2006年04月29日

『マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ』

milesdavisandthemodernjazzgiants.jpg Miles Davis Quintet - Miles Davis and the Modern Jazz Giants

1954年12月24日のクリスマス・イヴ、マイルスにモンク、ジョン・ルイスを除いた MJQ のメンバーは、ニュージャージー州ハッケンサックにあったルディ・ヴァン・ゲルダーの自宅スタジオに集まりました。「クリスマス・セッション」と呼ばれるこのときの模様は、前回アップした『バグス・グルーヴ』と、『マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ』に収録されています。

さて、この「クリスマス・セッション」は、別名「ケンカ・セッション」として知られています。マイルスに「自分のソロのバックでピアノを弾くな」と言われ、怒ったモンクが、自分のソロの途中で弾くのを止めてしまった。事実、〈ザ・マン・アイ・ラヴ〉のテイク2で、モンクがソロの途中で弾くのを止めてしまうじゃないか、というのが、ケンカ派(なんて人がいるとすれば)の主張です。

事実はどうなのでしょうか? 冒頭の〈ザ・マン・アイ・ラヴ〉のテイク2を聞いてみましょう。テーマから、マイルスの匂い立つようなリリシズムが際立ちます。今回はバックで、モンクもミルトも弾いていますね。邪魔になるどころか、音楽的にもしっくりいっています。

2分12秒あたりでテンポが急に早くなってミルトのソロに引き継がれます。いかにもモンクらしいバッキングも聞こえます。

そして、いよいよから4分45秒モンクのソロがはじまります。ところが、モンクは調子が出ない。なかなか乗り切れないようです。「さあ困った、どうしよう」モンクはついに鍵盤から手を離してしまいます(5分27秒)。

沈黙が続きます。ベースとドラムはリズムを刻み続けますが、「ああ、ダメか、録り直しか」と思ったころに、マイルスが入ってくる(5分39秒)。まるでモンクの背中をそっと押すかのように。そしてモンクが復活、すぐにマイルスにバトンを渡します。

う〜ん、これのどこが「ケンカ」なのでしょうか。私なんかはむしろ、うまくソロに入れなかったモンクに対する、マイルスのいたわりを感じます。「おい、どうしたんだ」「こうやって弾けばいいんだよ」マイルスのペットはそう語りかけているかのようです。モンクもそれに助けられて、ふたたび鍵盤に向かっていく。これを「愛」といわずに、何を「愛」というのでしょうか?

ここらへんの話は、例によってマイルス本人に語ってもらいましょう。
以下、『マイルス・デイビス自叙伝』より引用です(訳は中山康樹さん)。

オレはただ、モンクが作った〈ベムシャ・スイング〉以外では、オレのソロのバッグでピアノを弾くな、休んでろ、と言っただけだ。理由は、ホーン・プレイヤーのバッキングについて、モンクがあまり理解していなかったからだ。モンクと一緒にやって良いサウンドが作れたのは、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、チャーリー・ラウズだけだ。みんなサックス・プレイヤーだ。(中略)トランペットは、演奏できる音符の数が限られている。だからリズム・セクションには、目一杯演奏させなきゃならない。だが、モンクのやり方は、それとは正反対だった。

彼(モンク)はケンカっ早い人間でもなかった。たとえ一週間、彼の足を踏みつづけたとしても、殴り合いになることはなかっただろう。雄牛みたいに強かったが、モンクはやさしく、静かで美しい人間だった。だいたい、もしオレがモンクをぶん殴るなんて言ったりしたら、誰かが飛んできて、オレを精神病院に入れなきゃ変だ。オレみたいなチビを持ち上げて壁に叩きつけることくらい、モンクにとっちゃ朝飯前のことだったんだからな。

モンクの自作曲は〈ベムシャ・スウィング〉だけではなく、〈ラウンド・ミッドナイト〉も収録されていますが、なぜかこの曲だけ、1956年のマラソン・セッションのときの録音です。

 

"Miles Davis And The Modern Jazz Giants"
(Prestige 7150)

#1, 2, 4, 5
Miles Davis (trumpet)
Milt Jackson (vibraphone)
Thelonious Monk (piano)
Percy Heath (bass)
Kenny Clarke (drums)

Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack NJ; December 24, 1954

#3
Miles Davis (trumpet)
John Coltrane (tenor sax)
Red Garland (piano)
Paul Chambers (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack NJ; October 26, 1956 (#3)

Produced by Bob Weinstock
Recorded by Rudy Van Gelder

[Tracks] Miles Davis Quintet - Miles Davis and the Modern Jazz Giants
01. The Man I Love [take 2] (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
02. Swing Spring (music: Miles Davis)
03. 'Round Midnight (music: Thelonious Monk, Cootie Williams / words: Bernie Hanighen)
04. Bemsha Swing (music: Thelonious Monk)
05. The Man I Love [take 1] (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Milt Jackson]
Milt Jackson Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Thelonious Monk]
THE MONK ZONE: The Official Thelonious Sphere Monk Website
The Thelonious Monk Website
Thelonious Monk Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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マイルス・デイヴィス『バグス・グルーヴ』

bagsgroove.jpg Miles Davis - Bags Groove

春だというのに寒かったり暑かったり、なんかはっきりしない日が続くなあと思ったら、早くも GW 突入です。スカッと晴れるといいのですが。

1954年、マイルスはドラッグの魔の手に落ちて暗雲たれ込めたそれまでの数年を振り払うかのように、立て続けに名盤を吹き込みます。ミルト・ジャクソンの代表曲をタイトルに冠した『バグス・グルーヴ』には、ロリンズ自作の名曲が印象的な6月29日のセッションと、マイルスとモンク、ミルトが顔をそろえた12月24日の「クリスマス・セッション」の2曲が収録されています。

CD をセットすると、まず〈バグズ・グルーヴ〉の2つのテイクが耳に飛び込んできます。「バグズ」というのは「目の下のクマ」という意味で、目の下に袋状のたるみがあるミルト・ジャクソンのあだ名ですね。

イントロの部分に耳をすませてみましょう。トランペット、ヴァイヴ、ベース、ドラムは聞こえますが、いるはずのモンクのピアノが聞こえません。続いてトランペットのソロに移りますが、ここではミルトのヴァイブも姿を消して、マイルスはベースとドラムだけをバックに吹いています。実に気持ちよさげですね。気力が充実しているようです。

ところで、モンクとミルトはどこに行ったのかなと思っていると、忘れたころにミルトのソロがはじまります。自作曲なだけあって、ミルトも絶好調です。その背後では、モンクの不協和音がかすかに聞こえます。「あっ、いたいた、ようやく出てきた」ひと安心してしばらくすると、モンクのソロがはじまります。そして、先ほどの安心感が吹き飛ぶんです(笑)。やっぱりモンクはいつでもモンク。予定調和からはずれた音階は、人の心をざわつかせます。でも、不思議としっくりくる。モンクのモンクたるゆえんです。

モンクのソロが終わると、ふたたびマイルスが登場します。その最初の一音に耳を傾けてください。「オレ、ここから入っていいんだっけ」と少しだけ自信なさげなマイルスが笑えます。そして、モンクはふたたびその場から消えるのです。

マイルスの背後でモンクがピアノを弾かなかったのは、マイルスがモンクに対して、「オレのバックでピアノを弾くな」といったからです。それ以上でも、それ以下でもありません。この「クリスマス・セッション」については、『マイルス・デイビス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ』でも紹介します(次回アップします)。

さて、3曲目からはうってかわって野太いテナーが登場します。ソニー・ロリンズです。当時のロリンズは完全なジャンキーで、刑務所を出たり入ったりしていたといいます。その他のメンバーは、2月録音の『ウォーキン』と同じですね。

ここには、ロリンズのオリジナルが3曲も入っていて、それぞれ他のミュージシャンにカヴァーされることの多い名曲ばかりなのですが、なぜかロリンズ名義の作品では見かけません。理由はよくわかりませんが、ひょっとしたら次のマイルスの発言のなかにヒントが隠されているのかもしれません。以下、『マイルス・デイビス自叙伝』より引用です(訳は中山康樹さん)。

本当のところを言うと、あのレコーディングの時、ソニーは曲を用意してはいたが、実際はスタジオで全部書き直したんだ。奴は紙を引き裂いて、小節か音符か和音か、あるいはコード進行かをとにかく書きなぐっていた。オレがスタジオに入って、「曲はどこだい?」って聞くと、「まだ書いてないよ」とか「まだ終わってないんだ」とか言うから、出来上がってるパートだけ吹いてみた。すると奴はどこか隅のほうに行って、少し経つと紙切れに何か書いて戻ってきて、「OK、マイルス、できたよ」と言うんだ。

つまり、まじめなロリンズはこれらの曲を「自作曲」として吹くことに抵抗があったのではないか。そう思ったりするわけです。これはマイルスとの共同作業でつくった曲だから、あるいは逆に、マイルスに乗っ取られた曲だから、私は吹けない(吹かない)。まあ、これは完全に私の個人的な想像ですが、すぐに自信を失って、何かといえば引退してしまうロリンズのことですから、あながち「ない」とも言い切れない気がするのは、私だけでしょうか?

