2006年03月31日

『リー・モーガン・セクステット』

leemorgan2.jpg

ずいぶん長いこと、トランぺッターの話ばかりしてきましたが、さすがに飽きました(というか、ネタ切れか?)。しめくくりはこの人、ベニー・ゴルソンがらみでいきましょう。

リー・モーガンの華々しいデビューの影には、ガレスピー楽団の同僚で、同郷の先輩、ゴルソンの名アレンジがあったことは知られていますが、ブルーノート2作目にあたる『リー・モーガン・セクステット』では(別名『リー・モーガン Vol. 2』のほうが有名かも)、コンポーザー兼アレンジャーとして、いよいよゴルソンとオーウェン・マーシャルの名が表に出てきます(前作では、クレジットされていなかった)。

デビュー盤『リー・モーガン・インディード!』の約1か月後の録音、というより『ハンク・モブレー・セクステット』の翌週の録音というべきか。ドナルド・バードとリー・モーガンの顔合わせで知られるこの『セクステット』(BLP 1540)のメンバーから、バードを引いてアルトのケニー・ロジャーズを足せば、リー・モーガンの『セクステット』ができあがります(ついでに、ケニー・ロジャースもフィリー出身らしいですね)。

ということは、2週間にわたって同じメンバーがヴァン・ゲルダーの自宅に呼び集められたってわけです。なにやら安直な気がしますねえ。でも、安直にならないのがブルーノートの「らしい」ところで、モブレーの『セクステット』は全曲モブレーのオリジナル、モーガンの『セクステット』はゴルソン&オーウェンが仕切っています。

そして、ゴルソンの名曲〈ウィスパー・ノット〉の存在感。スタッカートをきかせたテーマ吹奏に続いて、ソロでは珍しくミュートをつけてプレイするモーガンが、成熟した(というのも変ですが)表現を聞かせます。

同じくゴルソン作〈ラテン・ハングオーヴァー〉。モーガンの堂々としたソロの背後で絶妙に絡み合うアンサンブルが聞きものです。こういうのをやらせたら、ゴルソンはほんとにうまい。哀愁のラテン、ここに極まれリ、です(笑)。



"Lee Morgan Sextet'"
(Blue Note BLP 1541)

Lee Morgan (trumpet)
Kenny Rodgers (alto sax)
Hank Mobley (tenor sax)
Horace Silver (piano)
Paul Chambers (bass)
Charlie Persip (drums)
Benny Golson, Owen Marshall (arranger)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; December 2, 1956

[Tracks]
01. Whisper Not (music: Benny Golson)
02. Latin Hangover (music: Benny Golson)
03. His Sister (music: Owen Marshall)
04. Slightly Hep (music: Benny Golson)
05. Where Am I? (music: Benny Golson)
06. D's Fink (music: Owen Marshall)

[Links: Lee Morgan]
The Lee Morgan Discography (by Masaya MATSUMURA)
Lee Morgan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Hank Mobley]
Hank Mobley Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年03月29日

ジュニア・クック『ジュニアズ・クッキン』

juniorscookin.jpg

ホレス・シルヴァー・クインテットの面々がボスのシルヴァー抜きで行った西海岸と東海岸の2つのセッションをまとめた作品、それがこの『ジュニアズ・クッキン』です。リヴァーサイドの傍系ジャズランドに吹き込まれました(1961年4月10日@西海岸、12月4日@東海岸の録音)。

名前のとおり、そこはかとないブルーな雰囲気が魅力のブルー・ミッチェル。彼と相性ばっちりの相方といえば、やっぱりこの人、ジュニア・クックをおいてほかにはいません。1934年7月22日、フロリダ州ペンサコラ生まれ。1992年2月3日、ニューヨーク州ニューヨークで死去。同郷には、アルトのジジ・グライスがいます。マイアミ出身のブルー・ミッチェルともご近所さんです。

シルヴァー抜きのシルヴァー・クインテット。さて、結果はどうでたか。ここには湧き立つようなグルーヴもなければ、この時期のシルヴァー・クインテットしか持ち得なかったどこまでも駆け抜けていく、あの「疾走感」もありません。そういう意味では、シルヴァーが役者の違いを見せつけたわけですが、それだけじゃつまらない。

ノリノリの高速演奏で悦楽の境地へと誘ってくれるミッチェルやクックもいいですが、もう一つ、彼らのおいしいところは、ミディアムからスロー・バラードに聞かれるけっして重すぎないブルージーな響きじゃないでしょうか。

というわけで、〈イージー・リヴィング〉です。ボスのグループでは絶対取り上げられないであろうこの曲を、クックはメロディーを慈しむように歌い上げていきます。ミッチェルの出番が冒頭と最後だけに限られているのが惜しい気がしますが、これはクックのリーダー・アルバムだから致し方ない。むしろ、わずかひと吹きでその場に大輪の花を咲かせるミッチェルの力量を楽しみたい気がします。

5曲目のミッチェル・オリジナル〈スウィート・ケイクス〉は、『アウト・オブ・ザ・ブルー』の再演です。



Junior Cook "Junior's Cookin'"
(Jazzland JLP 958)

Blue Mitchell (trumpet)
Junior Cook (tenor sax)
Ronnie Mathews (piano) #1-3, 7
Dolo Coker (piano) #4-6
Gene Taylor (bass)
Roy Brooks (drums)

Produced by Orrin Keepnews (#1-3, 7), Russell Jacquet (#4-6)
Recorded by Ray Fowler (#1-3, 7)
Recorded at Gold Star Studios, Long Beach, CA; April 10, 1961 (#4-6)
Recorded at Plaza Sound Studios, NYC; December 4, 1964 (#1-3, 7)

[Tracks]
01. Myzar (music: Roland Alexander)
02. Turbo Village (music: Charles Davis)
03. Easy Living (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
04. Blue Farouq (music: Richard "Blue" Mitchell)
05. Sweet Cakes (music: Richard "Blue" Mitchell)
06. Field Day (music: Dolo Coker)
07. Pleasure Bent (music: Roland Alexander)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)

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2006年03月28日

ホレス・シルヴァー『ドゥーイン・ザ・シング』

dointhething.jpg Horace Silver - Doin' the Thing: The Horace Silver Quintet At the Village Gate

作品に完璧さを求めるホレス・シルヴァーは、行き当たりばったりのライヴ録音を嫌ったといいますが、オフィシャルなライヴ盤が1枚だけ残っています。それが、この『ドゥーイン・ザ・シング』です(1961年5月19日、20日録音)。

興奮のるつぼと化したライヴ会場は、アート・ドルゴフ(Art D'Lugoff)のヴィレッジ・ゲイト。ニューヨークはグリニッジ・ヴィレッジのブリーカー St. とトンプソン St. の交差点にありました。コールマン・ホーキンスの『ジェリコの戦い』や、『ヴィレッジ・ゲイトのクリス・コナー』、『ヴィレッジ・ゲイトのハービー・マン』あたりが有名でしょうか。

ライヴ盤といっても、つねに新しいものを求め続けたアルフレッド・ライオン率いるブルーノートのこと、バンド・テーマを除く全曲書き下ろしの新作です。〈フィルティ・マクナスティ〉があります。〈ドゥーイン・ザ・シング〉があります。〈キス・ミー・ライト〉があります。〈ザ・グリンゴ〉があります。

ひたすら気持ちよさそうに鍵盤の上を縦横無尽に駆け巡るシルヴァーがいます。手は休みなく動き回ります。ものすごいドライヴ感でグイグイ引っ張っていきます。そして、フロント陣を鼓舞するロイ・ブルックスの小気味のいいドラミング。それに負けじと、いつになく鋭く切り込んでくるミッチェル&クック。体の芯から火照ってくるような興奮。やっぱ、ライヴはこうじゃなくっちゃ。

 

Horace Silver "Doin' The Thing'"
(Blue Note BLP 4076 / BST 84076)

