2005年08月23日

『ダウン・ホーム・リユニオン』

downhomereunion.jpg

以前、雑誌かなにかでフィニアス・ニューボーン Jr. の記事を読んで、彼がメンフィス育ち(生まれは同じテネシー州のホワイトヴィル)だと知ったとき、私の心は粟立ちました。メンフィスといえば、ブッカー・リトルの生まれ故郷。ひょっとしたらこの2人、どこかで共演しているんじゃないか。そう思ったわけです。で、いろいろ調べてみました。そしたら、あるじゃないですか、『ダウン・ホーム・リユニオン』というメンフィス出身の若手(当時)を集めたアルバムが。

たしか、最初にその存在に気づいたのは、Nelson's Navigator for Modern Jazz においてだったと思います。Nelson さんの手になるこのサイト、非常に奥が深いです。とくにコラム関係の充実度はほかの追随を許しません。年輪を重ねた Nelson さんの言葉に、うなずくことしきりです。

さて、共演盤の存在はわかったものの、それが手に入らない時期が長く続きます。私はアナログ・プレーヤーをもっていないので、コレクションの対象は CD に限られますが、なにしろ CD 化された形跡がないのです。これでは手も足も出ません。

そう思っていたら、実は手ぐらいは出ていたんです。ブルーノート盤『ブッカー・リトル4&マックス・ローチ』という輸入盤 CD があります(原盤はユナイテッド・アーティスツ)。ここに、『ダウン・ホーム〜』からの2曲がオマケで入っています。ただ、クレジットがなにもなかったので、もっていたのに気づかなかったんですね。それに気づかせてくれたのは、Alan Saul さんによるBooker Little Discography のなかの記述でした。

これで晴れて2曲は聴くことができたものの、やっぱりそれだけじゃ満足できないわけです。う〜ん、どこかで再発しないかな。UA 原盤ということは、日本の発売元は東芝 EMI だから、いつか出してくれるんじゃないかな。なんて思っていたら、出たんですね、ホントに(発売は2002年11月)。すぐさま買いに走りましたよ(笑)。

というわけで、ようやく手に入れた念願の CD がこれです。思い入れがたっぷりある盤なので、冷静な批評はできません。もっとも、いつも個人的な印象だけでレビューを書いているので、今にはじまったことではないのですが(笑)。

参加メンバーはいずれもメンフィス出身で、当時売り出し中の若者(全員20代)ばかりです。ペットは2人、ブッカー・リトルとその従兄弟のルイ・スミス、アルトのフランク・ストロジャー、テナーのジョージ・コールマン、フィニアスとカルヴィンのニューボーン兄弟といったメンバーが、久しぶりの再会を祝して、生きのいいサウンドを聴かせてくれます。

メンフィスの若者はミシシッピ川を北上してシカゴを目指すのがお決まりのパターンのようで、ストロージャーはシカゴのバンド MJT+3 のメンバーとなり(54年)、リトルとコールマンはシカゴ経由でマックス・ローチのバンドに参加しています(58年から)。ルイ・スミスも57年にシカゴの新興レーベル、トランジションを興したプロデューサーのトム・ウィルソンのもとで録音を残しています。メンフィス発、シカゴ経由、ニューヨーク行きの超特急。みなさんも乗ってみませんか?



"Down Home Reunion: Young Men From Memphis"
(United Artists UAL 4029 / UAS 5029)

Louis Smith (trumpet)
Booker Little (trumpet)
Frank Strozier (alto sax)
George Coleman (tenor sax)
Phineas Newborn, Jr. (piano)
Calvin Newborn (guitar)
George Joyner (bass)
Charles Crosby (drums)

Produced by Tom Wilson
Recorded by Lewis Merritt
Recoreded at Olmsted Studios, 1958 or early 1959

[Tracks]
01. Things Ain't What They Used To Be (music: Mercer Ellington / words: Ted Persons)
02. Blue'n Boogie (music: Dizzy Gillespie, Frank Paparelli)
03. After Hours (music: Avery Parish / words: Robert Bruce, Buddy Fayne)
04. Star Eyes (music: Gene DePaul / words: Don Raye)

[Links: Booker Little]
Booker Little (@ Nelson's Navigator for Modern Jazz)
Booker Little Discography (by Alan Saul)
Booker Little Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Phineas Newvborn, Jr.]
Phineas Newborn Jr. Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Calvin Newborn]
"Flying" Calvin Newborn
[Links: Frank Strozier]
The Frank Strozier Discography (by Noal Cohen)

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2005年08月21日

フィニアス・ニューボーン Jr.『ア・ワールド・オブ・ピアノ』

aworldofpiano.jpg

アメリカ南部メンフィス育ちのフィニアスは、東海岸のニューヨークに出て認められ、1956年にアトランティックに初リーダー作、『ヒア・イズ・フィニアス』を吹き込みます。その後、メジャーレーベルの RCA から極甘のソフト路線のアルバムを何枚かリリースしてお茶を濁しますが、西海岸のコンテンポラリー・レーベルのオーナー、レスター・ケーニッヒに見初められたのが61年のこと。フィニアスはこのレーベルに迎えられて、はじめてその才能を全面的に開花させます。58年に『ウィ・スリー』を残していますが、あれは例外中の例外です。

レスターは、フィニアスのことがえらく気に入ったようで、彼の移籍第1弾『ア・ワールド・オブ・ピアノ』を録音するために、最高のリズム・セクションを用意します。前半の4曲はマイルス・デイヴィス・クインテットのポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズ、後半の4曲はキャノンボール・アダレイ・クインテットのサム・ジョーンズとルイ・ヘイズとくれば、もうこれ以上の人選は考えられないでしょう。フィニアスは、そんなレスターの期待に見事にこたえます。これまでの鬱憤を晴らすかのような快演につぐ快演。鍵盤のはしからはしまで弾きこなす、ゴージャスで華のあるピアノです。

