2006年12月26日

ビル・エヴァンス『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』

evans_wewillmeetagain.jpg Bill Evans - We Will Meet Again

エヴァンス晩年のワーナー・ブラザーズ盤といえば、『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』と『アフィニティ』が双璧ですが、どちらもすでに紹介済みなので、エヴァンス最後のスタジオ録音盤(1979年8月録音)、『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』といきましょう。

10年以上の時間をともにしたエディ・ゴメスとエリオット・ジグムンドが時をほぼ同じくして去り、エヴァンスはトリオの再結成を余儀なくされます。

1. マイケル・ムーア (b) +困ったときのフィリー・ジョー・ジョーンズ (ds)
2. 新鋭マーク・ジョンソン (b) +フィリー・ジョー・ジョーンズ (ds)
3. マーク・ジョンソン (b) +一時復帰したエリオット・ジグムンド (ds)
4. マーク・ジョンソン (b) +新鋭ジョー・ラバーバラ (ds)

というわけで、エヴァンスのラスト・トリオのメンバーがようやく固定されたのが1979年1月。エヴァンスの死まで、わずか1年半前のことでした。

この時期、エヴァンスは立て続けにクインテット作品を残していますが、この『ウィ・ウィル〜』もそのひとつ。前作『アフィニティ』に参加したサックスのラリー・シュナイダーに、トランペットのトム・ハレルを加えて、自己のトリオとともにレコーディングしたのがこの作品です。

ジャケットの裏側を見ると、副題が載っています。In Loving Dedication to My Late Brother, Harry L. Evans 1927-1979。同年4月、ピストル自殺を遂げた兄ハリー Jr. に捧げた表題曲〈ウィ・ウィル・セイ・グッドバイ〉の初出は、前掲『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』ですが、『ユー・マスト〜』収録の時点で兄は健在、このタイトルは彼の死後につけられたものだと考えられます(『ユー・マスト〜』はまだ発売されていなかった)。テーマのみのごく短い演奏ですが、強く印象に残ります。エヴァンスに残された時間は1年あまり。彼はその後、最愛の兄と再会できたのでしょうか。

このアルバムは、エヴァンスに最後のグラミー賞をもたらしました(1980 Best Jazz Instrumental Performance, Group)。



Bill Evans "We Will Meet Again"
(Warner Bros. HS 3411 Y)

Tom Harrell (trumpet) except #4, 8
Larry Schneider (tenor sax, soprano sax, alto flute) except #4, 8
Bill Evans (piano, electric piano)
Marc Johnson (bass) except #4, 8
Joe Labarbera (drums) except #4, 8

Produced by Helen Keane
Recorded by Frank Laico
Recorded at 30th Street Columbia Studios, NYC, August 6-9, 1979

[Tracks] Bill Evans - We Will Meet Again
01. Comrade Conrad Bill Evans (music)
02. Laurie Bill Evans (music)
03. Bill's Hit Tune Bill Evans (music)
04. For All We Know J. Fred Coots (music) / Sam M. Lewis (lyrics)
05. Five Bill Evans (music)
06. Only Child Bill Evans (music)
07. Peri's Scope Bill Evans (music)
08. We Will Meet Again Bill Evans (music)

[Links: Tom Harrell]
Tom Harrell (Official Website)
Tom Harrell (@ Say's Relaxin' Room)
[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Marc Johnson]
Marc Johnson (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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ビル・エヴァンス『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』

evans_iwillsaygoodbye.jpg

エディ・ゴメスとのデュオ『インチュイション』に『モントルーIII』、男性歌手トニー・ベネットとの2人きりの共同作業『ザ・トニー・ベネット&ビル・エヴァンス・アルバム』ときて、続くアルバムがソロ作品『アローン(アゲイン)』とくれば、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』じゃないけれど、「エヴァンス・トリオもついに解散か!」と思うじゃないですか。ところがどっこい、ゴメスはまだグループにとどまり、エリオット・ジグムンドという新たなドラマーも加わって、トリオはライヴ・パフォーマンスを続けていたのでした。

ジグムンドがエヴァンス・トリオに参加したのが1975年初頭。以来、正式な録音がないまま、2年以上の時間を過ごした彼の胸中やいかに。おなじみピーター・ペッティンガー著、相川京子訳の名著『ビル・エヴァンス:ジャズ・ピアニストの肖像』(水声社)によると、

バンドに入って二年間、一度もレコーディングをしたことがなかったのは、彼の作るアルバムが私が含まれていないある種の特別プロジェクトものだったからだ。エディとのデュオ・アルバム、ケニー・バレル、フィリー・ジョーとハロルド・ランドとのアルバム(引用者注:『クインテセンス』のこと)、トニー・ベネットとのアルバム。いつもアルバムが発売されると、自分だけが疎外されているような気がしたものさ。神様、彼とレコーディングできる機会はいつか訪れますか? と考えていたよ。

ああ、かわいそうなエリオット・ジグムンド。でも、彼の忍耐が報われるときがやってきます。トリオによる久しぶりのスタジオ作品『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』は、エヴァンスのファンタジー時代に幕を降ろし、晩年の美の結晶、ワーナー・ブラザーズ移籍第一弾『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』へとつながる重要な作品です。

1977年5月録音の『アイ・ウィル〜』と同年8月録音の『ユー・マスト〜』。この2枚は、双子のような関係にあります。発売された会社こそ違いますが、メンバーは同じ、録音場所も同じカリフォルニア、タイトルにミシェル・ルグランの曲をもってきたところもいっしょです。出来はさすがに『ユー・マスト〜』に一歩譲りますが、なかなかどうして『アイ・ウィル〜』にも捨てがたい味わいがあります。

エヴァンスはリリカルな演奏のなかに刺のある音を忍ばせる名人で、一筋縄ではいかないところが彼の大きな魅力となっていますが、この双子のエヴァンス盤には、刺がありません。じゃあ、ふぬけた演奏かというと、まったくそんなことはない。毒はないけれど、ハッと耳を奪われる瞬間はいくつも訪れます。耽美的。この時期のエヴァンスにふさわしい言葉です。美しいとしか表現しようのない、エヴァンス晩年の境地です。

エヴァンスをあらためて美の探求に向かわせたルグラン作の〈アイ・ウィル・セイ・グッドバイ〉。名盤『処女航海』に収録されたハンコックの〈ドルフィン・ダンス〉。そして、ジョニー・マンデルの〈シースケイプ〉。う〜ん、美しすぎる。この音楽に言葉はいりません。黙って聴き入ってください。

このアルバムがリリースされたのは、1980年1月。エヴァンス没年に当たるその年、このアルバムは79年録音の『ウィ・ウィル・ミート・アゲイン』とともに、グラミー賞に輝きます(1980 Best Jazz Instrumental Performance, Soloist)。

 

Bill Evans "I Will Say Goodbye"
(Fantasy F 9593)

Bill Evans (piano)
Eddie Gomez (bass)
Eliot Zigmund (drums)

Produced by Helen Keane
Recorded by Bruce Walford
Recoprded at Fantasy Studios, Berkeley, CA; May 11-13, 1977

[Tracks]
01. I Will Say Goodbye Michel Legrand (music)
02. Dolphin Dance Herbie Hancock (music)
03. Seascape Johnny Mandel (music and lyrics)
04. Peau Douce Steve Swallow (music)
05. I Will Say Goodbye [take 2] Michel Legrand (music)
06. The Opener Bill Evans (music)
07. Quiet Light Earl Zindars (music)
08. A House Is Not A Home Burt Bacharach (music) / Hal David (lyrics)

[Links: Bill Evans]
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ビル・エヴァンス『アローン(アゲイン)』

evans_aloneagain.jpg

1968年のヴァーヴ盤『アローン』以来、7年ぶりの純粋ソロ作品『アローン(アゲイン)』です。この年の9月13日、エヴァンスに待望の息子エヴァンが生まれます。そのせいか、陰気で重苦しいエヴァンスにしては珍しく、すがすがしい作品にしあがっています。