〈エアジン〉はナイジェリア(Nigeria)のつづりを逆にしたもの。〈オレオ〉はバターの代替品として登場したオレオマーガリンのこと。〈ドキシー〉には「愛人、ふしだらな女」といった意味があります。この3つのオリジナルで聞きものは、〈オレオ〉の1分45秒あたりからはじまるロリンズのソロです。マイルスからソロを引き継いだロリンズは、自作曲であるにもかかわらず、ソロの出だしでつまずきます(笑)。音が出ない。頭のなかが真っ白になってしまったかのようです。なんとかしようと踏ん張りますが、どうしてもうまく流れていかない。あたりに緊張が走ります。たまらずホレス・シルヴァーが助け舟を出す(2分7秒あたり)。それでようやく、ロリンズも流れはじめるのです。テナー・タイタン、ロリンズにも、こんな時代があったんですねえ(笑)。

 

Miles Davis "Bags' Groove"
(Prestige 7109)

Miles Davis (trumpet)
Sonny Rollins (tenor sax) #3-7
Horace Silver (piano) #3-7
Thelonious Monk (piano) #1-2
Milt Jackson (vibraphone) #1-2
Percy Heath (bass)
Kenny Clarke (drums)

Produced by Bob Weinstock
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack NJ; June 29 (#3-7), December 24 (#1-2), 1954

[Tracks] Miles Davis - Bags Groove
01. Bags' Groove [take 1] (music: Milt Jackson)
02. Bags' Groove [take 2] (music: Milt Jackson)
03. Airegin (music: Sonny Rollins)
04. Oleo (music: Sonny Rollins)
05. But Not For Me [take 2] (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
06. Doxy (music: Sonny Rollins)
07. But Not For Me [take 1] (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Sonny Rollins]
Sonny Rollins: The Official Website
The Sonny Rollins Page
The Complete Sonny Rollins
Sonny Rollins Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Thelonious Monk]
THE MONK ZONE: The Official Thelonious Sphere Monk Website
The Thelonious Monk Website
Thelonious Monk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Milt Jackson]
Milt Jackson Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年04月21日

ホレス・シルヴァー『ソング・フォー・マイ・ファーザー』

songformyfather.jpg Horace Silver - Song for My Father

強力なタッチと圧倒的なグルーヴ感でフロント陣を鼓舞するピアニスト、ホレス・シルヴァー。1928年9月2日、コネティカット州ノーウォーク生まれ。ポルトガル系の父と、アイルランド人と黒人のハーフの母をもち、ブルースやブギウギ・ピアノを聞いて育った彼の音楽人生は、意外や意外、スタン・ゲッツのもとではじまります。

ピアニストとしての彼にスポットを当てるなら、トリオ作品がいいのですが、いかんせん数がない。というか、最後までトリオで通した作品は、1952年の初リーダー・セッションを含む『ホレス・シルヴァー・トリオ&アート・ブレキー、サブー』しかないんですね。しかも、なぜかここには、アート・ブレイキーとサブーが2人だけで打楽器対決をくり広げる2曲が含まれています。

これじゃあんまりだ、というか、初期のシルヴァーはまだ熟す前の果実のようで、彼本来の「うまみ」を味わえない。というわけで、シルヴァーがいちばん輝いていたミッチェル&クック時代の最後の作品、『ソング・フォー・マイ・ファーザー』といきましょう(1963年10月31日、1964年10月26日録音)。

ジャケットにも登場しているホレスの父親はポルトガル系ですが、生まれたのはアフリカの西、大西洋上に浮かぶ小さな諸島国家カーボヴェルデ(Cape Verde)でした(その後、父親は若くしてアメリカに渡ります)。シルヴァーがまだ幼なかったころ、彼のまわりにはカーポヴェルデの民謡があふれていました。親しい人たちが集まったホーム・パーティで、父親はヴァイオリンやギターを弾いていたといいます。

時代は下って64年の2月、ブラジルを訪れたシルヴァーは、かの地で本物のボサノヴァのビートに出会います。そこで思い出したのです、幼いころの楽しかった思い出を。ブラジルは南米で唯一、ポルトガルを旧宗主国とする国です。大西洋を渡り、世代を超えて、一つにつながったポルトガルの伝統。それをシルヴァーは父親への感謝を込めて曲にします(ついでにいうと、シルヴァーの次作のタイトルは、そのものズバリ『カーポヴェルデのブルース』です)。

というわけで、このアルバムのメインは、メンバー総取っ替え後の1954年10月録音の4曲です。ブルー・ミッチェル・ファンの私としては残念ですが、出来は明らかに64年録音のほうがすぐれています。そして、意外といっては失礼ですが、カーネル・ジョーンズのペットがこれまたすばらしい。

今回意識的に聞き直して初めて気がついたのですが、彼の音色は、クリフォード・ブラウンとよく似ています。音の厚みやメロディーラインの美しさという点では劣りますが、上へ上へと伸びていく軽さ(悪い意味ではなく)がブラウニーのそれを思わせるのです。非常に「正統的」というか、くすんでいないのです。ぜひ2曲目の彼のソロを聞いてみてください。私の言わんとしていることが、わかってもらえるはずです。

63年の録音では、トリオで演奏された〈ロンリー・ウーマン〉が印象的です。オーネット・コールマンの同名曲のほうが有名ですが、シルヴァーのこの曲も、彼の繊細な一面が感じられる名曲です。

 

Horace Silver "Song For My Father"
(Blue Note BLP 4185 / BST 84185)

#3, 6
Blue Mitchell (trumpet) #3
Junior Cook (tenor sax) #3
Horace Silver (piano)
Gene Taylor (bass)
Roy Brooks (drums)

Recorded at theVan Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; October 31, 1963

#1, 2, 4, 5
Carmell Jones (trumpet)
Joe Henderson (tenor sax)
Horace Silver (piano)
Teddy Smith (bass)
Roger Humphries (drums)

Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; October 26, 1964

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder

[Tracks] Horace Silver - Song for My Father
01. Song For My Father (music: Horace Silver)
02. The Natives Are Restless Tonight (music: Horace Silver)
03. Calcutta Cutie (music: Horace Silver)
04. Que Pas (music: Horace Silver)
05. The Kicker (music: Joe Henderson)
06. Lonely Woman (music: Horace Silver)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Carmell Jones]
Carmell Jones: biography, discography (@ Andre Condouant: the offisial site)
[Links: Joe Henderson]
Joe Henderson Discography (by Jeffrey Lovell)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年04月20日

マイルス・デイヴィス『ウォーキン』

walkin.jpg Miles Davis - Walkin'

1949年、パリを訪れたマイルスはかの地で非常な歓待を受け、サルトルやピカソなど、地元の名士たちと交流をもちます。女優ジュリエット・グリコと恋に落ちたのも、このときです。いっしょに行ったケニー・クラークは、あまりの居心地のよさにパリに残る決心をしますが、マイルスは違いました。心をパリとジュリエットに残したまま、わずか1、2週間の滞在で帰国の途につきます。

最初にマイルスがヘロインに手を出したのは、彼女のいない寂しさを紛らわすためだったかもしれませんが、理由はどうあれ、一度ハマってしまえば、あとは落ちるしかない。カネをせびり、盗みを働き、ウソをつき、身なりも落ちぶれ、重度のジャンキーとなったマイルスは、心身ともに荒れ果てて、50年代前半のほとんどを棒に振ります。

自宅のあるセントルイスや近郊のミルスタッドの農場にたびたび舞い戻り、幾度となく挫折をくり返しながら、ドラッグとの長く苦しい闘いに勝利したマイルスは、1954年2月、いよいよニューヨークに本格的に復帰します。

マイルスが田舎に引き蘢っていた期間は、ちょうど白人中心のウェスト・コースト・ジャズの全盛期に当たります。主役の座を LA に明け渡し、不況に陥っていたニューヨークのシーンがふたたび活気を取り戻したのは、54年にいっせいに花開いたハードバップのおかげです(ブレイキーの『バードランドの夜』が録音されたのは、ほかでもない、1954年の2月のことでした)

復帰後のマイルスの初吹き込みは、ブルーノート盤『マイルス・デイヴィス Vol. 2』で聞くことができますが、これは、復帰以前の録音を含む3枚の10インチ盤からの編集盤なので、ここでは、『ウォーキン』をとりあげます(1954年4月3日、29日録音)。

ここには、60年代前半に立て続けに吹きこまれたライブ盤でも演奏されていた〈ウォーキン〉の初演が入っています。しかも、3管編成です。マイルスはつねに時代の数年先を行っていましたが、こんなところにも、彼の先見の明が表れている気がします。内容については、マイルス自身に語ってもらいましょう。以下、『マイルス・デイビス自叙伝』からの引用です(訳は中山康樹さん)。