選曲のよさも特筆ものです。パーカーの〈シェリル〉、ガレスピーの〈マンテカ〉、ストレイホーンの〈ラッシュ・ライフ〉、ブラウニーの〈ダフード〉、ロリンズの〈オレオ〉、ホレス・シルヴァーの〈ジューシー・ルーシー〉などなど、ジャズメン・オリジナルのてんこ盛り。しかも、超有名曲ばかりでないところがまた渋いです。パーカーの〈シェリル〉なんかは、フィニアスのこのアルバムの印象しかありません。同じコンテンポラリー系ピアニストのハンプトン・ホーズやローランド・ハナも演ってますが、彼らの頭にあったのは間違いなくフィニアスの演奏だったはずです。

どれも見事な演奏で甲乙つけがたいのですが、横綱級の有名人にまじってひっそりと配置されたミスター・ウォーキング・ベース、リロイ・ヴィネガーの小品〈フォー・カール〉なども味わいがあっていいですね。これは58年にこの世を去ったピアニスト、カール・パーキンスに捧げられたワルツです。絢爛豪華な大技が魅力のフィニアスですが、小技もきっちり決めてくれます。

 

Phineas Newborn, Jr. "A World Of Piano"
(Contemporary C 3600 / S 7600)

Phineas Newborn, Jr. (piano)
Paul Chambers (bass) #1-4
Sam Jones (bass) #5-8
Philly Joe Jones (drums) #1-4
Louis Hayes (drums) #5-8

Produced by Lester Koenig
Recorded by Howard Holzer, Roy DuNann
Recorded at Contemporary's Studio, LA; October 16, 1961

[Tracks]
01. Cheryl (music: Charlie Parker)
02. Manteca (music: Dizzy Gillespie, Chano Pozo)
03. Lush Life (music: Billy Strayhorn)
04. Daahoud (music: Clifford Brown)
05. Oleo (music: Sonny Rollins)
06. Juicy Lucy (music: Horace Silver)
07. For Carl (music: Leroy Vinnegar)
08. Cabu (music: Roland Alexander)

[Links: Phineas Newborn, Jr.]
Phineas Newborn Jr. Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年08月20日

ロイ・ヘインズ『ウィ・スリー』

wethree.jpg

ロイ・ヘインズのリーダー作といえば、なんといっても『アウト・オブ・ジ・アフタヌーン』が筆頭格ですが、それに続くのがピアノ・トリオの人気盤『ウィ・スリー』です。

リーダーのロイには申し訳ないのですが、『ウィ・スリー』といわれて思い浮かぶのは、やっぱりフィニアス・ニューボーン Jr. のきらびやかなピアノです。1931年12月14日、テネシー州ホワイトヴィル生まれ。1989年5月26日、テネシー州メンフィスでなくなりました。

ブルース発祥の地であり、プレスリーを生んだ街メンフィス。驚異のテクニシャン、フィニアスはこの街で育ちます。右手のシングル・トーンのホーンライクなソロで一世を風靡したパウエル以降、ジャズ・ピアノの世界では左手はお飾り程度の役目しか果たさなくなりましたが、フィニアスは左手もよく動く。両手で数オクターブ離れた鍵盤を同時に弾くオクターブ・ユニゾンが、彼のピアノにゴージャスな響きをもたらします。

「10本の指と88の鍵盤をフルに使って演奏する」とはロイのフィニアス評ですが、モダン期以降で指がよく動くテクニシャンといえば、オスカー・ピーターソンが有名です。でも、抜群のドライヴ感でグイグイ引っ張るピーターソンとは違い、フィニアスのピアノは、もっと黒く粘っこい。メンフィスという土地が、そうさせたのかもしれません。アップテンポの曲よりもミディアムテンポの曲に、それがよく現れます。

冒頭の〈リフレクション〉は、同業のピアニスト、レイ・ブライアントの作品です。といっても、彼が演奏したヴァージョンは聴いたことがありません。〈リフレクション〉といえば、フィニアスと相場は決まっています。セロニアス・モンクに〈リフレクションズ(こっちは複数形)〉というオリジナルがありますが、あれとも無関係です。ライナーにもちゃんと「無関係だ」と断り書きがあるのが笑えます。

オープニングを聴いただけで「名盤」の予感がするのは、ロイの切れ味のいいドラミングもさることながら、チェンバースのベースがからみ、フィニアスのピアノがテーマを奏でるその瞬間です。う〜ん、いいねえ。この出だしを聞きたさに、何度もくり返し流してしまうのは、私だけではないはずです。

ジャケットをよく見ると、ロイもフィニアスも、ポール・チェンバースの肩くらいしか背がありません。しかも、腕を伸ばして2人いっぺんに肩を抱かれています。う〜ん、サイズが違いすぎる。まるで大人と子どもです。天才フィニアスも形なしですね(笑)。

 

Roy Haynes "We Three"
(New Jazz NJLP 8210)

Phineas Newborn, Jr. (piano)
Paul Chambers (bass)
Roy Haynes (drums)

Produced by Esmond Edwards
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Hackensack, NJ; November 14, 1958

[Tracks]
01. Reflection (music: Ray Bryant)
02. Sugar Ray (music: Phineas Newborn, Jr.)
03. Solitaire (music: Guion, Borek, Nutter)
04. After Hours (music: Avery Parish / words: Robert Bruce, Buddy Fayne)
05. Sneakin' Around (music: Ray Bryant)
06. Our Delight (aka. Tadd's Delight) (music: Tadd Dameron)

[Links: Phineas Newborn, Jr.]
Phineas Newborn Jr. Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年08月19日

ロイ・ヘインズ『アウト・オブ・ジ・アフタヌーン』

outoftheafternoon.jpg Roy Haynes Quartet - Out of the Afternoon

古くはチャーリー・パーカーの時代(1940年代)から現代にいたるまで、どんなときも、誰と組んでも、まったく違和感を感じさせずにご機嫌な演奏を聴かせるドラム・マスター、ロイ・ヘインズ。1925年3月13日、マサチューセッツ州ボストン生まれ。御年80歳でいまだ現役です!

