

西海岸に居を構えたヴィクター・フェルドマンは、クラシック界に転出したアンドレ・プレヴィンの後釜として、ウェスト・コースト派の重鎮シェリー・マンのグループに加わり(59年録音の『アット・ザ・ブラック・ホーク
『キャノンボール・アダレイ・クインテット・アット・ザ・ライトハウス
コテコテのファンキー節が炸裂する〈サック・オー・ウォー〉。後々までバンドのレパートリーとなったキャノンボール自作のこの曲の初出は、弟ナット名義の『ワーク・ソング
さて、黒人特有のムンムン感あふれるこの曲を、バリバリの英国人フェルドマンが弾くとどうなるか。意外や意外、けっこうイケてるんですね。バンドの初代ピアニスト、ボビー・ティモンズのまとわりつくような粘りは望むべくもありませんが、たたみかけるようなトレモロ(?)の連打で、親分キャノンボールの轟音にも負けちゃいません。
そういえば、キャノンボールの人気が爆発した60年代、9年もの長きにわたってバンドを支えたのは、オーストリア出身のジョー・ザウィヌルだったわけで(この話は後日、ザウィヌル特集でやります)、ファンキーだけではないキャノンボールの器の大きさを感じます。
あるいは、フェルドマンのオリジナル〈アズール・セラペ〉(英訳すると「Blue Shawl」。青いショールという意味だそうです)。実にいい曲です。ジャララララ、ラーラーンと響き渡るピアノのなんと心地よいことか。思わず「イエ〜イ」のかけ声も漏れようというものです。最後にホーン陣が加わって徐々に盛り上がり、仕上げのベースソロが終わったあとの、キャノンボールの「アッハーン」というため息もどこか満足げです。
ジミー・ヒースの〈ビッグ・P〉は兄のパーシー・ヒースに捧げた曲。フランク・ロソリーノの〈ブルー・ダニエル〉なんて、かわいいワルツも演ってますねえ。
フェルドマンのジャズ界におけるキャリアを考えたとき、人気バンド、キャノンボール・アダレイ・クインテットへの参加は、エポック・メイキングな出来事だと思うのですが、最終的に、彼は西海岸でのスタジオ・ワークを選択して、グループを去ります(61年の夏ごろ)。クラブめぐりは、やはり儲からないということなのでしょう。63年に『セヴン・ステップス・トゥ・セヴン』を録音したときも、ジャズ界一ギャラが高かったはずのマイルスの誘いを断ったくらいですから、スタジオ通いとの収入格差は歴然としたものがあったんだろうと思います。
"The Cannonball Adderley Quintet At The Lighthouse"
(Riverside RLP 344/9344)
Nat Adderley (cornet)
Cannonball Adderley (alto sax)
Victor Feldman (piano)
Sam Jones (bass)
Louis Hayes (drums)
Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Wally Heider
Recorded live at the Lighthouse, Hermosa Beach, CA; October 16, 1960
[Tracks]

01. Sack O' Woe Julian "Cannonball" Adderley (music)
02. Big "P" Jimmy Heath (music)
03. Blue Daniel Frank Rosolino (music)
04. Azule Serape Victor Feldman (music)
05. Exodus Victor Feldman (music)
06. What Is This Thing Called Love Cole Porter (music and lyrics)
07. Our Delight Tadd Dameron (music)
[Links: Cannonball Adderley]
The Cannonball Adderley Rendez-vous (by Gilles Miton)
Cannonball Adderley Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Victor Feldman]
Victor Feldman Discography (@ British Modern Jazz)
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