2005年09月15日

『モーター・シティ・シーン』

motorcityscene.jpg

アメリカ五大湖の中央に位置し、カナダと国境を接するミシガン州最大の都市デトロイト。フォード、GM、クライスラーのビッグ3が誕生した街としても知られ、自動車産業華やかなりしころは人口180万人を数えたそうですが、70年代以降、日本車の輸出攻勢の影響をモロに受けて人口が激減。市街地から人が消え、ゴーストタウンと化した街の治安は悪化します。現在は人口90万人のうち黒人が8割以上を占め、白人は郊外の衛星都市に住むという二重構造になっているそうです。

デトロイトがまだ元気だったころ、この街でおおぜいの黒人ミュージシャンが育ちました。60年代を席巻したモータウン(Motor Town の略ですね)が生まれたのも、この街でした。ジャズの世界も例外ではなく、50年代半ばにはデトロイト出身のジャズメンが大挙して本場ニューヨークへと進出してきました。

ベツレヘム盤『モーター・シティ・シーン』は、そんなデトロイト出身のジャズメンを集めてつくられました。リーダーはなし。ただし、全体をしきっているのは、ドナルド・バードのようにも聞こえます。バードは当時、ブルーノートとの専属契約を結んでいて、リーダーにはなれなかった。だから、リーダーなしのジャム・セッション的な体裁になったのかもしれません。

メンバーは年長者順に、ピアノのトミー・フラナガン。1930年3月16日、デトロイト生まれ。2001年11月16日、ニューヨークで死去。

バリトンのペッパー・アダムス。1930年10月8日、イリノイ州ハイランド・パーク生まれのデトロイト育ち。1986年9月10日、ニューヨークで死去。

ギターのケニー・バレル。1931年7月31日、デトロイト生まれ。

トランペットのドナルド・バード。1932年12月9日、デトロイト生まれ。

ベースのポール・チェンバース。1935年4月22日、ペンシルヴァニア州ピッツバーグ生まれのデトロイト育ち。1969年1月4日、ニューヨークで死去。同じベースのダグ・ワトキンスはいとこにあたります。

ドラムスのルイ・ヘイズ。1937年5月31日、デトロイト生まれ。

名前を並べただけでもある「音」が聴こえてきそうなメンバーです。バードにしろ、バレルにしろ、トミフラにしろ、ベタベタのブラック・ミュージックというよりは、知的でセンシティヴな音楽を得意としていました。都会的な洗練が自然と身についていた彼らが育ったデトロイトは、やはり当時は大都会だったのでしょうね。

私にとって、このアルバムは〈スターダスト〉を聞くためにあります。バラッドなのに1曲目におかれた理由は、聞けばわかります。ここでのバードは、息をのむほどすばらしい。この曲のみ、バリトンとギターが抜けたワンホーンでの演奏ですが、これこそ制作者の良心というものでしょう。輝かしい音色、情感たっぷり(でも過度ではない)のフレーズ、バードが吹くバラッドは私の心にフィットします。ブルーノートでのスピード感あふれる演奏もいいですが、バードはバラッド。これで決まりです。

ちなみに、『モーター・シティ・シーン』という名のアルバムは、もう1枚存在しています (United Artists UAL 4025/UAS 5025)。同じくデトロイト出身のミュージシャンでつくった作品ですが、こちらにはサド(トランペット)とエルヴィン(ドラムス)のジョーンズ兄弟が参加しています(長兄のハンク(ピアノ)は不参加)。

 

"Motor City Scene"
(Bethlehem BCP 6056)

Donald Byrd (trumpet)
Pepper Adams (baritone sax) except #1
Tommy Flanagan (piano)
Kenny Burrell (guitar) except #1
Paul Chambers (bass)
Louis Hayes (drums)