歴史に名を刻むような革新的なテクがあるわけでもなく、かといってオーソドックスなスタイルに拘泥しているわけでもない。相手がどんなタイプのミュージシャンでも、そこにロイがいるだけで、不思議と音楽がスウィングする。ちょっと得がたい存在です。

そんなロイの最高傑作は、本人もお気に入りという『アウト・オブ・ジ・アフタヌーン』でキマリでしょう。このアルバムには、なんてったってラサーンが参加しています。そして、私的テーマ曲〈イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー〉と〈フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン(別名イン・アザー・ワード)〉が、なんとそろって入っています。大好きなラサーンが大好きなこの2曲を吹いているというだけで、私はもうメロメロです。まさにドンピシャ、ど真ん中のストレート。ここまでくると、運命的なものすら感じます。

ジャケットを飾るのは、メンバー4人が横一列に並んでの野外撮影の写真です。近くの公園かなにかでしょうか。誰のアイディアかは知りませんが、よく考えると、妙なシチュエーションです。

ラサーンの手には、風変わりなステッキが握られています。彼は自分の杖に笛だのサイレンだのをジャラジャラつけて、ところかまわず鳴らしていたそうですが、この杖には何もついていないみたいですね。ちなみに彼は、盲人用の杖は生涯もちませんでした。

追記:
このジャケット写真について、なおきさんからコメントをいただきました。それによると、この鬱蒼と茂った木々は、ヴァン・ゲルダー・スタジオ(彼の自宅です)の裏手の雑木林だそうです。探せば、似たような構図のジャケットがあるはずだとのことでした。

 

Roy Haynes "Out Of The Afternoon"
(Impulse A 23)

Roland Kirk (tenor sax, manzello, strich, nose-flute)
Tommy Flanagan (piano)
Henry Grimes (bass)
Roy Haynes (drums)

Produced by Bob Thiele
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded at the Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; May 16, 23, 1962

[Tracks] Roy Haynes Quartet - Out of the Afternoon
01. Moon Ray (music: Artie Shaw / words: Paul Madison, Arthur Quenzer)
02. Fly Me To The Moon (music: Bart Howard)
03. Raoul (music: Roy Haynes)
04. Snap Crackle (music: Roy Haynes)
05. If I Should Lose You (music: Ralph Rainger / words: Leo Robin)
06. Long Wharf (music: Roy Haynes)
07. Some Other Spring (music: Irene Kitchings / words: Arthur Herzog Jr.)

[Links: Roland Kirk]
Periodicals 林建紀 (@ Read NKYM!)
The Rahsaan Roland Kirk Website
Roland Kirk Discography (by Michael Fitzgerald)
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Tommy Flanagan]
Tommy Flanagan Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年08月18日

チャールズ・ミンガス『ミンガス・アット・カーネギー・ホール』

mingusatcarnegiehall.jpg Charles Mingus - Mingus At Carnegie Hall (Live)

暴れん坊将軍チャールス・ミンガスと怒れる盲目の巨人ラサーン・ローランド・カーク。どちらも戦闘的なエピソードには事欠かない2人だけに(気性の荒いミンガスの被害者は数知れず。トロンボーン奏者ジミー・ネッパーなんぞは顔面を殴られ、前歯をへし折られたといいます)、この2人がぶつかるとどうなるか。想像しただけでも怖いですねえ。

で、実際に殴り合いのケンカはあったのか。あったらしい、ということがラサーンの伝記『ローランド・カーク伝』でほのめかされています。ブラインドを降ろし、光を遮り、目隠しをしたミンガスがラサーンのアゴに一発、そして尻を蹴飛ばした。う〜ん、ホントですかねえ。ブラインドの世界では、もとから見えないラサーンにはかなわないと思うのですが。

それはさておき、ミンガスとラサーンがお互いに尊敬しあっていたことは、よく知られています。黒人差別に対する反発心も、音楽的素養も、大食漢であることも、よく似た2人は自然とひかれあう運命にあったのでしょう。

ラサーンがミンガス・バンドにはじめて参加したのは、1961年のことです。このときは、アトランティック盤『オー・ヤー』など数枚のアルバムを残しただけで、2人の関係は終わります。その理由も変わっていて、ミンガスが自伝『敗け犬の下で』を書くために引き蘢ったからといわれています。

それから時がたつこと十数年、久しぶりにミンガス・バンドに参加したラサーンは、74年録音の『ミンガス・アット・カーネギー・ホール』で思いっきりやらかしてくれます。

ラサーンの怒りは、黒人差別や盲人差別に対してだけ向けられていたのではありません。同じ黒人でも、自分の前に立ちはだかるミュージシャンに対しては、とことんやり込めずにはいられなかったのがラサーンです。要は、「超」がつくほどの負けず嫌いだったんですね。

ラサーンは悪名高き「主役食い」でした。滞在先のライヴハウスに独りでぶらりと赴き、他人のステージに割って入っては、圧倒的な力量で相手をねじ伏せ、グゥの音もでないまでに叩きのめすのが、ラサーンのやり方でした(ふつうなら嫌われますね、確実に)。あらゆる楽器を使いこなすテクニックもさることながら、信じられないほどの心肺能力と(3本同時に吹くぐらいですから、肺活量は相当あったはずです。音の分厚さはそこから生まれます)、ジャズの歴史に対する底知れぬ造詣によって(誰の演奏でも即座に引用することができた)、ラサーンは天下無敵のファイターとなったのです。

このライヴでは、ラサーンはトレードマークの同時吹奏を封印して、ワン・ホーンで勝負しています。こういうときのラサーンはヤバいんです。ワン・ホーンでも誰にも負けないってことを証明したくて、ウズウズしているわけです。で、それをやってしまった。

とにかく2曲目の〈パーディド〉を聞いてください。途中から、ラサーンのロング・ソロがはじまります。まるで他のメンバーなどいないかのように、延々と吹き続けるラサーン。途中、交代を催促するかのようにジョン・ファディスのハイノートやドン・プーレンの乱れ打ちがかすかに聴こえますが、そんなことはおかまいなしで、わが道を突き進むラサーンです。こうなったら誰も止めることはできません。

かわいそうなのは、次にソロをとる人です。ラサーンは観客の盛り上げ方も煽り方も熟知していたので、人前でのパフォーマンスにはめっぽう強いタイプでした。現にこのアルバムでも、ラサーンの演奏直後がもっとも歓声が大きくなっています。拍手もケタ違いです。次の人はやりにくいですよね、はっきりいって。ペンペン草も生えないくらい、根こそぎ養分(聴衆の心)をかっさらっていったのですから。