Blue Mitchell (trumpet)
Junior Cook (tenor sax)
Horace Silver (piano)
Gene Taylor (bass)
Roy Brooks (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded live at the Village Gate, NYC; May 19 (#1, 2), 20 (#3, 4), 1961

[Tracks] Horace Silver - Doin' the Thing: The Horace Silver Quintet At the Village Gate
01. Filthy McNasty (music: Horace Silver)
02. Doin' The Thing (music: Horace Silver)
03. Kiss Me Right (music: Horace Silver)
04. The Gringo 〜 The Theme: Cool Eyes (music: Horace Silver)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年03月27日

ホレス・シルヴァー『ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ』

browinthebluesaway.jpg Horace Silver - Blowin' the Blues Away

ホレス・シルヴァーの代表作を選ぶのは、むずかしい。たいていどのアルバムにも、ジュークボックス用にシングルカットされた必殺曲が入っているからですが、ノリ一発と思いきや、シルヴァーの楽曲は、すみずみまで行き届いた構成美が最大の特徴で、けっこう複雑なことをやっていながら、まったくそうは聞こえないところに、シルヴァーの作曲・アレンジ能力の高さがうかがわれます。

曲によって、さまざまな表情を見せるシルヴァーですが、一貫しているのは、スタジオ録音作なのに、熱いグルーヴを封じ込めることができたのは、彼のリーダーシップによるところが大きかったのでしょう。力強い鍵盤さばきで有名を馳せたホレス・シルヴァー。1928年9月2日、コネティカット州ノーウォーク生まれ。

で、彼の代表作は何か。1枚にしぼるのはむずかしいけれど、3枚あげろといわれてば、この『ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ』あたりは、全会一致で推挙されるのではないでしょうか。

このアルバムがすごいのは、はじめから終わりまで、すべて必殺のキラーチューンばかりそろっていることです。アルバム単位の鑑賞が基本のジャズの世界では、寄せ集めのベスト盤は無用というのが私の意見ですが、曲の完成度、独立度が非常に高いシルヴァーの場合、いわゆる「ベスト盤=名曲選」が成り立ちそうな気がします。そして、さながらシルヴァーの代表曲を集めた様相を呈しているのが、この『ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ』というわけです。

ここには、疾走するシルヴァーのピアノにフロント・ラインが熱い咆哮で応酬する〈ブローイン・ザ・ブルース・アウェイ〉があります。これぞシルヴァー節というべき、トリオ演奏の〈ザ・セント・ヴィタス・ダンス〉があります。ロイ・ブルックスの切れ味鋭いドラムに煽られたミッチェル&クックが炎のソロを聞かせる〈ブレイク・シティ〉や〈バグダッド・ブルース〉があります。忘れられない佳曲〈ピース〉もあれば、ノリノリの代表曲〈シスター・セイディ〉もあります。

う〜ん、これはおいしすぎる。こんなにおいしい曲をたった1枚のアルバムに入れ込んじゃうなんて、この時期のシルヴァーは、ホントに絶好調だったんでしょうね。泉が湧き出るように、曲が生まれる。その曲がどれも、人気を博す要素をもっていた。そして、そこに熱気を封じ込めることができる理想のメンバー。まさに怖いものなしのシルヴァーです。

 

Horace Silver "Blowin' The Blues Away"
(Blue Note BLP 4017 / BST 84017)

Blue Mitchell (trumpet) except #2, 7
Junior Cook (tenor sax) except #2, 7
Horace Silver (piano)
Gene Taylor (bass)
Louis Hayes (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; August 29 (#1, 6), 30 (#3-5), September 13 (#2, 7), 1959

[Tracks] Horace Silver - Blowin' the Blues Away
01. Blowin' The Blues Away (music: Horace Silver)
02. The St. Vitus Dance (music: Horace Silver)
03. Break City (music: Horace Silver)
04. Peace (music: Horace Silver)
05. Sister Sadie (music: Horace Silver)
06. The Baghdad Blues (music: Horace Silver)
07. Melancholy Mood (music: Horace Silver)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
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ホレス・シルヴァー『フィンガー・ポッピン』

fingerpoppin.jpg Horace Silver - Finger Poppin'

ホレス・シルヴァー・クインテットの全盛期は、トランペットのブルー・ミッチェルとテナー・サックスのジュニア・クックがフロントを飾った1959〜63年の間でした。

この2人、「トランぺッター列伝」「テナーサックス列伝」なんていう企画があっても、かろうじてブルー・ミッチェルが末席に連なるくらいで、ジュニア・クックは完全黙殺されておしまい、というくらいの存在です。そんな「B級(失礼!)」の2人も、ホレス・シルヴァーのマジックにかかると、一躍スター・プレイヤーの仲間入りを果たしたように聞こえるから不思議です。

1959年の正月末日に録音された『フィンガー・ポッピン』は、そんな彼らのデビュー盤です。これから数年にわたって続く快進撃を予感させるハツラツとした演奏に、思わず笑みがこぼれます。とはいえ、録音は最初からうまくいったわけではないようです。

ブルーはクラブではいつもぶっ飛んでいるが、スタジオでは最初、なかなかリラックスできなかった。緊張でガチガチになっていたが、リハーサルを重ねるにつれてだんだんよくなり、最初のOKテイクを取り終える頃にはすっかり調子を取り戻したんだ。

とは、ライナーノーツに残されたシルヴァーの弁ですが、それくらいミッチェルにとって、シルヴァーの録音に参加することは大きな挑戦であり、心身ともに負荷がかかるものだったのでしょう。でも、彼はそれをなんとか乗り越えた。そして、輝かしい音色とスピード感あふれる演奏で、立派にその大役を務めたのです。なんか微笑ましいエピソードですね(笑)。

表題曲〈フィンガー・ポッピン〉は、新生クインテットの誕生を高らかに歌い上げた傑作です。走り出したら止まらないこの勢い、このスピードこそ、シルヴァー・クインテットを聞く最大の楽しみです。私をどこまでも連れてって〜(笑)という感じです。

そして、問題の〈クッキン・アット・ザ・コンチネンタル〉。最初にレコーディングされたこの曲は、なかなか決まらず、テイク11まで数えたそうです。このOKテイクに、緊張で顔がこわばったミッチェルの姿を思い浮かべるのはむずかしい。ようやく体も温まって、パワー全開というところでしょうか。

意外なところで、〈ユー・ハプンド・マイ・ウェイ〉。何の変哲もないスロー・バラッドですが、これ、何かの曲に似ています。何の曲か思い出せないのですが、何でしたっけ? 喉まで出かかっているのに出てきません。ああ、もどかしい!!!

 

Horace Silver "Finger Poppin'"
(Blue Note BLP 4008)

Blue Mitchell (trumpet)
Junior Cook (tenor sax)
Horace Silver (piano)
Gene Taylor (bass)
Louis Hayes (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; January 31, 1959

[Tracks] Horace Silver - Finger Poppin'
01. Finger Poppin' (music: Horace Silver)
02. Juicy Lucy (music: Horace Silver)
03. Swingin' The Samba (music: Horace Silver)
04. Sweet Stuff (music: Horace Silver)
05. Cookin' At The Continental (music: Horace Silver)
06. Come On Home (music: Horace Silver)
07. You Happened My Way (music: Horace Silver)
08. Mellow D (music: Horace Silver)

[Links: Blue Mitchell]
Blue Mitchell: Biography, Selected Discography, Transcriptions (by Jeff Helgesen)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年03月24日

アート・ファーマー『ホエン・ファーマー・メット・グライス』

whenfarmermetgryce.jpg アート ファーマー & Gigi Gryce - When Farmer Met Gryce

アート・ファーマーとジジ・グライスというと、思い出すのは、1953年に行われたライオネル・ハンプトンの欧州ツアーです。クリフォード・ブラウンやクインシー・ジョーンズが参加したことでも知られるこのツアーでは、ファーマーとブラウニーのトランペット・バトルがフィ−チャーされ、聴衆を熱狂させたといいます。ファーマーはそのときのことを述懐して、こう述べています。