聴きどころは、13分半を超える〈ピープル〉。この曲で、エヴァンスは心の赴くままに鍵盤をかき鳴らします。寄せては返す波のように、気持ちの高ぶりと落ち着きの間を行ったり来たりするエヴァンス。もしかしたら、これは即興演奏ですらないのかもしれません。弾いているのは、ほとんど同じフレーズです。それが、ときにはあふれるメロディーとなって押し寄せ、またあるときには引き潮のようにサーッと引いていく。

全体として揺りかごのようなゆらゆらした印象を与えますが、典型的なのは後半、演奏が何度か途切れる場面です。7分前後から徐々に盛り上がり、クライマックスを経て一度は大団円を迎えるかと思わせますが(8分3秒)、ふたたび鍵盤に向かうエヴァンス。さらに、いまひとたびの盛り上がりを経て、今度こそ終わりかと思わせておいて(10分3秒)、それでもピアノから離れようとしないエヴァンス。切れ味で勝負するエヴァンスにしては珍しい思い切りの悪さです。言いたいことを言い尽くしていなかったのか、それとも、演奏中に得られた高揚感を失いたくないと思ったのか。私は後者だと勝手に解釈しています。

 

Bill Evans "Alone (Again)"
(Fantasy F 9542)

Bill Evans (piano)

Produced by Helen Keane
Recorded by Don Cody
Reocrded at Fantasy Studios, Berkeley, CA; December 16-18, 1975

[Tracks]
01. The Touch Of Your Lips Ray Noble (music and lyrics)
02. In Your Own Sweet Way Dave Brubeck (music)
03. Make Someone Happy Jule Styne (music) / Betty Comden, Adolph Green (lyrics)
04. What Kind Of Fool Am I Anthony Newley, Leslie Bricusse (music and lyrics)
05. People Jule Styne (music) / Bob Merrill (lyrics)

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ビル・エヴァンス&エディ・ゴメス『インチュイション』

evans_intuition.jpg

1974年8月、ドラマーのマーティ・モレルがトリオを脱退します。ツアーに明け暮れるジャズメンのつねとして、音楽活動と家庭生活を天秤にかけざるをえないわけですが、カナダ人女性と結婚したばかりのモレルは生活をとりました。過去6年にわたって熟成に熟成を重ねてきたトリオ。気心の知れたモレルの抜けた穴を埋める人材がそう簡単に見つかるはずもはく、エヴァンスとゴメスはしばらく2人だけで活動を続けます。

全編ゴメスとのデュオ形式で収録した初のアルバム『インチュイション』。長年ともに演奏してきた仲間だからこそ、なにも考えずに「直感」でわかりあえる。エヴァンス最大の理解者であるゴメスとの共同作業は、本来なら待ちに待った作品となるはずでしたが、そうならなかった理由ははっきりしています。エレピの存在が「エヴァンス大好き、ウフッ」という感情移入を妨げているからです(笑)。

エヴァンスとエレクトリック・ピアノの出会いは遠くヴァーヴ時代にまでさかのぼります。系列の MGM に吹きこまれた『フロム・レフト・トゥ・ライト』は笑うしかない珍盤ですが、続くコロンビア時代の『ザ・ビル・エヴァンス・アルバム』では、この楽器に対する傾倒ぶりを見せつけてファンの顰蹙を買っています。

エヴァンスにエレピは似合わない。これが一般の認識だと思うのですが、実際のところはどうなのでしょう? このアルバムには、アコースティック、エレクトリック、それぞれの演奏が収められています(一部、両者を使っている)。というわけで、聴き比べをしてみましょう。

エヴァンスがエレピだけで通したのは、自作曲〈ショウ・タイプ・チューン〉と〈アー・ユー・オール・ザ・シング〉。これ、どうですか? エヴァンスといえば変幻自在のタッチがすぐに思い浮かびますが、エレピのサウンドは、彼の微妙な手の動きを再現できていないようです。鍵盤に乗せる指の重さ、鍵盤を押しこむ力加減、指を離すタイミング、ペダル操作による余韻や陰影、そういった、ひとつひとつの細かな要素の集積がエヴァンスをエヴァンスたらしめていると思うのですが、残念ながら、電気を通した音にそれを感じることはできません。

では、エヴァンスはエレピ独特の奏法を生み出したかというと、そうともいえないと私は思います。「エヴァンス、かくあるべし」という固定的なイメージの影響は否定しませんが、彼のエレピに必然性はほとんど感じられません。「わざわざエレピで演奏する必要はないんじゃないの?」というぬぐいがたい違和感は、アコースティックを弾くときとレパートリーがほとんど変わらないことにも原因があるようです。エレピにしかできない表現を追求するわけでもなく、たんなる代用品として、あるいは、珍しいオモチャとして、エヴァンスはこの楽器と戯れたにすぎない。そう思います。

この違和感は、彼の一世代後のピアニストたち、60年代半ば以降にマイルスのグループに参加したハービー・ハンコック、チック・コリア、ジョー・ザウィヌルには、まったく感じられないものです。いまやアコースティック一本のキース・ジャレットでさえ、マイルス時代のエレピ演奏に違和感を覚えることはありません。むしろ、あの時代のあの演奏にアコースティック・ピアノで挑んでいる姿を想像するほうが違和感がある。必然性というのは、そういうことだと思います。

と、ひととおりエレピの演奏を聴いたうえで、トラックナンバーを「1」にあわせてみましょう。私の好きな〈インヴィテイション〉が入っています。深みのあるアコースティック・ピアノの響きにあらためて驚くはずです。そうそう、これでこそエヴァンスです(笑)。アルバムの最後を飾るのは、同じブロニスラフ・ケイパー作の〈ハイ・リリー・ハイ・ロー〉。やさしく、たゆたうように演奏されたこの曲は、自殺した元恋人(内縁の妻)エレインに捧げられています。

 

Bill Evans, Eddie Gomez "Intuition"
(Fantasy F 9475)

Bill Evans (piano, electric piano)
Eddie Gomez (bass)

Produced by Helen Keane
Recorded by Don Cody
Recorded at Fantasy Studios, Berkeley, CA; November 7-10, 1974

[Tracks]
01. Invitation Bronislaw Kaper (music) / Paul Francis Webster (lyrics)
02. Blue Serge Mercer Ellington (music)
03. Show-Type Tune Bill Evans (music)
04. The Nature Of Things Irvin Rochlin (music)
05. Are You All The Things Bill Evans (music)
06. A Face Without A Name Claus Ogerman (music)
07. Falling Grace Steve Swallow (music)
08. Hi Lili, Hi Lo Bronislaw Kaper (music) / Helen Deutsch (lyrics)

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2006年12月18日

ビル・エヴァンス『シンス・ウィ・メット』

evans_sincewemet.jpg

70年代の幕開けと同時にヴァーヴを去ったエヴァンスは、71年、大手コロンビアと契約、エレクトリック・ピアノに浮気して物議を醸します。73年、今度は西海岸のファンタジーと契約、ここにはリヴァーサイド時代の恩人オリン・キープニュースが副社長兼ジャズ部門の責任者としておさまっていました。

同じ年、エヴァンスはネネット・ザザーラと結婚します(8月5日)。披露宴が行われたのは、エヴァンスがマイルス・グループ在籍時にコロンビア主催のパーティが開かれたプラザ・ホテル(そのライヴは『ジャズ・アット・ザ・プラザ』に収録されています)。この結婚の裏には実は哀しい物語が隠されているのですが、それについては、『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』で書きました。