ミンガスは、この作品では珍しくサポートに徹しています。といっても、ミンガスはふつうにベースを弾いているときが一番すごかったりするわけで、やっぱりベースはこうでなきゃ、と思わせてくれる力強いベースラインを聞いているだけでも楽しめます。いや、やっぱりこれは傑作ですね。

 

Charles Mingus "Mungus At Carnegie Hall"
(Atlantic SD 1667)

Jon Faddis (trumpet)
Charles McPherson (alto sax)
John Handy (alto sax, tenor sax)
George Adams (tenor sax)
Roland Kirk (tenor sax, stritch)
Hamiet Bluiett (baritone sax)
Don Pullen (piano)
Charles Mingus (bass)
Dannie Richmond (drums)

Produced by Joel Dorn, Ilhan Mimaroglu
Recorded by Aaron J. Baron
Recorded live at Carnegie Hall, NYC; January 19, 1974

[Tracks] Charles Mingus - Mingus At Carnegie Hall (Live)
01. C Jam Blues (music: Duke Ellington)
02. Perdido (music: Juan Tizol / words: H. J. Lengsfelder, Ervin Drake)

[Links: Charles Mingus]
The Official Mingus Web
Charles Mingus Home Page (by Esa Onttonen)
Charles Mingus Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Roland Kirk]
Periodicals 林建紀 (@ Read NKYM!)
The Rahsaan Roland Kirk Website
Roland Kirk Discography (by Michael Fitzgerald)
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Charles McPherson]
Charles McPherson - Jazz Saxophone Artist (Official Website)
[Links: John Handy]
John Handy (Official Website)
[Links: George Adams]
George Adams - Discogdraphy/Sessionography (by Marcel Safier)
[Links: Hamiet Bluiett]
Hamiet Bluiett Collection (by Antaios)
[Links: Don Pullen]
The Don Pullen - Homepage (by Rainer Seekamp)

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2005年08月16日

『グレート・コンサート・オブ・チャールズ・ミンガス』

greatconcertofcm.jpg

1964年4月4日に『タウン・ホール・コンサート』を収録したミンガス・ワークショップの一行は、そのままヨーロッパへと旅立ちます。

4月10日のアムステルダム(オランダ)を皮切りに、
11日、ヒルバーシュム(オランダ)、
12日、オスロ(ノルウェー)、
13日、ストックホルム(スウェーデン)、
14日、コペンハーゲン(デンマーク)、
16日、ブレーメン(ドイツ)、
17/18日、Salle Wagram @パリ(フランス)、
18/19日、Theatre des Champs-Elysees @パリ(フランス)、
19日、リエージュ(ベルギー)、
20日、マルセイユ(フランス)、
21日、リヨン(フランス)、
22日、チューリッヒ(スイス)、
23日、ビール/ビエンヌ(スイス)、
24日、ボローニャ(イタリア)、
25日、ミラノ(イタリア)、
26日、ヴッパータール(ドイツ)、
27日、フランクフルト(ドイツ)、
28日、シュトゥットガルト(ドイツ)(ふうっ、やっと書き終わった)

と続いたツアーは、18日間で9カ国17都市をまわるというあまりに過酷な強行軍でした(プロモーターは、かのジョージ・ウェインらしいです)。これでぶっ倒れないほうがおかしいわけで、実際、ペットのジョニー・コールズは、17/18日(日付をまたいで深夜に行われた)のパリ Salle Wagram でのコンサートの途中で卒倒、病院にかつぎこまれました。

グレート・コンサート・オブ・チャールズ・ミンガス』はその翌日、同じパリのシャンゼリゼ劇場で行われたコンサートの模様を収録したアルバムです。冒頭のバイアードのピアノ・ソロ〈A.T.F.W.(アート・テイタム、ファッツ・ウォーラー)〉に続いて、ミンガスのメンバー紹介が入っていますが、そこで思い出したように「ジョニー・コールズ」の名前をいっているのは、そういうわけです。

さて、このアルバムはかつて「アメリカ」というフランスのレーベル(紛らわしいね)から3枚組の LP として出ていたのですが(America LP 003/4/5)、そこにはどういうわけか〈ソー・ロング・エリック〉の別ヴァージョン(というか編集ヴァージョン)が入っていました。

どういうことかというと、前日ジョニー・コールズが倒れたのが同じ〈ソー・ロング・エリック〉の演奏中だったということで、コールズをフィーチャーした部分(17/18日の Salle Wagram)とコールズなしの部分(18/19日の Theatre des Champs-Elysees)をくっつけて1つの曲としていたらしいんですね。まったく、実にややこしいことをしてくれます。

で、コールズがいた17/18日の演奏の完全ヴァージョンは、リヴェンジ・レーベルの『リヴェンジ!』というアルバムにおさめられています。このレーベル、あまりの海賊版の横行に業を煮やした未亡人のスー・ミンガスが、文字どおりリヴェンジするために自ら立ち上げたものだそうです。気持ちはわかりますが、すごい執念ですね。

私がもっているユニヴァーサル・フランス盤の CD は、アメリカ盤に〈ソー・ロング・エリック(当日ヴァージョン)〉と〈A.T.F.W.〉を加えてコンプリートしたものです。個人的にはあまり好きではないコンプリート盤ですが、こういうのなら歓迎ですね。

この記事を書いていて思い出しましたが、私は学生のころ、結婚をひかえた姉のために「最後の家族旅行」なるものに連れて行かれました。で、それがヨーロッパ4カ国周遊9泊10日の旅(ロンドン、パリ、ジュネーブ、ローマ)という無謀なツアーで、機中2日として、1カ国あたり2日、移動にそれぞれ半日かかるとすると、1つの国に1日半しか滞在しないという、それはひどい旅でした。

しかも、現地についたと思ったら、そこでもバスで観光地を連れ回され、移動につぐ移動でもうゲンナリ。ゆっくり見て回る時間もないのに、土産物屋(ショップと契約しているんでしょう、きっと)にだけは必ず立ち寄り、必要以上に時間をかける。あげくのはてに、「ハイ、写真とってください。ここでは降りませんから」ときて、わたしゃキレました。もう二度とパックツアーなんか参加するか!