だが、あのレコード(ウォーキン)のすごさが本当にわかったのは、その年の暮れに発売されてからだった。本当にすごいレコードだった。ホレスが彼流のファンキーなタッチでベーシックな部分を支え、ケニーはすばらしいリズムを刻んでいた。まさに傑作、本当の大傑作だった。オレは、ビバップの熱気と興奮を蘇らせようとした。ディズやバードがやっていた、あの要素をだ。さらに、もっとファンキーな感じのブルース、ホレスがやっていたような要素も取り入れたかった。そこにオレと J.J. とラッキーが加われば、新しい何かが生まれないわけがなかった。そして確かに、すごいものが生まれたんだ。

当時、マイルスとピアニストのホレス・シルヴァーは5番街の25丁目近くのアーリントン・ホテルに住んでいて、シルヴァーの部屋にあったアップライト・ピアノで、このアルバムのコンセプトは練られたと同書にはあります。前述の『バードランドの夜』でもイキのいいピアノを聞かせ、ジャズ・メッセンジャーズ結成にも参加したシルヴァーが、ハードバップの誕生にはたした役割は、もっと評価されてもいいのかもしれませんね。

 

Miles Davis "Walkin'"
(Prestige 7076)

Miles Davis (trumpet)
J.J. Johnson (trombone) #1-2
Lucky Thompson (tenor sax) #1-2
David Schildkraut (alto sax) #3-5
Horace Silver (piano)
Percy Heath (bass)
Kenny Clarke (drums)

Produced by Bob Weinstock
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; April 3 (#3-5), 29 (#1-2), 1954

[Tracks] Miles Davis - Walkin'
01. Walkin' (music: Richard Carpenter)
02. Blue 'n' Boogie (music: Dizzy Gillespie, Frank Paparelli)
03. Solar (music: Miles Davis)
04. You Don't Know What Love Is (music: Gene DePaul / words: Don Raye)
05. Love Me Or Leave Me (music: Walter Donaldson / words: Gus Kahn)

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: J.J. Johnson]
J.J. Johnson Album Covers (by Christo)
[Links: Lucky Thompson]
The Lucky Thompson Discography (by Noal Cohen)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年04月19日

ジョン・ルイス&サッシャ・ディステル『アフタヌーン・イン・パリ』

afternooninparis.jpg John Lewis & Sacha Distel - Afternoon In Paris

ジョン・ルイスの管入り作品としては、ブレイク前の貴公子バルネ・ウィランが参加した『アフタヌーン・イン・パリ』も忘れられません(1956年12月4日、7日、パリにて録音)。

名曲〈ジャンゴ〉や〈コンコルド〉をはじめ、ことあるごとにパリへの憧憬を表明してきたルイスなだけに、彼のかの地での人気は相当なものがあったようで、MJQ が1956年の欧州ツアーでパリを訪れたとき、ルイスのもとには、仏音楽会の大物、レイ・ヴェンチュラの甥っ子、サッシャ・ディステルとの共演の話が舞い込み(本作です)、ロジェ・ヴァディム監督の映画『大運河』の
サントラ盤を依頼されたのも、このときでした(翌57年録音の『たそがれのヴェニス』として結実しました)。

この『アフタヌーン・イン・パリ(パリの昼下がり)』は、当初、仏ヴェルサイユ・レーベルから出されたものを(レーベル・オーナーはサッシャの叔父さんレイ・ヴェンチュラ)、アトランティック・レーベルが米国盤をリリースして、その存在が知られるようになりました。

リーダーの2人には申し訳ないけれど、このアルバムは若き日のバルネ・ウィランを聞くためにあります。この時点で、ウィランはまだ、マイルスとの共演(57年12月録音の『死刑台のエレベーター』)も、ジャズ・メッセンジャーズとの共演(59年録音の『危険な関係』)もはたしていないわけですが、アイドルのようなナイーヴな容姿も手伝って、本国フランスではたいへんな人気者だったようで、57年2月のヴェルサイユでのコンサートの際、サインを求めて殺到したファンを抑えるために警察隊が出動したという逸話も残っています。

バルネの音色には色気があります。とくに晩年の彼のテナーには、香気が漂っています。いちばん艶っぽい音を出すテナー奏者、というのが私のイメージなのですが、このころは少しカタさが耳につきます。なにしろ、まだ10代の若造ですから(当時19歳)、男の色気といっても、酸いも甘いも噛み分けた、というところまではいかなくて、無駄に力が入っています。でも、その青臭さがかえって魅力になったりするのですから、いいオトコというのは得なものです。うらやましい。

曲目を見ると、おおっ、あの必殺のスウェーデン民謡〈ディア・オールド・ストックホルム〉が入ってますね。ニューヨークに武者修行に渡ったサッシャ・ディステルが、スタン・ゲッツに気に入られ、この曲のアレンジを自由に使っていいといわれたとか(児山紀芳さんの日本盤ライナーによる)。そこはそれ、ルイスの巧みなアレンジによって、非常に手の込んだ演奏にしあがっていますが、ゲッツやマイルスに比べると、どうでしょう? 凝りすぎて曲の随をつかまえ損ねたといったらいいすぎかな。

ルイスのオリジナル〈パリの昼下がり〉では、最初、バルネの音はほとんど聞こえません。「こりゃ、いじめか?」と思っていると、途中から音が大きくなって前に出てくるというしかけです。でも、やっぱりまだ荒削りだなあ。むしろサッシャのホーンライクなソロに一日の長を感じます。

じゃあ、バルネのどこを聞けばいいかって? それは〈オール・ザ・シングス・ユー・アー〉です。ルイスの訥々と語りかけるようなイントロに続いて切り込んでくるバルネの最初の音色。ここに、晩年の色気の萌芽を見ることができます。

 

John Lewis, Sacha Distel "Afternoon In Paris"
(Atlantic 1267)

Barney Wilen (tenor sax)
John Lewis (piano)
Sacha Distel (guitar)
Pierre Michelot (bass) #1-3
Percy Heath (bass) #4-6
Connie Kay (drums) #1-3
Kenny Clarke (drums) #4-6

Recorded by Disques Versailles
Recorded in Paris; December 4 (#4-6), 7 (#1-3), 1956

[Tracks] John Lewis & Sacha Distel - Afternoon In Paris
01. I Cover The Waterfront (music: Johnny Green / words: Edward Heyman)
02. Dear Old Stockholm (traditional)
03. Afternoon In Paris (music: John Lewis)
04. All The Things You Are (music: Jerome Kern / words: Oscar Hammerstein II)
05. Bags' Groove (music: Milt Jackson)
06. Willow Weep For Me (music+words: Ann Ronell)

[Links: John Lewis]
Jazclass: about John Lewis (by Michael Furstner)
[Links: Barney Wilen]
Barney Wilen (Official Site)
Barney Wilen Story (by Jan de Waal)
[Links: Sacha Distel]
Sacha Distel (Official Site)

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2006年04月18日

ジョン・ルイス『グランド・エンカウンター』

grandencounter.jpg

ピアニスト、ジョン・ルイスの個性を知るなら、トリオやソロなど、少人数編成の作品がいいのですが、ポツポツと途切れがちに単音を重ねていく彼の奏法は、あまり小編成だと、間が保たないというか、けっこうつらいものがあります(笑)。

後年、ルイスは『エヴォリューション』というソロ・ピアノ作品を吹きこんでいますが、彼が一聴してわかるスタイリストであることは認めるにしても、それと聞いて楽しいどうかはまた別な話で、う〜ん、なんというか、どうしようもなく手持ちぶさたを感じてしまうんですね。

そこらへんはルイス本人も気づいていたようで、彼はピアノ・トリオ作品をほとんど残していません。ピアニストが自己名義の作品にギターを入れることはまれですが(同じコード楽器だから「かぶる」。要は自分が目立たない!)、音の間隙を埋めるために、ギターを必要としたルイスの気持ちはわからないでもありません。

グランド・エンカウンター』と題されたこの作品。副題には、「2度東、3度西」とあります(1956年2月10日録音)。

東海岸から MJQ のルイスとパーシー・ヒースの2人が、西海岸のパシフィック・ジャズ(アルバムリストはこちら)勢からテナーのビル・パーキンス、ギターのジム・ホール、ドラムのチコ・ハミルトンの3人が参加して、「大いなる邂逅」をはたしたという意味なのですが、この出会いは「大成功」をおさめます。

MJQ はイースト・コーストの黒人コンボとはいっても、アレンジ重視のクラシカルな表現に秀でたグループですから、もともとウェスト・コースト派の白人との親和性が高いわけです。しかも、ドラマーが、同じく室内楽風の演奏を得意としていたチコ・ハミルトンですから、これで悪かろうはずがありません。