公式な録音こそ行っていませんでしたが、エヴァンスは毎年、定期的にヴィレッジ・ヴァンガードに出演し続けていました。オーナーのマックス・ゴードンがエヴァンスに
新しいハウス・ピアノの選定を依頼、エヴァンスが日本のヤマハを選んだというエピソードも残っています。

ヴァンガードでの久しぶりのライヴ盤『シンス・ウィ・メット』は、過去5年にわたって熟成を重ねてきたエディ・ゴメス&マーティ・モレルとのコンビネーションの最高到達点を記録したアルバムです。トリオのメンバーとして、最長の期間をともに過ごしてきた3人がくり出すインタープレイは、まさに円熟の極み。スコット・ラファロ在籍時のような、食うか食われるかという「殺気」はありませんが、長い時間をかけてひとつの音楽を練り上げてきた者どうしだけが共有できる一体感がここにはあります。

アルバム・タイトルともなったエヴァンス・オリジナルの新曲〈シンス・ウィ・メット〉は、新妻ネネットが曲名をつけました。2人の出会いを意味していることは、いうまでもありません。

サイ・コールマンが同名の劇のために書いた〈シーソー〉。エヴァンスお気に入りの作曲家、アール・ジンダースの〈サーリーン・ジューレ〉。アルメニア語で「山から流れる水」の意味だそうです。アルメリア人だったジンダースの奥さんが名付け親だとか。

 

Bill Evans "Since We Met"
(Fantasy F 9501)

Bill Evans (piano)
Eddie Gomez (bass)
Marty Morell (drums)

Produced by Helen Keane, Orrin Keepnews
Recorded by Michael De Lugg
Recorded live at the Village Vanguard, NYC; January 11, 12, 1974

[Tracks]
01. Since We Met Bill Evans (music)
02. Midnight Mood Joe Zawinul (music)
03. See-Saw Cy Coleman (music) / Dorothy Fields (lyrics)
04. Sareen Jurer Earl Zindars (music)
05. Time Remembered Bill Evans (music)
06. Turn Out The Stars Bill Evans (music)
07. But Beautiful Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
08. Elsa Earl Zindars (music)

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2006年12月15日

ビル・エヴァンス&ジェレミー・スタイグ『ホワッツ・ニュー』

evans_whatsnew.jpg Bill Evans - What's New

ヴァーヴ時代でいちばん好きなエヴァンス盤をあげろといわれたら、私は迷わず『ホワッツ・ニュー』をあげます。これ以上ないほど激しく燃えたエヴァンス。その熱の発火点は、間違いなくジェレミー・スタイグにあります。

漏れる息まで音楽と化すフルート奏者、ジェレミー・スタイグ。1942年9月23日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。1962年に交通事故に遭い、顔面の左側が麻痺、聴覚にも障害が出て、以後、特殊なマウスピースを使わざるをえなかったといいます。そのせいか、彼の吹くフルートは異端の匂いがプンプンします。これほど肉声を感じさせるフルート吹きは、ほかにラサーン・ローランド・カークくらいしか思い浮かびません。

1968年末、ニューヨークのヴィレッジに住んでいたスタイグは、ヴィレッジ・ヴァンガードやトップ・オブ・ザ・ゲイトに出演中のエヴァンス・トリオのステージによく飛び入りで参加しました。当時、ベースのエディ・ゴメスはスタイグ・バンドのメンバーでもあり、エヴァンスも、スタイグのデビュー以来、彼をウォッチしてきたといい(2人の出会いは、1964年のフロリダにまでさかのぼります)、彼らの共演するべく運命づけられていたようです。

それにしても、どうですか、〈ストレート・ノー・チェイサー〉の激しさといったら。都合4日間にわたったレコーディングは、けっして順調とはいえなかったようですが、このスリリングな展開からはそんなことは微塵も感じられません。モンクの楽曲だからということもないでしょうが、エヴァンスもここぞとばかり鍵盤を叩きつけます。熱にうなされたようにフルートを吹きまくるスタイグ。いやはや、カッコよすぎです!

アルバムのタイトルとなった〈ホワッツ・ニュー〉。バラードだからといって、おとなしいだけでは終わらせないスタイグのかすれた音色にしびれます。エヴァンスもトリオのときとは明らかに違う力強いタッチで応えます。複雑にからみあうフルート、ピアノ、ベースにドラム。見事です。

そして、お約束の〈枯葉〉。かなりアップテンポで演奏されるこの〈枯葉〉には、落ち葉のようなしおらしさはまったく感じられません。途中、テクニシャン、ゴメスの独壇場を経て登場するエヴァンス。いやあ、この日のエヴァンスはホントにきてます。ぜひ大音量で聴いてください。そして、体全体で感じてください。切れ味、力感、フレーズ、どれをとってもサイコーです。近所ともめたくない人(笑)は、ヘッドフォンでもじゅうぶん楽します。

かつてのボス、マイルスのオリジナル〈ソー・ホワット〉。非常に手の込んだアレンジですが、熱気を失っていないのはさすがです。生まれるべくして生まれた傑作なのでしょう!

このアルバムで、切れ味鋭いスティックさばきを聴かせているのは、新加入のドラマー、マーティ・モレルです。エヴァンス・トリオはここにきてようやくメンバーを固定、ゴメス、モレルとのトリオは1974年まで続きます。

 

Bill Evans, Jeremy Steig "What's New"
(Verve V6 8777)

Jeremy Steig (flute)
Bill Evans (piano)
Eddie Gomez (bass)
Marty Morrell (drums)

Produced by Helen Keane
Recorded by Ray Hall
Recorded at Webster Hall, NYC; January 30, February 3, 5, March 11, 1969

[Tracks] Bill Evans - What's New
01. Straight, No Chaser Thelonious Monk (music)
02. Lover Man Roger Ramirez, Jimmy Sherman (music) / Jimmy Davis (lyrics)
03. What's New Bob Haggart (music) / Johnny Burke (lyrics)
04. Autumn Leaves Joseph Kosma (music) / Jacques Prevert (French lyrics), Johnny Mercer (English lyrics)
05. Time Out For Chris Bill Evans (music)
06. Spartacus Love Theme Alex North (music)
07. So What Miles Davis (music)

[Links: Jeremy Steig]
Jeremy Steig (the Official Site of Steig Music Company)
[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
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[Links: Eddie Gomez]
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ビル・エヴァンス『アローン』

evans_alone.jpg Bill Evans - Alone

オーヴァー・ダビングなしの純粋なソロ作品、その名も『アローン』。エヴァンスに立て続けにグラミー賞をもたらしたこのアルバムは(1970 Best Jazz Performance - Small Group Or Soloist With Small Group)、純粋にピアニスト、エヴァンスを聴く喜びを与えてくれます。

目に見える形での「自己との対話」はありませんが、エヴァンスがソロ・ピアノを弾くときは、きっと心の中で「自己との対話」を続けていたに違いありません。それをエヴァンスは、「音楽との一体感」と表現しています。以下、エヴァンス自身の言葉で語ってもらいましょう(引用はオリジナル・ライナーより。訳は拙訳です)。

私の人生でもっとも喜びに満ちた瞬間は、たぶん、ピアノを自在に操り、その音楽的な表現力を最大限に引き出したときだと思う。振り返ってみると、たった独りで音楽と向き合った数えきれないほどの時間が、私の人生を導く指針となってきたようだ。独りきりで演奏していると、私は音楽と一体になった気がした。音楽の技術的、あるいは分析的な面が自然と正しい方向へと向かい、音楽を心から理解するには、ただひたすら耳を傾ければいいんだということを私に思い出させてくれた。おそらく私だけなのだろうが、私はプロの演奏家であるにもかかわらず、聴衆のいないところで演奏するのを好んだ。それは間違いない。私が聴衆とコミュニケーションをとりたいか、とりたくないかといった問題ではなく、むしろ個人の自意識の問題だろう。訓練と集中力を通じてそうした自意識に打ち勝たなければならない。だが、人が本当にたった独りで自分の楽器と音楽とともにあることを知るのは、私にとってはいつも魅力的で熱が入る状況だった。私はそれによってベストな演奏レベルを知るのだ。だから、私がソロ・ピアノ録音で提示しようととくに望んだのは、このユニークなフィーリングなのである。