Recoreded in NYC; 1960

[Tracks] 
01. Stardust (music: Hoagy Carmichael / words: Mitchell Parish)
02. Philson (music: Pepper Adams)
03. Trio (music: Erroll Garner)
04. Libeccio (music: Pepper Adams)
05. Bitty Ditty (music: Thad Jones)

[Links: Donald Byrd]
Donald Byrd Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Tommy Flanagan]
Tommy Flanagan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Kenny Burrell]
KENNY BURRELL collection (by Furuike Akira)
[Links: Louis Hayes]
Louis Hayes (Official Website)

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2005年09月13日

ドナルド・バード『バード・イン・フライト』

byrdinflight.jpg

2管が主流のハードバップ時代は、トランペット奏者にとって幸福な時代でした。輝かしい音色で場を盛り上げる彼らは、ハードバップになくてはならない存在です。名門ブルーノートにあってその役を担ったのは、リー・モーガンとドナルド・バードの2人。当時のブルーノートのアルバムを順番に聞いていくと、この2人が才能あふれる新人として、いかに重用されていたかがわかります。

この『バード・イン・フライト』は、バードのブルーノート4作目。エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーの自宅スタジオで、毎週のように生み出されていた典型的なブルーノートのアルバムです。こういう質の高い作品が、当たり前のようにゴロゴロしているのが、ブルーノートの魅力といえば魅力ですね。

1、3、4曲目がテナーのハンク・モブレイ、2、5、6曲目がアルトのジャッキー・マクリーンとのセッションです。

1曲目〈ガーナ〉は生まれたばかりの黒人国家ガーナに贈られた歓喜と情熱の名演です(1957年にイギリスからサハラ砂漠以南のアフリカではじめて独立を勝ちとり、60年に共和国になりました)。同時期のマクリーンのアルバム『ジャッキーズ・バッグ』にも〈アポイントメント・イン・ガーナ〉という血が沸き立つような傑作があります。

作曲センスも光るリリカルなピアニスト、デューク・ピアソン作の〈ゲイト・シティ〉は、ピアソンのデビュー作『プロフィール』でも演奏されていました。

でも、このアルバムでいちばん好きなのは、同じピアソンのオリジナル〈マイ・ガール・シャール〉です。ハミングバード(はちどり)にもたとえられるバードの軽やかなペット、独特の憂いを帯びたマクリーンのアルトに、これほどふさわしい曲もありません。この名曲は、バードのライヴの傑作『ハーフノートのドナルド・バード』にも収められています(ただし、相方はバリトンのペッパー・アダムス)。

 

Donald Byrd "Byrd In Flight"
(Blue Note BLP 4048 / BST 84048)

Donald Byrd (trumpet)
Jackie McLean (alto sax) #2, 5, 6
Hank Mobley (tenor sax) #1, 3, 4
Duke Pearson (piano)
Doug Watkins (bass) #1, 3, 4
Reggie Workman (bass) #2, 5, 6
Lex Humphries (ds)

Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; Jan 17 (#3), 25 (#1, 4), Jul 10 (#2, 5, 6), 1960

[Tracks] 
01. Ghana (music: Donald Byrd)
02. Little Girl Blue (aka. Little Girl Blue) (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
03. Gate City (music: Duke Pearson)
04. Lex (music: Donald Byrd)
05. Bo (music: Duke Pearson)
06. My Girl Shirl (music: Duke Pearson)

[Links: Donald Byrd]
Donald Byrd Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jackie McLean]
Jackie McLean (@ ジャズの酒蔵)
Bluesnik: Jackie McLean (by Masaki Nakano)
So McLEAN (総まくりーん) (by F-red bill)
Jackie McLean Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Hank Mobley]
Hank Mobley Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Duke Pearson]
Duke Pearson Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: Doug Watkins]
Doug Watkins Discography (by Vincent Bessieres)
[Links: Reggie Workman]
Reggie Workman's BassScanz (Official Website)
The Reggie Workman Discography (by Rick Lopez)
[Links: Lex Humphries]
Lex Humphries (by Vincent Bessieres)