そんな状態ですから、自由時間などあるわけもなく、夕食までのわずかな間隙をぬって閉館間際のパリのルーヴル美術館をダッシュで駆け巡ってきたのは、私たち家族一行です。アホか、まったく。



Charles Mingus "The Great Concert Of Charles Mingus"
(Universal Music S.A.S. France 980 691-3)

Eric Dolphy (alto sax, flute, bass clarinet)
Clifford Jordan (tenor sax)
Jaki Byard (piano)
Charles Mingus (bass)
Dannie Richmond (drums)

Recorded live at the Theatre des Champs-Elysees, Paris; April 19, 1964

[Tracks: Disc 1]
01. A.T.F.W. (Art Tatum Fats Waller) (music: Jaki Byard)
02. Presentation of Musicians and Johnny Coles' Trumpet
03. So Long Eric (Don't Stay Over There Too Long) (music: Charles Mingus)
04. Orange Was The Color Of Her Dress Then Blue Silk (music: Charles Mingus)
05. Fables Of Faubus (music: Charles Mingus)

[Tracks: Disc 2]
01. Sophisticated Lady (music: Duke Ellington)
02. Parkeriana (Dedicated To A Genius) (music: Charles Mingus)
03. Meditations On Integration (Or For A Pair Of Wire Cutters) (music: Charles Mingus)

[Links: Charles Mingus]
The Official Mingus Web
Charles Mingus Home Page (by Esa Onttonen)
Charles Mingus Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Eric Dolphy]
Making Eric Dolphy's Complete Discography
Eric Dolphy Discography (by Alan Saul)
Eric Dolphy Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jaki Byard]
JakiByard.org

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2005年08月14日

チャールズ・ミンガス『タウン・ホール・コンサート』

townhallconcert.jpg

ラサーン、ドルフィーと続いたら、次はミンガスしかないでしょう。ジャズ界広しといえども、この2人をリーダーとして統率できるのは、チャールス・ミンガスをおいてほかにはいません。1922年4月22日、アリゾナ州ノガルス生まれ。1979年1月5日、メキシコで死去。

ミンガスとドルフィーのつきあいは少年時代までさかのぼります。当時、LA に住んでいたミンガスとドルフィーは、ロイド・リースの音楽塾で知り合いました。といっても、6歳違いの2人(ミンガス17歳、ドルフィー11歳)のこと、すぐさま友情関係が芽生えたわけではなさそうです。それからかなり時代が下って、ドルフィーが本格的デビューを果たしたのが、チコ・ハミルトンのグループに参加した1958年の春のこと。ドルフィー30歳。遅咲きの新人です。

ミンガスとの初共演は、長らく60年録音の『プリ・バード(バード以前)』だといわれていました。ところが、2001年にミンガスの西海岸時代の SP 音源をまとめた『チャールス・バロン・ミンガス ウェストコースト:1945-1949』という CD が出て、そのなかにドルフィーが参加した2曲(49年春の録音!)がおさめられていたから、さあタイヘン! 世界中のドルフィーフリークたちは、思わぬ授かり物に狂喜乱舞したのでした(ミンガスは当時、敬愛するデューク(公爵)・エリントンを真似て、バロン(男爵)・ミンガスと名乗っていたそうです。爵位が下なのが奥ゆかしくてかわいいですね)。

それはさておき、ドルフィーはその短いアーティスト人生のなかで、何度かミンガスのジャズ・ワークショップに参加しています。この『タウン・ホール・コンサート』(64年録音)は、ドルフィーの母国アメリカでの最後の録音にあたります(実はミンガスは62年にも同じ『タウン・ホール・コンサート』という作品を残していますが、ドルフィーは参加していません。ドルフィー・フリークは要注意)。

どちらの曲もドルフィーの名前が冠せられていますが、このわずか2か月半後に起きたドルフィーの急死を受けてのことでしょう。〈あばよ、エリック(ソー・ロング・エリック)〉という曲を、エリックその人が演奏するはずはないのですから。それじゃあ、あまりに悲しすぎます。

この録音を置き土産に、ドルフィーは新天地ヨーロッパへと旅立ちます。ミンガスのヨーロッパ周遊弾丸ツアーに同行して、各地を転戦したあと(連日、広いヨーロッパのどこかで演奏しているという強行軍でした。その模様は、多くの CD に残されています)、ドルフィーは当初の予定どおり、独りで同地に残ります。

「しばらくヨーロッパに住もうと思っている。ヨーロッパなら、私がやりたいと思う音楽ができると思うから」

ドルフィーは旅立つ直前のインタビューでそう答えています。



Charles Mingus "Town Hall Concert"
(Jazz Workshop JWS-005-S)

Johnny Coles (trumpet)
Eric Dolphy (alto sax, flute, bass clarinet)
Clifford Jordan (tenor sax)
Jaki Byard (piano)
Charles Mingus (bass)
Dannie Richmond (drums)

Recorded live at Town Hall, NYC; April 4, 1964

[Tracks]
01. So Long Eric (music: Charles Mingus)
02. Praying With Eric (music: Charles Mingus)

[Links: Charles Mingus]
The Official Mingus Web
Charles Mingus Home Page (by Esa Onttonen)
Charles Mingus Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Eric Dolphy]
Making Eric Dolphy's Complete Discography
Eric Dolphy Discography (by Alan Saul)
Eric Dolphy Discography Project (@ Jazz Discography Project)
[Links: Jaki Byard]
JakiByard.org

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2005年08月13日

エリック・ドルフィー『アイアン・マン』

ironman.jpg Eric Dolphy - Iron Man

昨日アップした『カンヴァーセイションズ』と同じ1963年7月のセッションから、『アイアン・マン』(鉄人)の登場です。こちらもさまざまな再発盤 CD が出回っているようなので、ご注意あれ。