ピアノと一体化し、音楽と一体化し、無の境地に入っていくエヴァンス。考えるのではなく、ただ感じるだけ。音楽に耳をすませば、自然と結果はついてくる。これを出されたら、ただひたすら参りましたと降参するしかない極私的愛聴曲〈ア・タイム・フォー・ラヴ〉。ジョー・ザヴィヌル作のエヴァンス愛演曲〈ミッドナイト・ムード〉。そして、14分半にもおよぶ静謐な〈ネヴァー・レット・ミー・ゴー〉。ホント、ため息が出ます。

 

Bill Evans "Alone"
(Verve V6 8792)

Bill Evans (piano)

Produced by Helen Keane
Recorded by Ray Hall
Recorded at Webster Hall, NYC; September 10, 1968

[Tracks] Bill Evans - Alone
01. Here's That Rainy Day Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
02. A Time For Love Johnny Mandel (music) / Paul Francis Webster (lyrics)
03. Midnight Mood Joe Zawinul (music)
04. On A Clear Day (You Can See Forever) Burton Lane (music) / Alan Jay Lerner (lyrics)
05. Never Let Me Go Jay Livingston (music) / Raymond B. Evans (lyrics)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
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『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』

evans_atthemontreuxjazzfestival.jpg Bill Evans, Eddie Gomez & Jack DeJohnette - At the Montreux Jazz Festival

1968年の夏、エヴァンス・トリオはスイスの保養地モントルーへ向かい、第2回モントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出演します。この年の目玉は本場アメリカからのゲスト、エヴァンス・トリオ。カーリン・クロッグ、ヤン・ガルバレク、ジョン・サーマンといったヨーロッパ勢はもちろん、ニーナ・シモン(!)も参加したといいます。

モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』は、このときのパフォーマンスを収めた作品です。ドラマーのジャック・デジョネットが参加した唯一の公式盤として、あるいはレマン湖に浮かぶ古城、シヨン城が印象的なジャケットから(別名『お城のエヴァンス』といわれています)、ヴァーヴ時代のエヴァンス作品のなかでもとくに親しまれているようです。

と、これを書いていて今ふと思ったのですが、私、もしかしたらこのシオン城、観たことがあるかもしれません。学生時代、レマン湖にいったことがあって(といっても、わずか1日半の滞在でしたが)、そのなかで、どこかの古城を見学した記憶がかすかにあるのです。当時はまだジャズにのめり込んでおらず、当然このアルバムのことも知らなかったわけですが、あ〜、だんだん本当のことのような気がしてきました。ク〜ッ、もったいない!!!

それはさておき、ジャック・デジョネットです。1968年といえば、デジョネットが『フォレスト・フラワー』で一世を風靡したチャールズ・ロイド・カルテットからマイルスのグループへ、活動の場を移したその年です。ロイド・カルテットには後の盟友キース・ジャレットもいたわけですが、この時期にデジョネットがエヴァンスと共演した事実は実に興味深い。しかも、彼は1回限りのゲストではなく、レギュラーとしてエヴァンス・トリオに参加したといいます。

モントルー後、彼らはロンドンのロニー・スコッツに4週間出演、そこに、実に間の悪いことに、マイルスがぶらりとやってきます。そして、デジョネットとたまたま演奏していたベーシスト、デイヴ・ホランドを気に入り、自分のグループへかっさらっていったのです。

一瞬で終わってしまったデジョネット入りのエヴァンス・トリオですが、このアルバムでのパフォーマンスがよかっただけに、実に悔やまれます。エヴァンス作品のなかでも際立ってソリッドな印象を与えるこの盤の影の主役は、やはりデジョネットでした。

エルヴィン・ジョーンズ参加のトミー・フラナガン盤『オーヴァーシーズ』や『エクリプソ』、トニー・ウイリアムス参加のグレイト・ジャズ・トリオ盤『アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(ピアノはハンク・ジョーンズ)など、ドラマーが変わるだけで別人のようになるピアニストですが、エヴァンスも例外ではありません。だからこそ、エヴァンスにはベーシストだけでなく、もっとドラマーにこだわってほしかったと思うのは、私だけではないはずです。

エヴァンス・トリオのパフォーマンスは野外フェスではなく、カジノ・ドゥ・モントルー(現在はカジノ・バリエール・モントルー)を会場として行われました。ふだんはもちろんカジノですが、フェスティヴァルの期間中は現在でもコンサート会場となるようです。このアルバムによって、エヴァンスは2回目のグラミー賞を獲得します(1986 Best Instrumental Jazz Performance - Small Group Or Soloist With Small Group)。エヴァンスのマネージャー、ヘレン・キーンがプロデュースをしたなかでは、はじめてのグラミー賞作品となりました(以後、7回の受賞を数える)。

 

"Bill Evans At The Montreux Jazz Festival"
(Verve V6 8762)

Bill Evans (piano)
Eddie Gomez (bass) except #5
Jack DeJohnette (drums) except #5

Produced by Helen Keane
Recorded by Pierre Grandjean, Jean-Claude Martin
Recorded live at Casino de Montreux, Switzerland; June 15, 1968

[Tracks] Bill Evans, Eddie Gomez & Jack DeJohnette - At the Montreux Jazz Festival
01. One For Helen Bill Evans (music)
02. A Sleepin' Bee Harold Arlen (music) / Truman Capote (lyrics)
03. Mother Of Earl Earl Zindars (music)
04. Nardis Miles Davis (music)
05. I Loves You, Porgy George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
06. The Touch Of Your Lips Ray Noble (music and lyrics)
07. Embraceable You George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
08. Someday My Prince Will Come Frank Churchill (music) / Larry Morey (lyrics)
09. Walking Up Bill Evans (music)
10. Quiet Now Denny Zeitlin (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Eddie Gomez]
Eddie Gomez (建設中?の official website)
Eddie Gomez (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)
[Links: Jack DeJohnette]
Jack DeJohnette's Official Website
Jack DeJohnette Home Page (by Piotr Marek, Jr.)
Jack DeJohnette (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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2006年12月12日

アニタ・オディ『アニタ・シングス・ザ・モスト』

anita_singsthemost.jpg アニタ・オデイ - アニタ・シングズ・ザ・モスト

1957年1月31日録音の『アニタ・シングス・ザ・モスト』。もともと『ス・ワンダフル』というタイトルでリリースされる予定でしたが(Verve MGV 2086)、どういうわけか、タイトルが変更され、カタログ番号もつけ直されて発売されました(Verve MGV 8259)。

ヴァーヴといえばオスカー・ピーターソンというわけで、ノーマン・グランツがありとあらゆるセッションに起用したピーターソンのドラムレス・トリオ(ピアノ、ギター、ベース)にドラマーを加えたカルテットがアニタの伴奏にあたります。

ささやくような嗄れた声で迫る冒頭のメドレーは、アップテンポの〈ス・ワンダフル〉の間に、同じガーシュウィン兄弟の〈ゼイ・キャント・テイク・アウェイ・フロム・ミー〉をグッとテンポを落としてはさむという粋なアレンジ。

どんなにアップテンポな曲でも難なく弾きこなすピーターソンをゲストに迎えたからには、アニタも黙っていません。8曲目〈ゼム・ゼア・アイズ〉。これ以上ないほどのスピードで押しまくるピーターソンに一歩も引けを取らないアニタの軽やかなテクニックが光ります。ハーブ・エリスのソロもきてますねえ。