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2005年09月10日

『ジョージ・ウォーリントン・アット・ザ・カフェ・ボヘミア』

georgewallinftonatbohemia.jpg 

デトロイト出身のドナルド・バードがニューヨークに渡り、本格的なレコーディング・デビューを飾ったのは、ドラマーのケニー・クラークのサヴォイ盤(1955年録音)『ボヘミア・アフター・ダーク』においてでした。このアルバムは、スペル違いのバード=チャーリー・パーカーの再来と騒がれたキャノンボール・アダレイのデビュー盤としても知られています。バードはその後、白人バップ・ピアニスト、ジョージ・ウォーリントンのクインテットに参加し、これ以降、何度も共演を重ねることになる盟友ジャッキー・マクリーンと出会います。

イタリア出身のピアニスト、ジョージ・ウォーリントン。1924年10月22日、シチリア島パレルモ生まれ。1993年2月15日、ニューヨーク州ニューヨークで死去。

泣きのアルトで人気のジャッキー・マクリーン。本名は、ジョン・レンウッド・マクリーン(John Lenwood McLean, Jr.)。1931年5月17日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ(32年説は本人が年齢を誤摩化したときの名残だそうです)。

ジョージ・ウォーリントン・アット・カフェ・ボヘミア』はフロントに生きのいい若手2人を迎えたクインテットの白熱のライヴ盤です。アルバムは、バードとマクリーンが全力で駆け抜ける〈ジョニー・ワン・ノート〉で幕を開けます。これはカッコいいです、マジでシビれます。聴くたびにワクワクする名演ですね。

3曲目のマクリーンのオリジナル〈マイナー・マーチ〉。このライヴに先立つ『マイルス・デイヴィス&ミルト・ジャクソン』でも取り上げられていますが、出来はこちらのほうが断然上。マイルス盤のほうは、ゆるくて聞けません(笑)。でもでも、話はここで終わらないんです。実はこの曲、マクリーンのブルーノート・デビュー盤『ニュー・ソイル』でも、〈マイナー・アプリヘンション〉とタイトルを変えて演奏されています。この演奏が熱い! 同じくドナルド・バードとのコンビですが、スピード感がまるで違います。マクリーンのなかでも1、2を争う好きな演奏なので、軍配はどうしてもこっちにあげざるをえません。

5曲目〈ジェイ・マックス・クリブ〉はバードのオリジナルと表記されていますが、テーマ部分は有名な《朝日のようにさわやかに》のまんまパクリです。けっこういい加減なもんです。でも、原曲がいいので、それでも名演になってしまうところが、さすがジャズです。

6曲目〈ボヘミア・アフター・ダーク〉は、カフェ・ボヘミアを根城にしていたベースのオスカー・ペティフォードがクロージング・テーマとして演奏していた曲です。このアルバムは、同クラブにおける最初のライヴ録音だったので、そういう選曲になったのだろうとは、邦盤ライナーの油井正一さんの弁です。

ジャケットが2種類あるのは、当初、プログレッシヴからリリースされた(邦盤ですね)のが、プログレッシヴがすぐに倒産したため、マスターテイクの音源をプレスティッジが買い取って再発した(輸入盤です)からです。ところが、ややこしいことに、OJC(プレスティッジの再発元ファンタジー社のカタログ)盤の CD にも、ボーナストラック付きのものとそうじゃないものが出回っているそうです。

さらにさらに、プレスティッジに売却されたのはマスターテイクだけで、実は全曲別テイクが存在していて、Overseas というレーベルから、別テイクだけを集めたアナログ盤が出ているんだそうです。いやあ、奥が深いねえ。ここらへんのお話は、So McLEAN さんの受け売りです。興味のある方はぜひのぞいてみてください。

 

"George Wallington Quintet At The Bohemia"
(Progressive LP 1001 → Prestige PR 7820)