でも、このアルバムの真の主役はビル・パーキンスなんですね。〈ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー〉の出だし、ルイスの訥々としたピアノに続けて入ってくるかすれ気味のテナーの色っぽさといったら。フッという息づかいまで聞こえてきそうな質感と、丸みをおびたやわらかい音色に、もうクラクラです。アルトのポール・デスモンドにテナーを吹かせたらこんな音になるんじゃないかと思ってみたりして(笑)。

〈イージー・リヴィング〉もしびれますねえ。とりたてて派手な演出があるわけでもなく、なんてことはない演奏なのですが、実にいいんです。完全にパーキンスの独壇場です。クラクラのメロメロです。私もこんなふうに口説かれたいです(笑)。



John Lewis "Grand Encounter"
(Pacific Jazz PJ 1217)

Bill Perkins (tenor sax)
John Lewis (piano)
Jim Hall (guitar)
Percy Heath (bass)
Chico Hamilton (drums)

Produced by Richard Bock
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded in LA; February 10, 1956

[Tracks]
01. Love Me Or Leave Me (music: Walter Donaldson / words: Gus Kahn)
02. I Can't Get Started (music: Vernon Duke / words: Ira Gershwin)
03. Easy Living (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
04. 2 Degrees East, 3 Degrees West (music: John Lewis)
05. Skylark (music: Hoagy Carmichael / words: Johnny Mercer)
06. Almost Like Being In Love (music: Frederick Loewe / words: Alan Jay Lerner)

[Links: John Lewis]
Jazclass: about John Lewis (by Michael Furstner)
[Links: Jim Hall]
Jim Hall (Official Website)
Jim Hall Maniacs (by 益満妙:エキマンタエ)
ジム・ホール アルバム蒐集 (by kawagu)
[Links: Chico Hamilton]
Chico Hamilton (Official Website)

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2006年04月17日

モダン・ジャズ・カルテット『コンコルド』

concorde.jpg The Modern Jazz Quartet - Concorde

というわけで、引き続き MJQ の『コンコルド』です(1955年7月2日録音)。この年の2月からドラマーがコニー・ケイに代わって、いよいよ MJQ の快進撃がスタートします。

ところで、まったく余談ながら、「Kay」という彼のラストネームは、本名の「Kirnon」をバードランドの名物司会者ピー・ウィー・マーケットが発音できなかったことからつけられたと、英文ライナーにあります。ホント、いい加減なもんです(笑)。

それはさておき、『コンコルド』です。クラシックのフーガの手法を取り入れたタイトル曲もいかにもフランス贔屓のルイスらしくて楽しいですが(ついでに、ジャケットにうすいピンクとブルーの2色でコンコルド広場をもってきたセンスには脱帽します)、やはり〈朝日のようにさわやかに〉ははずせません。イントロとエンディングに、バッハの〈音楽の捧げもの〉のカノンの1つを配した洒落たアレンジで、これぞ MJQ という雅やかな演奏を聞かせてくれます。

実は、MJQ は1951年録音の実質的なデビュー作『モダン・ジャズ・カルテット』(Savoy MG 12046。原題はたんなる「The Quartet」です)でも同曲を演奏しているのですが、ここでは、例のカノンはついていません。4年の歳月が、グループに洗練と気品をもたらしたのでしょうか。

もう一つ、これも有名スタンダードの〈四月の思い出〉。この曲や〈オール・ザ・シングス・ユー・アー〉といった曲は、どうにもジャズメンの気持ちを駆り立てるようで、急速調での名演が数多く残されています。ここでのミルト・ジャクソンもきてますねえ。スピードの限界に挑戦するかのようなミルトに思わず拍手喝采です(笑)。

で、笑ってしまうのがジョン・ルイスのピアノです。珍しく、一生懸命弾いています(笑)。彼のピアノをひと言でいうなら「寡黙」です。音数を極端に絞り込んで、「間」で勝負するタイプです。それが、この曲に限っては、けっこう頑張っちゃってます。といっても、そこはルイスですから、知的に抑制された表現なのですが、こんなに音数の多いルイスも珍しい。クラシックをこよなく愛する彼のことですから、指が動かないってことはないんでしょうが、コニー・ケイに煽られて(というのも妙な話ですね)つんのめりがちになるルイスがなんともかわいいです。

 

Modern Jazz Quartet "Concorde"
(Prestige PRLP 7005)

Milt Jackson (vibraphone)
John Lewis (piano)
Percy Heath (bass)
Connie Kay (drums)

Produced by Bob Weinstock
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded in NYC; July 2, 1955

[Tracks] The Modern Jazz Quartet - Concorde
01. Ralph' New Blues (music: Milt Jackson)
02. All Of You (music+words: Cole Porter)
03. I'll Remember April (music+words: Gene DePaul, Don Raye, Pat Johnston)
04. Gershwin Medley: Soon 〜 For You, For Me, Forevermore 〜 Love Walked In 〜 Our Love Is Here To Stay (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
05. Softly, As In A Morning Sunrise (music: Sigmund Romberg / words: Oscar Hammerstein II)
06. Concorde (music: John Lewis)

[Links: John Lewis]
Jazclass: about John Lewis (by Michael Furstner)
[Links: Milt Jackson]
Milt Jackson Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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モダン・ジャズ・カルテット『ジャンゴ』

django.jpg The Modern Jazz Quartet - Django

クールの誕生』に名を連ねていたジョン・ルイス。たんなるピアニストというよりも、作編曲家として、モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)の音楽監督として、歴史にその名を刻みました。1920年5月3日、イリノイ州ラグランジ生まれ。2001年3月21日、ニューヨーク州ニューヨークで死去(死因は前立腺がん)。

1951年、第二次ガレスピー楽団のリズム・セクションが集まって結成された MJQ は、ジャズ史上最高のコンボに数えられます。なぜ「最高」なのか。

まず、同一メンバーによる活動期間が群を抜いて長いこと。オリジナルのメンバーは、ピアノのジョン・ルイス、ヴァイブのミルト・ジャクソン、ベースのレイ・ブラウン、ドラムのケニー・クラークでしたが、すぐにベースがパーシー・ヒースに(52年から参加)、ドラムがコニー・ケイに代わり(55年から参加)、74年に一時解散しますが、81年に再結成され、実に40年以上の長きにわたって、活動を続けました。ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズも長いですが、メンバーを入れ替えて、つねにリフレッシュをはかっていました。キースのスタンダーズも長くなりましたが、まだ20年を超えたばかり。MJQ の長さが際立っているのがわかります。

また、ユニットとしての一体感が類を見ないレベルに達していました。クラシックの手法を取り入れたルイスの作曲、演奏の隅々まで気を配った完璧な構成美、室内楽を思わせる典雅な雰囲気は、他では味わえない MJQ ならではのもので、個人名でなく、ユニット名で売ったバンドの走りでもありました。

淡い色調に文字だけをあしらったジャケットが印象的な『ジャンゴ』は、ケニー・クラーク時代の MJQ の演奏を集めた初期の傑作です(1953年6月25日、1954年12月23日、1955年1月9日録音)。

なんといっても、タイトル曲が有名ですね。1953年にこの世を去ったジプシー・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトに捧げられたこの曲は、数あるジョン・ルイスの作品のなかでも屈指の名曲です。いろいろな人がカヴァーしていますが、MJQ による再録もいくつかあって、『ピラミッド』『ヨーロピアン・コンサート』『ラスト・コンサート』といったアルバムで聞くことができます。

3つのセッションの寄せ集めにしては、全体として非常に完成度が高い作品にしあがっています。でも、キッチリしすぎて遊びがないところが気になります。演奏がカタいというか、どこか硬質な響きがある。これがケニー・クラークのせいなのかはわかりませんが、私は、コニー・ケイが加わった『コンコルド』のほうが好きですね。こっちのほうがしっくりきます。

 

Modern Jazz Quartet "Django"
(Prestige PRLP 7057)

Milt Jackson (vibraphone)
John Lewis (piano)
Percy Heath (bass)
Kenny Clarke (drums)

Produced by Bob Weinstock (#1, 2, 3, 8), Ira Gitler (#4-7)
Recorded by Rudy Van Gelder (#1, 2, 3, 8)
Recorded in NYC; June 25, 1953 (#4-7)
Recorded at Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; December 23, 1954 (#1, 2, 8), January 9, 1955 (#3)

[Tracks] The Modern Jazz Quartet - Django
01. Django (music: John Lewis)
02. One Bass Hit (music: Dizzy Gillespie)
03. La Ronde Suite (music: John Lewis)
04. The Queen's Fancy (music: John Lewis)
05. Delaunay's Dilemma (music: John Lewis)
06. Autumn In New York (music+words: Vernon Duke)
07. But Not For Me (music: George Gershwin / words: Ira Gershwin)
08. Milano (music: John Lewis)

[Links: John Lewis]
Jazclass: about John Lewis (by Michael Furstner)
[Links: Milt Jackson]
Milt Jackson Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年04月11日