アニタのバラードにうっとりしたいなら、2曲目〈テンダリー〉。抑え気味のピーターソンのピアノが、しっとりとした情感をたたえて、いいですねえ。絢爛豪華に弾くだけじゃない、ピーターソンのうまさが出ています。最高のバックバンドを得て、アニタも気持ちよさそうです。

 

Anita O'Day "Anita Sings The Most"
(Verve MGV 8259)

Anita O'Day (vocal)
Oscar Peterson (piano)
Herb Ellis (guitar)
Ray Brown (bass)
Milt Holland or John Poole (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in LA; January 31, 1957

[Tracks] アニタ・オデイ - アニタ・シングズ・ザ・モスト
01. 'S Wonderful 〜 They Can't Take That Away From Me George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
02. Tenderly Walter Gross (music) / Jack Lawrence (lyrics)
03. Old Devil Moon Burton Lane (music) / Edgar Y. Harburg (lyrics)
04. Love Me Or Leave Me Walter Donaldson (music) / Gus Kahn (lyrics)
05. We'll Be Together Again Carl Fischer (music) / Frankie Laine (lyrics)
06. Stella By Starlight Victor Young (music) / Ned Washington (lyrics)
07. Taking A Chance On Love Vernon Duke (music) / John Latouche, Ted Fetter (lyrics)
08. Them There Eyes Maceo Pinkard (music) / William Tracey, Doris Tauber (lyrics)
09. I've Got The World On A String Harold Arlen (music) / Ted Koehler (lyrics)
10. You Turned The Tables On Me Louis Alter (music) / Sidney Mitchell (lyrics)
11. Bewitched, Bothered And Bewildered Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)

[Links: Anita O'Day]
Anita O'Day (Official Website)
[Links: Oscar Peterson]
Oscar Peterson (Official Website)
Oscar Peterson: A Jazz Sensation (@ Library and Archives Canada)
Oscar Peterson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Jazz Giant: The Oscar Peterson Discography

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『ピック・ユアセルフ・アップ・ウィズ・アニタ・オディ』

anita_pickyourselfup.jpg Anita O'Day - Pick Yourself Up

ジス・イズ・アニタ』から1年後の1956年12月、ほとんど同じようなメンバーを集めて、『ピック・ユアセルフ・アップ・ウィズ・アニタ・オディ』が収録されました。

4曲は、『ジス・イズ〜』と同じカルテットに、トランペットのハリー・エディソンとヴァイブのラリー・バンカー(エヴァンス・トリオに参加したドラマーです!)を加えた演奏。残りの曲は、これまた『ジス・イズ〜』と同じアレンジャー、バディ・ブレグマン率いるオーケストラとの共演です。タイトルどおり、アニタを聴いて「元気になろう」というわけで、男まさりの姉御肌、アニタの生きのいい面と、しっとりと歌い上げる妖婉さが1枚で楽しめる盤となっています。

ラリー・バンカーのヴァイブが耳に心地よい1曲目〈ドント・ビー・ザット・ウェイ〉。微笑みながら歌うアニタの顔が浮かぶようです。こちらも自然とウキウキした気分になってきます。続く〈レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス〉は、ほのかなラテン・フレイバーにゾクゾクします。言葉を口のなかで軽やかに転がすアニタが聴きたければ、表題曲〈ピック・ユアセルフ・アップ〉をどうぞ。10曲目〈アイ・ウォント・ダンス〉のいかにもいかにもポール・スミス、というピアノに思わずニヤリ。

オーケストラでは、『真夏の夜のジャズ』でノックアウトされた〈スウィート・ジョージア・ブラウン〉も入ってますねえ。ドラムの音だけをバックに歌う出だしといい、段階的にテンポを上げていく構成といい、基本的なアレンジはいっしょなようですが、こちらは相手がオーケストラとあって、おおらかに、ゆったりと歌い上げるアニタです。

声量のない彼女はフルメンバーのビッグバンドが相手だと力負けする気がしますが、そう聴こえないのは、バックの音が適度に抑えられているのと、聴かせどころをおさえたブレグマンの編曲のおかげでしょう。



Anita O'Day "Pick Yourself Up"
(Verve MGV 2043)

Anita O'Day (vocal)

#1, 2, 5, 10
Harry "Sweets" Edison (trumpet)
Larry Bunker (vibraphone)
Paul Smith (piano)
Berney Kessel (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Alvin Stoller (drums)

#3, 4, 6-9, 11, 12
Buddy Bregman (arranger, conductor)
Conte Candoli, Pete Candoli, Conrad Gozzo, Ray Linn (trumpet)
Milt Bernhardt, George Roberts, Frank Rosolino, Lloyd Ulyate (trombone)
Herb Geller, Bud Shank (alto sax)
Georgie Auld, Bob Cooper (tenor sax)
Jimmy Giuffre (baritone sax)
Paul Smith (piano)
Al Hendrickson (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Alvin Stoller (drums)

Produced by Norman Granz
Recorded in LA; December 18 (#1, 2, 5, 10), 19 (#6, 9, 11), 20 (#3, 4, 7, 8, 12), 1956

[Tracks] Anita O'Day - Pick Yourself Up
01. Don't Be That Way Edgar Sampson, Benny Goodman (music) / Mitchell Parish (lyrics)
02. Let's Face The Music And Dance Irving Berlin (music and lyrics)
03. I Never Had A Chance Irving Berlin (music and lyrics)
04. Stompin' At The Savoy Edgar Sampson, Chick Webb, Benny Goodman (music) / Andy Razaf (lyrics)
05. Pick Yourself Up Jerome Kern (music) / Dorothy Fields (lyrics)
06. Stars Fell On Alabama Frank Perkins (music) / Mitchell Parish (lyrics)
07. Sweet Georgia Brown Ben Bernie, Meceo Pinkard, Kenneth Casey (music and lyrics)
08. I Won't Dance Jerome Kern (music) / Dorothy Fields, Oscar Hammerstein II, Otto Harbach, Jimmy McHugh (lyrics)
09. Man With A Horn Eddie DeLange, Bonnie Lake, Truman Jenny (music and lyrics)
10. I Used To Be Color Blind Irving Berlin (music and lyrics)
11. There's A Lull In My Life Harry Revel (music) / Mack Gordon (lyrics)
12. Let's Begin Jerome Kern (music) / Otto Harbach (lyrics)

[Links: Anita O'Day]
Anita O'Day (Official Website)
[Links: Harry Edison]
Harry "Sweets" Edison: Biography, Selected Discography, Transcriptions (Jeff Helgesen)
[Links: Buddy Bregman]
Buddy Bregman (Official Website)

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アニタ・オディ『ジス・イズ・アニタ』

anita_anita.jpg Anita O'Day - Anita

アニタ・オディ追悼の意味を込めて、50年代のヴァーヴ録音から代表作をいくつか。55年録音の『ジス・イズ・アニタ』(原題は "Anita")は、作編曲家バディ・ブレグマンの小粋なアレンジに乗って、アニタがその魅力を全開させる傑作です。

ポール・スミス (p)(有名なデザイナーとは無関係です)、バーニー・ケッセル (g)、ジョー・モンドラゴン (b)、アルヴィン・ストーラー (ds) のカルテットをベースに、曲ごとにトロンボーン・セクションやストリングスが加わる構成で、ブレグマンのアレンジも光ります。

声量はないけれど、耳元でささやくようにハスキー・ヴォイスをしぼりだすアニタの魅力を味わいたいなら、3曲目〈バークレイ・スクエアのナイチンゲール〉から。う〜ん、これこれ。このしっとりとした味わいは、アニタならでは。たまりません。ストリングス入りのヴォーカルというと、あくびが出る作品が多いなか、この〈ナイチンゲール〉は、やさしいハープの音色もあわさって、素直に心の奥底まで届きます。