彼(ブラウニー)の並外れた才能に少なからず嫉妬したことは認めなければならない。だけど、彼はあまりにも心やさしく温かい人間なので、好きにならずにいるのは難しかった。彼がそんな人間だっただけに、トランぺッターとしての私の気持ちは複雑だった。

彼は、私がやりたいと思っていたことをやっていた。しかも、それは素晴らしかった。間違いなく私よりすぐれていたよ。私たちの歳は同じくらいのはずだが、トランぺッターとしての彼は、私よりはるかに先を進んでいた。

そんなブラウニーとのバトルは、ファーマーにとって相当なプレッシャーだったようで、「まるで私の人生と闘っているような感じがした。」(以上、引用はニック・カタラーノ著、川嶋 文丸訳『クリフォード・ブラウン:天才トランペッターの生涯』より)

ブラウニーはたしかに「好きにならずにはいられない」タイプだったのしょうが、それを素直に認めて、思わず心情を吐露してしまうファーマーの人柄に、私はひかれます。まさに「好きにならずにはいられない」のです(笑)。

それはさておき、全曲ジジ・グライスのペンになる『ホエン・ファーマー・メット・グライス』は、1954年という録音年が信じられないほど、完成度の高いハード・バップ作品にしあがっています。編曲家としても知られるグライスの知的に抑制されたアンサンブルが実に美しい。

こういうアレンジ重視の演奏には、ファーマーのようなペットこそふさわしい。クリフォードとの出会いを通じて、自分の限界を悟った(?)ファーマーは、リリカルな路線に自らの活路を見出したのかもしれません。たとえば、アルバムの最後を飾る〈ザ・インファンツ・ソング〉。この比類ない美しさをどんな言葉で表現すればいいのでしょう。自己主張の激しい世の中に疲れたら、ぜひ。

 

Art Farmer, Gigi Gryce "When Farmer Met Gryce"
(Prestige 7085)

Art Farmer (trumpet)
Gigi Gryce (alto sax)
Horace Silver (piano) #1-4
Freddie Redd (piano) #5-8
Percy Heath (bass) #1-4
Addison Farmer (bass) #5-8
Kenny Clarke (drums) #1-4
Art Taylor (durms) #5-8

Produced by Bob Weinstock
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; May 19, 1954 (#1-4), May 26, 1955 (#5-8)

[Tracks] アート ファーマー & Gigi Gryce - When Farmer Met Gryce
01. A Night At Tony's (music: Gigi Gryce)
02. Blue Concept (music: Gigi Gryce)
03. Stupendous-Lee (music: Gigi Gryce)
04. Deltitnu (music: Gigi Gryce)
05. Social Call (music: Gigi Gryce)
06. Capri (music: Gigi Gryce)
07. Blue Light (music: Gigi Gryce)
08. The Infant's Song (music: Gigi Gryce)

[Links: Gigi Gryce]
Gigi Gryce (by David Griffith)
Rat Race Blues: The Musical Life of Gigi Gryce (by Noal Cohen and Michael Fitzgerald)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Freddie Redd]
The Complete Freddie Redd Discography (by Dr. Michael Frohne)
Freddie Redd

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2006年03月23日

ホレス・シルヴァー『ザ・スタイリングス・オブ・シルヴァー』

thestylingsofsilver.jpg Horace Silver - The Stylings of Silver

前作から、トランペットがアート・ファーマーに、ベースがテディ・コティックに代わって吹き込まれたホレス・シルヴァー・クインテットのブルーノート2作目、『ザ・スタイリングス・オブ・シルヴァー』です(1957年5月8日録音)。

ブルーノートの1500番台には珍しいフルカラーのジャケットです。紙の印刷では、フルカラーは CMYK の4色のかけあわせで表現するので(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色)、モノクロの4倍、2色刷りの2倍の印刷コストがかかります。インディーズにしては金をかけたわけですが、それも「売れ筋」のシルヴァーだからこそ、でしょう。バックに写っているのは、ニューヨークの国連ビル。「世界」を相手に打って出ようという意思の表れでしょうか。

しかし、中身はというと、いかにも黒人受けしそうなファンキー色がほどよく抑制されて、日本人にも受け入れやすい端正な風情となっています。これは、アート・ファーマーの参加によるところが大きい。ファーマーは無色無臭というか、中性的というか、とてもひかえめな個性の持ち主なので(そこがいいんですが)、あんまりド派手な演出では、存在が霞んでしまうんです。それを知ってか知らずか、いつもよりクローズドな雰囲気の曲を並べたシルヴァーです。

そして、最後に1曲だけ添えられたスタンダード、〈マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ〉のやさしい響き。トリオ作品がほとんどないシルヴァーの意外に愛らしいピアノ表現にうっとりです。



Horace Silver "The Stylings Of Silver"
(Blue Note BLP 1562)

Art Farmer (trumpet)
Hank Mobley (tenor sax)
Horace Silver (piano)
Teddy Kotick (bass)
Louis Hayes (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; May 8, 1957

[Tracks] Horace Silver - The Stylings of Silver
01. No Smokin' (music: Horace Silver)
02. The Back Beat (music: Horace Silver)
03. Soulville (music: Horace Silver)
04. Home Cookin' (music: Horace Silver)
05. Metamorphosis (music: Horace Silver)
06. My One And Only Love (music: Guy Wood / words: Robert Mellin)

[Links: Hank Mobley]
Hank Mobley Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Horece Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年03月22日

ドナルド・バード『バード・イン・パリ1&2』

byrdinparis.jpg Donald Byrd - Jazz in Paris: Byrd in Paris

↑ 邦題『懐かしのストックホルム:バード・イン・パリ』

byrdinparis2.jpg Donald Byrd - Jazz in Paris - Byrd in Paris, Vol. 2: Parisian Thoroughfare

↑ 邦題『パリの目抜き通りで:バード・イン・パリ2』
 (いずれも「ジャズ・イン・パリ」シリーズのジャケット)

1950年代のドナルド・バードのリーダー作というと、アルトのジジ・グライスと組んだ「ジャズ・ラブ」か、バリトンのペッパー・アダムスと組んだ作品あたりが思い浮かびますが、それだけではおもしろくない。

デビューから数年間のバードの活躍ぶりには、目を見張るものがあります。なにしろ1957年の1年間だけでも、リーダー、サイドメンあわせて40枚近く(!)ものアルバムに参加しているのですから、ほとんど毎週、どこかのスタジオかクラブでエンジニアと向き合っていたことになります。

そんなわけで、彼のアルバムを選ぶときはいつも迷ってしまうのですが、好きな曲のあるなしで推薦盤を決めるというのが、私のやり方です。困ったときの曲頼みってやつです。

そうして出した結論が、『バード・イン・パリ』『同 Vol. 2』の2枚です。これはもともと Brunswick というところから出ていたものを、「ジャズ・イン・パリ」シリーズの1枚として復刻したものです(1958年10月22日、パリ・オリンピア劇場での実況録音)。

2000年からはじまったこのシリーズ、以前は完全無視していたんですよ。どれをとっても金太郎飴のような似たようなジャケットで何十枚も並べられても、ふつう、触手は伸びないでしょ? でも、知っていたんです、ここにはバードの吹く〈ディア・オールド・ストックホルム〉と〈スターダスト〉が入っていることは。

〈スターダスト〉については、以前『モーター・シティ・シーン』を取り上げた際に、バードの吹くこの曲は絶品だと書きましたが、その2年も前に吹きこまれたこの録音、やはり〈スターダスト〉を激賞する人も多くて、気にはなっていたんです、ずっと。でも「このジャケットじゃなあ……」となかなか踏ん切りがつかなかったのですが、「どうしても聞いてみたい」という欲に負けて、ついに買ってしまったのが去年の年末のことでした。