マイルス・デイヴィス『クールの誕生』

birthofthecool.jpg Miles Davis - Birth of the Cool (Rudy Van Gelder Edition)

長いこと続けて参りました、トランペット特集。ここでひとまず切り上げて、いよいよ、みんな大好き、ピアノ特集といきましょう。「ピアノ特集って、思いっきりマイルスじゃん!」というあたたかいツッコミが聞こえてきそうですが(笑)、ピアニストの変遷をたどりたければ、『マイルスを聴け!』(by 中山康樹さん)。

帝王マイルスのコンボには、名だたるプレイヤーが参加しています。とくにピアニストはすごい。だから、マイルスのアルバムを順番に聞いていけば、ジャズ史を彩るピアニストの歴史をたどることができるはず。これを名づけて「芋づる式」といいます。はたして、中山さんのいうとおり、芋づる式に大物ピアニストが釣れるものか、試してみましょう、というのがこの企画の趣旨です(笑)。

というわけで、まずは『クールの誕生』から(1949年1月21日、4月22日、1950年3月9日の録音)。クール時代の幕開けを告げた歴史的名盤、という評価が定着していますが、ノネット(9重奏団)を率いたマイルスが目指したのは、ビバップの激しさとは違う「スウィートな音楽」でした。

1948年当時、チャーリー・パーカーのグループにいたマイルスは、ドラッグと酒で完全にイカれてしまったリーダーに相当手を焼いていたようで、ひそかに退団を決意します(このときはまだ、マイルスはクリーンだったようです)。かつてのアイドルであり、師でもあったバードが目の前で落ちぶれていくさまを見続ける日々。酒に溺れ、カネに執着し(ドラッグを入手するために必要だった)、コメディアンのように白人聴衆に媚を売り、失笑を買うバード。

こんなはずじゃない、こんなことのために俺はニューヨークに来たわけじゃない。マイルスのなかに、バードとバードの生み出したビバップという音楽に対する猜疑心が育っていったのは、想像に難くありません。

マイルスがバードのもとを離れたころ、55丁目にあったギル・エヴァンスの地下アパートは、多くのミュージシャンのたまり場になっていました。ジェリー・マリガンやジョージ・ラッセル、ジョニー・キャリシ(名曲〈イスラエル〉の作曲者)、ガレスピーやジョン・ルイス、マックス・ローチ、リー・コニッツ、ブロッサム・ディアリーといった連中がいつも入り浸って、音楽談義に花を咲かせていたといいます。

マイルスのノネットのアイディアは、このギル・エヴァンスのアパートで培われました。このアルバムにアレンジャーとして参加しているギル、マリガン、ジョン・ルイス、ジョニー・キャリシは、みなこのアパートの常連でした。そして、生まれた「スウィートな音楽」。恋人同士が口ずさめるような、気軽に聞ける、わかりやすい音楽。

ただ、個人的には、このアルバムのマイルスは、新しいアイディアを消化しきれていない気がします。進歩的なミュージシャンによる実験的な音楽。あくまで実験だから、結果が出てしまえば、それでおしまい。事実、マイルスはこれ以後、この路線の作品は残していません。

セールス的にはイマイチだったようですが、玄人受けはよかったようで、白人連中はこぞってこの「わかりやすい音楽」に飛びついて、クール・ジャズの一大潮流が生まれました。また、大御所デューク・エリントンも、録音前の48年にロイヤル・ルーストで行われたノネットのライヴに強い関心をもったようで、本人から直接「いっしょにやらないか」と誘いを受けたと、興奮気味に語るマイルスの姿が、『マイルス・デイヴィス自叙伝』で紹介されています。

でも、マイルスはその誘いを断ります。以下、前著からの引用です(訳は中山康樹さん)。

だが、デュークに言えなかった本当の理由もある。それは、毎晩同じ音楽を繰り返し繰り返し演奏する、オルゴールみたいな生活が嫌だということだ。オレの興味は、もっと別のところにあった。デュークのやっていることは大好きだったし、大いに尊敬もしていたが、オレの進むべき道はデュークとは違っていた。

マイルスにはわかっていたんです。この路線は長続きしない、少なくとも自分が演るべき音楽じゃない、と。だから、アルバム1枚分録りためただけで封印したのです。そして、その判断が正しかったことは、歴史が証明しています。

余談ながら、このアルバムには個人的な思い出があって、私がチューボーのときにはじめて買ったジャズ・レコードのうちの1枚が、この『クールの誕生』でした(もう1枚は、トレーンの『マイ・フェイヴァリット・シングス』)。当時はまだ CD プレイヤーなんて誰ももっていなくて、レコードとカセットテープが主流の時代でした。洋楽ネタといえば、「ベストヒット USA」か「FMステーション」(笑)。「友&愛」という貸しレコード屋も流行っていましたね。

チューボー時代からかなり粋がっていた私は、どうしても他人と違うものが聞きたかった(笑)。で、どういうわけか、買ってしまったんですね、マイルスを。名前はどこかで耳にしたことがあったのでしょうが(右も左もわからなかったお店のジャズ・コーナーで、マイルスという名前に反応したことだけはよく覚えています)、マイルスはおろか、ジャズという音楽をまったく聞いたことがない状態で、よく買う気になったもんだと、今考えても不思議です。

それにしても、手にしたアルバムが悪かった(笑)。『クールの誕生』という仰々しいタイトルや「歴史的名盤」とかいうオビの文句につられて買ったんだと思いますが、ジャズに対する免疫がまったくない状態で、いきなり『クールの誕生』ですから。これでジャズ好きになったら、よっぽどひねくれ者でしょう。

幸いにして(?)素直だった私の感想は「やけに古くさい音楽だな」。この2枚の LP は、そのまま顧みられることなく、引っ越しのドサクサにまぎれて紛失してしまいました。

その後10年ほどして、そんな私がジャズにはまることになるのですから、世の中わからないものです。今でもこのアルバムを聞くと、せいいっぱい背伸びしていたあのころのほろ苦い記憶が蘇ってきます。

 

 

Miles Davis "Birth Of The Cool"
(Capitol T 792)

#1, 2, 5, 7
Miles Davis (trumpet)
Kai Winding (trombone)
Junior Collins (French horn)
Bill Barber (tuba)
Lee Konitz (alto sax)
Gerry Mulligan (baritone sax)
Al Haig (piano)
Joe Shulman (bass)
Max Roach (drums)

Recorded in NYC; January 21, 1949

#4, 8, 10, 11
Miles Davis (trumpet)
J.J. Johnson (trombone)
Sandy Siegelstein (French horn)
Bill Barber (tuba)
Lee Konitz (alto sax)
Gerry Mulligan (baritone sax)
John Lewis (piano)
Nelson Boyd (bass)
Kenny Clarke (drums)

Recorded in NYC; April 22, 1949

#3, 6, 9, 12
Miles Davis (trumpet)
J.J. Johnson (trombone)
Gunther Schuller (French horn)
Bill Barber (tuba)
Lee Konitz (alto sax)
Gerry Mulligan (baritone sax)
John Lewis (piano)
Al McKibbon (bass)
Max Roach (drums)

Recorded in NYC; March 9, 1950

Produced by Pete Rugolo

[Tracks] Miles Davis - Birth of the Cool (Rudy Van Gelder Edition)
01. Move (music: Denzil Best) [arr. John Lewis]
02. Jeru (music: Gerry Mulligan) [arr. Gerry Mulligan]
03. Moon Dreams (Chummy MacGregor / words: Johnny Mercer) [arr. Gil Evans]
04. Venus De Milo (music: Gerry Mulligan) [arr. Gerry Mulligan]
05. Budo (music: Bud Powell) [arr. John Lewis]
06. Deception (music: Miles Davis) [arr. Gerry Mulligan]
07. Godchild (music: George Wallington) [arr. Gerry Mulligan]
08. Boplicity (music: Cleo Henry) [arr. Gil Evans]
09. Rocker (music: Gerry Mulligan) [arr. Gerry Mulligan]
10. Israel (music: John E. Carisi) [arr. John E. Carisi]
11. Rouge (music: John Lewis) [arr. John Lewis]
12. Darn That Dream (music: Jimmy Van Heusen / words: Eddie DeLange) [arr. Gerry Mulligan]

[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Gerry Mulligan]
Gerry Mulligan.info: The Life of Great Jazz Musician (by Craig Allan Hanley)
The Gerry Mulligan Home Page (by Jeff Sackmann)
The Gerry Mulligan Collection (@ the Library of Congress)
Mulligun Publishing Co., Inc.
[Links: John Lewis]
Jazclass: about John Lewis (by Michael Furstner)
[Links: Gil Evans]
Gil Evans website (Offisial Website)

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2006年04月09日

カーティス・フラー『ブルースエット』

bluesette.jpg Curtis Fuller - Blues-Ette

いつもコメントを寄せていただいているクマキチさんのand i am dumb がすごいことになっています。50年代の名盤を100枚、順番にレビューしているのですが、これが深い。セレクションのバランスもいいし、読んでいてためになります。みなさんもぜひ遊びにいってください。