表題曲〈鉄人〉を聞くと、私はいつも鉄人にはなりきれなかった人間ドルフィーの悲哀を想います。彼はけっして鉄人ではありませんでした。もっと弱い、孤独な人間でした。

病気になっても満足に病院にいけず、食べるものにも事欠いたという極貧生活がドルフィーの命を縮めたことはよく知られていますが、そうした逆境を乗り越えていくだけのパワーが彼には欠けていました。ラサーンがあらゆる逆境に立ち向かい、怒りをエネルギーに変えていったのと比べると、ドルフィーの生き方はあまりに心許ない。生きてこそナンボというたくましさがほんのちょっとでもドルフィーにもあれば、と思うと残念でなりません。

演奏を通じてしか自己表現できなかったドルフィーだからこそ、その真摯な態度が私たちの心を打つ。それはきっと本当です。一点の曇りもない、まじめで誠実な自己表現。破天荒といわれようが、常識はずれといわれようが、ドルフィーにとってはそれが真実だった。でもね、私はもっとあなたの音楽が聞きたかったんだ。だから、もっと生きてほしかった。生きて、あなたの「その先」の音楽を聞かせてほしかった。心底、そう思います。

2曲目〈マンドレイク〉は、翌64年に欧州で客死する直前に残された『ラスト・デイト』でも演奏されていました。そのときの曲名は〈ザ・マドリグ・スピークス、ザ・パンサー・ウォークス〉。マンドレイクは「曼陀羅華(まんだらげ)」。朝鮮朝顔とも呼ばれる猛毒のナス科の多年草で、かの華岡青州が外科手術の麻酔薬として使ったことはつとに有名。欧米では、媚薬(恋の薬ですな)や黒魔術の材料となるという言い伝えもあるそうな。

5曲目〈オード・トゥ・C.P.〉は、いわずと知れたアルトサックスの巨星チャーリー・パーカーに捧げられた曲です。初出は盟友ブッカー・リトルとの共演盤『ファー・クライ』。こちらにはピアノのジャッキー・バイアード作とクレジットされていますが、真相やいかに。

 

Eric Dolphy "Iron Man"
(Douglas International SD-785)

Eric Dolphy (alto sax) #1, 2 (bass clarinet) #3, 4 (flute) #5
Woody Shaw (trumpet) #1, 2
Prince Lasha (flute) #4
Clifford Jordan (soprano sax) #4
Huey Simmons (alto sax) #4
Garvin Bushell (bassoon) #4
Bobby Hutcherson (vibraphone) #1, 2, 4
Eddie Kahn (bass) #1, 4
Richard Davis (bass) #2, 3, 4, 5
J.C. Moses (drums #1, 2, 4

Produced by Alan Douglas
Recorded in NYC; July 1 (#3, 5), 3 (#1, 2, 4), 1963

[Tracks] Eric Dolphy - Iron Man
01. Iron Man (music: Eric Dolphy)
02. Mandrake (aka. The Madrig Speaks The Panther Walks) (music: Eric Dolphy)
03. Come Sunday (music: Duke Ellington)
04. Burning Spear (music: Eric Dolphy)
05. Ode To C.P. (music: Eric Dolphy)

[Links: Eric Dolphy]
Making Eric Dolphy's Complete Discography
Site Dolphy
Eric Dolphy Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年08月12日

エリック・ドルフィー『カンヴァーセイションズ』

conversations.jpg 

ファッツ・ウォーラーの〈ジターバグ・ワルツ〉。摩訶不思議な魅力にあふれた名曲(迷曲?)ですが、ラサーンが『ブライト・モーメンツ』でとりあげたこの古い曲を、ラサーンからさかのぼること10年前に蘇らせた人がいます。同じマルチ・リード奏者の代表格、エリック・ドルフィーです(といってもラサーンのように同時に吹くわけではありませんが)。

この『カンヴァーセイションズ』は、次回紹介予定の『アイアン・マン』とともに、ユナイテッド・アーティスツの A&R マン(アーティスト&レコーディング・ディレクター)だったアラン・ダグラスのプロデュースで行われた一連のセッションからつくられています。

ソロで吹かせても、スモール・コンボでも、ラージ・コンボでも、それぞれ際立った個性を示したドルフィー。そんな彼のマルチタレントぶりにスポットを当てたこのセッションは、まさに企画の勝利です。1960年12月の『ファー・クライ』以来というスタジオ録音で、ドルフィーは進化した姿を私たちに見せてくれます。

このアルバムでは、やはり冒頭の2曲に耳を奪われます。〈ジターバグ・ワルツ〉と〈ミュージック・マタドール〉。どちらも一度聞いたら忘れられない印象的なメロディーです。「楽しい?」と訊かれれば、たしかに楽しい。「ウキウキする?」と言われれば、そんな気もする。でも、「やっぱり悲しい?」とつっこまれると、理由はわからないけれど、たまらなく悲しくなる。そんなアンバランスな感じがします。ひと筋縄ではいかないドルフィーの複雑さがにじみ出ています。

ややこしいのは、ドルフィーの音楽だけではありません。上記の2枚のアルバムは邦盤、輸入盤含め、いろいろなレーベルから、いろいろなタイトルで、いろいろなジャケットで再発されています(タイトルに、『ジターバグ・ワルツ』『ミュージック・マタドール』『アイアン・マン』とあったら疑ってかかりましょう)。ドルフィーと名のつくものはすべて集めたいというコレクターの方は別として、同じ内容の CD を買わないよう、気をつけてくださいな。

 

Eric Dolphy "Conversations"
(Fred Miles FM-308)
aka. "The Eric Dolphy Memorial Album"
(Vee Jay LPS-2503)

Produced by Alan Douglas
Recorded in NYC; Jul 1 (#3), 3 (#1, 2, 4), 1963

Eric Dolphy (flute) #1 (bass clarinet) #2, 3 (alto sax) #4
Woody Shaw (trumpet) #1
Prince Lasha (flute) #2
Clifford Jordan (soprano sax) #2
Huey Simmons (alto sax) #2
Bobby Hutcherson (vibraphone) #1
Eddie Kahn (bass) #1
Richard Davis (bass) #2, 3
J.C. Moses (drums) #1, 2

[Tracks]
01. Jitterbug Waltz (music: Thomas Fats Waller / words: Manners, Green)
02. Music Matador (music : Prince Lasha, Huey Simmons)
03. Alone Together (music : Arthur Schwartz / words: Howard Dietz)
04. Love Me (music : Victor Young / words: Ned Washington)