ポール・スミスとバーニー・ケッセルの名人芸を聴くなら、6曲目〈ファイン・アンド・ダンディ〉。スローな出だしから一転、アップテンポに切り替わる瞬間がしびれます。

トロンボーン・セクションが入った曲なら、モダンな響きに驚く8曲目〈ノー・ムーン・アット・オール〉。アニタの堂々とした歌いっぷりに惚れ直します。

そして、個人的に大好きな曲〈ビューティフル・ラヴ〉。ポール・スミス、きてますね。ジャケットからお洒落なイメージが先行してますが、実はスゴ腕ピアニストという彼の面目躍如です。



Anita O'Day "Anita"
(Verve MGV 2000)

Anita O'Day (vocal)
Buddy Bregman (arranger, conductor)

Paul Smith (piano)
Barney Kessel (guitar)
Joe Mondragon (bass)
Alvin Stoller (drums)

Milt Bernhart (trombone) #1, 2, 8, 10
Lloyd Elliot (trombone) #1, 2, 8, 10
Joe Howard (trombone) #1, 2, 8, 10
Si Zentner (trombone) #1, 2, 8, 10
Corky Hale (harp) #3, 5, 9, 11
with strings #3, 5, 9, 11

Produced by Norman Granz
Recorded in LA; December 6 (#4, 6, 7, 12), 7 (#3, 5, 9, 11), 8 (#1, 2, 8, 10), 1955

[Tracks] Anita O'Day - Anita
01. You're The Top Cole Porter (music and lyrics)
02. Honeysuckle Rose Thomas "Fats" Waller (music) / Andy Razaf (lyrics)
03. A Nightingale Sang In Berkeley Square Manning Sherwin (music) / Eric Maschwitz (lyrics)
04. Who Cares George Gershwin (music) / Ira Gershwin (lyrics)
05. I Can't Get Started Vernon Duke (music) / Ira Gershwin (lyrics)
06. Fine And Dandy Kay Swift (music) / Paul James (lyrics)
07. As Long As I Live Harold Arlen (music) / Ted Koehler (lyrics)
08. No Moon At All David Mann (music) / Redd Evans (lyrics)
09. Time After Time Jule Styne (music) / Sammy Cahn (lyrics)
10. I'll See You In My Dreams Isham Jones (music) / Gus Kahn (lyrics)
11. I Fall In Love Too Easily Jule Styne (music) / Sammy Cahn (lyrics)
12. Beautiful Love Victor Young, Wayne King, Egbert Van Alstyne, Heven Gillespie (music and lyrics)

[Links: Anita O'Day]
Anita O'Day (Official Website)
[Links: Buddy Bregman]
Buddy Bregman (Official Website)
[Links: Corky Hale]
The Official Website of Corky Hale

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『真夏の夜のジャズ』

jazzonasummersday.jpg

うかつにも昨晩はじめて知ったのですが、訃報です。去る11月23日、ハスキー・ヴォイスと器楽唱法で鳴らしたジャズ・シンガー、アニタ・オディがロサンジェルスの病院で亡くなりました。享年87歳。

本名、Anita Belle Colton O'Day。1919年10月19日、イリノイ州シカゴ生まれ。40年代前半はジーン・クルーパ楽団、スタン・ケントン楽団などで脚光を浴びますが、すぐにドラッグにはまり、数年を棒にふります。そんな彼女が復活したのは、ヴァーヴ(当初はクレフ)のプロデューサー、ノーマン・グランツと出会ってからで、彼女の代表作は50年代半ばのヴァーヴ録音に集中しています。

アニタ・オディというと思い出すのが、映画『真夏の夜のジャズ』。1958年7月、ロードアイランド州ニューポートで開催された第5回ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルの模様をさまざまな角度から切り取ったドキュメンタリー・フィルムです。

セロニアス・モンク、ソニー・スティット、ジョージ・シアリング、ダイナ・ワシントン、ジュリー・マリガン、ルイ・アームストロングなど錚々たるメンツが登場しますが、いちばん印象に残っているのは、貫禄のサッチモでも、伝説のマヘリア・ジャクソンでも、若き日のエリック・ドルフィー(!)でもなく、ノースリーヴの黒のドレスに、白い羽をあしらった黒のハット姿で登場するアニタです。

はじめて彼女を観たとき、私は恋に落ちました(笑)。彼女は当時38歳。今の私よりも年上ですが、そんなことは関係ありません。ステージに立つアニタの一挙手一投足がいとおしい。たまらなく、キュートです。けっして美人ではないのですが、そこがまたいいんです。

アニタは、はっきりいって声量がありません。音程もあやしい。でも、それを補ってあまりある魅惑のハスキー・ヴォイスに、どんな早口でも楽々と歌いこなす抜群のテクニックがあります。途中、彼女の横顔のアップが続く場面がありますが、あれを観ていると、喉の奥のほうから外に向けて徐々に音が広がっていく様子などがよくわかります。声をひとつ出すのでも、いろいろと出し方が変わるわけです。

彼女の当たり曲〈スウィート・ジョージア・ブラウン〉に、早口で歌いまくる〈二人でお茶を〉。彼女の全盛期の姿は、永遠にフィルムに刻み込まれています。



Jazz on a Summer's Day
(1959 USA)

Produced and Directed by Bert Stern
Photographed by Bert Stern, Courtney Hesfela, Raymond Phelan
Edited by Aram Avakian
Creative Music Producer: George Wein
Musical Director: George Avakian

[Song List]
01. Train And The River [Jimmy Giuffre Three]
02. Blue Monk [Thelonious Monk Trio]
03. Blues [Sonny Stitt & Sal Salvador]
04. Sweet Georgia Brown [Anita O'Day]
05. Tea For Two [Anita O'Day]
06. Rondo [George Shearing Quintet]
07. All Of Me [Dinah Washington]
08. As Catch Can [Gerry Mulligan Quartet]
09. I Ain't Mad At You [Big Maybelle Smith]
10. Sweet Little Sixteen [Chuck Berry]
11. Blue Sands [Chico Hamilton Quintet]
12. Lazy River [Louis Armstrong]
13. Tiger Rag [Louis Armstrong]
14. Rockin' Chair [Louis Armstrong & Jack Teagarden]
15. When The Saints Go Marching In [Louis Armstrong]
16. Shout All Over [Mahelia Jackson]
17. Didn't It Rain [Mahelia Jackson]
18. Lord's Prayer [Mahelia Jackson]

[Links: Anita O'Day]
Anita O'Day (Official Website)

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2006年12月05日

ビル・エヴァンス『ア・シンプル・マター・オブ・コンヴィクション』

evans_asimplematter.jpg 

ビル・エヴァンスのヴァーヴ移籍第一弾は、西海岸の大物ドラマー、シェリー・マンとの共演盤『エムパシー』(1962年8月録音)でしたが、これは、失敗を運命づけられたような作品でした。

プロデューサーのクリード・テイラーがねらったのは、マンの大ヒット作『マイ・フェア・レディ』の二匹目のドジョウで、もともとこのアルバムは、新作ブロードウェイ・ミュージカル『ミスター・プレジデント』(作曲はアーヴィング・バーリン)をジャズ化したものになるはずでした。ところが、どういうわけか、公演そのものが突然中止になり、当初の企画は頓挫します。エヴァンスが急いで用意したアレンジは、無用の長物となったのでした(このアルバムにバーリン作の無名曲が入っているのはその名残)。

それから4年後、エヴァンスとマン、そしてクリード・テイラーはリベンジに挑みます。その名も『ア・シンプル・マター・オブ・コンヴィクション』と題されたこのアルバムは、エヴァンスとマンに企画は不要、お互いの力を「単に信じればいいだけのこと」だと改めて教えてくれます。

このアルバムは、エヴァンス最長のパートナーとなるベーシスト、エディ・ゴメスの初参加作品としても知られています。1944年10月4日、プエルトリコの首都サンファンで生まれたゴメスは大のスコット・ラファロ・ファンで、自分の長男にスコッティという名前をつけたほど。彼はそうなるべくして、エヴァンスの懐に飛び込んだのでした。ここには、まだテクニックにまかせて跳ね馬のように飛び跳ねる、いささか興奮したゴメスの姿が残されています。

それにしても惜しいのは、冒頭の表題曲の扱いです。シンバルとベースだけではじまるアレンジといい、複雑で格調高い曲調といい、名盤の予感がプンプンしてくるのですが、どういうわけか、エヴァンスのソロが盛り上がってきたときにフェイドアウトして終わってしまうのです。これって、どういう演出なのでしょうか? それとも、このあと演奏が破綻した? 実にもったいない。最後まで聴かせてくれ〜!!!

