
1961年、セロニアス・モンクに転機が訪れます。ブルーノート、プレスティッジ、リヴァーサイドと、ハードバップの三大レーベルを渡り歩いてきたモンクが最後にたどり着いたのは、メジャーレーベル、コロンビアでした。十分な予算と時間が与えられたモンクは、1日2曲しか吹きこまないという贅沢な環境で、移籍第一弾『モンクス・ドリーム
モンクの音使いは相変わらず奇妙ですが、難解さ、近寄りがたさはほとんど感じられません。いや、むしろ非常にわかりやすい。演奏にメリハリが利いていて、ノリもテンポも心地いいです。これは、モンク流の「ポップス」ではないでしょうか。精神の安定がもたらした気力の充実が、いい方向に働いているようです。
歯切れのよいモンクのピアノも聞きものですが、驚いたのは、チャーリー・ラウズの成長ぶりです。昨日アップした『5・バイ・モンク・バイ・5』では、モンクとぶつからないことで相性のよさを示していましたが、ここでは一歩進んで、モンクと同化しつつあります。ここ数年の共演で、すっかりモンクの音楽性を消化したようで、音使いまでモンクのそれに酷似してきているのです。〈モンクス・ドリーム〉や〈ブライト・ミシシッピ〉におけるラウズのソロを聞けば、わかってもらえるはずです。
チャーリー・ラウズの代表作というと、ポール・クイニシェットとテナー・バトルをくり広げたベツレヘム盤『ザ・チェイス・イズ・オン
それが、このアルバムでは、モンクのような奇妙にゆがんだ音選びが板についています。モンクとラウズは12年の長きにわたって行動をともにしますが、この「同質化」があったからこそ、続いたんだと思います。逆にいうと、それがモンクの作品から刺激を奪い、マンネリ化という批判を浴びることになるのですが、少なくとも、この『モンクス・ドリーム』については、その批判は当たりません。やっぱり、気持ちいいですから。このポップな感じは。
Thelonious Monk "Monk's Dream"
(Columbia CL 1965 / CS 8765)
Charlie Rouse (tenor sax)
Thelonious Monk (piano)
John Ore (bass)
Frankie Dunlop (drums)
Produced by Teo Macero
Recorded in NYC; October 31 (#5, 7), November 1 (#2, 3), 2 (#1, 6), 6 (#4, 8), 1962
[Tracks]
01. Monk's Dream (music: Thelonious Monk)
02. Body And Soul (music: Thelonious Monk)music: Johnny Green / words: Edward Heyman, Robert Sauer, Frank Eyton
03. Bright Mississippi (music: Thelonious Monk)
04. Blues Five Spot (music: Thelonious Monk)
05. Blue Bolivar Blues (music: Thelonious Monk)
06. Just A Gigolo (music: Thelonious Monk)music: Leonello Casucci / Julius Brammer [German], Irving Caesar [English]
07. Bye-Ya (music: Thelonious Monk)
08. Sweet And Lovely (music: Thelonious Monk)music+words: Gus Arnheim, Harry Tobias, Jules Lemare
[Links: Thelonious Monk]
THE MONK ZONE: The Official Thelonious Sphere Monk Website
The Thelonious Monk Website
Thelonious Monk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
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