[Links: Eric Dolphy]
Making Eric Dolphy's Complete Discography
Site Dolphy
Eric Dolphy Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年08月10日

ローランド・カーク『ブライト・モーメンツ』

brightmoments.jpg Rahsaan Roland Kirk - Bright Moments

ラサーン・ローランド・カークの『ブライト・モーメンツ』。サンフランシスコの名門クラブ、キーストン・コーナーにおけるライヴ録音です(お店は数年前に閉店しました)。

闇の世界の住人が描く「光り輝く瞬間(ブライト・モーメンツ)」とは何でしょう? 見えない光を追い求め、与えられない栄光を勝ち取るために闘い続けてきた男がついに辿り着いた先。そこには、無限の「許し」が広がっていました。

なんてポジティブな音楽でしょう。生きているそのままをすべて肯定してもらったような安らぎ。ラサーンとバンドのメンバー、そして会場にいた観客には、この日「ブライト・モーメンツ」が訪れました。それは聞けばわかります。ここにはラサーンと観客との心のふれあいが記録されています。生きている喜びが充満しています。

「ブライト・モーメンツ」は誰にでもやってきます。この CD をプレイヤーにセットするだけで。ただし、ちょっとしたおまじないがあります。それは、DISC 2 から先に聴くことです。ここには〈ブライト・モーメンツ〉があります。そして、「最初のオルガン奏者」ファッツ・ウォーラーの〈ジターバグ・ワルツ〉があります。ぜひみなさんも、人生の「ブライト・モーメンツ」を共有してください。おすすめです。



Rahsaan Roland Kirk "Bright Moments"
(Atlantic SD 2-907)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, flute, nose-flute)
Ron Burton (piano)
Henry Pearson (bass)
Robert Shy (drums)
Joe Habao (percussion)
Todd Barkan (synthesizer, tambourine)

Produced by Joel Dorn
Recorded by Ed Barton, Biff Davies, Jack Crymes
Recorded live at Keystone Korner, SF; June 8-9, 1973

[Tracks: Disc 1] Rahsaan Roland Kirk - Bright Moments
01. Introduction
02. Pedal Up (music: Roland Kirk)
03. You'll Never Get To Heaven (music: Burt Bacharach / words: Hal David)
04. Clickety Clack (music: Roland Kirk)
05. Prelude To A Kiss (music: Duke Ellington / words: Irving Gordon, Irving Mills)
06. Talk (Electric Nose)
07. Fly Town Nose Blues (music: Roland Kirk)

[Tracks: Disc 2] Rahsaan Roland Kirk - Bright Moments
01. Talk (Bright Moments)
02. Bright Moments Song (music: Roland Kirk)
03. Dem Red Beans And Rice (music: Roland Kirk)
04. If I Loved You <(music: Richard Rodgers / words: Oscar Hammerstein II)
05. Talk (Fats Waller)
06. Jitterbug Waltz (music: Thomas "Fats" Waller / words: Manners, Green)
07. Second Line Jump (music: Roland Kirk)

[Links: Roland Kirk]
Periodicals 林建紀 (@ Read NKYM!)
The Rahsaan Roland Kirk Website
Roland Kirk Discography (by Michael Fitzgerald)
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年08月08日

ローランド・カーク『志願奴隷』

volunteeredslavery.jpg Rahsaan Roland Kirk - Volunteered Slavery

ヴォランティアード・スレイヴリー(志願奴隷)』という、なんとも刺激的なタイトルがついたこの作品は、アナログ時代のA面(1〜5曲目)がコーラス入りのポップ路線(69年のスタジオ録音)、B面(6〜10曲目)が68年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルの模様をおさめたライヴ音源からなっています。

あなたが真のラサーニアン(笑)になれるかどうかは、このアルバム、とくに前半の5曲を楽しめるかどうかにかかっています。そんなものになりたくないって? ああ、なんてもったいない! 

ジャズもゴスペルもR&Bもロックも、耳に聴こえる音楽ならなんでもぶちこんで、かきまわし、融合させて、巨大な音のかたまりを自らの内に育んでいたラサーン。彼が楽器を口にすると、その音のかたまりは奔放な流れとなってあふれ出し、周囲のあらゆるものを飲み込んでいきます。ラサーンのマジック。それは聴くものを圧倒し、高揚させ、恍惚とさせる神秘的な体験です。演奏する彼を目の当たりにしたとき、多くの人はそこに「ブライト・モーメンツ(光り輝く瞬間)」を感じ、彼に対する畏敬の念を覚えたそうです。

う〜ん、なにやら宗教がかってきましたね(笑)。神がかりというと、思い浮かぶのがジョン・コルトレーンです。厳しい自己鍛錬を重ね、自らの内へ内へと向かったトレーンは、孤独に道を究める「求道者」ともいうべき存在でしたが、ラサーンはもっと大地に根を張った原始的な宗教を感じさせます。全身全霊を使って「音の神」と交感するシャーマン。周囲の人間をも巻き込んで、集団トリップへと導くエネルギーのかたまり。ラサーンの存在は、非日常的な祝祭空間を仕切る原始的な宗教指導者のそれです。

コーラス入りの前半の5曲で、まずは打ちのめされてください。そして、鼓舞されてください。生きる喜びを噛みしめてください。スティーヴィー・ワンダーの〈マイ・シェリー・アモール〉に、バート・バカラック(作曲)、ハル・デヴィッド(作詞)、ディオンヌ・ワーウィック(歌)コンビの〈小さな願い(アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー)〉といったポップ・チューンを取りあげているからといって、なめてかかるとヤケドします。

後半のライヴでは、なんとも絶妙なタイミングというべきか、先にあげたトレーンに捧げるメドレーを演奏しています。超人的な耳をもっていたというラサーンのこと、本家トレーンの演奏と聴き比べるのも楽しいかもしれません。エリントンの片腕ビリー・ストレイホーンの〈ラッシュ・ライフ〉は、プレスティッジ盤『ラッシュ・ライフ』で、〈アフロ・ブルー〉は『ライヴ・アット・バードランド』をはじめとする各種ライヴ盤で、トレーン自作の〈ベッシーズ・ブルース〉はインパルス盤『クレッセント』で、それぞれ聴くことができます。

