも忘れてしまうくらい、オレまで演奏に熱中させられた。トニーがいるこのバンドじゃ、なんでも望みどおりの演奏ができた。いつもトニーがバンドのサウンドの中心だった。トニーを中心に動きまわり、燃え上がった。本当にトニーは最高だった。(中略)トニーのことは、息子のように愛していた。トニーはサウンドに対して演奏していた。聴き取ったサウンドに適応できたんだ。とにかくヒップで洒落たドラムを叩いた。演奏の仕方を毎晩変えていたし、それぞれのサウンドに異なったテンポを叩き出していた。彼のやることすべてに油断なく注意を払っていないと、すぐに取り残されて、テンポもタイミングもサウンドも、まるで合わなくなってしまうほどだった。

えらいホメようです。でも、当時のバンドにおけるトニーの役割については、ハービーもインタビューに答えてこう語っています(ジャズ批評ブックス『定本ハービー・ハンコック』より。訳は高木宏真さん)

リズムに関しては、何たってトニーが凄いね。奴のリズム感はそれまでに無いモノだ。すごく刺激されるよ。(中略)そりゃ、練習したよ。随分練習した。先に言ったけど、その点はトニーが凄いからね。奴の家へ行って練習した。例えば、……ちょっと説明するのが難しいけど、ある複雑なスリリングで面白いリズム・パターンがある。トニーがやってみせるんだけど、僕にはちっとも出来なくてね(笑)。コンプレックスを持ったものだよ。そんなある時、マイルス・バンドでドイツに行ったんだ。ステージの上でトニーが例のリズム・パターンをフッてきた。僕もまた挑戦してみたら……「できた!」って叫びそうだった。練習の成果かどうか、とにかく急に出来るようになったんだ。

神童トニーを中心にまわりはじめたマイルス・バンド。ジョージ・コールマンが加わったクインテットはこの後、『フォア&モア』『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』という、ひと組の傑作ライヴを残します。

 

Miles Davis "Miles In Europe"
(Columbia CL 2183 / CS 8983)

Miles Davis (trumpet)
George Coleman (tenor sax)
Herbie Hancock (piano)
Ron Carter (bass)
Tony Williams (drums)

Produced by Teo Macero
Recorded live at the Antibes International Jazz Festival, La Pinede, Juan-les-Pins, France; July 27, 1963

[Tracks]
01. Autumn Leaves Joseph Kosma (music) / Jacques Prevert (French lyrics), Johnny Mercer (English lyrics)
02. Milestones Miles Davis (music)
03. Joshua Victor Feldman (music)
04. All Of You Cole Porter (music and lyrics)
05. Walkin' Richard Carpenter (music)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
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2007年04月10日

UA × 菊地成孔『cure jazz』

kikuchi_curejazz.jpg UA × 菊地成孔 - cure jazz

菊地成孔さんつながりで、UA とのコラボレーション・アルバム『cure jazz』を。

子どもがいる人にとっては、歌のお姉さん「ううあ」でおなじみの UA ですが(2006年3月で放送終了したNHK教育『ドレミノテレビ』に出演していた)、一度聴いたら忘れられないあの官能的なハスキーヴォイス、ぜひともジャズを歌ってほしいなあと思っていたら、出たんですねえ、このアルバムが。

その退廃的な歌声とは裏腹に、ベジタリアンでナチュラル志向でタバコもやらない UA と、毎日肉を食らい、構造主義と精神分析を愛し、ヘヴィースモーカーの菊地成孔が組むと、どんな音が生まれるのか。それは聴いてのお楽しみ。

個人的には、広東語で歌われる#6〈溜息の泡〉とフランス語で2人がデュエットする#12〈水質〉に癒されました(タイトルの cure は「治癒」の意味)。



UA × 菊地成孔 "cure jazz"
(Victor VICL-61957)

UA (vocal)
菊地成孔 (sax, keyboards, vocal)
坪口昌恭 (piano)
鈴木正人 (bass)
藤井信雄 (drums)

中牟礼貞則 (guitar) #6
芳垣安洋 (percussion) #3, 5, 10
高良久美子 (percussion) #3, 5, 10
大儀見元 (percussion) #9, 10
中島ノブユキ (cembalo, organ) #8, 10, 12
with strings and harp (arr. 中島ノブユキ) #1, 3, 8, 11
with brass (arr. 中島ノブユキ) #6, 7, 8, 9, 10, 11