トランぺッターではありませんが、ゴルソン&フラーに触れて、このアルバムに触れないわけにはいかないでしょう。トロンボーン奏者カーティス・フラーのサヴォイ盤『ブルースエット』です(1959年5月21日録音)。

これくらいの名盤になると、もう聞くしかありません。〈ファイヴ・スポット・アフター・ダーク〉。フラーの丸みをおびたトロンボーンの音と、ゴルソンの艶っぽいテナー音、ジミー・ギャリソンの骨太なベース音で奏でられるテーマが流れてきただけで、もうガマンできません。腰がムズムズします。笑みがこぼれます。そして、「ああ、やっぱりこりゃいいな」と幸せな気分になる(笑)。

ゴルソンのテナーについては否定的なことばかり書いてますが、彼のテナーにも聞くべきところがあります。それが音色です。意外なほど艶っぽいんです。彼のタンギングなしのウネウネ奏法は好きになれませんが、音色には色気がある。そして、音のかぶせ方が抜群にうまいわけです。だから、ゴルソンを聞くときはソロは無視して、テーマ部分のハーモニーを楽しむ。これです。

そして、あまり取り上げられることのない佳曲〈ラヴ・ユア・スペル・イズ・エヴリホエア〉。このフラーがすごい。悲しい雰囲気の曲ですが、フラーのソロはけっこうアグレッシヴです。それが逆に、切羽詰まった思いを表しているようで、妙に心に残ります。

名手トミフラを聞くなら、〈アンデサイデッド〉。そつのない受けこなしは、「名盤の影にトミフラあり」といわれた彼の面目躍如といったところでしょうか。

ところで、表題曲〈ブルースエット〉の「ette」って何でしょう? 英辞郎には、「-ette」という接尾辞は、「小型の」「女性の」「模造の」という意味を表すとありますが、「ブルースの女性形」みたいなニュアンスなんでしょうか? ハーモニカのトゥーツ・シールマンズにも〈ブルースエット〉という曲がありますね。どなたかご存じありませんか?



Curtis Fuller "Blues-Ette"
(Savoy MG 12141)

Curtis Fuller (trombone)
Benny Golson (tenor sax)
Tommy Flanagan (piano)
Jimmy Garrison (bass)
Al Harewood (drums)

Produced by Ozzie Cadena
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; May 21, 1959

[Tracks] Curtis Fuller - Blues-Ette
01. Five Spot After Dark (music: Benny Golson)
02. Undecided (music: Charlie Shavers / words: Sid Robin)
03. Blues-Ette (music: Curtis Fuller)
04. Minor Vamp (music: Benny Golson)
05. Love Your Spell Is Everywhere (music: Edmund Goulding / words: Elsie Janis)
06. Twelve-Inch (music: Curtis Fuller)

[Links: Benny Golson]
Benny Golson's Official Website
The Jazztet (& More): A History and Annotated Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: Tommy Flanagan]
Tommy Flanagan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jimmy Garrison]
Jimmy Garrison (by Matthew Garrison)

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2006年04月07日

アート・ファーマー&ベニー・ゴルソン『ミート・ザ・ジャズテット』

meetthejazztet.jpg

ベニー・ゴルソンがジャズ・メッセンジャーズでの成功を引っさげて独立したのが、1959年の2月。その年の大半を、デトロイト出身のトロンボーン奏者カーティス・フラーとの共演にあてたゴルソンは、同年11月、トランペットのアート・ファーマーを双頭リーダーに迎え、いよいよジャズテットをスタートさせます(彼らのニューヨークでのお披露目公演は11月17日、ファイヴ・スポットでのライヴだったと英文ライナーにあります)。

デビュー盤『ミート・ザ・ジャズテット』は、翌60年の2月、3日間にわたってアーゴに録音されました(アーゴ・レーベルのアルバムリストはこちら)。

メンバーは、リーダー格のファーマー&ゴルソンに加え、ゴルソンとのコンビで名盤『ブルースエット』をものにしたカーティス・フラー、59年の暮れに、同じフラー&ゴルソンの『イマジネーション』でレコーディング・デビューを飾ったばかりの新人マッコイ・タイナー、アート・ファーマーの双子の弟(兄?)で、早くも63年に脳内出血で亡くなってしまうベース奏者のアディソン・ファーマー、そして、ドラマーのレックス・ハンフリーズです。

アルバム冒頭の〈セレナータ〉から、3管の重厚なアンサンブルが炸裂します。これぞゴルソン・ハーモニーという見事なアレンジに、背筋がゾクゾクしてきます。

続くガーシュウィン・ナンバー〈イット・エイント・ネセサリリー・ソー〉が、なんとも「やくざな雰囲気」を醸し出します。そう、このやくざな雰囲気こそ、このグループの特徴なんです。アマゾンのレビューで、ジャズテットを「ギャング一味」にたとえたコメントが載っていますが、まったく同感です。顔に似合わぬ(?)不良っぽさこそ、ジャズテットの生命線です。

それは、名曲〈キラー・ジョー〉なんかにも通じます。この演奏に、ハート・ウォーミングなファーマーを期待するのは間違っています。だって、〈殺し屋ジョー〉ですよ、非情な殺人者に、心温まるエピソードは不要です(笑)。

メッセンジャーズでもおなじみの〈ブルース・マーチ〉。これもやくざな曲ですねえ。同じゴルソンの〈アー・ユー・リアル?〉なんかと比べると、品格が違います(この話はここでしました)。

急速調で演奏される〈イッツ・オール・ライト・ウィズ・ミー〉やエヴァンスがコケた〈モックス・ニックス〉なんかも、いいねえ。マッコイは軽々と弾きこなしています(笑)。やっぱり銀行員(爆笑)エヴァンスはやくざになれません。

そんななか、ひっそりと演奏される〈クリフォードの想い出〉。この曲の名演は数多くありますが、ファーマーも負けてはいません。ジャズテットではまわりに気圧されてずいぶん見栄を張りましたが(笑)、彼の本質は、やはりこのやさしさにありそうです。



Art Farmer, Benny Golson "Meet The Jazztet"
(Argo LP 664)

Art Farmer (trumpet)
Curtis Fuller (trombone)
Benny Golson (tenor sax)
McCoy Tyner (piano)
Addison Farmer (bass)
Lex Humphries (drums)

Recorded at Nola Studios, NYC; February 6, 9, 10, 1960

[Tracks]
01. Serenata (music: Leroy Anderson / words: Mitchell Parish)
02. It Ain't Necessarily So (music: George Gershwin / words: DuBose Heyward, Ira Gershwin)
03. Avalon (music+words: Al Jolson, Buddy G. DeSylva, Vincent Rose)
04. I Remember Clifford (music: Benny Golson)
05. Blues March (music: Benny Golson)
06. It's All Right With Me (music+words: Cole Porter)
07. Park Avenue Petite (music: Benny Golson)
08. Mox Nix (music: Art Farme)r
09. Easy Living (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
10. Killer Joe (music: Benny Golson)

[Links: Benny Golson]
Benny Golson's Official Website
The Jazztet (& More): A History and Annotated Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: McCoy Tyner]
Journey Of The Soul: The McCoy Tyner Discography
McCoy Tyner Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年04月06日

アート・ファーマー『モダン・アート』

modernart.jpg Art Farmer - Modern Art

ベニー・ゴルソンが支えたもう一人のトランぺッター、ジャズテットの盟友アート・ファーマー。ユナイテッド・アーティスツ盤『モダン・アート』は、ジャズテット結成の1年半前に、ファーマー&ゴルソンがコンビを組んだアルバムです(1958年9月10日、11日、14日録音)。

エヴァンス参加が云々されるアルバムですが、ブレイク前の彼は、バップの影響を感じさせるにもかかわらず、実にノリが悪い。まあ、はっきりいってヘタくそです(笑)。肩肘張って、無理に乗ろうとしていますが、くつろぎもなにもあったものじゃない。それは同時期のパウエル派のピアニストと比べれば一発でわかります。

エヴァンスにファンキー・ジャズは似合いません。というか、できるわけがない。彼が 2nd アルバム『エヴリバディ・ディグズ・ビル・エヴァンス』で、リリカル路線に活路を見出すのは、数か月後のことです。

このアルバムでのエヴァンスの違和感を実感したければ、数年後にエヴァンスがホーンがらみで録音した2作、キャノンボールの『ノウ・ホワット・アイ・ミーン』や、フレディ・ハバードを迎えた『インタープレイ』なんかを聞いてみてください。まったく別人です。というか、こっちのエヴァンスこそ、私たちがイメージするエヴァンスその人です。これを聞いた後に、もう一度『モダン・アート』のエヴァンスを注意深く聞けば、私の言いたいことはわかってもらえると思います。