 

Roland Kirk "Volunteered Slavery"
(Atlantic SD 1534)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, flute, nose-flute, gong, whistle, vocal)
Ron Burton (piano)
Vernon Martin (bass)
Charles Crosby (drums) #1
Sonny Brown (drums) #2-5
Jimmy Hopps (drums) #6-10
Joe "Habao" Texidor (percussion) #1, 6-10
Charles McGhee (trumpet) #1, 5
Dick Griffin (trombone) #1, 5
The Roland Kirk Spirit Choir (backing vocal) #1-5

Produced by Joel Dorn
Recorded by Bob Liftin (#1-5)
Recorded at Regent Sound Studios, NYC; Jul 22-23, 1969 (#1-5)
Recorded by Riece Hamel (#6-10)
Recorded live at the Newport Jazz Festival; Jul 7, 1968 (#6-10)

[Tracks] Rahsaan Roland Kirk - Volunteered Slavery
01. Volunteered Slavery (music: Roland Kirk)
02. Spirits Up Above (music: Roland Kirk)
03. My Cherie Amour (music: Stevie Wonder, Sylvia Moy, Henry Cosby)
04. Search For The Reason Why (music: Roland Kirk)
05. I Say A Little Prayer (music: Burt Bacharach / words: Hal David)
06. Roland's Opening Remarks
07. One Ton (music: Roland Kirk)
08. Ovation & Roland's Remarks
09. A Tribute To John Coltrane: Lush Life 〜 Afro Blue 〜 Bessie's Blues (music+words: Billy Strayhorn) 〜 (music: Mongo Santamaria / words: Oscar Brown Jr.) 〜 (music: John Coltrane)
10. Three For The Festival (music: Roland Kirk)

[Links: Roland Kirk]
Periodicals 林建紀 (@ Read NKYM!)
The Rahsaan Roland Kirk Website
Roland Kirk Discography (by Michael Fitzgerald)
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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2005年08月01日

ローランド・カーク『溢れ出る涙』

theinflatedtear.jpg Roland Kirk - The Inflated Tear

ラサーン・ローランド・カークは生前、ジャズのことを「ブラック・クラシカル・ミュージック」と呼んでいました。ジャズの語源には諸説ありますが、「性交」を意味する「Jass」というスラングから来たという説がもっとも一般的なようです。「黒人の演奏するジャズ=淫売屋の音楽」というわけで、誇り高きわれらがラサーンがそれを容認するはずがありません。

ラサーンは「怒り」の人でした。彼は二重の意味で差別と闘い続けた人です。1つは黒人であること、もう1つは盲目であること。ラサーンは自分が演っている音楽や、目が見えなくてもまったく遜色なく生活できることに対して強烈な自負があったので、自分(と自分が敬愛する黒人ミュージシャン)がそれにふさわしい扱いを受けていないと感じたら、
ところかまわず怒りを爆発させました。

無理解な聴衆に対する説教や黒人同胞を煽動するアジテーションも、イスを壊したり、札束を燃やしたりするパフォーマンスも、自分をからかった人間に対する執拗な報復も、根っこのところではいつも「不当な扱いを受けたことに対する怒り」が貫いていました。

もともとほとんど見えなかったラサーンが、残されたわずかな視力を失ったのは1、2歳のころ。「酔っているかハイになっているか誰かに怒っている看護婦が仕事にやってきて、誤って私の眼に大量の薬を注ぎ込んだ。よく涙が溢れ、眼が痛み、涙以外は何もない何年かを耐えた」とは彼の弁です(訳は林建紀さん)。

溢れ出る涙』という、心の奥深いところに直接触れてくるようなこのタイトルは、ラサーンの幼少時の記憶と密接につながっています。「私が溢れ出る涙の一部だと気づいたとき、私は神秘の旅に出ていたのだと思う」というラサーンの言葉は、悲しみや怒りといった人間的な感情をも包み込んで流れていく涙の大河を思わせます。

1曲目の〈ブラック・アンド・クレイジー・ブルース〉。これはドラッグによる幻覚体験をもとにした曲といわれています(幻聴? 盲人は幻覚を「見る」ことができるのでしょうか?)。徹底的に黒いのにどこか悲しげな不思議なメロディーと、ドロッとまとわりつくようなまったり感。この異様な取り合わせが、聴くものを未体験ゾーンへと導きます。ゆらゆらと定まらない浮遊感、それはまさにトリップそのもの!

そして、哀しみの極地〈溢れ出る涙〉。私はこの曲を冷静に聞きとおすことはできません。私の意識の底にある報われなかった思い、悲しかった出来事、かなわなかった夢、泣きたくなるような悔しさや怒り。忘れ去られたそうした思いがラサーンの奏でるサックスに誘い出されて、突如として顔を出します。それは刺激的な体験です。そして、涙が溢れ出すのです。

 

Roland Kirk "The Inflated Tear"
(Atlantic SC 1502)

Roland Kirk (tenor sax, stritch, manzello, clarinet, flute, whistle, English horn, flexafone)
Ron Burton (piano)
Steve Novosel (bass)
Jimmy Hopps (drums)
Dick Griffin (trombone) #08

Produced by Joel Dorn
Recorded by Paul Goodman
Recorded at Webster Hall, NYC; Nov 27, 30, 1967

[Tracks] Roland Kirk - The Inflated Tear
01. The Black And Crazy Blues (music: Roland Kirk)
02. A Laugh For Rory (music: Roland Kirk)
03. Many Blessings (music: Roland Kirk)
04. Fingers In The Wind (music: Roland Kirk)
05. The Inflated Tear (music: Roland Kirk)
06. The Creole Love Call (music: Duke Ellington)
07. A Handful Of Fives (music: Roland Kirk)
08. Fly By Night (music: Roland Kirk)
09. Lovellevelliloqui (music: Roland Kirk)

[Links: Roland Kirk]
Periodicals 林建紀 (@ Read NKYM!)
The Rahsaan Roland Kirk Website
Roland Kirk Discography (by Michael Fitzgerald)
Roland Kirk Discography Project (@ Jazz Discography Project)

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