Donald Byrd (trumpet)
Jackie McLean (alto sax)
George Wallington (piano)
Paul Chambers (bass)
Art Taylor (drums)

Produced by Gus Grant
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded live at the Cafe Bohemia, NYC; September 9, 1955

[Tracks] 
01. Johnny One Note (music: Richard Rodgers / words: Lorenz Hart)
02. Sweet Blanche (music: George Wallington)
03. Minor March (music: Jackie McLean)
04. Snakes (music: Jackie McLean)
05. Jay Mac's Crib (music: Donald Byrd)
06. Bohemia After Dark (music: Oscar Pettiford)

[Links: Donald Byrd]
Donald Byrd Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jackie McLean]
Jackie McLean (@ ジャズの酒蔵)
Bluesnik - Jackie McLean (by Masaki Nakano)
So McLEAN (総まくりーん) (by F-red bill)
Jackie McLean Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年09月07日

ドナルド・バード『バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル』

byrdblowsonbeaconhill.jpg 

日本の音楽家で「教授」といえば、ご存じ坂本龍一ですが、ジャズ界にも「プロフェッサー」と呼ばれる人がいます。プロフェッサー・バードことドナルド・バード、その人です。本名は、Donaldson Toussaint L'Ouverture II(なんて発音するの?)。1932年12月9日、ミシガン州デトロイト生まれ。1982年にコロンビア大学で本物の「博士号」を取得してます。

のちにファンキー路線やエレクトリック路線を突っ走り、人気を博すことになるバードですが、デビューしたてのころは、彼もまっとうなハードバッパーでした。それもそのはず、彼が生まれ故郷のデトロイトからニューヨークに上京したのが1955年。当時はハードバップが大きなうねりとなってジャズ界を席巻しつつあり、なかでも花形ポジションのトランペットには、クリフォード・ブラウンという巨星がいました。翌56年の6月、ブラウニーの突然の事故死を受けて跡目争いが勃発。バード、モーガン、ハバードといった才能あふれる新人たちが、「われこそはクリフォード・ブラウンの正統な後継者だ」と名乗りをあげていったのです。

バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル』は、トランジションに残されたバード名義の2枚(3枚?)のうちの1枚で、バードにとっては通算3枚目のリーダー作にあたります。バードには珍しいワンホーン・カルテットであり、幻のレーベル「トランジション」の作品ということもあって、思い入れのある人が多いようで、ひそかに楽しむ愛聴盤としてよく紹介されたりしています。その気持ち、わかりますよ〜(笑)。

ボストンのインテリの拠り所(とライナーにあります)、高級住宅地として知られるビーコン・ヒルを同郷出身のベーシスト、ダグ・ワトキンス(2人は当時、分裂前のジャズ・メッセンジャーズに在籍していた)とともに訪れたバードは、現地のミュージシャンを従えて、愛すべき小品を残してくれました。輝かしい音色にメロディアスなフレージング、ほどよく抑制された感情表現に、のちに教授になったバードの知性を見る思いです。ゆったりとした気分でどうぞ。

 

Donald Byrd "Byrd Blows On Beacon Hill"
(Transition TRLP-17)

Donald Byrd (trumpet)
Ray Santisi (piano)
Doug Watkins (bass)
Jim Zitano (drums)

Produced by Tom Wilson
Recorded by Steve Fassett
Recorded at Steve Fassett's old house, Beacon Hill, Boston; May 7, 1956

[Tracks] 
01. Littile Rock Getaway (music: Joe Sullivan)
02. Polka Dots And Moonbeams (music: Jimmy Van Heusen / words: Johnny Burke)
03. People Will Say We're In Love (music: Richard Rodgers / words: Oscar Hammerstein II)
04. If I Love Again (music: Ben Oakland / words: Jack P. Murray)
05. What's New (music: Bob Haggart / words: Johnny Burke)
06. Stella By Starlight (music: Victor Young / words: Ned Washington)