それともうひとつ。クリード・テイラー時代のヴァーヴ録音はジャズ界きっての名エンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダー (RVG) が行っているのですが、これがよくない。RVG は、骨太のジャズを録らせれば右に出るものはいませんが、エヴァンスはもともと繊細で変幻自在のタッチにその特徴があります。だから、エヴァンスには不向きなのです。『ビル・エヴァンス:ジャズ・ピアニストの肖像』の著者で、自身もピアニストであるピーター・ペッティンガーは、RVG のことを次のようにこきおろしています(訳は相川京子さん)。

ヴァン・ゲルダーのピアノの音は、奇妙なことに、乾いて堅苦しく、生気、暖かみ、みずみずしさを排除しているかのようで、漠然とした残響だけが残った。タッチの面では、彼の手にかかるとどんなピアニストもクローンのようにまったく同じに聴こえた。

「エヴァンスはヴァン・ゲルダーの特殊な音になぜ耐えることができたのだろう?」
とは強烈な皮肉ですが、エヴァンスの心のひだに触れるようなやわらかいタッチを愛するものとしては、同意せざるをえないのでは?



Bill Evans "A Simple Matter Of Conviction"
(Verve V/V6 8675)

Bill Evans (piano)
Eddie Gomez (bass)
Shelly Manne (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; October 11, 1966

[Tracks] 
01. A Simple Matter Of Conviction Bill Evans (music)
02. Stella By Starlight Victor Young (music) / Ned Washington (lyrics)
03. Unless It's You Bill Evans (music)
04. Laura David Raksin (music) / Johnny Mercer (lyrics)
05. My Melancholy Baby Ernie Burnett (music) / George A. Norton (lyrics)
06. I'm Getting Sentimental Over You George Bassman (music) / Ned Washington (lyrics)
07. Star Eyes Gene DePaul, Don Raye (music and lyrics)
08. Only Child Bill Evans (music)
09. These Things Called Changes Bill Evans (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Eddie Gomez]
Eddie Gomez (建設中?の official website)
Eddie Gomez (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)

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ビル・エヴァンス&ジム・ホール『インターモデュレーション』

evans_intermodulation.jpg 

ビル・エヴァンスとジム・ホールの共演といえば、真っ先にユナイテッド・アーティスツ盤『アンダーカレント』があがりますが、4年後、彼らはヴァーヴでふたたび相見えます。

インターモデュレーション』というタイトルからは、2人が単なる「インタープレイ=相互に (inter) 演奏する (play)」を超えて、「インターモデュレーション=相互に (inter) 転調する (modulation)」へと踏み出そうとする意思が感じられますが、なに、ちっともむずかしいことはありません。2人のリラックスしたプレイに身をまかせれば、極上の気分を味わえること間違いなし!

キラー・チューン〈マイ・ファニー・ヴァレンタイン〉がない分、『アンダーカレント』に比べて損をしている感じがしますが、ここには、先に『タウン・ホール』で取り上げたばかりの美曲〈ターン・アウト・ザ・スターズ〉があります。そして、エヴァンスが珍しく軽やかに舞うクラウス・オガーマンの〈ジャズ・サンバ〉があります。

ジム・ホールと共演するのは大好きだった。彼の何が素晴らしいかといえば、彼はひとりでリズム・セクション全体のようなんだ。〈ジャズ・サンバ〉という曲があるが、あの曲はリズム・セクションを入れてもああいう仕上がりにはならなかったはずだ。あのように陽気で動きのある感じを出すのは難しいんだ。

とは、エヴァンスのジム・ホール評ですが(引用は『ビル・エヴァンス:ジャズ・ピアニストの肖像』より。訳は相川京子さん)そういいたくなるエヴァンスの気持ち、よくわかります。ジム・ホールはホントにうまい。実に得がたいギタリストです。

 

Bill Evans, Jim Hall "Intermodulation"
(Verve V/V6 8655)

Bill Evans (piano)
Jim Hall (guitar)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; April 7 (#3, 6), May 10 (#1, 2, 4, 5), 1966

[Tracks] 
01. I've Got You Under My Skin Cole Porter (music and lyrics)
02. My Man's Gone Now George Gershwin (music) / DuBose Heyward (lyrics)
03. Turn Out The Stars Bill Evans (music) / Gene Lees (lyrics)
04. Angel Face Joe Zawinul (music)
05. Jazz Samba Claus Ogerman (music)
06. All Across The City Jim Hall (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jim Hall]
Jim Hall: The Official Website
Jim Hall Maniacs (by 益満妙:エキマンタエ)
ジム・ホール:アルバム蒐集 (by kawagu)

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『ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』

evans_attownhall.jpg Bill Evans - Bill Evans At Town Hall

1966年2月21日、エヴァンスは人生初のコンサート・ホールでのライヴの舞台に立ちます(@ニューヨークのタウン・ホール)。本来なら、晴れ舞台となるはずのこの日、エヴァンスは悲しみに打ちひしがれていました。わずか数日前に、父親ハリー・エヴァンスが亡くなったからです(エヴァンスの生涯に影響を与え続けた兄のハリー Jr. とは同姓同名)。

ビル・エヴァンス・アット・タウン・ホール』はそのときの模様を収録したアルバムで、ジャケットに『Volume One』と打ってあるのは、ヴァーヴ側に『Volume Two』を出す気があったことを伺わせますが、今のところ出ていません。

この日は、エヴァンスのソロ、トリオによる演奏に加えて、アル・コーンのアレンジによるオーケストラとの共演も行われたそうですが(まさに、エヴァンスにとっては一世一代の晴れ舞台だったのです)、上記のような事情でエヴァンスは情緒不安定、
オーケストラとの事前調整もほとんどできず、準備不足は明らかということで、残りの演奏はお蔵入りしました。

ところが、曲によって出来、不出来がはっきりしていたにせよ(それは、しかたのないことでしょう!)、この日のエヴァンスが見せた一瞬のきらめきは、好調時のエヴァンスを思い起こさせます。とくに最初の4曲のトリオの演奏の完成度が非常に高い。悲しみを紛らわすために夢中で鍵盤を叩いたのかもしれませんが、〈アイ・シュッド・ケア〉の跳ねるような高揚感は、ちょっとほかでは得がたいものがあります。〈フー・キャン・アイ・ターン・トゥ〉の悟りの境地のようなやわらかな出だしも、理屈抜きでいいと思います。

とはいえ、注目はやはり14分近くにおよぶソロ演奏による鎮魂歌、〈ソロ、イン・メモリーズ・オブ・ヒズ・ファーザー〉でしょう(「マイ・ファーザー」じゃなく「ヒズ・ファーザー」なのはなぜでしょう?)。これは4部構成の組曲風で、〈プロローグ〉を除いて、すでにある曲を組み合わせたものです。〈ストーリー・ライン〉とあるのはリヴァーサイド時代の恩師オリン・キープニュースに捧げられた〈リ:パーソン・アイ・ニュー〉、〈ターン・アウト・ザ・スターズ〉は友人ジーン・リースと共作した名曲。そして、『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』でレコードのA面、B面の最後を飾った〈エピローグ〉と続きます。