そしたら、やはりというか、当然というか、これまで我慢していたのがアホらしくなるほど、いいんですよ。この時期のバードが悪いわけがない。非常にクリアで輝かしい音色。耳の肥えたパリの聴衆を前に、演奏はあくまで熱いのですが、爆発一歩手前のところでクールさを保つ知的な風情がたまりません。

選曲がまたニクい。パリジャンにもおなじみのパウエルやモンクの曲を取り上げたかと思えば、ブラウニー(ソニー・スティット)の〈ブルース・ウォーク〉や御大ガレスピーの〈ソルト・ピーナッツ〉で場を盛り上げたり、2曲のスタンダードでしっとりと聞かせたり。

そう、やっぱり〈スターダスト〉が絶品なんです。ピアノとベースだけをバックに朗々と歌うバードのペットの輝きといったら。ホンマにため息が出ます。幸せです(笑)。演奏が短すぎるのがもったいないくらいです。

〈ディア・オールド・ストックホルム〉のバードは、遠くのほうからやってきます。それが徐々に近づいてきて、「いよっ、待ってました」という瞬間に、ボビー・ジャスパーに受け渡す。

ちなみに、この公演は、ベルギー生まれのテナーマン、ボビー・ジャスパーの凱旋公演の性格が強かったようです(ジャズパーは1956年に本場ニューヨークへ進出しました)。

 

Donald Byrd ”Byrd in Paris, Vol. 1”
(Brunswick 87 903)
Donald Byrd ”Byrd in Paris, Vol. 2"
(Brunswick 87 904)

Donald Byrd (trumpet)
Bobby Jaspar (tenor sax, flute)
Walter Davis, Jr. (piano)
Doug Watkins (bass)
Art Taylor (drums)

Recorded live at the Olympia, Paris; October 22, 1958

[Tracks: Vol. 1] Donald Byrd - Jazz in Paris: Byrd in Paris
01. Dear Old Stockholm (traditional)
02. Paul's Pal (music: Sonny Rollins)
03. Flute Blues (music: Bobby Jaspar)
04. Ray's Idea (music: Ray Brown)
05. The Blues Walk (aka. Loose Walk) (music: Sonny Stitt or Clifford Brown?)

[Tracks: Vol. 2] Donald Byrd - Jazz in Paris - Byrd in Paris, Vol. 2: Parisian Thoroughfare
01. Salt Peanuts (music: Dizzy Gillespie, Kenny Clarke)
02. Parisian Thoroughfare (music: Bud Powell)
03. Stardust (music: Hoagy Carmichael / words: Mitchell Parish)
04. 52nd Street Theme (music: Thelonious Monk)
05. At This Time (music: Donald Byrd)
06. Formidable (music: Walter Davis, Jr.)
07. Two Bass Hit (music: Dizzy Gillespie, John Lewis)
08. Salt Peanuts (music: Dizzy Gillespie, Kenny Clarke)

[Links: Donald Byrd]
Donald Byrd Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Doug Watkins]
Doug Watkins Discography (by Vincent Bessieres)

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2006年03月21日

ホレス・シルヴァー『6ピーシズ・オブ・シルヴァー』

6piecesofsilver.jpg 

話を1956年に戻しましょう。アート・ブレイキーと袂を分かったホレス・シルヴァーは、ブレイキー以外の旧ジャズ・メッセンジャーズのメンバーをみんな雇い入れ、ルイ・ヘイズをドラマーに迎えて、自らのグループをスタートさせます。

彼らのブルーノート初録音となった『6ピーシズ・オブ・シルヴァー』は、文字どおりシルバーの楽曲を6曲収めたアルバムです(スタンダードも1曲入っています。1956年11月10日録音)。

グループの船出を飾ったのは、7月に録音されたエピック盤『シルヴァーズ・ブルー』ですが、このセッションは3日間にわたっていて、初回録音日のトランペットはジョー・ゴードンでした。ドラマーも最初がケニー・クラーク、次いでアート・テイラーという布陣だったので、多少メンバーの異動がありました(私は未聴です)。

この作品を吹きこむにあたって、シルヴァーにプレッシャーがあったかどうかはわかりませんが、独り立ちの真価を問われる場面であることは間違いありません。ブレイキーなしでも十分やっていけることをいかに証明するか。そこでシルヴァーが出した答えが「ファンキー」でした。

それまでも〈ザ・プリーチャー〉など、ファンキー色の強い曲を生み出してきたシルヴァーですが、生まれたときから聞いて育ったゴスペルとブルースに、ラテンとクラシックとブロードウェイのミュージカルというスパイスを少々振りかけて混ぜ合わせれば、そこにファンキーという名の「シルヴァー節」が誕生する。

シルヴァーの曲はシンプルです。そして粘っこい。後を引きます。日本人なら納豆ですが、アメリカ人なら何でしょうか。とにかくシンプルなメロディーを執拗にくり返して、それが独特のリズムを生み出す。耳に残るんです。

シルヴァーの代名詞ともなった〈セニョール・ブルース〉。このシルヴァーのピアノはしつこい。これでもかというくらい、粘っこく、しつこく迫ります。意外とマッチしているのが、耳をつんざくドナルド・バードの金属音。キンキン耳に響いて、一定のリズムに華を添えます。

 

Horace Silver "6 Pieces Of Silver"
(Blue Note BLP 1539)

Donald Byrd (trumpet)
Hank Mobley (tenor sax)
Horace Silver (piano)
Doug Watkins (bass)
Louis Hayes (drums)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; November 10, 1956

[Tracks] 
01. Cool Eyes (music: Horace Silver)
02. Shirl (music: Horace Silver)
03. Camouflage (music: Horace Silver)
04. Enchantment (music: Horace Silver)
05. Senor Blues (music: Horace Silver)
06. Virgo (music: Horace Silver)
07. For Heaven's Sake (music+words: Don Meyer, Elise Breton, Sherman Edwards)

[Links: Donald Byrd]
Donald Byrd Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Hank Mobley]
Hank Mobley Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Horace Silver]
Horace Silver Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Horace Silver Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Doug Watkins]
Doug Watkins Discography (by Vincent Bessieres)

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2006年03月18日

『ブッカー・リトル・アンド・フレンズ』

>bookerlittleandfriends.jpg 

ベツレヘム盤『ブッカー・リトル&フレンズ』は、前作『アウト・フロント』のメンバーから、エリック・ドルフィーとマックス・ローチが抜けて、ジョージ・コールマンとピート・ラロカが加わった3管セクステットの作品です(1961年夏頃録音)。

同じ3管でも、ブレイキーなんかと比べると、こうも違うかと驚くはずです。メンバーが小粒だから? こじんまりした印象を受ける? いずれもちょっと違うような気がします。もっと根本的に何かが違う。躍動感というかバイタリティというか、リトルの音楽には生命力が希薄なんです。音楽とともに存在そのものが霧散していくような希薄さ。「永遠の未完成」とはよくいったものです。

ここには、なんと私的テーマ曲〈イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー〉が入っています。この曲、少し早めのテンポで演ってもサマになるのですが、リトルはけっして急ぎません。ゆっくりと音を確かめるように吹いています。まるで残されたわずかな人生を慈しむかのように。

リトルの存在は別格ですが、このアルバムのドン・フリードマンも嫌いじゃありません。というか、けっこう気に入っています。フリードマンというと、『サークル・ワルツ』か、スコット・ラファロのルームメイトだった、ということくらいしか思い浮かびませんが(笑)、前作といい、今作といい、よく聞くと意外と効いているんですよ、彼のピアノが。60年代初頭に花開いたリトルのバックにひと昔前のパウエル派のピアニストを連れてきても、合わないだろうから、やっぱりこういうのは相性の問題なのでしょう。再認識させられました。

 