[Links: Donald Byrd]
Donald Byrd Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Doug Watkins]
Doug Watkins Discography (by Vincent Bessieres)

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2005年09月02日

『ヒア・カムズ・ルイ・スミス』

herecomeslouissmith.jpg 

ハーヴァード出の秀才トム・ウィルソンがシカゴにトランジション(アルバムリストはこちら)を興したのが1954年。当時としてはきわめて珍しい黒人のプロデューサーだった彼は、ドナルド・バードやセシル・テイラーのデビュー作をものにするなど、ジャズ・ファンの記憶に残る仕事をしましたが、57年にあえなく倒産。彼はその後、サヴォイ、ユナイテッド・アーティスツ、オーディオ・フィデリティといったレーベルを経て、コロンビアで大輪の花を咲かせます。

レーベル倒産の割を食った格好となったのが、ルイ・スミスです。1931年5月20日、テネシー州メンフィス生まれ。同じトランペットのブッカー・リトルとはいとこ同士です。

録音も済み、カタログ番号も決まっていながら、出せない。そんな窮状を聞きつけたブルーノートのプロデューサー、アルフレッド・ライオンは音源そのものを買い取り、ブルーノートの作品として発売します。アルフレッド在任中のブルーノートにあって、このアルバムだけプロデューサー名が違うのは、そんなわけです。録音エンジニアは、ブルーノートでもおなじみの RVG(ルディ・ヴァン・ゲルダー)。でもどこか、いつものブルーノート・サウンドと違うのは、やはりプロデューサーの個性によるものなのでしょうか。

ブルーノートの諸作はよくつくり込まれたカッチリとした印象で、よくいえば端正、悪くいえば遊びがない。ところが、トム・ウィルソン制作の『ヒア・カムズ・ルイ・スミス』は、いい意味で「ゆるい」んですね。大雑把というか。そこにかえって私なんかはジャズっぽさを感じてしまうのですが、まあこれは完全に個人の趣味の問題ですね。

冒頭の〈トリビュート・トゥ・ブラウニー〉という曲が物語るように、ルイ・スミスのトランペットはクリフォード・ブラウン直系のブリリアントな音色が特徴です。明るく力強いトランペット・サウンドは、ハードバップの演奏に欠かせません。

いとこのブッカー・リトルと比べると、その差は歴然です。マイナー調の曲で真価を発揮するリトルの陰影のあるペットは、やはり典型的なハードバップとはそぐわない。暗い時代の暗い音楽というと救いがないですが、リトルが頭角を現すには、やはり60年代を待たなければなりませんでした。

そして、ルイ・スミスが60年代になって音楽活動の一線から身を引いたのも、同じ理由からだろうと思います。時代は明るいだけのペットを必要としなかった。でも、幸運なことに、彼にはもうひとつ、すぐれた資質がありました。音楽を教える才能です。おおらかでやさしく、落ち着いた物腰のスミスは、自分が自分がと前に出るタイプではなく、若い人をサポートすることに情熱を傾けるタイプでした。だから、音楽教師という天職を得て、それに熱中することができたのです。

もうひとつ、このアルバムで聞きものは、エマーシーとの専属契約の関係で、「バックショット・ラ・ファンク」という珍名で参加しているキャノンボール・アダレイの演奏です。けっこうキテます。

 

"Here Comes Louis Smith"
(Blue Note BLP-1584)

Louis Smith (trumpet)
Cannonball Adderley (alto sax)
Duke Jordan (piano) #1, 2, 5)
Tommy Flanagan (piano) #3, 4, 6
Doug Watkins (bass)
Art Taylor (drums)

Produced by Tom Wilson
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; Feb 2 (#1, 2, 5), 4 (#3, 4, 6), 1957 (58?)