Produced by 菊地成孔
Recorded and Mixed by 藪原正史
Recorded and mixed at Victor Studio

[Tracks] UA × 菊地成孔 - cure jazz
01. Born To Be Blue Mel Torme (music) / Robert Wells (lyrics)
02. A Night In Tunisia Dizzy Gillespie, Frank Paparelli (music) / Jon Hendricks (lyrics)
03. Over The Rainbow Harold Arlen (music) / Edgar Y. Harburg (lyrics)
04. Music On The Planet Where Dawn Never Breaks Naruyoshi Kikuchi (music) / Naruyoshi Kikuchi (Japanese lyrics) Toshiyuki Owada (English lyrics)
05. Ordinary Fool Paul Williams (music and lyrics)
06. 嘆息的泡 Naruyoshi Kikuchi (music) / Naruyoshi Kikuchi (Japanese lyrics) 孫達 (広東語訳)
07. This City Is Too Jazzy To Be In Love Naruyoshi Kikuchi (music) / Naruyoshi Kikuchi (Japanese lyrics) Toshiyuki Owada (English lyrics)
08. Luiza Antonio Carlos Jobim (music and lyrics)
09. Honeys And Scorpions Naruyoshi Kikuchi (music) / Naruyoshi Kikuchi (Japanese lyrics) Toshiyuki Owada (English lyrics)
10. Hymn Of Lambarene Naruyoshi Kikuchi (music) / Naruyoshi Kikuchi (Japanese lyrics) Toshiyuki Owada (English lyrics)
11. I'll Be Seeing You Sammy Fain (music) / Irving Kahal (lyrics)
12. Nature d'eau Naruyoshi Kikuchi (music) / Naruyoshi Kikuchi (Japanese lyrics) Hajime Fukuda (French lyrics)

[Links: UA]
UA official site (@ Victor Entertainment)
[Links: 菊地成孔]
PELISSE: Naruyoshi Kikuchi official website

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菊地成孔+大谷能生『東京大学のアルバート・アイラー:東大ジャズ講義録・歴史編』

naruyoshikikuchi1.jpg

月日がたつのははやいねえ。ちょっとサボっただけのつもりが、はやひと月。今日からボチボチ再開します。またよろしく〜。

ところで、遅ればせながら読みましたよ、『東京大学のアルバート・アイラー:東大ジャズ講義録・歴史編』。この本、おもしろいねえ。2004年に行われた東大(!)での講義をまとめた本ですが、こういう「通史」って、ありそうでない。

20世紀に登場した最後のモダニズムとしてのモダン・ジャズの勃興と終焉(ジャズの終焉ではありません)というジャンル横断的な視点は新鮮そのもの。音楽の記号化の歴史から見たバークリーの位置づけとか、いままで読んだこともないような話題がてんこ盛りです。

毎回、講義の冒頭で東大生とモグリを別々に挙手させるんですが、モグリのほうが多いんですね、しかもどんどん増殖する(笑)。でも、気持ちわかるなあ。こんな講義だったら、私だって聴きたい。

まず概略を説明して、音源を聴いて自分の耳で確かめ、さらに説明がつづき、、、という流れで講義は進みます。この音源の選択がふるっていて、グレン・ミラーからプレスリー、JBにいたるまで、その歴史的な立ち位置がよくわかる。ナディア・ブーランジェとかジョージ・ラッセルとか、名前だけは知っているけど、、、みたいな人たちが急にリアルに感じられて、いたるところに発見があります。

続編の『キーワード編』はただいまアマゾンから取り寄せ中。読んだらまたリポートしますね。



菊地成孔+大谷能生著
『東京大学のアルバート・アイラー:東大ジャズ講義録・歴史編』
(メディア総合研究所)

2005年5月21日 第1刷発行
四六判並製 266ページ
ISBN 4-944124-19-8

[Contents]
01. 十二音平均律→バークリ―・メソッド→MIDI を経由する近・現代商業音楽史
02. ジャズにおいてモダンとは何か? ビバップとプレ・モダン・ジャズ
03. モダンとプレ・モダン 50年代に始まるジャズの歴史化・理論化と、それによって切断された事柄について
04. 1950年代のアメリカと、ジャズ・モダニズムの結晶化
05. 1959〜1962年におけるジャズの変化 (1)
06. 1959〜1962年におけるジャズの変化 (2)
07. フリー・ジャズとは何からのフリーだったのか?
08. 1965〜1975年のマイルス・デイヴィス (1) コーダル・モーダルとファンク
09. 1965〜1975年のマイルス・デイヴィス (2) 電化と磁化
10. MIDI とモダニズムの終焉
11. 前期テスト
12. アフターワーズ 後書き対談

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