"Booker Little And Friend"
(Bethlehem BCP 6061)

Booker Little (trumpet)
Julian Priester (trombone) #1, 3, 5, 7
Geroge Coleman (tenor sax) #1, 3, 5, 7
Don Friedman (piano)
Reggie Workman (bass)
Pete La Rocca (drums)

Produced by Teddy Charles
Recorded in NYC; August - September, 1961

[Tracks] 
01. Victory And Sorrow (music: Booker Little)
02. Forward Flight (music: Booker Little)
03. Looking Ahead (music: Booker Little)
04. If I Should Lose You (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
05. Calling Softly (music: Booker Little)
06. Booker's Blues (music: Booker Little)
07. Matilde (music: Booker Little)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Don Friedman]
Don Friedman, Jazz Pianist (Official Site?)
Don Friedman Discography (by Jonathan Kutler)
[Links: Reggie Workman]
Reggie Workman's BassScanz (Official Site)

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2006年03月17日

ブッカー・リトル『アウト・フロント』

outfront.jpg Booker Little - Out Front

ブッカー・リトルとエリック・ドルフィーの初共演は、ニュー・ジャズ盤『ファー・クライ』ですが(1960年12月21日録音)、当時、マックス・ローチやチャールズ・ミンガスら「物言う黒人たち」に作品発表の場を提供していたキャンディド・レーベルには、彼らの共演盤が何枚か残されています。

ボストン生まれの評論家ナット・ヘントフは、白人でありながら、黒人の公民権運動に好意的で、ブラック・ミュージックとしてのジャズに深い理解を示した希有な存在でしたが、その彼が主宰したインディーズ・レーベルがキャンディドでした(アルバムリストはこちら)。

リトルの数少ないリーダー作の1つ、『アウト・フロント』も、ナット・ヘントフの手によって歴史に刻まれました(1961年3月17日、4月4日録音)。

ここには、ドルフィーとローチという、リトルのあまりに短い音楽人生に決定的な影響を与えた2人がそろっていて、それだけでも私なんかは感涙ものですが、23歳の誕生日を迎えたばかりの若者とは思えない絶望的なまでの「暗さ」と「哀しさ」に、わが耳を疑います。

私の拙い言葉ではとても伝えきれないと思うので、このアルバムについては、ナット・ヘントフ自身の言葉を借りましょう。その昔「一番好きなアルバムは?」と聞かれて、彼はこう答えたそうです。

沢山のレコードを列挙しました。たとえば、Mingus とか Cecil Taylor のものとかね。だけど一枚だけと言われたので、Booker Little を挙げましたね。若くして亡くなりましたが、Clifford Brown に次ぐ才能の持ち主でした。叙情詩的なソロの展開、独創性、奏法の精度、新鮮さ、そういったことを全て兼ね備えていた天才でした。私は、「OUT FRONT」というアルバムの中にそれらの彼の魅力をすべて収録しました。やはり、あのアルバムが私の BEST ということになりますね。

(Paul Morris によるインタビューより引用。訳は大西正則さん。出典はこちら

 

Booker Little "Out Front"
(Candid CJM 8027 / CJS 9027)

Booker Little (trumpet)
Julian Priester (trombone)
Eric Dolphy (alto sax, bass clarinet, flute)
Don Friedman (piano)
Art Davis (bass)
Max Roach (drums)

Produced by Nat Hentoff
Recorded by Bob d'Orleans
Recorded at Nola Penthouse Sound Studios, NYC; March 17, April 4, 1961

[Tracks] Booker Little - Out Front
01. We Speak (music: Booker Little)
02. Strength And Sanity (music: Booker Little)
03. Quiet, Please (music: Booker Little)
04. Moods In Free Time (music: Booker Little)
05. Man Of Words (music: Booker Little)
06. Hazy Hues (music: Booker Little)
07. A New Day (music: Booker Little)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Eric Dolphy]
Outward Bound! (by Alan Saul)
Making Eric Dolphy's Complete Discography (by Naohiko Hino)
Eric Dolphy Collection (by ANTAIOS)
Eric Dolphy Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Don Friedman]
Don Friedman, Jazz Pianist (Official Site?)
Don Friedman Discography (by Jonathan Kutler)
[Links: Art Davis]
Dr. Art Davis, Bassist (Official Site)

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2006年03月16日

マックス・ローチ『ウィ・インシスト!』

weinsist.jpg Abbey Lincoln & Max Roach - We Insist!: Freedom Now Suite - EP

1960年は「アフリカの年」として知られています。残された最後の植民地アフリカ大陸では独立運動が激化し、コンゴ,ザイール,ナイジェリア、カメルーンなど、17か国の黒人国家がー挙に誕生したのがこの年です。アメリカに住む黒人たちが、自らのルーツであるアフリカの同胞たちの活躍に鼓舞され、失われた誇りを取り戻す契機となったことは想像に難くありません。

ひるがえって自分たちの国を見てみると、1863年の「奴隷解放宣言」から100年近く経った当時でも、白人による黒人差別は厳として残っていました。アメリカの誇る自由と平等は白人の間でだけ成り立つ理想であり、黒人は公共の場でも職場でも不利な立場に取り残されました。経済的にも弱者だった黒人にとって、残された手段はそう多くはなかったはずです。たまりにたまった彼らの不満が爆発するまで、それほど長い年月は必要としませんでした。

1955年のローザ・パークス逮捕事件に端を発する公民権運動は、全米各地の黒人組織を巻き込みながら、大きなうねりとなって社会全体を揺り動かしていきます。ジャズ・ミュージシャンとて例外ではなく、黒人同胞を駆り立てるような扇動的な音楽や政治的な発言が目立ってきたのがこの時代でした。

1960年に収録された『ウィ・インシスト!』は、マックス・ローチが自ら差別と闘う「闘士」であることを高らかに宣言した作品です。俗にプロテスト・ミュージックと呼ばれていますが、ローチにいわせると、これはプロテスト(抗議)ではなく、ステイトメント(宣言)だといいます。抗議というのは、支配者があってはじめて成り立つものだからというのが、その理由だそうです。

と、ここまで長々と書いてきましたが、私はこの『ウィ・インシスト!』の行き方には、どうしても共感することができません。心が動かされないというか、私のハートに直接訴えかけてくるものが感じられないのです。

黒人のおかれた境遇に無関心なわけではありません。この時期、黒人としては何かせずにいられなかった、というのは、私でも想像できます。そして、ミュージシャンなら音楽を通じて自分の立場を表明するのが自然だった、というのもわかります。でも、と思ってしまうのです。でも、やっぱりこれは閉じた音楽、クローズドな世界だな、と。

私はふだん高校生に小論文を教えているから、人一倍そう感じるのかもしれませんが、他人に向かって書かれた文章と、そうでないものは、一目で区別がつくのです。自分の頭の中でこねくりまわした文章というのは、他人に訴えかける力に欠けます。閉じられた空間で自己完結しているだけで、外に向かって開かれていないからです。

そんなわけで、生徒たちには、誰かの顔を思い浮かべて、その人をどうしたら説得できるか、あれこれ想像しながら論文を書きなさい、と指導しています。文章といえどもコミュニケーションの手段ですから、通じなければ意味がありません。通じるためには、特定の誰かを想定して書くのが一番いい。その人を「うん」といわせるためにはどんな手があるか、そういう具体的なところまで落とし込んでやると、文章が見違えるのです。非常にわかりやすい、ていねいな論文が書けるようになります。

以上は余談ですが、『ウィ・インシスト!』は非常に限られた人に向けられた音楽だと思います。少なくとも、2000年代に生きる私のための音楽ではない。感情移入できないものを感じます。みなさんにとってはいかがですか? 私は愁いを帯びたリトルのペットだけに耳を傾けています。

そうそう、このアルバムで耳障りな歌声(?)を聞かせているアビー・リンカーンは、ジミー・スコット(男性ですが)に次いでビリー・ホリデイの声質に近いと個人的には思っていますが、みなさんはどう思いますか?