[Tracks] 
01. Tribute To Brownie (music: Duke Pearson)
02. Brill's Blues (music: Louis Smith)
03. Ande (music: Louis Smith)
04. Stardust (music: Hoagy Carmichael / words: Mitchell Parish)
05. South Side (music: Louis Smith)
06. Val's Blues (music: Louis Smith)

[Links: Duke Jordan]
Duke Jordan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Doug Watkins]
Doug Watkins Discography (by Vincent Bessieres)

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2005年09月01日

『ブッカー・リトル4&マックス・ローチ』

bookerlittle4.jpg Booker Little - Booker Little 4 & Max Roach

メンフィス生まれのブッカー・リトルが同郷のジョージ・コールマンとともにシカゴに渡ったのが1957年(58年?)。彼らはケニー・ドーハムが抜けた後のマックス・ローチのグループに参加します。黄金時代を築いたブラウン=ローチ・クインテットが、クリフォード・ブラウンの急死を受けて解散したのが56年6月。その後任として馳せ参じたのがドーハムでした。

リトルの初吹き込みは、マックス・ローチ+4の『オン・ザ・シカゴ・シーン』です(58年6月録音)。その後、何枚かのローチのアルバムに参加、満を持して発表されたのが、初リーダー作『ブッカー・リトル4&マックス・ローチ』でした。

このアルバム、ユナイテッド・アーティスツ盤の原題は『The Defiant One(挑発、反抗)』といいます。ちょっと青臭いタイトルが微苦笑を誘いますが、リトルはこの当時、まだ20歳の若者です。「一旗あげてやるぞ!」という意気込みが、かえってすがすがしさを感じさせるというものです。

このころのリトルのペットは、まだ例の陰鬱な表情を見せていません。前途洋々の若者らしく、明るく伸びやかなサウンドに、思わず頬もゆるみます。これが60年のタイム盤『ブッカー・リトル』のころになると、〈Life's A Little Blue(人生は少しだけブルー)〉になり、61年(リトルの没年)の『アウト・フロント』や『ブッカー・リトル&フレンド』のころになると、どうしようもないほど暗く、鬱屈したサウンドに様変わりしてしまいます。

この落差はどこからきたのでしょうか。死期を悟るにしては若すぎます。でも、忍び寄る病魔がリトルの作曲に少なからず影響したことは考えられます。そして、世間から認められない焦り、怒り、あきらめ。う〜ん、せっかくリトルの唯一といってもいい「明るい」アルバムの紹介なのに、どうも記述が暗いほう、暗いほうへと流されていきます。リトルのもつ地場が、そうさせるのでしょうか。

ちなみに、1曲目〈マイルストーン〉は2つのヴァージョンがあって、こちらは古いほう。パーカー時代のマイルスの作品です。もう1つのヴァージョンのほうが有名ですね、その名も『マイルストーンズ』に収められています。



"Booker Little 4 & Max Roach"
(United Artists UAL 4034 / UAS 5034)

Booker Little (trumpet)
George Coleman (tenor sax)
Tommy Flanagan (piano)
Art Davis (bass)
Max Roach (drums)

Produced by Tom Wilson
Recorded by Lewis Merrittas
Recorded at Nola Penthouse Sound Studios, NYC; October 1958

[Tracks] Booker Little - Booker Little 4 & Max Roach
01. Milestones (music: Miles Davis)
02. Sweet And Lovely (music: Gus Arnheim, Harry Tobias, Jules Lemare)
03. Rounder's Mood (music: Booker Little)
04. Dungeon Waltz (music: Booker Little)
05. Jewel's Tempo (music: Booker Little)
06. Moonlight Becomes You (music: Gus Arnheim, Harry Tobias, Jules Lemare)

[Links: Booker Little]
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
[Links: George Coleman]
George Coleman (Official Website)
[Links: Tommy Flanagan]
Tommy Flanagan Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Art Davis]
Dr. Art Davis: Bassist (Official Website)
Art Davis Discography (by Michael Fitzgerald)
[Links: Max Roach]
Max Roach Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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