と、けなしてばかりいますが、このアルバム、私は嫌いじゃありません(もう遅いって?)。ジャズテットでも取り上げられた、ファーマー作の〈モック・ニックス〉が目を引きますが、実は、お楽しみはその次に隠されています。ゴルソン作〈フェア・ウェザー〉。

テーマ部分のファーマー&ゴルソンを聞いてください。ゴルソンの何がすごいって、メロディーに対する音のかぶせ方が絶妙なんです。ファーマーがやわらかい音色で基本ラインを奏でる。そこにゴルソンが音を重ねていくのですが、その音の選び方が実にうまい。脱帽です。

世にいうゴルソン・ハーモニーというのは、音の組み合わせに関するゴルソンの研ぎすまされた感覚によって生み出されることが実感できる演奏です。

 

Art Farmer "Modern Art"
(United Artists UA 4007 / UAS 5007)

Art Farmer (trumpet)
Benny Golson (tenor sax)
Bill Evans (piano)
Addison Farmer (bass)
Dave Bailey (drums)

Produced by Jack Lewis
Recorded by Tommy Nola
Recorded at Nola's Penthouse, NYC; September 10, 11, 14, 1958

[Tracks] Art Farmer - Modern Art
01. Mox Nix (music: Art Farmer)
02. Fair Weather (music: Benny Golson)
03. Darn That Dream (music: Jimmy Van Heusen / words: Eddie DeLange)
04. The Touch Of Your Lips (music+words: Ray Noble)
05. Jubilation (music: Junior Mance)
06. Like Someone In Love (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
07. I Love You (music+words: Cole Porter)
08. Cold Breeze (music: Wade Legge)

[Links: Benny Golson]
Benny Golson's Official Website
The Jazztet (& More): A History and Annotated Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: Bill Evans]
The Bill Evans Webpages
Bill Evans' Discography (@ New York and Jazz)
Bill Evans Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年04月05日

ブルー・ミッチェル『ブルー・ソウル』

bluesoul.jpg

最近まじめに更新しているせいか(笑)、久しぶりにランキングひとケタ台をキープしてますね。ついでに、こちらをポチッとワンクリックお願いします。

ブルー・ミッチェルは1959年の1月から、ホレス・シルヴァー・クインテットに加わります。この事実を前にしたとき、私の脳裏にはどうしても「ブルー・ミッチェル=リー・モーガンになれなかった男」という公式が浮かんでしまうのです。

モーガンもミッチェルも、デビュー時にはベニー・ゴルソンの手を借りた。そして、次のステップとして、モーガンはブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズに、ミッチェルはシルヴァーのクインテットに参加した。どちらも時代を代表するファンキー・コンボです。でも、世間の評価はどうでしょう。自己宣伝に長けたモーガンは天才の名をほしいままにしましたが、ミッチェルに与えられたのは、一流になりきれないB級アーティストという称号でした。

リー・モーガンにあって、ブルー・ミッチェルになかったもの。ガレスピー楽団への参加。永遠の名曲名演〈アイ・リメンバー・クリフォード〉。ジャズ市場を超えるメガ・ヒット『ザ・サイドワインダー』。そして、同居していた女性に射殺されるという衝撃のラスト。う〜ん、こりゃかなわないな(笑)。

でも、と私はいいたいのです。ブルー・ミッチェルには、ジャズファンが愛してやまないワンホーン・カルテットの傑作『ブルース・ムーズ』があります。そして、次にくるのが3管セクステットの隠れ名盤、『ブルー・ソウル』です(1959年9月28日録音)。

とにかく冒頭の〈マイナー・ヴァンプ〉に耳を傾けてください。このイキのよさ、「ク〜ッ、たまらん」。これ、ゴルソンも参加したカーティス・フラーの人気盤『ブルースエット』でも演奏されていましたね。わずか4か月前の出来事ですが、ペットが入っている分、こちらの切れ味に軍配が上がりそうです。

続くミッチェルのオリジナル〈ザ・ヘッド〉も、いいねえ。伸びやかに歌うミッチェルのよさが出た好演です。テナーがゴルソンでないのもいいです(笑)。そうそう、これだよね、テナーは。この小気味よさはゴルソンじゃ出ないもん(ゴメンよ、ゴルソン)。

ゴルソンと同じく、作編曲を得意としたジミー・ヒースの6曲目〈ウェイヴァリー・ストリート〉も、独特の哀感がたまりません。

3管の重厚なアンサンブルにほどよく配置されたワンホーン・カルテットの演奏も冴え渡ります。ノリノリのミッチェルもウィントン・ケリーも楽しいけれど、サム・ジョーンズのベースを聞いているだけでもムズムズしてくる〈今宵の君は(ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト〉。ゴルソンが後にジャズテットでも取り上げた名曲〈パーク・アヴェニュー・ペティート〉。エコーのかかったミッチェルのペットがスペースを感じさせます。

アルバムの最後は当時のボス、ホレス・シルヴァーの〈ニカの夢〉で締めくくります。

 

Blue Mitchell "Blue Soul"
(Riverside RLP 309/1155)

Blue Mitchell (trumpet)
Curtis Fuller (trombone) except #3, 4, 7
Jimmy Heath (tenor sax) except #3, 4, 7
Wynton Kelly (piano)
Sam Jones (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins, Roy Friedman
Recorded at Reeves Sound Studio, NYC; September 28, 1959

[Tracks] 
01. Minor Vamp (music: Benny Golson)
02. The Head (music: Richard "Blue" Mitchell)
03. The Way You Look Tonight (music: Jerome Kern / words: Dorothy Fields)
04. Park Avenue Petite (music: Benny Golson)
05. Top Shelf (music: Jimmy Heath)
06. Waverley Street (music: Jimmy Heath)
07. Blue Soul (music: Richard "Blue" Mitchell)
08. Polka Dots And Moonbeams (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
09. Nica's Dream (music: Horace Silver)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Jimmy Heath]
Jimmy Heath of the Legendary Heath Brothers (Official Website)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Philly Joe Jones]
Philly Joe Jones Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年04月04日

ブルー・ミッチェル『アウト・オブ・ザ・ブルー』

outoftheblue.jpg

さて、ブルー・ミッチェルの影にベニー・ゴルソンあり、という話の続きです。1959年1月5日録音のミッチェルの 2nd アルバム、『アウト・オブ・ザ・ブルー』には、ヨーロッパ・ツアーから帰国したばかりのメッセンジャーズから、御大ブレイキーとゴルソンが参加しています。ゴルソンが裏方に徹するどころか、思いきり前面に出てきてしまった(失礼!)のは、メッセンジャーズ参加と欧州ツアー成功の自信がそうさせたのでしょうか。

なにしろ1958年の11月から12月にかけて行われたこのツアーでは、名盤『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』や『パリ・オランピア・コンサート』が生まれています。ゴルソンとしても、人生最良の瞬間を迎えていたわけで、そんな彼に黒子に徹しろというのは、惨い仕打ちかもしれません。

メンバーはほかに、ミッチェルの作品には欠かせない能弁でゴキゲンなピアニスト、ウィントン・ケリーに、名門リヴァーサイドのベースラインを支え続けたサム・ジョーンズとポール・チェンバースが参加しています。

そんなわけで、アルバムはゴルソン作の〈ブルース・オン・マイ・マインド〉で幕を開けます。でも、ゴルソンには悪いですが、出来はイマイチ。ちょっとダレます。むしろ、クラーク・テリー作〈ブーメラン〉のカッコよさや(初出はテリーの『セレナーデ・トゥ・ア・バス・シート』)、ミッチェル自作の〈スウィート・ケイクス〉のほのかなラテン・フレイヴァーに引かれます。

ほかにも、ロンネル・ブライトの〈ミッシング・ユー〉とか、〈聖者の行進〉なんて珍しい曲も演ってますが、隠れたおすすめ曲は、ヴァン・ヒューゼン作の有名スタンダード〈イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー〉です。

この出だしの雰囲気、『ブルース・ムーズ』でミッチェルのほんわかしたラッパにクラクラきた向きには、きっと気に入ってもらえると思います。「やった、この曲だけワンホーンか」と思いきや、途中でゴルソンが乱入するのが気に入りませんが、非常に短いので、勘弁してあげましょう(笑)。

そうそう、このゴルソンのソロを聞けば、休みなくウネウネと吹き続けるシーツ・オブ・サウンドのゆっくりバージョン(爆笑)の気持ち悪さがわかってもらえると思います。「もっと歯切れよくいかんかい!」とツッコミたくなるんです。

 

Blue Mitchell "Out Of The Blue"
(Riverside RLP 293/1131)

Blue Mitchell (trumpet)
Benny Golson (tenor sax)
Wynton Kelly (piano)
Sam Jones (bass) #1, 3, 5
Paul Chambers (bass) #2, 5, 6
Art Blakey (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Higgins
Recorded at Reeves Sound Studio, NYC; January 5, 1959