 

Max Roach "We Insist! : Freedom Now Suite"
(Candid CJM 8002 / CJS 9002)

Booker Little (trumpet)
Julian Priester (trombone)
Walter Benton (tenor sax)
Coleman Hawkins (tenor sax) #2
James Schenck (bass)
Max Roach (drums)
Michael Olatunji (conga)
Raymond Mantilla (percussion)
Thomas Du Vall (percussion)
Abbey Lincoln (vocal)

Recorded at Nola Penthouse Studios, NYC; August 31 (#2, 5), September 6 (#1, 3, 4), 1960

[Tracks] Abbey Lincoln & Max Roach - We Insist!: Freedom Now Suite - EP
01. Tears For Johannesburg (music: Max Roach)
02. Driva' Man (music: Max Roach / words: Oscar Brown Jr.)
03. Triptych: Prayer 〜 Protest 〜 Peace (music: Max Roach)
04. All Africa (music: Max Roach / words: Oscar Brown Jr.)
05. Freedom Day (music: Max Roach / words: Oscar Brown Jr.)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Abbey Lincoln]
Abbey Lincoln (Aminata Moseka) Discography (by Michael Fitzgerald)

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2006年03月15日

マックス・ローチ『ザ・メニー・サイズ・オブ・マックス』

themanysidesofmax.jpg

ブッカー・リトルの初録音作品となった『オン・ザ・シカゴ・シーン』の後、マックス・ローチのグループは、ピアノ抜きの変則クインテット(3管+ベース+ドラム)へと変貌し、1958年の第5回ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルで、その全貌がはじめて明らかにされます。

ここでピンと来た人は相当「通」だと思うのですが(笑)、1958年のニューポート・ジャズ祭といえば、映画『真夏の夜のジャズ』が撮影された舞台で、そこにはチコ・ハミルトン・クインテット時代のエリック・ドルフィーの勇姿が収録されていたのでした(ついでに、ローチもダイナ・ワシントンのバックで映画に出ていますが、あろうことか、ローチ自身のグループはカットされてしまいました)。後に運命的な出会いを果たすドルフィーとリトルの歴史がはじめて交差した瞬間だったかもしれず、どちらも大好きな私には、興味が尽きないところです。

それはさておき、このときのメンバーは、トランペットのブッカー・リトルに、テナーのジョージ・コールマン、チューバのレイ・ドレイパー、ベースのアート・デイヴィス、リーダー兼ドラマーがマックス・ローチでした。以後、この5人が固定メンバーとなって、エマーシーやリヴァーサイド、タイムといったレーベルにアルバムを残していきます(ついでにいうと、ニューポートでのライヴの模様は、『マックス・ローチ・プラス・フォー・アット・ニューポート』というアルバムに残されているのですが(EmArcy MG 36140)、これ、ひょっとしたら未 CD 化作品じゃないでしょうか。もしそうだったら、ユニヴァーサルさん、ぜひ CD 化を検討してください。絶対買います!!!)。

が、しか〜し! 個人的にはどうもこの「チューバ」というのが気に食わない(笑)。やはりこの楽器はビッグバンドのベースラインを吹くのがお似合いであって、コンボでソロを吹いちゃ〜いけません。ピアノレスの先進性はわからんでもないですが、あのモコモコした愚鈍な響きが聞こえてきただけで、せっかくのリトルの流暢なペットも台無しだあ〜! なんで、どうしてレイ・ドレイパーなのよ〜!!!(あっ、でも『ニューポート』は買いますよ。約束します)

というわけで、今日紹介する『ザ・メニー・サイズ・オブ・マックス』は、この時期では唯一の、レイ・ドレイパー抜きの作品です(1959年1月22日録音)。代わりを務めるのは、トロンボーンのジュリアン・プリースター。とりたてて印象に残る人ではないけれど、あのチューバの間抜けなサウンドに比べれば百倍もマシです。

それは別として、ピアノレスという特殊な要素はあるにせよ、このグループが「3管」時代を先取りしていたのは事実です。ブレイキーのメッセンジャーズが3管になるのが1961年、それより前、アート・ファーマー&ベニー・ゴルソンのジャズテットも3管でしたが、結成は1960年でした。こちらは1958年の7月6日には、ニューポートの舞台に立っていたわけですから、マックス・ローチには、やはり先見の明があったんでしょう。彼の目が曇ってしまうのは(音楽的にですよ、あくまで)、全米が「政治の季節」を迎えた1960年代になってからです。

3曲目にまたしてもビル・リー(スパイク・リーのお父さん)の曲が登場していますが、さらに笑えることに、1曲目の作曲者、コンスエラ・リー・モアヘッドも、スパイク・リーの叔母さんというから恐れ入りました。シカゴの AACM のリチャード・エイブラムスなんて怖い人の曲もやっています(2曲目)。



Max Roach "The Many Sides Of Max"
(EmArcy MG 20911 / SR 60911)

Booker Little (trumpet)
Julian Priester (trombone)
George Coleman (tenor sax)
Art Davis (bass)
Max Roach (drums)

Recorded at Fine Recording, NYC; January 22, 1959

[Tracks]
01. Prelude (music: Consuela Lee Morehead)
02. Lepa (music: Richard Abrahms)
03. Connie's Bounce (music: Bill Lee)
04. A Little Sweet (music: Max Roach)
05. Tympanalli (music: Max Roach)
06. Bemsha Swing (music: Thelonious Monk)
07. There's No You (Hal Hopper, George Durgom / words: Tom Adair)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Art Davis]
Dr. Art Davis, Bassist
Art Davis Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年03月14日

マックス・ローチ+4『オン・ザ・シカゴ・シーン』

onthechicagoscene.jpg

1958年の前半(4月か5月)、ブラウニーの死後からその穴を埋めてきたトランペットのケニー・ドーハムがマックス・ローチのもとを離れ、ローチはいよいよグループの刷新に取り組みます。

ブラウン=ローチ時代から、彼らのアルバムをリリースしてきたエマーシー(マーキュリーの傍系レーベル)の本拠地はシカゴ。そこには、メンフィスから流れてきたイキのいい若手トランペット奏者ブッカー・リトルにテナー奏者ジョージ・コールマンがいました(コールマンだけは、前作『プレイズ・チャーリー・パーカー』から参加)。

「灰色の音色をもつ男」ブッカー・リトルは、55年くらいからシカゴ音楽院でクラシックを学んでいて、同郷のアルト奏者フランク・ストロージャーらと親交を深めていました。驚くべきことに、ルームメイトはあのソニー・ロリンズだったそうです。そんな縁で、ドーハムの後釜を探していたローチにリトルを紹介したのは、ロリンズだったといいます。

こうして誕生した新生マックス・ローチ+4は、さっそくレコーディングにのぞみます。『オン・ザ・シカゴ・シーン』は記念すべき彼らの第1作で、われらがリトルの初吹き込み作品でもあります(1958年6月3日録音)。

若き日のリトルを聞きたければ、まずは〈マイ・オールド・フレーム〉から。前途洋々とした若者だけに見られる溌剌とした響きです。かすかに感じられる陰影が後年を思わせますが、そこはそれ、まだ20歳の若者ですから、暗さよりも明るさが勝っています。私なんか、そこに愛着を感じてしまうのですが。

3曲目〈スポーティ〉は、アトランタ生まれでシカゴ在住のベーシスト、ビル・リーの作品です。といっても、ピンときませんね。映画監督スパイク・リーのお父さんといわれてはじめて、「へえ」となる。息子の映画の音楽も担当しているようです。



Max Roach "On The Chicago Scene"
(EmArcy MG 36132)

Booker Little (trumpet)
George Coleman (tenor sax)
Eddie Baker (piano)
Bob Cranshaw (bass)
Max Roach (drums)