重苦しい展開を予想しがちですが、悲嘆に暮れるというよりも、そこはかとなく感じられるのは、75年の人生を終えた父親へのいたわりの情です。亡き父を静かに送り出すエヴァンス。天国の父親の耳に、エヴァンスの声は届いたのでしょうか。

なお、ベースのチャック・イスラエルはこれを最後にトリオを去り、ドラムのアーノルド・ワイズに至っては、このアルバムがエヴァンス・トリオでの唯一の公式録音となっています。

 

"Bill Evans At Town Hall, Volume One"
(Verve V/V6 8683)

Bill Evans (piano)
Chuck Israels (bass)
Arnold Wise (drums)

Produced by Creed Taylor
Recorded by Rudy Van Gelder
Reocrded live at Town Hall, NYC; February 21, 1966

[Tracks] Bill Evans - Bill Evans At Town Hall
01. I Should Care Axel Stordahl, Paul Weston (music) / Sammy Cahn (lyrics)
02. Spring Is Here Richard Rodgers (music) / Lorenz Hart (lyrics)
03. Who Can I Turn To Anthony Newley, Leslie Bricusse (music and lyrics)
04. Make Someone Happy Jule Styne (music) / Betty Comden, Adolph Green (lyrics)
05. Solo-In Memory of His Father, Harry L. Evans 1891-1966:
 a. Prologue Bill Evans (music)
 b. Improvisation on Two Themes
   i) Story Line Bill Evans (music)
  ii) Turn Out the Stars Bill Evans (music) / Gene Lees (lyrics)
 c. Epilogue Bill Evans (music)

[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Chuck Israels]
Chuck Israels (official website)

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モニカ・セッテルンド『ワルツ・フォー・デビー』

monicaz_waltzfordebby.jpg Monica Zetterlund & The Bill Evans Trio - Waltz for Debby

1964年の夏、エヴァンス・トリオは初の欧州ツアーへ出かけました。メンバーはピアノのエヴァンスに、ベースのチャック・イスラエル、ドラマーはリヴァーサイド最終盤『アット・シェリーズ・マン・ホール』以来、彼らと行動をともにしているラリー・バンカーという顔ぶれ。行く先は、ベルギー、フランス、イタリア、オランダ、スウェーデンでした。

スウェーデンの首都ストックホルムでは、エヴァンス作〈ワルツ・フォー・デビー〉にスウェーデン語の歌詞をつけて歌っていたシンガー兼女優、モニカ・セッテルンドと出会います。エヴァンスのマネージャー(のちにプロデューサーも兼務)ヘレン・キーンは、ツアーの最後にレコーディングを企画、『ワルツ・フォー・デビー』として結実します。

スウェーデンの歌姫(古いね)、モニカ・セッテルンド。1937年9月20日、スウェーデン・ハーグフォルス生まれ。2005年5月12日、スウェーデン・ストックホルムの自宅で死去。北欧のジャズ・シーンに咲いた一輪の花ですが、晩年は車椅子生活を余儀なくされ、死因は寝タバコによる焼死だそうです。

ストックホルムのゴールデン・サークルに出演中もモニカの別荘に通い、準備を重ねたというエヴァンス。収録中もくつろいでいたようですが、世評に反してエヴァンスは歌伴に似合わないと私は思うのです。

たとえば、1曲目の有名スタンダード〈降っても晴れても〉。冒頭、モニカのストレートな歌声に伴奏をつけるエヴァンス。ところが、この音の選び方がどこかしっくりこない。いや、エヴァンスはいつものエヴァンスなんです。ところが、歌手の背後では彼の独特な音選びが耳に障る。歌伴の名手トミー・フラナガンなんかが歌手のうしろに隠れて存在を感じさせないのと比べると、音に自己主張が強いのです。ピアノの音色が声とぶつかっている気がします。要は、歌に集中できないというか、くつろげない。

エヴァンスはリリカル一辺倒と思いきや、くり出すフレーズは思いのほかひねくれていて、ハードボイルドな一面をもっていますが、それがこんなところに表れている気がします。モニカの歌が一段落して、トリオによる演奏に移ると、エヴァンスの演奏自体はとくに変化していないのに、例の違和感が消えて、エヴァンスらしさが横溢するのを聴けば、私のいいたいことがわかってもらえるのではないかと思います。

エヴァンスは、音楽に対してはかなりのエゴイストでした。「インタープレイ」はエヴァンスのトレードマークですが、それは彼が相手の演奏にあわせたからではなく、
相手がエヴァンスの一挙手一投足に耳を傾け、その展開を読み、彼に寄り添うことで実現したのではないか。この歌伴を聴いていると、そう思えてなりません。あわせるのはあくまで周囲の人間であって、エヴァンス自身は「自己との対話」に没入しているだけ。唯一の例外は、亡くなったスコット・ラファロで、彼だけはエヴァンスと対等、あるいはエヴァンスをも牽引するだけの力をもっていた、というのは、私の思い入れにすぎないのでしょうか?

とはいえ、やはり〈ワルツ・フォー・デビー〉は一聴の価値があります。スウェーデン語で〈モニカズ・ヴァルズ(モニカのワルツ)〉として歌われたこの曲は、エヴァンス・オリジナルなだけあって、そもそも、あわせるのはモニカのほうだからです。

そして、同じくスウェーデン語で歌われる#2、7、10の3曲。北欧系の人が歌う英語は発音もはっきりしていて、日本人にもわかりやすくて好きなのですが、さすがに母語なだけあって、モニカは情感たっぷりに歌い上げます。エヴァンスもはじめて取り組む曲ばかりですから、自己主張は控えめに、歌伴に徹しているようです。ヴォーカル物はどうしてもメインが「歌」になるので、エヴァンスが「らしさ」を消したときに名演が生まれるのも、それはそれで、しかたがないことだと思います。

 

Monica Zetterlund "Waltz For Debby"
(Philips 6378508)

Monica Zetterlund (vocal)
Bill Evans (piano)
Chuck Israels (bass)
Larry Bunker (drums)

Recorded in Stockholm, Sweden; August 29, 1964

[Tracks] Monica Zetterlund & The Bill Evans Trio - Waltz for Debby
01. Come Rain Or Come Shine Harold Arlen (music) / Johnny Mercer (lyrics)
02. Beautiful Rose [Jag Vet En Dejlig Rosa] (traditional)
03. Once Upon A Summertime Eddie Barclay, Michel Legrand (music) / Eddie Marray (French lyrics), Johnny Mercer (English lyrics)
04. So Long Big Time Harold Arlen, Langdom, D. Previn
05. Waltz For Debby [Monicas Vals] Bill Evans (music) / Gene Lees (lyrics)
06. Lucky To Be Me Leonard Bernstein (music) / Betty Comden, Adolph Green (lyrics)
07. Sorrow Wind [Vindarna Sucka Uti Skogarna] (traditional)
08. It Could Happen To You Jimmy Van Heusen (music) / Johnny Burke (lyrics)
09. Some Other Time Leonard Bernstein (music) / Betty Comden, Adolph Green (lyrics)
10. In The Night [Om Natten] Olle Adolphson, C.F. Reutersward (music)

[Links: Monica Zetterlund]
Monica Zetterlund (Official Website in Swedish)
Monica Zetterlund (Swedish Fan Site)
[Links: Bill Evans]
The BILL EVANS Webpages
Bill Evans's Discography
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Chuck Israels]
Chuck Israels (Official Website)

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posted by ユキヒロ at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | Philips | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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