[Tracks]
01. Blues On My Mind (music: Benny Golson)
02. It Could Happen To You (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
03. Boomerang (music: Clark Terry)
04. Sweet-Cakes (music: Richard "Blue" Mitchell)
05. Missing You (music: Ronnell Bright)
06. When The Saints Go Marching In (traditional)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Benny Golson]
Benny Golson's Official Website
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Art Blakey]
The Official Art Blakey Website
Art Blakey School of Hardbop
Art Blakey Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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マル・ウォルドロン『レフト・アローン』

leftalone.jpg

訃報です。ジャッキー・マクリーンが亡くなりました。1931年5月17日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。2006年3月31日、コネティカット州ハートフォードの自宅で死去。享年73歳。

月並みといえば、あまりに月並みなセレクションですが、泣きのマクリーンの葬送曲は、『レフト・アローン』しか思い浮かびません。

不世出の歌手ビリー・ホリディの死後、彼女の最晩年を伴奏者としてすごしたマル・ウォルドロンが哀悼の意を込めて録音した、というのが定説になっていますが、どうやらこれは、でっちあげの美談のようです。

ビリーが亡くなったのは、1959年7月17日。このアルバムの録音日は、1959年2月24日ですから(発売元の東芝 EMI のサイトにもわざわざ録音日が明記されているので、おそらく間違いないでしょう)、実に5か月も前に収録されていたわけです。今回この記事を書くまで、私もまったく知りませんでした。

マル作曲、ビリー作詞の〈レフト・アローン〉は、ビリーの死とは関係なく録音されたまま放置されていた。そこに、ビリーの死というニュースが飛び込んできた。そこで、急遽マルのインタビューを追加収録(#6)して、ビリーの追悼盤としてリリースされた。事実はおそらく、こんな感じだったのでしょう。

かなり興ざめな話です。でも、逆にいうと、ビリーの死という悲しみなしに、マクリーンはあれだけむせび泣き、マルはあれだけ重く沈んだ演奏をしたわけです。これって、よく考えると、すごくないですか?

このアルバム、本当はマルのピアノ・トリオ作として取り上げようと思っていたんです。〈レフト・アローン〉ばかりが注目されますが、実はそれ以外の4曲にこそ、黒い情念マルの本質がある。〈キャット・ウォーク〉のどうしようもない暗さ。〈ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ〉の絶望的な深み。〈マイナー・パルセーション〉の執拗なモールス信号。異常に力強い低音がボディブローのようにじわじわ効いてくる。聞き終えた後、こんなに気持ちが沈む作品もそうはありません。

でもね、やっぱりマクリーンのむせび泣きに参ってしまうんです。アルトが泣いています。涙がとめどなくあふれています。ジャッキーさん、ごめんよ。生きている間にあなたの特集やっておけばよかった。ご冥福を祈ります。



Mal Waldron "Left Alone"
(Bethlehem BCP 6045)

Jackie McLean (alto sax) #1
Mal Waldron (piano)
Julian Euell (bass)
Al Dreares (drums)

Recorded in NYC; February 24, 1959

[Tracks] 
01. Left Alone (music: Mal Waldron / words: Billie Holiday)
02. Cat Walk (music: Mal Waldron)
03. You Don't Know What Love Is (music: Gene DePaul / words: Don Raye)
04. Minor Pulsation (music: Mal Waldron)
05. Airegin (music: Sonny Rollins)
06. The Way He Remembers Billie Holiday

[Links: Jackie McLean]
BLUESNIK (by masaki nakano)
ジャズの酒蔵
Jackie McLean Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Mal Waldron]
Mal Waldron Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Mal Waldron Recordings (@ Miles Ahead)

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2006年04月03日

ブルー・ミッチェル『ビッグ6』

big6.jpg

コンポーザー&アレンジャーとしては、抜群の人気を誇るベニー・ゴルソンですが、テナー奏者としてはどうなのでしょう?1929年1月25日、ペンシルヴァニア州フィラデルフィア生まれ。

いーぐるの後藤雅洋さんがあちこちで「彼のウネウネと続くテナー・ソロにはついていけない」と書いていますが、実はこれ、私も同感です(笑)。譜面を書かせたら、あんなにも美しいハーモニーを生み出すゴルソンですが、彼のソロにはひらめきが感じられません。「ウネウネ」という表現がピッタリの、同じフレーズの垂れ流しが耳について、どうも好きになれない。

じゃあ、なんでゴルソンにスポットを当てた記事を書いているのかというと、理由はただ一つ、ブルー・ミッチェルのことが書きたかったからです。

「ミッチェルとゴルソン? どこかで関係してたっけ? リー・モーガンとか、アート・ファーマー(ジャズテット)の間違いじゃないの???」という声が聞こえてきそうですが、この二人、ひそかに接点をもっているんですよ。しかも、モーガンのときと同じように、ミッチェルのデビューをゴルソンが影で支えた節がある。

「え〜?」という人は、まずブルー・ミッチェルの初リーダー作『ビッグ6』を手に取ってみてください(1958年7月2、3日録音)。

ここにはなんと、〈ブルース・マーチ〉の初演が入っています。ジャズ・メッセンジャーズが『モーニン』を吹きこむのはこの3か月後ですから、ゴルソンはとびっきりの自信作を無名に近かった新人のデビュー盤に提供したことになります(アレンジも提供したと、プロデューサーのオリン・キープニューズはライナーで述べています)。

なにやら臭ってきましたね。これって、モーガンのデビュー時と同じ黒子役じゃないかと。この続きは、次回ということで(笑)。

ちなみに、2曲の作曲家としてクレジットされているウィリアム・ブーン・ジュニアという人は、ブルー・ミッチェルのマイアミ時代の友人。ミッチェル自作の〈ブラザー・ボール〉は、同じフロリダ出身の先輩キャノンボールに捧げられています。そういえば、彼がリヴァーサイド・デビューを飾ったのは、『ポートレイト・オブ・キャノンボール』でしたね。

 

Blue Mitchell "Big 6"
(Riverside RLP 273)

Blue Mitchell (trumpet)
Curtis Fuller (trombone)
Johnny Griffin (tenor sax)
Wynton Kelly (piano)
Wilbur Ware (bass)
Philly Joe Jones (drums)

Produced by Orrin Keepnews
Recorded by Jack Matthews
Recorded at Reeves Sound Studio, NYC; July 2. 3, 1958

[Tracks]
01. Blues March (music: Benny Golson)
02. Big 6 (music: William Boone, Jr.)
03. There'll Never Be Another You (music: Harry Warren / words: Mack Gordon)
04. Brother 'Ball (music: Richard "Blue" Mitchell)
05. Jamph (music: Curtis Fuller)
06. Sir John (music: Richard "Blue" Mitchell)
07. Promenade (music: William Boone, Jr.)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Johnny Griffin]
Johnny Griffin Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Wynton Kelly]
Wynton Kelly: a discography with cover photos (by Atushi acchan Ueda)
Wynton Kelly Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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リー・モーガン『シティ・ライツ』

citylights.jpg Lee Morgan - City Lights

リー・モーガンのブルーノート4作目にして、モーガン&ゴルソンのコラボレーション最終作、『シティ・ライツ』です(1957年8月25日録音)。

〈シティ・ライツ〉(街の灯)とは何ぞや。ブロードウェイの喧噪というのが、作曲者ゴルソンのイメージです。ポール・チェンバースの必殺ワザ、弓弾きではじまるこの曲には、毎晩くり広げられていたであろう都会の夜の浮かれ騒ぎがいい塩梅に表現されています。眠らない街を煌煌と照らし続けるネオンの明かり。

続くワルツ・タイムの曲は、さながら都会の片隅で出会った男と女といった趣きです。一夜限りの出会い。名も知らず、その瞬間だけを楽しむ大人の男と女。刹那的な享楽につきまとうほのかな哀しさがにじみでます。

3曲目〈ユー・アー・マイン・ユー〉は、夜も更け、しっぽりと寄り添う男女といった感じでしょうか。LP 時代のA面3曲で、ゴルソンは見事にニューヨークの夜の断面を切り取って見せました。

ふたたびモーガン&ゴルソンがコンビを組むのは、2人がそろってブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに参加する1958年を待たなければなりません。

 

Lee Morgan "City Lights"
(Blue Note BLP 1575)

Lee Morgan (trumpet)
Curtis Fuller (trombone)
George Coleman (tenor sax, alto sax)
Ray Bryant (piano)
Paul Chambers (bass)
Art Taylor (drums)
Benny Golson (arranger)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; August 25, 1957

[Tracks] Lee Morgan - City Lights
01. City Lights (music: Benny Golson)
02. Tempo De Waltz (music: Benny Golson)
03. You're Mine, You (music: Johnny Green / words: Edward Heyman)
04. Just by Myself (music: Benny Golson)
05. Kin Folks (music: Gigi Gryce)

[Links: Lee Morgan]
The Lee Morgan Discography (by Masaya MATSUMURA)
Lee Morgan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ray Bryant]
Ray Bryant Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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