Recorded at Universal Recording Studios, Chicago, IL; June 3, 1958

[Tracks]
01. Shirley (music: George Coleman)
02. My Old Frame (music: Arthur Johnston / words: Sam Coslow)
03. Sporty (music: Bill Lee)
04. Stella By Starlight (music: Victor Young / words: Ned Washington)
05. Stompin' At The Savoy (music: Edgar Sampson, Chick Webb, Benny Goodman / words: Andy Razaf)
06. Memo: To Maurice (music: Eddie Baker)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2006年03月13日

マックス・ローチ『ジャズ・イン 3/4 タイム』

jazzin34time.jpg

クリフォード・ブラウン亡き後のマックス・ローチ・クインテットは、よくも悪くもローチのリーダーシップが目立つようになります。ローチのオリジナル曲がふえたのも、彼のドラムソロが頻繁に聞かれるようになったのも、類い稀なる2人の均衡が崩れて、相方を失った居心地の悪さを象徴している気がします。

ドラマーであったマックス・ローチの視線の先には、つねに「リズムの革新」がありました。ジャズでワルツというと、今でこそ珍しくも何ともありませんが、4ビートが主流だった当時は、ワルツ・タイムでスイングできるなど、誰も考えていませんでした。でも、ローチには確信があったのでしょう。早くも1954年録音『ブラウン=ローチ・インコーポレイテッド』の〈アイ・ゲット・ア・キック・アウト・オブ・ユー〉でテーマ部分に4分の3拍子を取り入れた演奏を披露しています。

4分の3拍子と4分の4拍子を行ったり来たりするこの手法は、以後、ブラウン=ローチ・クインテットの売りのひとつとなります。すぐれたタイム感覚でリズムをキープするローチと、どんな転調も軽々と吹きこなすブラウニーの組み合わせは、「リズムの革新」にはもってこいの存在でした。彼らの冒険は、『アット・ベイズン・ストリート』の〈慕情 (Love Is A Many Splendored Thing)〉や、ロリンズ名義『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』の〈ヴァルス・ホット〉へと続いていきます(Valse はフランス語で Waltz の意味です)。

この『ジャズ・イン 3/4 タイム』は、ブラウニーとともにリズムの探求を続けてきたローチが満を持して発表した、全編ワルツで通した意欲的な作品です。変調子ジャズの代名詞、デイヴ・ブルーベックの
タイム・アウト』が録音されたのが1959年ですから、ローチの先進性がわかろうというものです。それくらい、新しかった。

ロリンズの〈ヴァルス・ホット〉の再演が目を引きます。初演より若干早めにテンポが設定されているのは、このリズムをすでに自分のものとしたという自信の表れでしょうか。単なる物珍しさを超えて、ワルツでもちゃんとスイングできることを証明してみせます。

最後の〈美しき乙女〉だけが、前作『マックス・ローチ・プラス・フォー』と同日録音で、旧メンバーのレイ・ブライアントが参加しています。

ちなみに、この録音当時、エマーシー(マーキュリー)はステレオ録音をはじめたばかりで、MG 36108 には6曲全部がモノラルで、SR 80002 には#1と6を除く各曲のステレオ・バージョンが収録されていたのだそうです。

 

Max Roach "Jazz In 3/4 Time"
(EmArcy MG 36108 / SR 80002)

Kenny Dorham (trumpet)
Sonny Rollins (tenor sax)
Bill Wallace (piano) #1-5
Ray Bryant (piano) #6
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Recorded in NYC; September 19 (#6), 1956
Recorded at Capitol Studios, Los Angeles, CA; March 18 (#1, 3), 20 (#2, 4), 21 (#5), 1957

[Tracks]
01. Blues Waltz (music: Max Roach)
02. Valse Hot (music: Sonny Rollins)
03. I'll Take Romance (music: Ben Oakland / words: Oscar Hammerstein II)
04. Little Folks (music: Max Roach)
05. Lover (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
06. The Most Beautiful Girl In The World (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)

[Links: Kenny Dorham]
Una Mas: Kenny Dorham Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Kenny Dorham Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Sonny Rollins]
Sonny Rollins: The Official Website
The Sonny Rollins Page
The Complete Sonny Rollins
Sonny Rollins Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ray Bryant]
Ray Bryant Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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『マックス・ローチ・プラス・フォー』

maxroach+4.jpg

クリフォード・ブラウンとリッチー・パウエル夫妻が雨が降りしきる真夜中のペンシルヴァニア・ターンパイクを走行中、ガードレールに激突し、即死した1956年6月26日。この日は、ブラウニーの奥さんラルーの誕生日であるとともに、彼らの2回目の結婚記念日でもありました。彼らの愛の結晶クリフォード・ジュニアはまだ生後半年。次の演奏地シカゴで落ち合う予定だった盟友マックス・ローチは、旅先でエージェントから彼らの死を伝え聞き、ホテルの部屋に閉じこもってコニャックを2本空けたそうです。

この『マックス・ローチ・プラス・フォー』は、ローチが残されたメンバーとともに再起をかけて挑んだ作品です。道半ばにして逝ってしまった2人の代わりに起用されたのは、自らのグループ、ジャズ・プロフェッツを投げうって、傷心の友人のもとに馳せ参じたトランペットのケニー・ドーハム、クリフォードの第二の故郷フィリー出身のピアニスト、レイ・ブライアントでした。

この作品、メンバーの死という悲しい出来事を乗り越えようという意気込みからか、思いのほかアグレッシヴな出来映えになっています。ジョージ・ラッセルの〈エズ・セティック〉という、幾何学文様のような複雑な曲にトライしたかと思えば、スピードの限界に挑戦したかのような〈ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・シングス〉で、聞くものの度肝を抜きます。

晩年(といっても20代ですが)のブラウニーは、ローチとともに「これでもか」というくらい急速調にチャレンジしていたそうですが、それを思わせるようなローチのドラミングがキテます。さすがのドーハムも、レイ・ブライアントも、ついていくのがやっと、という感じがしますが、意外や意外、この演奏を引き締まったものにしているのは、迫力のテナー・サウンドが耳をそばだてるロリンズです。ロリンズというと、ミディアム・テンポのときにもっとも「らしさ」が響き渡るテナー奏者だと思うのですが、ここでの彼は、スピードをものともせずに豪快に吹きまくっています。

それもそのはず、この時期のロリンズは悪いわけがありません。生涯の名作に数えられる『サキソフォン・コロッサス』を録音したのは、クリフォードの死の直前、6月22日のことです(当時のボス、マックス・ローチも参加しています)。この『プラス・フォー』は、クリフォードの死によるブランクはあったとはいえ、ロリンズにとっても『サキコロ』の次の作品に当たるのですから、その出来たるや、推して知るべき、ですね。エネルギッシュで豪快なテナーに酔いしれます。

5曲目〈身も心も〉。ロリンズのテナーではじまりますが、この音色にはしびれます。以前、『サキコロ』のよさがわからなかったと書いたことがありますが、このエマーシー盤のロリンズの音なら、昔から私も大好きです(その後、アナログ盤の『サキコロ』を聞いたことによって、私の長年の疑問は氷解したのでした。なんだ、ロリンズはやっぱ男じゃないか。当たり前なんだけど。そこらへんの事情は、こちらに書いてあります)。



"Max Roach + 4"
(EmArcy MG 36098)

Kenny Dorham (trumpet)
Sonny Rollins (tenor sax)
Ray Bryant (piano)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Recorded in NYC; September 17 (#3-5), 19 (#1, 2, 6), 1956

[Tracks]
01. Ezz-Thetic (music: George Russell)
02. Dr. Free-Zee (music: Max Roach)
03. Just One Of Those Things (music+words: Cole Porter)
04. Mr. X (music: Max Roach)
05. Body And Soul (music: Johnny Green / words: Edward Heyman, Robert Sauer, Frank Eyton)
06. Woody 'n You (music: Dizzy Gillespie)

