
フリーで仕事をしていると、版元さんが休む年末年始に仕事をして年明け入稿というのが毎年恒例のパターンなのですが、今年はめちゃキビしいです。非常に手のかかる原稿が1本、ホントに終わるのでしょうか?
そんなわけで、みなさんの期待を裏切り続けているわけですが(見にきてくれたみなさん、ごめんさない)、いくらなんでも年内にはマイルス特集を終えないと次に行けないので、『オン・ザ・コーナー
『オン・ザ・コーナー』は、ジャケットの雰囲気そのままの作品です。意図的に歪められた音が、奇妙なうねりを生み出しています。奇妙? そう、奇妙というか、ヘンテコな音楽です。でも、このヘンテコ感がたまらない。クセになります。こんなもの、理屈で聞いてもしょうがありません。身体で感じてください。
個人的には、5曲目〈ブラック・サテン〉から聞くことをすすめます。手拍子が生み出すこの奇妙なリズムに、調子っぱずれなマイルスのワウワウ・トランペット。ヘンテコリンなんだけど、妙に粘っこい。歪められた音が脳ミソをグニャグニャにしてくれます。ムンクの「叫び」のように、目の前がグニャグニャと曲がり、そのとらえどころのなさが、不安ではなく、かえって快感につながるという奇妙な感触。ヘヴィロテ間違いなしの中毒性の高い音楽です。
続く〈ワン・アンド・ワン〉では、マイケル・ヘンダーソンのこれまた歪んだベースが炸裂します。この曲を聞いて、ジャズ云々という人はもはやいないでしょう。マイルスは、このアルバムで完全にジャズと縁を切りました。これは,ファンクです。ストリート・ミュージックです。間違っても、ジャズではありません。でも、だからどうした、というのが正直な気持ちなんですね。こんなにノリのいい音楽って、そうザラにあるもんじゃない。ジャケットのイラストにある「Free Me」ならぬ「Free Your Soul」です。こむずかしい理屈をこねるヒマがあったら、心を空っぽにしてこの音楽に身を委ねたほうがはるかに得るものがある。だって、気持ちいいんだも〜ん!
というわけで、ここには、かつてリリカルで鳴らしたマイルスの姿はありません。でも、第2期黄金のクインテット以来、リズムの可能性を追求してきたマイルスがついに足を踏み入れた境地がここにはあります。耳慣れた音楽のジャンル分けがむなしくなるほど、圧倒的な作品です。1曲目から4曲目、7曲目と8曲目は、タイトルこそ別になっているものの、ひと続きの作品です。曲のはじまりとか終わりとか、そういう些末なこととは無関係に突き進むマイルス。いやはや、この時期のマイルスの創造力のすさまじさといったら。
ちなみに私は、インドの楽器シタールとタブラの参加は、世にいわれているほど、劇的な効果をあげているとは思いません。スパイスとしてはおもしろいですが、それ以上のものではない気がします。
Miles Davis "On The Corner"
(Columbia KC-31096)
Miles Davis (trumpet)
Dave Liebman (soprano sax) #1-4
Carlos Garnett (alto sax, tenor sax) #5-8
Bennie Maupin (bass clarinet) #5-8
Herbie Hancock (organ) #1-4 (electric piano, synthesizer) #5-8
Harold "Ivory" Williams (electric piano, synthesizer)
Chick Corea (synthesizer) #1-4
Lonnie Liston Smith (organ) #5-8
John McLaughlin (guitar) #1-4
David Creamer (guitar) #5-8
Paul Buckmaster (cello)
Michael Henderson (electric bass)
Jack DeJohnette (drums, hand claps)
Billy Hart (drums. percussion, bongo, hand claps)
James "Mtume" Foreman (conga, percussion, hand claps)
Don Alias (drums) #1-4
Collin Walcott (sitar)
Badal Roy (tabla)
Produced by Teo Macero
Recorded by Stan Tonekel, Russ Payne
Recorded at Columbia Studio, NYC; June 1 (#1-4), 6 (#5-8), 1972
[Tracks]
01. On The Corner (music: Miles Davis)
02. New York Girl (music: Miles Davis)
03. Thinkin' One Thing And Doin' Another (music: Miles Davis)
04. Vote For Miles (music: Miles Davis)
05. Black Satin (music: Miles Davis)
06. One And One (music: Miles Davis)
07. Helen Butte (music: Miles Davis)
08. Mr. Freedom X (music: Miles Davis)
[Links: Miles Davis]
The Official Miles Davis Web Site
The Official Miles Davis Web Site (@ Sony Music)
Miles Ahead: A Miles Davis Website (by Peter Losin)
Miles Davis: Missing Links (by Thomas Westphal)
Miles Davis Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Dave Liebman]
The Official David Liebman Website
Dave Liebman (@ ジャズCDの個人ページ by K. Kudo)
[Links: Carlos Garnett]
Carlos Garnett Jazzsite (by Amoye Neblett)
[Links: Benni Maupin]
Bennie Maupin Discography (by Christian Genzel)
[Links: Herbie Hancock]
The Official Website of Herbie Hancock
Herbie Hancock Discography (by Christian Genzel)
[Links: Chick Corea]
Chick Corea - Official Website
Chick Corea Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Lonnie Liston Smith]
Lonnie Liston Smith Select Discography
[Links: Paul Buckmaster]
Paul Buckmaster's Page
[Links: John McLaughlin]
Pages of Fire: The John McLaughlin WWW Tribute Server
Meeting of the Sprits: Mahavishnu John McLaughlin Fan Page
[Links: Jack DeJohnette]
Jack DeJohnette Official Website
Jack DeJohnette Homepage (by Piotr Marek, Jr.)
Jack Dejohnette Collection (by ANTAIOS)
Jack DeJohnette Complete Discography を目指すページ (@ 東北大学モダンジャズ研究会)
[Links: James "Mtume" Foreman]
MTUME is pronounced EM-TOO-MAY (@ Feel So Good)
[Links: Collin Walcott]
Collin Walcott: The Offcial Website
最後にポチッとよろしく。