[Links: Kenny Dorham]
Una Mas: Kenny Dorham Tribute and Discography (@ Hardbop Homepage)
Kenny Dorham Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Sonny Rollins]
Sonny Rollins: The Official Website
The Sonny Rollins Page
The Complete Sonny Rollins
Sonny Rollins Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Ray Bryant]
Ray Bryant Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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クリフォード・ブラウン&マックス・ローチ『アット・ベイズン・ストリート』

atbasinstreet.jpg Clifford Brown/Max Roach Quintet - At Basin Street

ブラウン=ローチ・クインテットは、当時としては珍しく、ユニットとして売り出していました。メンバーの切り売りはせず、全員を雇ってくれることを条件に、ツアーを組む。ギャランティの問題もあって、客を呼べるスターだけを呼んで、あとは地元のリズム・セクションと組ませて、ジャム・セッションを行うというのが当たり前だった時代に、ユニットで勝負するというのは経営的にも大変だったようですが、グループ表現を何よりも重視していた彼らのこと、そこだけは譲れない一線として、双頭リーダーのブラウン&ローチは各地のクラブのオーナーと直談判して渡り合ったといいます。

当然、メンバー同士の仲もよく、家族のような一体感で結ばれていました。とくに酒やドラッグとは無縁の生活を送っていたクリーンなブラウニーの影響は絶大で、彼と出会ったことでドラッグから足を洗ったミュージシャンも数多くいたそうです。

一瞬の「ひらめき」が勝負のジャズの世界では、パーカーのように吹きたければ、ハイになるのが当たり前だと当時は考えられていました。ところが、ブラウニーはドラッグにはまったく手を出さず、いかなるときも練習を欠かさず、あくなき探究心をもって音楽と真摯に向き合っていた。そして、その技量にますます磨きをかけていったのです。

ブラウニーは自分の宣伝に長けた人ではありませんでしたが、彼の生き方そのものが、ジャズ・ミュージシャンの新たな方向性を示していました。そして、彼の人柄にひかれた多くのミュージシャンが、彼のたどった「まっすぐな道」を自然と歩むようになっていったのです。

現存する最後のテナー・タイタン、ソニー・ロリンズも、ブラウニーとの出会いによって人生が変わった一人です。前任のテナー奏者ハロルド・ランドが祖母の死をきっかけに、妻や子供と過ごす時間を求めて LA に帰ってしまったので、かわりに当時シカゴに住んでいたロリンズがグループに加わったのが、1955年11月頭(10月末?)のことでした。

すでにマイルスとの共演などによって大物との評価が定まっていたロリンズのもとには、ありとあらゆるグループから誘いが来ていたといいます。でも、ロリンズはそれをすべて断って、ブラウン=ローチ・クインテットに馳せ参じた。そこにこそ、彼が求める新しい音楽と新しい生活があったからです。重度のジャンキーだったロリンズは、ブラウニーと出会ったことで、真っ当に生きようと決めたのです。

クリフォードは私の人生に深い影響を与えた。彼は、正しい、クリーンな生活を送っていてもなお、同時に立派なジャズ・ミュージシャンでいられることを教えてくれた。

これは、ニック・カタラーノによるブラウニーの伝記『クリフォード・ブラウン:天才トランペッターの生涯』で紹介されているロリンズの言葉です。短い言葉ですが、ブラウニーの存在がいかに得がたいものだったか、伺い知ることができます。彼を「聖人」に祭り上げるのは私の趣味ではありませんが、自分からは何も働きかけなくても、自然と敬愛を集めてしまうクリフォード・ブラウンという人間に、私も心がひかれます。

ちなみに、この伝記、ずいぶん前に買ったままになっていたのを、つい最近、やっと読んでみたのですが、実に気持ちのいい本です。簡潔でいながら、端々から著者のブラウニーに対する尊敬の念が感じられて、読んでいるこっちも、自然と笑みがこぼれます。驚いたのは、従来ブラウニー死の直前の録音とされていた『ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド』の後半3曲の録音日が訂正されていて、実は1年ほど前のセッションだったということが明らかになっています。くわしくは、こちらの「追記」をご覧ください。

この時期、彼らほど新しい音楽にチャレンジし、なおかつ、成果をあげたグループはありませんでした。その成果は、ロリンズ参加後のブラウン=ローチ・クインテット唯一の公式盤『アット・ベイズン・ストリート』で聞くことができます(同じメンバーで、ロリンズ名義の『ソニー・ロリンズ・プラス・フォー』というアルバムが、プレスティッジに残されています)。

ベイズン・ストリートは、ニューヨークに実在したクラブで、その名も〈ベイズン・ストリート・ブルース〉というスペンサー・ウィリアムズの曲も残されていますが(マイルスの『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』や、エリントン&ホッジスの『バック・トゥ・バック』、ジミー・スミスの『ザ・キャット』などで聞けます)、紛らわしいことに、これは「@ベイズン・ストリート」とは名ばかりのスタジオ録音作です(ただ、ブラウン=ローチ・クインテットはこの前後、ベイズン・ストリートに何度か出演していたのは事実で、毎回大盛況だったという記述が、前述の伝記に出ています)。

セッションは1956年の年明け、2回にわたって行われます。前年の暮れ(12月28日)、愛妻ラルーとの間にはじめて子供をもうけたブラウニーは、喜び勇んで録音に参加したことでしょう。フィラデルフィア出身の後輩、ベニー・ゴルソンの〈ステップ・ライトリー〉という曲が、〈ジュニアズ・アライヴァル〉とクレジットされたのには、そんな背景が隠されていました。

リッチー・パウエルの3曲は、いずれもこの「弟」が、「兄」バド・パウエルとは別の能力を開花しつつあったことを教えてくれます。なかでも〈パウエルズ・プランセス〉は、先の伝記では、モード手法を取り入れた作品と紹介されていますが、真相はいかに? それが本当なら、ジャズ史がひっくり返るかも(笑)。だって、この録音が行われたのは、1956年ですからね! 音楽理論はちっともわからないので、本当のところをどなたか教えてくれませんか?

同じリッチーの〈タイム〉もいい曲です。「監獄のなかで、いつになったら外に出られるのだろうと思っている男が過ごす時間」というのがご本人による説明ですが、そんなディテイルは、残念ながらこの曲からは聞きとれません(笑)。でも、ブラウニーとロリンズの物悲しいハーモニーが心に残ります。

 

Clifford Brown, Max Roach "At Basin Street"
(EmArcy MG 36070)

Clifford Brown (trumpet)
Sonny Rollins (tenor sax)
Richie Powell (piano)
George Morrow (bass)
Max Roach (drums)

Produced by Bob ShadGene Norman
Recorded at Capitol Studios, NYC; January 4 (#4, 5, 8), February 16 (#1-3, 6, 7, 9), 1956

[Tracks] Clifford Brown/Max Roach Quintet - At Basin Street
01. What Is This Thing Called Love (music+words: Cole Porter)
02. Love Is A Many Spledored Thing (music+words: Cole Porter)
03. I'll Remember April (music+words: Gene DePaul, Don Raye, Pat Johnston)
04. Step Lightly (Junior's Arrival) (music: Benny Golson)
05. Powell's Prances (music: Richie Powell)
06. Time (music: Richie Powell)
07. The Scene Is Clean (music: Tadd Dameron)
08. Gertrude's Bounce (music: Richie Powell)
09. Flossie Lou (music: Tadd Dameron)

[Links: Clifford Brown]
I Remember Clifford: The Clifford Brown Discography
Clifford Brown Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Sonny Rollins]
Sonny Rollins: The Official Website
The Sonny Rollins Page
The Complete Sonny Rollins
Sonny Rollins Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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posted by ユキヒロ at 12:09| Comment(1) | TrackBack(0) | Mercury (EmArcy, Limelight) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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